東方太陽録   作:仙儒

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月下の不死鳥

ちょっと野暮用で永遠亭に行きその帰りに、大きくて立派な鳳凰が空を飛んで行くのが見えた。

あれは・・・・・、確か東方で鳳凰と言えば藤原妹紅しか居ない。

しかし、実際に見ると凄いな。

何と言うか、迫力がある。

 

そう言えば私を永遠亭に運んでくれたのは妹紅だったんだっけか?

永琳が言っていた気がする。

何度かお礼を言いに妹紅が住んでいる家を探したりしたが見つからず仕舞いで妹紅とは会えていなかったりする。

これは命の恩人の1人である妹紅にお礼を言うチャンスかもしれない。

そう思い、鳳凰の後を追って行く。

 

暫くしてたどり着いた開けた場所に寝っ転がりながら虚ろに空を眺めて居た。

こんな時に何を言えばいいのかわからない。

取り敢えずアイス2本だして、その内の一本を妹紅の頬に付けた。

 

「ッヒャ!」

 

可愛らしい悲鳴と共に此方に向けられる顔。

こんな妹紅はレアかもしれんと場違いなことを思ってしまったが良いだろう。

此方を向いた途端にキョドリ出すもこたん。

何これ可愛い。

如何切り出せば良いのかわからず、そのまま言葉にする事にした。

 

「藤原殿とお見受けします、前からお礼に伺おうとしていましたが、見つからず、10年もの月日が過ぎた事をお許し下さい」

 

そうだ。幾ら探したと言えど相手からしてみれば10年”も”待たされていた? 訳だ。

お小言位貰っても仕方がないと覚悟をきめて来た訳だが、いざ前にすると決心が折れそうになる。

このまま10年も何してたんじゃボケィとか言い出して燃やされたりしないよね?

おじさんそこら辺が心配です。

しかし、妹紅は視線を泳がし、居心地悪そうにしている。

そんなに私と居るのが嫌かね? おじさん、本気で泣いてしまうよ?

一応差し出したアイスは受け取ってくれた。

妹紅の隣に座り、一緒に月見アイス。

ただ静かにアイスを齧るシャリッ、と言う音だけが虚しく木霊する。

先に何かを言おうとした妹紅。

 

「その、あの、えっと・・・・・」

 

しどろもどろしている姿を見て思わずクスクス笑ってしまう。

その姿に無理に言葉にする必要はないと告げる。

成程、私と居るのが嫌なのでは無く、相手もまた、何を言えば良いのか困っていたのだ。

張り詰めて居た緊張が一気に解れる。これで丸焼は免れそうだ。

私が笑ったのを見て赤く成る妹紅。

意外と照れ屋なのかもしれない。

そう言えば私の知る限り輝夜との殺し合いがこの10年間無かったな。

そこの所を気に成るが、殺し合いは起こらない方が良いに越した事は無いので突っ込まない事にした。

何処となく暗い雰囲気を醸し出している妹紅に冷たい缶ジュースを出し、能力で反対側の妹紅の頬に当たる様にして出す。

 

「ッヒャ!」

 

先程と同じ悲鳴を上げる妹紅。

それに再度クスクス笑うと、相手から抗議が来た。

良し、これで大丈夫だ。

 

「藤原殿、折角の別嬪さんなんですからそんな暗い顔をしていては損ですよ」

 

これは本心だ。

妹紅に限らずこの世界の女子は大抵別嬪さんだが・・・・・。

何か強い奴は全員美人だよね、あれか? 女は強しと言う奴か?

そんなバカなことを考えて居たが、夜も更けているし速く帰らせた方が良いだろう。再度お礼に行くと告げて能力で妹紅の家に妹紅を飛ばす。

転移事故は起こらないだろうと思っての行動だ。

再度妹紅の居た場所を見ると何かが落ちて居る事に気が付いた。

 

・・・・・これは、金平糖か?

妹紅が金平糖好きだとは思わなかった。能力で金平糖を出し、妹紅の家に送っといた。

これで少しは恩を返せただろうか?

まぁ、これから少しづつ返していけばいいか。

そう思いその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然だった。

よりによってあのお方に会うなんて・・・・・。

まだ心の準備は出来て居ない。

いきなり呼ばれた事に最初は戸惑い記憶が戻ったのか? とも思ったが、姓を言った事からそれは無いと判断した。

セイバー様は私を呼ぶ時は何時も妹紅殿と呼んでくれて居た。

悲しく成ったがそれを表に出さないようにセイバー様から貰ったアイスを食べる。

そう言えば何時ぶりだろうか? こうやって並んでアイスを食べるのは。

何を言えば良いか解らずしどろもどろしている私を見てクスクス笑うセイバー様。

それに一瞬だけ昔に戻ったような感覚に巻き込まれる。

その後に色々あり、セイバー様からの「そろそろ夜も更けて来ましたし」

と言う言葉を聞いた瞬間周りの景色がガラリと変わり、私の家の中に居た。

夢かと頬を抓るが、痛みがあるから現実で、さっきの事が本当にあった事だと教えてくれている。

そう思っている内に頭に軽い衝撃を感じる。

 

見てみると封に入れられた金平糖だった。

今でもそこそこ砂糖は貴重だが、昔はもっと貴重だった。

特に金平糖職人と言うだけで遊んで暮せたほどだ。

確かセイバー様は陰陽師であり、金平糖職人でもあった。

セイバー様の作る金平糖は色がよく、形も良く、味も良いと貴族の間では人気だった。

封を開け、ひとつつまんで食べる。懐かしい味だ。

不思議と涙が次から次へと流れて来る。

一つ、また一つと泣きながら食べる金平糖の味は甘く、ちょっとしょっぱい味がした。




ようやくもこたんインしたお
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