あれから永遠亭に帰ったら永琳が仁王立ちで、しかも笑顔でお出迎えしてくれた。
しかし、目が笑っていない。
隣に居るルーミアを見て更に強いプレッシャーに黒いオーラ見たいのが増したのは、残念ながら気のせいでは無いだろう。
「貴方は何者かしら?何故お師匠様に抱きついてるのかしら?」
「私は”セイバー様”の式のルーミアでございます。以後おみしりお気を」
何故かセイバーの部分を強調し、何処か勝ち誇ったような顔をしている。
火花を散らしていた視線のうち、永琳が此方に鬼の形相で問いかけて来た。
思わずに顔をそむけてしまった私は悪くないと思う。
仕方がないので事の経緯を端折りながら説明した。
そうしたら永琳が
「奴隷の分際で”私の”お師匠様のにくっつかないで頂けるかしら?」
と言いだした。
確かに式とは奴隷には近いような者だが、その言い方は無いだろう。
その言葉にルーミアも顔に青筋でてるし。
今は式の長である私が動けないようにしてるから攻撃出来ないが、ルーミアから怒りの念がひしひしと伝わってくる。
仕方がないのでルーミアに自由を戻し、永琳に襲いかかった所で能力を使い二人を人様に迷惑のかからない場所に飛ばした。
永琳は不老不死だし、ルーミアも聖遺物でもトップクラスの物で攻撃しないと死なない擬似的な不老不死だ。
闇がある限り死にはしない。流石は常闇の妖怪なだけはある。
お互い存分に暴れて疲れたら戻ってくるだろう。
何かここ十年間で考え方と言うか、価値観が変わった気がする。
悪い意味で、だ。
前の私ならこんな事を平然とやっていただろうか?
むしろ止める側にいた気がする。
そうなると急に怖くなる。
こんなに残酷に成ったのかと。聖人気取りでは無いが、それに近い性格だった筈だ。
こうも価値観が変わるのか。人外になると。
幽々子の感覚が解るような気がする。
生前の彼女は能力に苦しみ、苦しみ抜いて自害した。
所が亡霊に成ったら、その能力で殺すことを厭わない正確に成ってしまった。
その間隔なのだろう。
私もさっき、異型とは言え躊躇い無く剣で切り裂いた。それに対する罪悪感もない。
幽香の時も余裕が無かったとは言え、躊躇いなく剣を振るって切った。
生前の私なら絶対に出来ない行動だ。
人を殺してはいけない。そう道徳心を教えこまれた筈の私が、である。
こんなにも自分は残酷だっただろうか?
こんなにも無慈悲だっただろうか?
こんなにも無関心だっただろうか?
そんな思いが一人走りしていく。
違う、こんな筈ではなかった。
むしろ親指大の虫すら殺せない位の臆病者だった私が、人を殺そうとする事に何にも感じなく成っている。
人じゃないだけでこうまで差がでるのか。
「・・さ・」
こんなにも私は
「セイバー様!!!」
ッ!!!!
「どうしたのですか?優曇華殿」
急な呼びかけに心臓が止まるかと思った。
「どうしたのか、じゃありませんよ」
説明を聞くに何回も呼びかけて居たのだと言う。
それは悪い事したな。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
考えるのが過ぎたようだ。
そんな優曇華に恒例のイタチ突きをし、頭を優しく撫で、何でもない事を告げてその場を去る。
撫でてる時にさりげなく兎の耳元を撫でてみたらボタンのようなものがあることに気が付いた。
ああ、確か原作でもこのウサミミは偽物だって言ってたっけ?
じゃあ、尻尾も偽物なのかな?
気に成るが触る訳にもいかないし、聞くのも躊躇われる。
結局、また一つ、迷宮入りした。