牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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今回、新たなオリジナル魔戒騎士が現れます。
地味に物語のキーパーソンです。

そして、最後のオリジナル魔戒騎士の称号もチラッと出てきます。

それではどうぞ!


書 ~Memory~

稗田阿求…

幻想郷で起こった出来事を、逐一漏らさず書に書き残すという使命を、何世代も続けている一族の九代目である。

 

夜、皆が寝静まった頃、彼女の家だけは、明かりが点いている事が多い。

 

今日も彼女は筆を執る、後世に起こった出来事を伝えるために……

 

「…… これでよし。ん~!! 今日も良く書きました。この続きは明日にしましょう」

 

そう言って、彼女は筆を置き、明かりを消し、床に着く。

時刻は丑三つ時、この刻限になって漸く幻想郷から明かりが消える。

 

そんな阿求の家に忍び寄る影…

影は、霧の様に阿求の家に侵入する。

 

 

ギシ……

 

 

『!?』

 

不意に起きた物音に、侵入者は警戒する。

 

誰か来たのか? 姿を見られたのなら殺すしかない。

 

そんな打算的な思考をしならがら、侵入者は自らの腰にある剣に手を添える。

 

「ふぁ~…… お手洗い、お手洗い……」

 

しかし現れたのは便所に向かう途中の阿求で、幸いにも、侵入者には気がつかず、そのまま去っていった。

 

侵入者は警戒を解き、そのまま大量の書物が保管されている書庫へとやって来た。

 

侵入者は書庫の中を歩き、書庫の最新にたどり着くと、不気味な灰色のライターから、黒い炎を出し、目当ての書物を照らし出す。

 

『ほぅ…… これが、古の時代に起こった魔戒騎士達と幻想ホラーの戦いの記録を遺した書物か…』

 

その書物の題名は、幻想火羅異変録。

嘗て幻想郷にて起こったホラーとの戦いの記録を遺した書物である。

 

侵入者は、その書物をペラペラと捲り、読みふける。

その中には、アンザスを始めとする八体の幻想ホラー達、それに立ち向かう、八雲紫を始めとする、幻想郷の魔戒法師と、外の世界からやって来た四人の魔戒騎士達。

 

そこにはそれぞれ、黄金騎士、銀牙騎士、剣闘騎士、幽玄騎士と言う名が載っていた。

 

『…… やはり、黄金騎士達は我が目的の障害となるか…… この書物は危険だな』

 

侵入者は、幻想火羅異変録の書物に何かの針を乗せた。

その針からは、強烈な邪気が発せられていた。

 

『ククク…… 』

 

侵入者は、笑いながら呪文を唱えると、針は書物の中へと入っていき、邪気が書物に宿ってしまった。

 

『これでよし…… これで、この書物を魔戒騎士達が見つけようとも、見つけた瞬間に絶望に叩き落とされるであろう……』

 

侵入者は、書物を元の場に戻し、阿求の家を後にした。

 

『今日はいい月だ。この月を、君達も見ているかい?霊華…… 霊夢……』

 

そう呟く侵入者の姿を月の光は照らし出す。

 

その姿は…… 牙狼によく似た、しかし禍々しく尖り、濁った様な色の黒い鎧と、濁った灰色の瞳をした狼の仮面を着けた騎士だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、博麗神社では……

 

「♪~ ♪~ ♪~」

 

砕牙が、鼻唄を歌いながら境内の掃除をしていた。

この男、もの凄く綺麗好きであり、博麗神社の境内は僅か三十分足らずで、新しく建てられたかの様になっていた。

 

「霊夢~ 終わったぞ~」

 

掃除用具を片付けると、砕牙は本堂へと入る。

しかし、仏壇の前には霊夢は居なかった。

 

「あれ? おっかしいなぁ…… 霊夢ー」

 

朝御飯でも作っているのだろうか?

そう考えた砕牙は、次に台所へと入る。

 

「霊夢~? …… ここにも居ないのか……」

 

しかし台所には、出来たばかりのご飯、味噌汁、焼き魚が置いてあるだけで、そこに霊夢の姿は無かった。

 

「霊夢~! っと、ここに居たのか、霊夢」

 

砕牙がやっと見つけた時、霊夢は本堂とは別の仏像と写真に手を合わせて拝んでいた。

 

「霊夢…?」

 

砕牙が気づいたのは、霊夢の表情だった。

泣いていたのだ、霊夢は。

 

砕牙は気になって声を掛けようとすると……

 

 

トントン。

 

 

「ん?」

 

突然、後ろから肩を叩かれた。

振り向くとそこには、スキマから顔を出した紫がいた。

 

「ゆかっ……!?」

 

「しっ!静かに、ちょっと外に来てくれないかしら?」

 

驚いた砕牙は、紫に声を掛けようとした時、紫に人指し指で、唇を押さえられ、境内へと出る様に言われた。

 

境内に出た砕牙は、紫に疑問を投げ掛ける。

 

「あの… どうかしたんですか? 紫さん」

 

「そろそろ話して置こうと思ってね。霊夢の事を」

 

「霊夢の事…… ですか?」

 

「知りたいでしょう? 何故彼女が泣いていたのか」

 

「……… はい」

 

「そう…… じゃあ、この中に入って」

 

紫はスキマを展開し、二人は、その中へと入って行った。

 

中に入ると、赤い目玉が無数に浮かぶ不気味な空間へとたどり着いた。

 

紫は、何処から出現させたか分からないソファーを出し、横になる。

 

「ここを見なさい」

 

砕牙は言われるままに赤い目玉を覗き込むと……

 

『キャハッ♪ キャハハハ♪ 』

 

紅白の巫女服を来た小さな女の子が笑っていた。

 

「こ、これは!?」

 

「そう…… 霊夢の過去よ」

 

目玉に写っていたのは、幼き日の霊夢だった。

その霊夢をあやしている黒いロングコートを着た男と、霊夢と同じように紅白の巫女服を着ているのは、彼女の両親だろうか?

 

「そうよ、彼女は博麗霊華、先代の博麗の巫女で霊夢の母親、そしてその夫の博麗啓示。元々、幻想郷を守護していた二人の魔戒騎士の内の一人よ」

 

「確か、行方不明になったって言っていた…」

 

「そう、今から十年位前かしら…… 霊華が、幻想ホラーに能力を奪われたのよ」

 

「何だって!? でも紫さんは幻想郷にホラーは出ていないって!?」

 

「ごめんなさい… あの時はまだ貴方が番犬所の回し者だと思っていたから… 本当はちょくちょく現れてはいたのよ… その度に、啓示と霊華が狩っていたんだけどね」

 

目玉に映る、場面が楽しげな場面から一転、霊夢の母親、霊華が床に臥せっている場面になった。

 

『ごめん……ッ! 霊華、僕が不甲斐ないばかりに……!!』

 

『貴方のせいじゃ無いわ…… ゴホッ!! ゴホッ!!…… あれは私のミスよ……』

 

『でもッ!僕がもっとしっかりしていれば!! 君だって…… 霊夢だって傷つかずに済んだのに…!!!!』

 

『そうだ…… 霊夢は……? あの子は… 無事なの?』

 

『ああ! 君が護ってくれたお陰だ』

 

『おとしゃん…… おかしゃん……』

 

すると、まだ幼い霊夢が部屋にやって来る。

 

『…… どうしたんだい? 霊夢』

 

『おとしゃん…… おかしゃん死んじゃうの?』

 

霊夢は大きな瞳いっぱいの涙を溜めながら。父である啓示に不安そうに尋ねてくる。

 

『大丈夫よ… 霊夢。 おかしゃんは死んだりしないから… ね?』

 

『そうさ… 今までおかしゃんが嘘ついた事あるかい?』

 

その言葉にブンブンと首を振る霊夢。

 

『ううん…… 無いよ』

 

『そうだろ? だから、紫と一緒に待ってなさい。直ぐにおかしゃんは善くなるよ』

 

『うん… 分かった…』

 

そう言って、霊夢は寂しそうに出ていった。

 

「今思えば… あの子は分かっていたのね。霊華が死んでしまう事を」

 

「霊華さんは…… どうなったんですか?」

 

「死んだわ。この十日後に… そして啓示は…」

 

再び、目玉に映る場面が変わり、今度は雨が降りしきる中、啓示が旅たとうとしていた。

 

『本当に行くの? 啓示』

 

『ああ…… 僕はせめて霊華の敵だけでも討ちたいんだ』

 

『霊夢はどうするのよ!? あの子はまだ三歳よ!?』

 

『霊夢……』

 

啓示は悲しそうに、そして苦しそうに寝ている霊夢を見た。

 

『次の博麗の巫女は霊夢だ… 紫、君が鍛えてやってくれ』

 

『啓示……』

 

そう言って、啓示は神社の階段を降りていった。

 

「そして彼は旅立ち、今まで戻って来ることは無かったわ」

 

「じゃあ、あの仏壇は…」

 

「そう… 霊華の物よ」

 

「そうか… 霊夢も、俺と同じで…」

 

そこまで語ると、紫はスキマから出て、砕牙も後に続き、神社の境内へと戻っていった。

 

「砕牙、貴方に聞きたいわ。貴方にとって霊夢はどんな存在?」

 

「え? それは、俺のパートナーの魔戒法師で…」

 

「違う、そういう事を聞いているんじゃ無いわよ。霊夢をどう思っているかを聞いているの」

 

「俺が… 霊夢をどう思っているか?」

 

砕牙には分からなかった……

自分が霊夢に対してどんな感情を持っているのか…

 

好きだと言えば好きだ。それは間違いない。

だが、どちらの好きなのだろうか?

砕牙は、そんな自問自答をグルグルと続ける事しか出来なかった。

 

「俺は…」

 

「あっ! こんなところに居た!!」

 

すると、神社の中から霊夢がやってくる。

 

「探したわよ砕牙。あら、紫も居たの?」

 

「ええ、ちょっと砕牙に話が有ってね」

 

「ふ~ん…… まっいいわ。朝御飯出来てるわよ」

 

「あ、ああ。分かった」

 

結局、砕牙は自分が霊夢をどの様に思っているのか分からなかった。

 

「そうだ、砕牙。紫と何を話してたの?」

 

「ちょっと幻想ホラーについてね。砕牙、幻想ホラーについて知りたいなら稗田阿求と言う作家を訪ねなさい」

 

「作家… ですか?」

 

「作家と言っても少し違うのだけれど… まあ、霊夢と行けば分かるわよ」

 

「はぁ… 分かりました」

 

それだけ告げると、紫はスキマに入って消えた。

 

「なあ、霊夢。阿求って?」

 

「幻想郷の異変を記録している一族の九代目よ。確かに阿求なら何か知ってるかも」

 

午後の予定が決まった二人は、早めに朝御飯を食べ終え、人里の奥に建っている阿求の家を訪ねる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい霊夢さん、砕牙さん。紫さんから話は聞いています。 どうぞ此方に」

 

午後、阿求邸に着いた二人は、阿求の出迎えを受け、敷地を跨いだ。

 

「ごめんね阿求、急に訪ねてきて」

 

「いいですよ。私の書物が役に立つなんて稀なことなんですから。寧ろ嬉しい位です」

 

すると砕牙は書きかけの書物を見つける。

 

「これを阿求が一人で?」

 

「はい。それはこの前守矢神社に現れた巨大なホラーを、狼の騎士が討伐したところを書いてます。ちゃんと早苗さんと和真さんの結婚についても書きますよ?」

 

「あははは…… そっか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ハックション!!」」

 

「う~…… 風邪引いたかな…」

 

「案外、私達の事噂してたりして…」

 

「ははっ、ありそうだな♪」

 

「ありそうだね♪」

 

この時、妖怪の山の天辺にある神社で、一組のバカップルが同時にくしゃみをしたとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それより、ここに来れば幻想ホラーについて分かるって聞いたんだけど……」

 

「はい、分かっています。今持ってくるので少々お待ちください」

 

阿求は、家の奥にある書庫に向かっていった。

 

「なあ、霊夢…」

 

「どうかしたの?砕牙」

 

「霊夢にとって俺ってどんな存在だ?」

 

「ふぇっ!?」

 

砕牙からいきなりされた質問に、霊夢は顔を真っ赤にさせて慌てる。

 

「わ、わわわ私に、ととととっての砕牙!? はわわわ!?」

 

「何を慌ててるんだ?」

 

「そそ、それは勿論、パートナーよ!(私のバカ~!)」

 

「だよな…… じゃあさ、霊夢は俺の事どう思ってる?」

 

「うぇっ!? さ、砕牙の… 事!? えーと… えーと…!」

 

何とか乗り切った?霊夢だが、再びされた砕牙の質問にはたじろく事しか出来ない。

 

「(こ、これって…… 砕牙も私の事…… す、すす好きって事なのかしらぁ~!?)」

 

寧ろ舞い上がっていたりする……

 

「俺はさ、さっき同じ質問を紫さんにされたんだ…」

 

「紫に…?」

 

そこで、霊夢は漸く砕牙が今まで見せた事の無い顔をしているのに気がついた。

 

「でも、俺には答えられ無かった…… 分からないんだ… 俺は霊夢を家族や友達として好きなのか、それとも…… 一人の女として好きなのか…」

 

「砕牙……」

 

「お待たせしました…… ってあれ? どうかしたんですか?」

 

空気が重くなった頃、阿求が書庫から書物を持ってやって来た。

 

「いや、なんでも無いよ。 それよりそれが…」

 

「はい。幻想火羅異変録です」

 

「これが…」

 

砕牙が書物に触れようとすると……

 

〈砕牙! その本から離れろ! 本から邪気が出ているぜ!〉

 

「何!?」

 

ザルバが邪気を感じとり、砕牙はその書物を投げ捨てる。

 

しかし時すでに遅し。

 

 

グォォォォォッ!!!!!!

 

 

書物から大量の邪気と、魔界文字が溢れだし、ブラックホールの様な大穴を作り出した。

 

〈不味いぞ砕牙! こいつはゲートだ!この先は魔界だ!!〉

 

「何だと!? 霊夢! 阿求! 踏ん張れ!!」

 

「うっ… くっ!! 阿求!頑張って!!」

 

「は、はい!」

 

三人は壁に捕まって、何とか吸い込まれまいと抵抗するが…

 

 

グォォォォォッ!!

 

 

「きゃあァァァァ!!」

 

文字の触手が阿求を捉え、そのままゲートへと引きずり込んでいった。

 

「阿求! 霊夢!俺達も行くぞ!!」

 

「うん!」

 

砕牙と霊夢は壁から手を離し、ゲートへと飛び込み、その先にある魔界へと飛び込んでいった。

 

魔界にたどり着くと……

 

「きゃあァァァァ!!!!」

 

阿求が素体ホラーに襲われていた。

 

「阿求! 霊夢、牽制を頼む!!」

 

「任せて。魔導スペルカード!夢想封印・法!!!!」

 

霊夢は、その体に宿る膨大な法力に物を言わせ、大量に弾幕を放ち、多くの素体ホラーを薙ぎ倒し、三十はいた素体ホラーを残り五体にまで減らした。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

その隙に砕牙は阿求の元へ走りだし、残りの素体ホラーを魔戒剣で切り裂いた。

 

「大丈夫か!? 阿求」

 

「え、ええ何とか…」

 

阿求は幸いにも傷を負っておらず、ホラーの血も浴びて居なかった。

 

「よく来たな。魔戒騎士よ」

 

「誰だ!」

 

すると、空から本の様な体に万年筆の様な頭をしたホラーが現れた。

 

「貴様が、ゲートを作ったホラーか」

 

「そうだ私の名はトーカー。先ずは突破おめでとうと言っておこう…」

 

「ゲームの積もりか…」

 

「そう… ゲームだ。全ては私の掌の上だ!!」

 

するとトーカーは、自身のページに何かを書き込む。

 

〈何だ? 『魔戒騎士の頭上に落石』だと?〉

 

ザルバが読み上げると、砕牙の頭上に落石が降り注いだ。

 

「はっ!!」

 

砕牙は飛び上がり、落石を足場に上へと上がっていく。

 

「フッフッフ…… ではこれではどうでしょう?」

 

再びトーカーは、自身のページに文字を書き込む。

 

「え? 今度は『魔戒騎士に怪獣、戦車、ガンシップ、ミサイルが襲い掛かる』ですって!?」

 

すると砕牙の後ろに、怪獣が現れ、横からはガンシップが、下からは戦車が、上からはミサイルが降り注いでいた。

 

「こんなもの…… はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

砕牙は先ず、怪獣にガンシップを破壊させ、怪獣を切り裂き、次にミサイルを真っ二つにし、最後の一つを戦車に投げ込んで、全滅させて着地した。

 

「ふぅ… 文章に一貫性が無いな。所詮駄作か」

 

「駄作だと!? 私の作品を駄作だと!?」

 

「下らない文字遊びはこれまでだ」

 

砕牙は魔戒剣を抜き、天に掲げ、円を描く。

円から光が溢れだし、砕牙を包み込み、牙狼の鎧を召喚する。

 

鎧は、足元から砕牙に纏われ、砕牙は牙狼へと変身した。

 

『ホラー トーカー!! 貴様の陰我、俺が断ち切る!!!!』

 

「許さない… 貴様は必ず食ってやる!!!!」

 

トーカーは、先程よりも長い文章を自身のページに書き綴り、素早く書き上げた。

 

「どうだ!! これで貴様は俺の作品の一部だ!!」

 

『遊びは終わりだと言った!!』

 

牙狼はトーカーに向かって、牙狼剣を振り上げるが…

 

「ホッ!! ハァッ!!!!」

 

『なっ!? グァッ!?』

 

「砕牙!?」

 

牙狼剣はトーカーのシャープペンの剣に受け止められ、逆に牙狼は掌底を食らった。

 

「おや? どうした? 黄金騎士とはそんなものか?」

 

『グッ…… 嘗めるなァ!!』

 

再び牙狼剣を振り抜くが……

 

「ホイサ!! ヌゥゥエイ!!!!」

 

『ガッ!? ゴハァッ!!!!』

 

またしても、トーカーに攻撃は当たらず、牙狼はカウンターを受けてしまう。

 

『何故だ…… 何故俺の剣が当たらない!?』

 

〈おい、奴のページを見ろ砕牙!〉

 

ザルバに言われトーカーの体のページをみるとそこには、『黄金騎士の剣を受け、トーカーが反撃する』『黄金騎士の攻撃を華麗なカウンターで返す』『ボロボロになった黄金騎士をトーカーの剣で刺し殺す』と書かれていた。

 

〈このままだと、最後の行通りに殺られちまうぞ!!〉

 

『クソッ…… どうすれば……』

 

「どうしよう!? 砕牙が!」

 

「本…… ペン…… そうだ!! 砕牙さんこれを!!」

 

阿求が、懐から何かを取りだし牙狼へと投げつけた。

 

『これは…… そうか!!』

 

牙狼は立ち上がり、阿求から受け取った物を牙狼剣に振りかけ、それをトーカーに向かって振り抜いた。

 

『ハァッ!!!!』

 

「もう何をしようと無駄だ!! 貴様の最後は決まっている!!!!」

 

最後の行通りに、トーカーは剣で牙狼を刺し殺そうと突きだし、牙狼も同時に突きだした。

 

 

グサッ!!

 

 

何かを貫く音が、静かに響いた。

 

「どっちが勝ったの?」

 

霊夢が心配そうに見守る中、決着は着いた。

 

「フッフッフ…… グォッ!?」

 

刺し貫かれていたのはトーカーの方だった。

牙狼はトーカーの剣を、腕で受け止めていた。

 

「な、何故だ…!? 何故…」

 

『自分の体をよく見てみろ』

 

「何……… ! こ、これは!?」

 

トーカーの体のページに書かれた最後の行は、黒く塗り潰されていた。

 

『貴様の体に墨汁を掛けた。塗り潰してしまえば、もうそれは本として成り立たない』

 

「そ、そんな……!? 私の… 私の作品がァァァァァ!!!」

 

『お前の作品など…… 最初から存在しない!!!!』

 

牙狼はトーカーを貫いていた牙狼剣で、トーカーを横一文字に切り裂いた。

 

『ダァッ!!!!』

 

「グォォォァァァッ!!!!!」

 

傷口から光が溢れ、トーカーは血を撒き散らして爆発した。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ………

 

 

「え? え!?」

 

「何が起こったの!?」

 

〈砕牙! ゲートが閉じかけている!!!!〉

 

『何だと!?』

 

すると、トーカーを倒した影響か、来るときに通ったゲートが閉じようとしていた。

 

〈時間が無いぞ!? 砕牙!〉

 

『分かっている! ゴウテェェェェェン!!!!』

 

牙狼が轟天の名を叫ぶと、トーカーの落とした岩を砕いて、黄金の魔導馬、轟天がヒヒィィィン!!!! と鳴きながらやって来た。

 

『乗るんだ!! 二人とも!!』

 

牙狼は轟天に乗って手綱を握ると、霊夢と阿求を後ろに乗せる。

 

「乗ったわよ!砕牙!」

 

『よし。行け!! 轟天!!』

 

牙狼は轟天の腹を蹴り、轟天は再び高く鳴き、疾風の如く走り出す。

 

『頼むぞ…… 轟天……』

 

主の願いに答えたのか、轟天は更にスピードを上げていき、何とか閉じる前に、ゲートへと飛び込む事に成功することができた。

 

 

 

 

 

 

 

再び阿求の部屋に戻ってきた砕牙達…

原因となった幻想火羅異変録を砕牙は手に取る。

 

「私達の一族がいけなかったんでしょうか……? そんな本を作ったから…… お二人に迷惑を!!」

 

〈それは違うなお嬢ちゃん。この本には陰我は感じられなかった。つまり誰かがこの本にホラーを仕込んだんだ〉

 

「そんな!? 一体誰が阿求の本にホラーを!?」

 

「分からない…… でもこれだけは分かる。そいつは幻想ホラーを解き放ち、この幻想郷をホラーの住まう世界にしようとしているって事が!!!!」

 

そう言って、砕牙は本を上に放り投げ、魔戒剣で切り裂いた。

本は、邪気を放ちながら消えていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石は黄金騎士 牙狼の称号を受け継ぐ者… 一筋縄では行かないか……」

 

阿求邸から少し離れた場所で、黒くボロボロのフードを被った男が、砕牙達を見ていた。

 

「だが、もう僕は止められない… 牙狼にも!紫にも!他の魔戒騎士や魔戒法師達にもな!!!!」

 

そう言って男はフードを取り払うと、そこには、砕牙が紫に見せて貰った霊夢の父親、博麗啓示が、顔に横十字の傷を付けて立っていた。

 

啓示は首から陰陽玉のネックレスを取りだし、息を吹き掛ける。

するとネックレスは、紫色に妖しく光り、啓示はネックレスを天に掲げ、三回転させた。

 

光の円が三つ描かれ、紫色の光が啓示を覆い、一瞬にして鎧が纏われる。

 

そこには、黒く禍々しい鎧と、灰色の瞳をもつ黒狼がいた。

 

つまり、啓示こそが今回の黒幕であり、阿求の本にホラーを仕込んだ張本人だと言うことだ。

 

『我が名は 狼暴〈 R O B O 〉!!!! 暗黒騎士!!!!』

 

それが啓示の…… 変わり果ててしまった嘗ての幻想郷の守護者の名だった……




無敵の魔戒騎士にも操れないものがある。

それはどんなに求めても決して届かない…… 思い出の中の幸せ、とかな?


次回 時間


だが忘れるな玲司。お前の隣で支える者の存在を!
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