東方太陽録   作:仙儒

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萃夢想編

懐かしい夢を見て居た。

何の変哲のない親子の夢。

小さな子が母親に膝枕をされて気持ちよさそうに眠って居て、母親はその子の頭を優しく撫でてる。

それを眺めて居る自分。

最後に膝枕されたの何て何年前だろうか?

少なくとも10年位はされて無い筈だ。

そう言えば母さん元気にしてるかな?

そんな思考が頭を駆け巡る。

今思えばもっと親孝行できたのではないかと自分を攻め立てる。

もっとこうしてれば、もっとこうだったら・・・・・そんな事ばかり浮かんでくる。

知らず知らずのうちに溜息が漏れる。

そんな事今更考えてもしょうがないのにな・・・・・

罪悪感がふつふつと込み上げて来る。

 

ふと揺すられるような感覚に引っ張られる。

どうやら夢はこれで終わりのようだ。

引き寄せられる感覚の中、小さく「母さん」と呟いていた。

 

「お師匠様・・・・」

 

目を開けると永琳が映った。

何か心配そうな顔をしてるのでどうしたのか聞いて見た所、だいぶ魘されていたらしい。

そう言う事か。

私は永琳に「もう大丈夫ですよ」と告げて起き上がる。

時計を見る、おお中々良い時間だ。

居間に行くともうご飯が用意してあった。

こう言う処がありがたい。すぐに朝食を済ませ寺子屋へ急ぐ。

 

 

寺子屋についてからは何時も通りに授業をし、時々拳骨を落とすいつもと同じ感じで一日が終わった。

最近は授業が終わった後家に帰ってから手作りした屋台でクレープを販売しているが、これが中々に人気である。

最近幻想入りしたと思われる人物を通して大評判である。

値段は子供のおこずかいで何枚か買える親切な設定に成って居る。

まぁ、趣味で始めたのがたまたま旨く行っただけだ。

材料は能力で出しているので元は取れて居る。

 

「上白沢殿もいかがですか?」

 

「うむ、頂こう」

 

慧音はちょくちょく夕飯を作りに来てくれる。

それでちょうど来たのでクレープを渡す。中身は生クリームにバナナにチョコソースと定番な物だ。

お金を払おうとした慧音に要らないと言う。

言うのだが慧音は払うと折れない。

真面目なのは良いが真面目すぎるのもどうかと思う。

苦笑いをし、料金は今晩の御飯でと突っぱねて無理やり納得して貰う。

それから一言二言話して慧音は私の家の中に入って行った。

それを確認してまたクレープを作る作業に戻る。

目の前は子供達でごった返しに成って居る。

所々に大人の客もいるが・・・・。

ルーミアも最近クレープ作りを手伝ってくれる。正直大助かりだ。

暫くクレープを焼き続ける作業が続き、ようやくお客が居なくなった。

すると小さな子供が此方をちらちらと見て居るのに気がついた。

言っちゃ悪いがぼろぼろの服を着て居て如何にも貧乏ですと言う少年がいた。

クレープを一枚だけ焼き、男の子に手渡す。

 

「え、でもおいらお金が・・・・」

 

と言い遠慮しようとしたが

 

「こちらは焼くのに失敗してしまったものです、ですが捨てるのも勿体無いので貰ってくれませんか?」

 

そう言うとその男の子が笑顔に成りクレープを食べ始めた。

感想を聞いて見たら

 

「すごくおいしい! おいらこんなに美味いの初めて食べたよ!」

 

と笑顔で答えてくれた。

そうか、美味いか・・・・嬉しいものだな、クレープを作ったかいがあったと言う物だ。

男の子の頭を撫でると屋台の片づけを始める、と言ってもホットプレートを使う都合上で屋台は家の門の前で販売していたので、門の中に屋台を入れるだけだが・・・・。

そう考えながらホットプレートの電源を引っこ抜き、延長コードを片す。

家に入って見たらまたすごい量の料理があった。

今夜も宴会か・・・・、はぁ、優鬱だよ。

そうして何時ものメンバーがそろった所で事件が起きた。

皆口を合わせて酒が無くなったと告げて来た。

 

「宴会なのに酒が無いとは何事か!」

 

どなり声と同時に姿を現した人物。小さな体に鎖で巻かれた奇抜な姿、頭に生える二本の立派な角。

そう、萃夢想主犯、伊吹萃香である。

おい、ラージャンって言った奴、後で屋上な?

 

「何物ですか」

 

一応要人しながら問う。

 

「何物かと聞かれたからには言わねばならないな、私は鬼の萃香、伊吹の鬼だぞ!」

 

無い胸張って威張るように言葉を発する。

 

「私の居ない間にずいぶん面白そうな事があった様じゃないか? 何故そんな楽しい宴に鬼を誘わない!」

 

微かな怒りを孕んだ言葉だった。

更に叫びは続く

 

「何故人は鬼を忘れる!」

 

これは萃香の心の叫びでもあった。

確か萃香は人間の行動に非難していたが、人間を見捨てる事が出来ないでいた筈だ。

そのジレンマから来る怒りだろうか?

暫く叫んでいた萃香は次第に下を向き震え始めた。

 

「わた、私はただ、昔のように仲間と、人間と酒を飲みたいだけなのに・・・・」

 

ぽつりと漏れた萃香の思い。

 

「紫・・・・」

 

「はい、セイバー様」

 

紫を呼んだ瞬間紫は解って居たかのように酒瓶を持っていた。

その酒瓶を受け取り、萃香に近寄る。

酒瓶を萃香を握らせる。

驚いた顔で此方を見る萃香。

 

「貴方の思いは解りました。色々思う処はあるとは思いますが、全部飲んで忘れましょう」

 

そう言うと涙目だった萃香が腕で顔を拭い、

 

「おうともさ、人間」

 

それを合図に宴が始まる。

各地で酒が無くなったのは紫が取ってたかららしい。

今全ての酒をスキマから出した。

うわ、すげえ量。

これ一晩で飲めるか?

 

「おお、酒じゃ酒じゃ、宴の始まりじゃ~!!!」

 

案外どうにかなりそうである。

さて、私も飲むか。

そう思い離れようとしたら萃香に手を引っ張られ振り向くとでかい杯になみなみと入った酒を渡して来た。

それを口にした瞬間むせてしまった。

何だこの酒、アルコール度数半端じゃねー。

遠慮しようとしたが「この伊吹の酒がのめねぇてか!」と言う言葉に仕方がないと腹をくくる。

明日絶対二日酔いコースだよ。

そう言えばあれをやるか、萃香の杯に酒を注ぎ、向かい合う。

そして自分の杯を構え

 

「新たな絆に乾杯」

 

そうして萃香の杯に自分の杯を軽くぶつける。

萃香は少し驚いた顔をした後

 

「おおともさ」

 

と嬉しそうに返事をした。

しかしこの酒、やっぱり消毒液の味しかしねぇ。日本酒は苦手だな~。




これにて萃夢想編はおしまい。
ちょっとスピーディー過ぎたような気がしますが今更なので。
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