夜。
それは妖怪たちが動き出す時間。
昼間動いている妖怪たちも少なくないが妖怪が大手を振るって活発に動き出す時間である。
時刻は間もなく草木も眠る丑三つ時。
そんな中何故か博霊神社の屋根の上に居た。
そこからは博霊神社の境内が良く見渡せる場所だ。
まだ四季折々の花々が顔をのぞかせて居る。
何故こんな場所に居るのかが解らない。
確か今日は家に帰って何故か私の部屋やその周りの部屋が吹き飛んでて、いた仕方がなく客間に布団を敷いて早くに眠りについた筈だ。
一瞬夢遊病かと疑ったが夢を見て居ないので違うだろう。
じゃあ何で博霊神社に居るんだ?
しかも屋根上。
まぁ、このままここに居ても仕方がないと思い帰ろうと動き出そうとした時境内に急に人の気配を感じた。
こんな時間に人が?
言っちゃ悪いがここは人里から結構な距離が有り途中に妖怪が出るから滅多に人は来ないのだが。
しかもこの時間となれば余計にだ。
そんなバカは誰だと思い行こうとしたら紫がスキマを使って現れた。
紫が動く、だと?
紫は基本こう言った人間を見て楽しむ系の人物だ。余程の事が無い限り動く事は無いのである。
その紫が動いているのだ。ただ事ではないだろう。
紫はその人物に背を向けながら何かを話し合っている。
これも普段の彼女からしたら不自然な行動だ。
何故話し合う?
幻想郷に害をなすものが入って来たならスキマで封印をすれば良い。
直接対談するのはおかしな話だ。
暫くすると紫は言い終えたのかスキマで姿を消した。
「待って!!」
静かな境内に女性特有の甲高い声が響く。
話していたのは女性か・・・・・
その女性は四つん這いになって下を向いていて顔が見えない。
ジャンプして女性の前に立つ。
そうしたら気配に気づいたのか女性は顔を上げて此方を見上げる。
その人物に私は驚いた。
彼女は秘封倶楽部のメンバーの宇佐美蓮子だった。
あれ? もう片方はどうした?
「ガ、ガウェイン?」
またか・・・・・いい加減そのネタの天丼には飽き飽きしてるのだが?
それに恐らくそれは外に居るガウェイン・ペンドラゴンの事だろう。
何故彼の名が度々出て来るのかは解らんが・・・・・
「こんな時間に女性が一人でいるのは如何な物かと思いますが? それに私の名はセイバーです」
それにつんけんした態度で接する。
彼女はこの世界の恐ろしさを知らない。
「大人しく帰りなさい、あなたの居場所は此処じゃ無い」
「そんな事関係ない!ガウェインもどき、メリーにガウェインを返しなさいよ!」
掴みかかってくる蓮子を避けてジョワイユスを付き付ける。
ジョワイユスは生きた人間には効果は無いが、それを目の前の彼女が知る由もなく震えだす。
それでも彼女は震えながらそれでも私に手を伸ばしてくる。
それほどまでに彼女の中ではガウェインが大きな存在なのか?
そう思い、そのガウェインを羨ましく思う。
私には彼女のように思ってくれる存在が居ない。
溜息と共にジョワイユスを消す。
いきなりの事で蓮子は戸惑っている。
「ガウェインもどっ!」
彼女がしゃべって開けた口にアイスを突っ込む。
また驚いた顔をした彼女ににっこりと笑いかける。
そのまま能力で外の世界に飛ばす。
そうだ、これで良い。
もう一度考えて欲しい。
人じゃなく成る事の恐怖を。人じゃなく成る事の苦しみを味わうのは私一人で十分だ。
何よ、やっぱりガウェインじゃない。
口に突っ込まれたアイスを齧りながら思う。
ガウェインに続きいきなり居なくなってしまったメリー。
この二人をどんな手を使ってでも取り戻す!!
そのためにも私は魔術関連の本を大量に購入し、研究を始める。
今度こそメリーとガウェインを取り戻すために。
このスペルカードを完成させる!!
蓮子に連れられて走って来たものの、何かに足を掴まれるような感覚につんのめり、そのまま倒れてしまう。
そこから掴まれたような感覚がする方の足を見る。
唖然となる。
何だこれは? 境界線から手が伸びて私の足をしっかりと掴んでいる。
何だ?なんだなんだなんだ?
頭がこの光景を理解できない。
何とも言えぬ恐怖が私を襲う。
い、嫌・・・・・
「こんな所に居たのか」
反対側から声が聞こえて来る。
低い男の声だ。
「だ、誰?」
声のする方向を向くと騎士甲冑に不似合いなフードを深く被った人物が立っていた。
その人物はツカツカと音を立てながら歩いて来て、
何処から出したのか解らない剣で境界線から伸びて居た手を切り払う。
「幻想世界の住人さ」
斬り払うと同時にそう呟いた。
その後剣を消し、私の脇の下に手を入れ立ち上がらせるとフードの人物が虚空に指をさす。
するとさっきまで何も無かった場所に扉が現れる。
「ここ通りなさい、元の世界に帰れる」
「あ、あの「時間が無い、急いで」」
そう言って私を強く押して扉へと移動する。
「次は多分助けられない、だからもうこっちに来ないで」
扉が開き凄い風が吹き荒れる。飛ばされないように踏ん張るが駄目だった。
体が浮いた瞬間彼のフードが取れて下の顔が露わに成った。
見間違う筈がない、私の愛し探し続けた姿がそこにあった。
「ガウェイン!!」
必死に手を伸ばすが届かない。
ガウェインが悲しい顔をしながら
「約束ですよ?」
これだけ強く風切り音が激しい中でその言葉だけが何故かはっきりと聞こえた。
「・・・・り・・・」
「メリー!!」
強く呼びかけられる声に目を覚ます。
そこには秘封倶楽部のメンバーで、私の大切な親友でライバルであり、パートナーの宇佐美蓮子が涙目で此方を見て居た。
「蓮子・・・・」
そう弱弱しく言い返すと蓮子が泣きながら抱きしめて来た。
「メリーもどきが現れて、ガウェインが居なくなって、そしてメリーまで居なくなっちゃって、わた、私は・・・・・ああ、もう!」
泣きじゃくりながら要領を得ない蓮子の心の叫びが聞こえた。
私はここに居ると確かめるように強く抱きしめられた。
私も蓮子がここに居るのを確認するように強く抱きしめる。
ひとしきり泣きじゃくった蓮子がようやく解放してくれて目に入った書物に疑問を投げかける。どれもこれも魔術の本だ。
蓮子に如何したのかと聞いて見た所、私とガウェインを取り戻すためにあっちの世界のスペルカードを作ろうとしてたらしい。
「ねー蓮子、私にも教えてくれないかしら?」
ガウェインを取り戻したいのは蓮子だけじゃ無い。
それにまだガウェインを取り戻してないのだ。
今度こそガウェインを取り戻す。
何も無くなった空間に騎士は一人漂っている。
「
狐耳にしっぽのついた巫女服のようなものを着たピンク髪の少女が現れる。
「あの女、必ず来ますよ。ええ、絶対に」
少し怒ってますよオーラを放っている。
それに苦笑いして、来るだろうな。
そう告げる。これはこの世界の”決定事項”だからだ。
私達はそれを遅らせる事しかできない。
そこでたまたま彼女達があきらめる、その可能性に必死に成ってしがみついているのだ。
その天文学的数字にかけて・・・・・