東方太陽録   作:仙儒

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project~K,A,G,U,Y,A~

私の名前、蓬莱山輝夜。

何でも私が産まれるずーっと前、まだ月人が地上に居た頃の話。

当時は月の頭脳となる前の永琳とその師匠、大英雄綿月ガウェインが始めたプロジェクトだと言う。そのプロジェクトの名前がKAGUYAから付けられたと以前母から聞かされたことがある。何でも宇宙に初めて目を向けたのが綿月ガウェイン。現在のセイバー様。

何故この名前になったかというと、夜中に輝く神秘的な月を見てそれを連想させる事とガウェイン様が中々にロマンチストだったことにも由来している。人類が初めて月へと至るにあたる大プロジェクト。宇宙の父と呼ばれるにいたる様々な偉業の一つ。

この名前は別に嫌なわけではない。むしろ私は母親に感謝した。月人の人物、特に乙女なら夢見る理想の男性なのだ。私も熱狂的な大ファンだった。どんなにイケメンであろうと彼の前では凡夫同然だ。当時のリアル写真や映像を見てるので、それに一応月の姫ではあるがそれは飾りだけ。実質上八意家と綿月、月詠家の御三家がトップだ。だが、下心丸見えな政界の御曹司のイケメンがこの御三家に取り入るために絶えることなく私に縁談の話が絶えなかった。それは、自分で言うのもなんだが、美人だったから余計にだったと思う。権力を手に入れるために、しかも相手は美人だと、こんな優良物件は存在しないと思う。そんな奴らをみてると本当に虫唾が走る。ガウェイン様の爪のあかでも煎じて飲ませてやりたいくらいだ。そんな中、死んだとされていたガウェイン様瓜二つの神が地上に居るという事が判明した。最初は誰もがただ似ているだけだろう、何かの勘違いだ。そういった。まぁ、一部の政界の人物が認めたくないだけで、発見されたのも偶々一瞬だったので政界に揉み消される形で話は薄れていった。ただ、私も名前だけとはいえ政界トップなのだ。当然その映像を見たし、大英雄ならば月に発見されたのに気が付いて身を隠すことに徹する可能性は十分にあり得る事だ。永琳に少しだけ聞いたことがある。ガウェイン様は月に対して好意的ではなかったこと、それを私と綿月家だけに一度だけ話してくれたことがある。明確にそういった態度を取ったわけではないし、月の頭脳たる永琳ですらそういった傾向があるように思えた。とだけ言ったのだ。

大抵顔を見るだけで相手がどう思っているか、言葉を一言交わせばその人物がどんな思考の持ち主で、どう考えて居るかをも簡単に見抜いてしまう永琳が発したただ一つのわからない事。それは自信の師匠であるガウェイン様だけだった。

それに永琳たちがあの汚らわしい星を脱出したとき、政界のメンバーによるガウェイン暗殺計画が始動し、核ミサイルによる地上の殲滅攻撃。これにはさすがに生きている可能性はゼロと判断せざる終えなかった。それで永琳は一時期廃人状態に陥ったほどだ。

だが、モニターには一瞬だけれども監視カメラに向かって盃を向けて柔和な優しい笑顔を向ける人物は綿月家の長男であるガウェイン様以外に在りえない。

そこで初めてあの穢れ続ける星に興味を持った。今まで教育で植え付けられた印象が一瞬にして崩れ落ちた。彼は初めて宇宙から彼の星を見た時に言っていた青きヴェールを纏った星と称された意味が分かった。

ここで私の人生を大きく動かした出来事が起きた。

月面戦争だ。これは地上から妖怪が攻めて来ただけではなく、月の一部がこの状況混乱を利用してクーデターを起こしたことにより起きた泥沼の戦争。その戦争を終結させたのは地上でただ一度だけ姿を現した神であった。その神は綿月ガウェインを名乗り、泥沼の戦場を駆け抜け、見事勝利を収めた戦神。直接見たわけでは無いけれど、その戦場を駆け抜けるさまや、その武功を多方面のメディアが生放送で捉えていた。

浄化の炎が月の侵略者を悉く葬り去り、クーデターを起こした一部の政界人たちを鎮圧し、月を後にした。

この戦の混乱に乗じて母と父は命を落とした。ショックではあったが、これで私を月に縛り付けるものは無くなった。ならば・・・・私は憧れを追う、月の姫ではなく、一人の人間、女として生きていくことを決意した。だが、飾りと言えど月の姫。地上に降りるには並大抵のことではかなわない。それこそクーデターを起こした連中と同じ、それ以上の何かをしなければ月を離れることは叶わない。

ならば、一番手っ取り早い方法があった。蓬莱の薬。これは月人が飲むことを禁じられている禁じ手の中の禁じ手。これならば地上に追放される可能性が一番大きい。そうと決まれば永琳に教わったハッキングをし、監視モニターを一時的にダウンさせる。

後は時間との勝負、警備隊が来るのが早いか私が蓬莱の薬を飲むのが早いか。その日は人生で初めて能力をフル稼働させた上で全力で走った。だが、肝心なことを見逃していた。

私が通ろうとした道に古風の弓矢が付きささる。私としたことが迂闊だった。一番に考えるべき人物がそこにいた。弓矢を使うのは月でただ一人、私の教育係であり、月の頭脳しかいない。嫌な汗が次々にあふれてくる。

 

「こうなることは簡単に予想できたわ」

 

そういって姿を現したのは予想通り。永琳だった。

こうなってしまえばもう先に進むことは叶わない。でも、どうしても後には引けないのだ。意を決して構える。術式を高速であみだし攻撃を加えるが、永琳はガウェイン様と共に幾銭もの修羅場を駆け抜けた英雄の一人。加えて此方の術式はアレンジを加えたとはいえ、教わった術式そのもの。彼女にそんな子供だましの技が効くはずもない。

一瞬で良い。彼女の足を止められる方法は無いかを能力を使い脳を高速思考させる。

 

「勘違いをしてんじゃないの? 輝夜」

 

不意に問いかけられる答えに思考が止まり、眉をひそめる。

確かにそうだ。彼女ならばこの展開も容易に想像できただろう。

だったら、何故それをしながらミスミス私を泳がせておいた? 今だってそうだ。普通なら警備兵が彼女と共にいない事の方が可笑しい。

 

「・・・・・何が目的?」

 

そう問いただす。すると彼女はあるビンを取り出す。

そ、それは・・・・・。

今まさに私が求めていた薬だった。

 

「取引しない? そうすればこんなものくれてやるわ」

 

そう言いながら今までに見せた事のない不気味な笑みを浮かべている。

唾を呑み込む体験など漫画やゲーム、小説やドラマ、映画の中だけだと思っていたが。

 

「簡単な事よ、あなたがこれを飲んで地上に追放される、その先で師匠様を探すだけよ」

 

簡単に言ってくれるが、あれだけガードが堅い人物が地上に降りたとして見つかるか限らない。まぁ、それが目的で不老不死になり地上に降り、彼を探す算段だったのだが。

 

「大丈夫よ、彼は必ず動く。私が一番知ってるんだもの」

 

そういう彼女の顔は恋に恋している、普段魅せることのない本性が出ていた。

 

「貴方を餌にして彼をおびき出す。貴方ほどの階級の人間なら月を永久追放何て事にはならない。月はあなたを地上に放り出し、時期が来れば回収して実験体にするでしょうね。不老不死が穢れを纏い続けるとどうなるかというつまらない実験を。それに貴方ほどの人物を回収するにはそれ相応の人物が慎重に行動し、地上へとあなたを迎えに行かなければならない。必然的にありとあらゆる状況に対応できる人物があなたを迎えに行く。これに私が便乗すれば・・・・」

 

後はわかるわよね~。と語りかけてくる。

成程、そういう事か。

 

「わかったわ、どのみち永琳の事を受け入れなければ捕まってお終いだもの」

 

互いに互いを利用しあう。

 

「頭のいい子は好きよ」

 

そう言ってビンを此方に投げ渡した後、永琳は姿を眩ませた。

遠くから永琳がいかにも急いで憲兵たちに合流したかのようにふるまう声が聞こえる。

薬を一気に呑み込む。瞬間、焼けこげるような、煉獄の業火に投げ出され、それを体験している感覚が私を襲う。

 

「ぅぅあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ」

 

思わずに転げまわる。

私を見つけて「どういたしましたか、姫!」という声を最後に気を失う。

 

次に目を開いたら裁判にかけられていた。

結果からいうと獄刑として穢れた星へ追放されることが決定した。

その刑の出向中、両手にかけられた手錠をよそに改めて穢れた星を見る。

何とも言えない圧倒的なまでの美がそこにはあった。穢れてなどいない。むしろ穢れているのは私たちの方だった。そう今なら理解できる。何故ガウェイン様があの星に残ったのかが。

 

しばらくして地上に着き、頑丈な防護服を着た連中が私を外へと連れていく。そこで手錠を外すなり、逃げるように月へと戻っていった。

来たはいいが実際あてなんてものは無く、どうした物かと考えて居たらお爺さんにであった。お爺さん曰く、子供がいないので私たちの子供になってはくれないかと。

ここでこうしていても仕方が無いのでその話に乗ることにした。

それからの毎日は月に比べると苦でしかない筈なのにやり終えた後の達成感、居心地の良さ。本当に親切なお爺さんにお婆さん。毎日が楽しかった。

だが、そんな日々も長くは続かなかった。何処から広がったか知らないが、私の美貌は噂も相まって都中に、そして、村から村へと伝わり、遂には帝の耳まで届いた。

それからは下らない毎日。名のある者からどこの馬の骨とも知らない連中まで、誰もかれもが求婚を迫っては色々な物を貢いできた。正直イライラして堪らなかったのだが、お爺さんの立場上、ある程度の者は減らせたが、それ以外の豪族たちには逆らえず、「許しておくれ、輝夜」と涙を流しながら合うように言われ、嫌々相手をしている。本当なら人けりにしてしまいたいところだが、お爺さんにどのようなことをされるかわかったものでは無いので我慢して振舞った。

そんな日々が続いた時、見慣れない箱があった。この時代にしてはかなり立派な箱で作られている材質も違うことが見受けられた。これだけ立派な箱なのにも関わらず、文も差出人も書かれていなかった。おかしい、求婚者たちであれば、絶対に自分の事をアピールするための文や名前が必ず書かれているのに、真っ白で質素、故にどれよりも浮かんで見えた箱。お爺さんに聞くと、今朝方早く、帝に献上するための竹細工を作るために竹を切りに行った所、賊に襲われた所を助けてくれた命の恩人が置いていった物だという。どうせやらせで雇った輩に指示してやったものだろうと思い、蓋を開ける。

目を見開いた。そこには他とは比べ物にならない色鮮やかな金平糖、おはぎ、羊羹、そしてリンゴを使ったパイを思わせるものだった。急いで屋敷を走り抜け、屋敷の使いの者たちが何事かと叫ぶ中、お爺さんの部屋に入る。お爺さんは帝に献上する竹細工を作ってる途中だったが、私の雰囲気で察してくれたのか、竹細工を作るのをやめて此方を向いた。

 

「ねえ、お爺さん! この箱を持って来たのは誰!?」

 

そうしたらお爺さんはこうなることをわかっていたのか、諭すような口調で落ち着けと言ってきた。このお爺さん、態度や雰囲気に対してはのほほんとしたようなすっとぼけたような感じだが、その実、凄く頭がきれる人物である。

それからゆっくりと語ってくれた。その人物は自分を助けてくれた。だが、こうしたことは実は輝夜がきてから何回かあったことらしい。故に怪しんだがどうも雰囲気が違う。銀に輝く着物の中に金があしらわれていて、でもそれが互いが互いを引き立てるような不思議な着物を着た好青年だったという。大層位が高い人物だと思って頭を下げるが、彼は頭をあげて下さい。と言ったあと、最初は怪我は無いかや、色々と質問してきたという。真意を掴み切れずに居ると、いきなり剣を出して振り切ったという。いきなりの事に腰が抜けたお爺さんだが、不思議なことに体には切り傷は無い。後ろで何かが倒れる音がしてみてみると幾つかの竹が綺麗に切り倒されていた。竹細工をする身だからこそ分かる。竹を切るにはそれこそ、名の知れた武士達の中で、更にその中でごく一握りである。着物の好青年は苦笑いを浮かべながら指さし、この竹たちなら文句なしの竹細工が作れますよと言うと、切り倒した竹をお爺さんの背負っている籠に入るサイズで均等に斬り、お爺さんの籠へと入れた。それを驚いた顔で見ていて作業が終わったら、お爺さんの元へと戻り、腰が抜けたのを見越してお爺さんを背負い、残りの良質な竹を担いでお爺さんに家はどっちかと聞いてきた。悪くは無いが良いと呼べる部分も少ない。しかも、こんな老いぼれ一人、二人ならまだしも、家に入れては輝夜に手を出される危険性が高い。周りを求婚者達が配置していった人物たちでも果たして止めることができるかどうか・・・・。そんな中、着物の青年は歩きながら背中痛くないか、のど乾いてないか? そう言いながらなるべく動く衝撃がかからないようにして歩いているのがわかった。

 

「申し訳ないのですが、何故、ここまでしてくれるのですか?」

 

真意を掴み切れずに聞いてみる。本性を出してくれる可能性は低いが、このままでは掴み切れないままだ。すでに屋敷と竹林を往復を何回もできる位遠回りをさせている。

それなのに文句ひとつ言わずに労わってくれる着物の青年。

 

「ん~、そうですね。賊に襲われているご老体を見捨てる程私は落ちていないつもりです。それにこうなった原因は私に在りますしね」

 

近くに茶屋が見えた。

そこで荷を下ろし、休憩することにした。

三食団子とお茶が出される。

お茶を啜りながら目の前に広がる光景を目を細めてみていた。

 

「さて、お茶が終わったらで良いのですが、そろそろ本当の道を。私は構いませんがご家族が心配されますよ」

 

心臓を鷲頭かみにされた気分だった。

 

「・・・・・何時からそれを?」

 

そう問うと着物の青年は首を傾げながら

 

「最初からですよ?」

 

そう答え切った。お手上げである。青年の手或は、豪族としての地位で今まで何とか守り抜いてきた輝夜を守れなくなるだろう。そう絶望していると、着物の青年は

 

「言いたくなければ言わないでも構いません、正直下心が無かったわけではありませんし」

 

そういった。もう輝夜の事はわかっているみたいだ。ならば求婚か?

 

「姫にお願いを。この箱を見て見覚えがあると言うのであれば、今日の事を姫に話して頂けませんか?」

 

本性を現したか、やはりこうなるように仕向けておいたのか。

だが、引っかかることが幾つかある。それに彼の今までの態度である程度、人となりがわかった。

茶屋を出ると今度は屋敷に向かって道案内した。屋敷に入ったが上がろうとはせずに、竹をどこに置けばいいかを聞き、指示した場所に竹を置くなり帰ってしまったのだという。

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