「のわっ!!」
あわてて飛び起きる。周りを見回す。
よ、よかった。どうやら夢だったようだ。
猫アルク達の大群に襲われると言う夢を見たのだが、何故だか夢だと思えないだが夢だと思うことにする。でなきゃやってらんない。
さりげなく猫カオスなんかも混じっていたような気がするが気のせいだ。
狂宴の時とかほざいていたような気もするが、これも気のせいだろう。
第一、あんな奴らが来て見ろ、カオスで収拾がつかなくなるぞ。
頭が少し痛い、二日酔いか・・・・。
悪霊と薬師が左右で地面と熱いベーゼをしてるがかまってる余裕がないので気にしない事にする。
それに胸が大きい人ほどうつ伏せで眠ると聞いたことがあるような気がする
二人はかなり大きい方なのできっとうつ伏せで寝た方が楽なのだろう。
敷地内を歩いて井戸を探す。
宴会会場には水が置いてなかった。
最初は台所に行こうと思ったのだが、生憎ここは幻想郷。おそらく水道なんて河童の所以外無いだろう。
と、言うわけで井戸井戸・・・・・、あった。
古い家屋なんかの資料館でしか見たこと無いような井戸があった。
ロープを引っ張り水が入った桶を引き上げる。
持ってきた杯で水を飲む。
・・・・・っく~、うまい。地下水独特のひんやりと冷たい感覚が口から腹に流れ込んでくるのがわかる。癖になりそうな感覚だ。
少し楽になったかもしれない。
改めて周りを見回す。周りが結構明るいので夜明けが近いのかとも思ったが違った。
空には大きな大きなまん丸い満月が出ていて満天の星空が広がっていた。
現実では見たことも無いくらい大きく幻想的なその月に思わず見とれてしまう。
月明かりとはここまで明るく美しいものだったのか・・・・・。
現在社会が亡くした大切な物がまた一つ思い知らされる。
青白い月光が降り注ぐ。
・・・・・月見酒、飲むか。
自然にそうしたいと思えた。流石に日本酒は簡便なので他に何か無いかと探してたらフルーティーな香りがする酒を見つけた。一口飲んでみる、うん。これなら飲める。
その酒を持って鳥居の上にジャンプする。
特等席だ。目の前には手を伸ばせば届くのではないか?と思ってしまうくらいに大きく幻想的な月。
中々に雅なものだ。
・・・・・そう言えば萃香が杯に映る月を飲むと言う事をやっていた気がする。
確か月飲みって言うんだっけか?
やってみるか・・・・。
なんとなく酒を入れた杯を月に伸ばしてみる、
一人きりの小さな小さな宴の始まりを告げる為に・・・・・。
「かんぱい」
どこか刹那さや懐かしさをこめて一人きりの宴がひっそりと始まった。
このような酒はジュース感覚でごくごく飲めるから酔いやすいのだが、今日この時だけはそんなケチな事を考えずに飲もう。
っとはいえ杯に酒を入れてチビチビとだが、一気に飲むのはそれこそ勿体無いと思う。
星も現実世界では見た事が無いくらいあり、もう何が何座だかわからない。
これでも星座には詳しいつもりでいたのだが、まだまだ知らない事が多いようだ。
まったく、自分のちっぽけさを思い知らされる世界だよ、本当に・・・・・
しばらくすると酒が尽きた。
どうでもいいが、この世界に来てから時間の経過がゆっくりな気がする。
月見酒はこれで最後かと月が写る杯をクイッと一気に飲み干す。
また今度やろう、月見酒。
そう思い鳥居から飛び降り宴会会場に戻ると中々にカオスな感じになっていたが皆、静かに寝入っている。
そう言えば、片付け手伝うと決めたんだったけか?
そうと決まればやってしまおう。目にしてると心が折れそうになるので行動をする事にする。
料理皿を一枚、また一枚と料理が残っている皿は違う皿に移したりして空になった空き皿を台所に持っていく。料理運びを手伝ったので台所の位置は把握済みだ。
勝手に人の家に入るのは忍びないが、別にやましい事をするわけでは無いので気にしない事にする。
台所について改めて思う。水道って貴重だな。
流しの隣には大きな瓶がありそこから水を汲んで皿を水に浸す。
改めて皿の数を見て面倒になるがここまで来たのだ、最後までやろうと腹を括り皿洗いを始める。
どうでもいいが、永遠亭からスポンジとたわし持って来て良かった。
・・・・・・騎士皿洗い中・・・・
全て洗い終わり瓶を覗いてみるとあと少ししか入っていない。
大きさは中々あり最初は半分くらい入っていたのだが・・・・・、
節水を心がけよう。
このままでは次の日に霊夢が大変だろうから、瓶を持って井戸ばまで行き、後はひたすら瓶が満たされるまで井戸から水をくみ上げ続ける。
昔の人って大変だな・・・・・ガウェインだから水で満たされた瓶を楽々持ち上げる事が出来るが普通の人なら何度も桶に水を入れては井戸場から家の中にある瓶に入れてを繰り返すのだから頭が下がる。
ガウェインでずるをしても面倒なのにそれを毎日ではなくともやってるのだから余計にだ。
昔の人は偉い。
水で満たされた大きな瓶を台所の元あった位置に置きようやくひと段落である。
あとは・・・・・、
台所から宴会場である庭に行く。
流石に夜に外で女性が寝てるのはいただけない。
それなので一番近い部屋の障子を開け、一人一人起こさないように慎重に運びこむ。
本当は布団何かを敷くなりかけるなりをしたかったが人の家の中を勝手にいじるのは良くないのでこれで我慢してもらう事にする。
何とか全員を部屋に運び終わり障子を静かに閉める。
途中永琳なんかは寝ぼけて絡んで来たり、魅魔が寝ぼけて絡んできたりして大変だった。
霊夢を運んでる時に少し顔が赤かった気がするが酒が回ってるのだろうと思い気にしない事にした。
半端ない疲労感が私を襲う、物理的な意味でも精神的な意味でも、だ。
私とて年頃の男なのだ、その辺を分かっているのだろうか?
襲いたくなる衝動を抑えるのが大変だった。
まあ、いいや。今はようやく全て終わったのだ。
残った料理も台所に運び終わった。
近くの柱に寄りかかり物思いにふけると睡魔が襲ってきた。
ぼんやりとした意識で空を見上げると東の空が少しだけ色を変えてるのを見て、もうそんな時間か・・・、と思ったのが最後の感想だった。
一陣の風が吹く、その風がガウェインの髪を優しく揺らす。
柱に寄り掛かった太陽の騎士はどこか達成感を思わせるすがすがしい顔で穏やかな寝息をたてていた。
突き飛ばされるような感覚とともに目が覚める。
お師匠様が飛び起きその反動でしがみついて寝ていた私は突き飛ばされてしまったようだ。
そのままお師匠様が一人でどこかに行ってしまった。
しばらくしたら戻ってきて酒瓶を一つ一つ手に取りにおいを嗅いでいる。
そんな事を何度か繰り返した末に一つの酒瓶を手にし、この場を後にする。
確かあれは果実酒だった筈だ。そう言えば、甘いチューハイや果実酒、特にワイン何かをこのんで飲んでいたのを思い出す。私とした事が失念していた、今度はそう言った酒を中心に持ってこよう。そうしよう。
次があるかはわからないが、少なくとも永遠亭でやれば問題無いだろう。
そう思いながら静かにお師匠様の後を追おうとしたのだが隣に寝てた悪霊に足首をつかまれ止まる。
この悪霊、ホントに消されたいのかしら?
今度本当に悪霊を殺す武器を作った方がいいかも知れない。
「その手を離してくれるかしら、それとも本当に消されたいの?」
思わず本音が出てしまう。
しかし、悪霊はやれやれと言うような感じで全く気にしてない。
「あれを見てみな」
指さされた場所を見てみると鳥居の上で月に向かって杯を掲げている姿が映る。
蒼銀に輝く月光に照らされるその姿はとても幻想的で絵に成っていた。
お師匠様は太陽が似合うと思っていたが、月も中々に似合っている。
・・・・・月に杯を向けているって事はもしかしてあの子達に向けているのか?
もしかしたら記憶が・・・・・とも思ったが記憶が戻ったそぶりを見せて無い事からあれももしかしたらお師匠様の癖なのかもしれない。
何よりも家族と絆を重んじる人であったのだ。
もしかしたら私が姫様と逃げ出す時に再開するまでの何億年間もずーっと月を見上げてあの子たちを思っていて、それを癖にしていたのかも知れない。
現に姫様に聞いた所、有象無象が姫様に婚姻を申し込む中、陰陽師として現れた彼は姫様に家族の安否を確認すると安心した顔をして帰って行ったと言っていた。
私の弟子であり、彼の妹達に少し嫉妬してしまう。
記憶をなくして尚、体は月に居るだろう家族を思うと言う事を覚えているのか・・・・。
少し、いいや、かなりうらやましい。
そう言えば、彼、シスコンであった。
本人が言うには昔から弟か妹が欲しいといっていて、かなり可愛がっていたからな。
妹達もブラコンで異性として彼を好いていた。
一応名目上は綿月を名乗っているが、彼は綿月と血の繋がりは皆無だという。
それを聞いた時に危機感を覚えたのを今でも覚えている。
まあそれは置いといて、彼、子供好きなのだ。
私も彼の子供なら欲しいのだが・・・・。
月でも彼は武神、そして子供の守り神として祀られ、勝負事と子供の健やかな成長にご利益があるとされ大変人気であった。
宇宙開発の父でもあり、知識の神でもあった。
数々の功績を積み上げ綿月家の権力を絶対のものにし、事質上のトップにまでさせたかただ。
っと、これはどうでもいいな。
私でも知らないお師匠様の一面を知ってる悪霊を恨めしく思いつつお師匠様を見る。
そう言えば、酒の席には立場的に出なくてはいけないから出ていたが、彼は基本静かでまったりするのが好きだったのを思い出す。
賑やかな場所も嫌いでは無いと言っていたがいつも賑やかな場所から一歩引いて、そこから周りを見守るような感じだった。
と、そんな事を考えていたらお師匠様が戻って来た。
反射的に寝たふりをしてしまう。
薄眼でお師匠様を見ていると片づけを始めた。
しばらくしたら皿を持ってどこかへいった。
おそらく台所だろう、まだ都市が村だった時、狸寝入りをしてみんなが寝静まると起き上がりこうして人知れず片づけをしていたのを思い出す。
・・・・・やっぱりかわらないわね・・。
そういう影での気遣いなんかも彼の魅力の一つだ。
しかもそれを他者に言う事は無い。本人曰く、本当の親切とは相手に気付かせない事だと言う。
そうして後に成って思い返してみれば・・・・と言うのが本当の親切だといっていた。
しばらくしたら、今度は大きな瓶を持って来て井戸から水を汲んでは入れるを繰り返していた。
その音に今度は紅白の巫女が目を覚ました。
現在この巫女も私のブラックリストに入っている。
「何のおとよ・・・」
私は井戸の方を指さしてあれよ、と告げる。
どうでもいいけど口調がかぶるわね。
「セイバーさん?」
そうこうしているうちに瓶を持って神社の中に戻って行った。
そしてまた戻ってきて今度は一人一人お姫様抱っこで神社の一番近い部屋に連れて行く。
その抱っこは私だけにして欲しいのだが・・・・・。
まだまだ遠い気がする。
そして、紅白の巫女が運ばれてる時に頬を赤らめていた。
・・・・・お師匠様とは一度きっちりとお話をした方がいいかも知れない。
この天然たらしが・・・。
私を連れて入る途中寝ぼけたふりをして絡むが邪険にあしらわれた。
もう、お師匠様のイケず・・・・。
少しして障子を開けるとすがすがしい顔をして寝息を立てているお師匠様が写った。
・・・・・ずるいな、こんな顔されてたら怒れないや・・・。
紅白巫女と悪霊には即効性のある睡眠薬を無理やり飲ませたのでしばらくはおきないだろう。
今は特等席を堪能しよう。
そっとお師匠様に余っ掛る。
程よい温かさがする。
それからすぐに睡魔が襲ってきたのだった。
瓶(かめ)に瓶(ビン)です。