それは本当にたまたまだった。
前回倒れた為に精密検査と永遠亭に呼び出され、泊まる事になったのだ。
私自身、異常があると困るのでその誘いは素直に嬉しかった。
久しぶりの永遠亭のせいか、寝付けずにいた。
子供じゃ無いんだから勘弁してくれよ・・・・・。
そうこう考えてても寝れんので、外を散歩する算段だった。
蒼銀に染まる竹林をゆっくりと歩いて行く。
ここ10年で見慣れてしまった光景だ。
人間成れる事ほど酷な物は無いと思う。
これだけ美しい光景が”普通”に見えてしまうのだ。
外の世界では決して見る事が叶わない光景なのに、だ。
歩みを止めたこの世界は、ある意味でこの世界は死んでいるのかも知れない。
これはあくまで人間の感覚で言えばの話だが・・・・・、まぁ、その代りに忘れ去られた者達にとっての理想郷なのか。
ここで人間が進めば確実に外の世界の二の舞になるもんな~。
まぁ、裕福な家では普通に水道があったり、電機が通っていたり位はするが・・・・。
何処から来てんだ?あれは。
かくいう私の家もその一つなのだが・・・・・。しかもIHだし。
幻想郷に一番似合わない台所だな。しかし、便利で良いんだよな~。
まぁ、私自身はほぼ使わないから意味がないが、料理を作ってくれるメンバー達には大好評だった。
未だにご飯だけは釜で炊いている。何かその方が旨い気がしてさ~。
お焦げとか。
まぁ、作るのは女性陣で私はやんないんだけどね~。
最初は手伝おうとしたが、皆聞く耳持たんで手伝わせてくれなかった。
時々、釜戸の火をつけるのに協力する位だ。
ルーン文字って便利だね。魔力を調整して火を付けてたりする簡単なお仕事だ。
御蔭で家事スキルはいまだにゼロだ。
掃除くらいは自分でやらねばと思っていたが、紫が持ってきた、自動でお掃除する奴が勝手にやってくれるので掃除すらしていないと言う事態に。
これって間違いなくマダオだよな~。
でも、何時もやろうとした時には誰かにそれを持って行かれる。
何故だ!
皆がガウェインに少しでも良く見られたいと言うポイント稼ぎでやっている事を彼は知らない。
おおっと電波デンパ。
久しぶりの電波だな。相変わらず何が流れたのかは解らんが。
そんなこんなで竹林を散歩中。
考え事をしながら歩く癖がひどく成ったような気がする。
心がおしゃべりと言う奴だ。
・・・・・、友達が少ないみたいで泣けて来た。
そう言えば寺子屋の生徒の子供以外同性の友がいないな。
寺子屋の生徒も友と呼べるような関係では無いような気がするが・・・・・、
やべぇ、マジで悲しく成って来た。
今度積極的に里の人に話かけた方がいいかも知れない。
目指せ友達100人出来るかな!
で、だ。
現実逃避はやめよう。
現在進行形で妖怪に囲まれて居る。まぁ、それは良い(良くは無いけど)。
問題は紫にそっくりな少女、マエリベリー・ハーンが居る事だ。
どうしてこうなった!!
メリーは絶賛気絶中である。
取り敢えず左わきに抱えて妖怪を蹴散らす事にする。
ジョワイユスを出して前から突っ込んできた妖怪を切り捨てる。
斬られた妖怪はそこには何も居なかったかの様に消えて行った。
次に真後ろから来ている奴に体をひねって回りながら斜め上の方に切りあげる。
次に回転しながら真名解放する。
すると剣からまばゆい光が迸り、剣圧としてばら撒かれる膨大な神気に霊力が360度に満遍なく放たれ、残りの妖怪全てが消しとんだ。
今一度、回りの様子を慎重に確認する。
・・・・・・、どうやら大丈夫そうだな。
ジョワイユスをしまい、抱えていたメリーをその場に寝かせ、その場を後にしようとする。先程膨大な神気と霊力をばら撒いたばかりなのだ。
此処に来るやつは余程馬鹿な奴しかいない。
しかし、運命は残酷である。
離れようとした瞬間、
「ガウェイン!!」
呼びとめられた。どうやらお目覚めらしい。
さて、どうした物か。
彼女の言うガウェインとは私では無く、外の世界にいる彼の事だろう。
そんな考えとは関係なしにメリーが此方に抱きついて泣いてくる。
そんなに怖かったかね?・・・・・・、怖かったんだろうな。
一応外の少女で妖怪等とは無縁に生き、あんな異型に囲まれ、天津さえ、食われかけたのだ。
私なら漏らしている所だ。
暫く「ガウェイン、ガウェインガウェイン!」と何度も私の存在を確かめるように連続で呼び続けている。
取り敢えず、彼女の頭を優しく撫でる事にする。
心なしか余計声が大きく成ったような気がする。
そんなに嫌だったか?撫でられんの?しかし、それなら早々に離れるなり振り払う成りするか。抱きつきもしないだろう。
どうしたもんか・・・・・。まぁ、泣きやむまで何も出来ないだろう。
暫くして泣きやんで落ち着いたので話しかけてみる。
「こんな真夜中に、女性が一人で出歩くのは関心しませんね。見た所、外来人のようですし・・・・」
一応知っているがそれっぽく言っておく。
すると「何を言ってるのガウェイン、私よ!」と言って来た。
しかし、彼女の言うガウェインはテレビで見たガウェイン・ペンドラゴンの事だろう。
先ずはそれを理解して貰わなければならない。
「失礼ですが、御名前は?私の名はセイバーと申します」
彼女は驚いた顔をして何かを言おうとしたが、開いた口にアイスを突っ込み額を中指と人差し指で優しくコツン、と小突く。
「ようこそ幻想郷へ、幻想郷は幻想故に何でも受け入れる、それはそれは残酷な世界です」
こう言う事にした。
確か本人が夢だと気が付く事で外の世界に戻れた筈だ。
今の言葉で引っかかるものがあるだろう。
その証拠に目の前のメリーは少しづつ消え始めている。
何かを訴えているが声がもう私には届かなく成っている。
そうして手帳を出し、何かを書いてそのページを破った所で完全に消滅した。
メリーの居た場所に残った紙きれを見る。
絶対に迎えに行くから
と書かれていた。
嫌、だから別人だって・・・・・・。
そんな訳で月下の不思議な出会いは静かに終わりを告げた。
目が覚めて見たら見知らぬ場所だった。
竹林、今の科学が発達した世界では滅多にお目にかかれない代物だ。
そんな事はどうでも良い。蒼銀に輝くなかで、目の前には私の思い人であるガウェインが居た。
やっと、やっと出会えた愛しい愛しい存在に、だ。
それに耐えきれずに彼に抱きつき泣いてしまった。何度も名前を呼びながら、彼の存在を確かめるように強く抱きしめる。
そんな時に泣きついたのを優しく受け止めてくれて、何も言わずに優しく撫でてくれる事が嬉しくて、余計に涙が出て来る。
聞きたい事がいっぱいある。
どうして姿を消したのか、とか、兎に角色々だ。
泣きやんで落ち着いてから問いかけようとすると、彼は名前を聞いて来た。
遠まわしなはじめましての挨拶だ。
私よ、メリー、マエリベリー・ハーンよ!!
そう言おうとしたら開いた口に何かを突っ込まれる。
これは?冷たくて甘い、彼のこのんで食べていたアイスだ。
それに額を小突く癖、間違い無く彼だ。前に不思議な泉で出会った彼と同じくセイバーを名乗った。確かに剣士は似合うけど、何故その名なの?
やっぱりガウェインじゃない。
次にガウェインが発した言葉で存在が揺らぐ。
夢と現の境界がはっきりしてしまったのだ。まだ聞きたい事も言いたい事もたくさん残っているのに!!
声を張り上げるが、境界線がもう現実側にほぼ戻っている私の声は彼には届かない。
ならせめて、彼にメッセージを残す為に最後の悪あがきと手帳に思いを書いて破りその場に捨てる。
こればかりは賭けだったが、どうやら成功したようだ。
気が付けば学校の屋上でやぶた手帳を持ち、アイスを口にしていた。
待ってなさいガウェイン、絶対に迎えに行くんだから!!
隠れて見ていた女性はぽつりと呟き、
「やっぱり、セイバー様はガウェインだったのね」
そう一言残して彼女は消えた。
それは小さな出会いの始まりであり、再開の兆しでもあった。
本来は永夜抄で起こるはずだけどそれはもう終了の知らせがある為強引に入れたイベント
後悔も反省もしていない