牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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今回は玲司がメインです。

あと八千字越えちゃった……


時間

それはもう二度と戻らない…… 少年が(ZERO)へと至る前の、優しく… 残酷な物語……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじさんとおばさんは誰?」

 

誰も居ない路地裏、一人の少年が捨てられていた。

少年の格好は酷く、服は汚れて破けていた。

 

「坊主、お前何でこんなとこにいんだ?」

 

「おとうさんとおかあさんは?」

 

その少年の前に現れた二人の夫婦。

その夫婦は、今では可笑しい位の格好をしていて、特に男は背に稲妻が走った様な紋章のコートを纏い、腕には仮面を被った女性のアクセサリーを着けていた。

 

「居ないよ。 物心付いた時には孤児院に居たんだ。 でも彼処の大人は皆つまんないから抜け出したんだ」

 

「そうか… ならこれは何だ?」

 

男は少年の腕を掴み、袖を捲る。

そこには殴られなければ付かない様な青あざが痛々しく浮かんでいた。

 

「こっ!? これはただ転んだだけだよ!! 孤児院の皆は悪くない!!」

 

どう見ても転んだだけでは付かない傷を少年は犯人と思われる孤児院の人間を庇ったのだ。

 

そんな少年に、女は涙を浮かべて少年を抱き締める。

 

「な、何だよ…」

 

「優しいね…… でも我満しなくてもいいんだよ。 あなたはまだ子供なの、痛かったり、苦しかったりしたら、泣いてもいいのよ?」

 

その女ごと、男は少年を包み込み優しく言った。

 

「坊主、お前さえ良ければ俺達の息子にならないか?俺達は子供に恵まれ無くてな、お前みたいに優しい奴なら、きっと立派な人間になれる。どうだ?」

 

「いいの!?」

 

「ああ、勿論だ。なあ?」

 

「ええ、大賛成よ」

 

「ぼ、僕は……」

 

夫婦が差し出した手を、少年が掴もうとすると…

 

「よぉ~やく見つけたぞぉ~ チビィ… 何故家の孤児院を抜け出したんだぁ~? 抜け出した奴がどうなったか分かってんだろぉ?」

 

「ひっ!?」

 

孤児院の人間と思われる男が現れたが…

その男はとても子供を預かる孤児院の人間とは思えない程の死臭を放っていた。

 

「あんたがこの子の後見人か…」

 

「そうですが何かぁ~?」

 

少年を連れていこうとする男の前に、夫婦が立ち塞がる。

 

「この子を引き取りたいのだが…」

 

「あぁ~ それは無理ですよぉ~ もう引き取り手が居るもんでぇ~」

 

「そうか…… ならば力ずくで奪い取るまでだ」

 

そう言と、男は孤児院の男の目に自身のライターを翳した。

すると、孤児院の男の目は白く濁り、魔界の文字が浮かび上がった。

 

「ッ!? 貴様、魔戒騎士か!?」

 

先程までふざけた様に間延びした調子の声が、急に焦り始めた。

 

「あぁ… そうだ。俺達は貴様らを討滅する者だ!静葉!」

 

「ええ! 坊や此方に!!」

 

少年は女に連れられて、物影に隠れる。

その時少年は見た。

孤児院の男が醜悪な化け物に変貌する様を。

 

「あ、あれは…」

 

「…… 坊やは知らなくてもいいのよ」

 

化け物は男に向かってその牙を突き立てるが……

男はそんな行動はお見通しとばかりに、コートの袖から二振りの剣を取りだし、牙を防いだ。

 

「ふん!」

 

「ギャァッ!」

 

化け物の足を払い、体制を崩させると、化け物の胸を男は正確に蹴り抜いて後方に吹き飛ばした。

 

「き、貴様は…… ガロか…!?」

 

「いや…… 俺は牙狼ではない。俺の名は凉邑銀河(すずむらぎんが)……」

 

男…… 銀河は自らの名を名乗ると、二本の剣を頭上でクロスさせ、左右に回転させて二つの円を描いた。

 

二つの円は重なりあうと、内側が砕け、銀色の光が銀河を包み込み、鎧が召喚される。

鎧は銀河の身に纏われ、銀河を銀狼へと変えた。

 

『又の名を魔戒騎士 絶狼〈 Z E R O 〉!』

 

そう名乗った絶狼は、変化した銀狼剣で、化け物をすれ違い様に切り裂いた。

 

『ヅァッ!!!』

 

「ギィァァァッ!?!?」

 

そして、化け物は霧の様になって消え去った。

 

絶狼は、鎧を解いて銀河に戻り、物影に隠れていた、女と少年の元へと行った。

 

「お、おじさん……」

 

「悪かったな、怖かったろ?」

 

「う、ううん…… カッコよかったよ?」

 

「そこは疑問形なんだな…… まあいい、それよりどうする? 孤児院は無くなった、お前には身寄りが無い、これから一人の力で生きていくかそれとも……」

 

「おじさんと行くよ!」

 

「いいのか?俺達と居ればまた彼奴ら見たいな奴等に襲われるぞ?」

 

「おじさんが守ってくれるでしょ?」

 

「フッ…… 違いない」

 

ニヒルな笑みを浮かべて、銀河は少年に手を差し伸べる。

 

「俺は凉邑銀河、おとうさんでも親父でも、好きに呼べ」

 

「私は凉邑静葉(すずむらしずは)、よろしくね。出来れば私はおかあさんって呼んでね」

 

「うん!」

 

少年は二人の手を繋ぎ、しっかりと握った。

そして、暗い路地裏から光のある場所へと向かっていった。

 

「先ずは服を買わなきゃね、何時までもそんなボロボロの服を着ているのは体に悪いわ」

 

「そうだな、だがそれよりも先にこいつにやる物がある」

 

「何を?」

 

「名前だ」

 

銀河は、目線を少年に合わせて言った。

 

「いいか坊主、今日からお前は俺達の家族だ。これからのお前の名前は…… 凉邑―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――……… じ……… れ…… じ……… 玲司! 起きて下さい玲司!」

 

「ん…… うん?」

 

目が覚めると、玲司は紅魔館の門の前に立っていた。

 

「漸く起きましたか…… 」

 

「あれ? 咲夜?」

 

「何か魘されていた見たいだけど… 大丈夫?」

 

「ああ、ありがとな心配してくれて」

 

「ッ~ !? い、いえ!お安いご用です! そ、それよりも、お嬢様がお茶にするそうなので玲司も休んで下さい!」

 

「わかった、そうするわ」

 

玲司は咲夜に礼を言うと、咲夜は顔を真っ赤にして、足早に庭へ行ってしまった。

 

〈ゼロ〉

 

「何だよシルヴァ」

 

〈どんな夢を見ていたの?〉

 

「別に」

 

〈もしかして、銀河と静葉の事?〉

 

「そんなとこ」

 

玲司も庭へ向かおうと、体をグッと伸ばし、強張った体を解して、門を潜った。

 

「あら、遅かったわね。玲司」

 

「少し眠っていたもんでな」

 

「そう、それで咲夜が顔を真っ赤にしていたのね」

 

「? どういう意味だ?」

 

「いずれ分かるわ。そういう運命だもの」

 

玲司の目の前にいるこの幼女は、レミリア・スカーレット、紅魔館の主であり、玲司の雇い主でもある。

 

「れ~い~じ~!!!!」

 

「へっ? ぐほぉ!?」

 

レミリアと話していると、玲司の腹に金色の何かが突撃してきた。

その何かは超スピードで玲司の腹に突撃し、更には現在もグリグリと押し付けているため、玲司の意識が刈り取られるのにも時間は掛からなかった。

 

「はぁ…… 止めなさいフラン」

 

「いいでしょお姉様? 玲司はいくらやっても壊れないんだし」

 

「壊れないからと言ってもやっていい事と悪い事があるわよ」

 

「ちぇっ…… つまんないの」

 

玲司の腹に突撃したのはレミリアの妹、フランドール・スカーレット、好奇心旺盛な女の子だ。

 

「痛てて…… フラン…… 頼むからその突撃止めて…」

 

「ん~…… 嫌☆」

 

「マジかよ……」

 

玲司はフランの可愛らしい拒否を見たあと、静かに気絶した…

薄れる視界の端に、慌てて駆け寄る咲夜が見えた気がした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! せい! でやぁ!!」

 

「遅い! もっと早く!」

 

玲司は銀河と、二刀流の修行をしていた。

養子になってから二年がたった頃だ…

 

「はぁ… はぁ…」

 

「どうした玲司、そんなものか? 」

 

「そんな事言ったって…… 父さん強すぎ…」

 

「弱音を吐くな。いいか?魔戒剣の二刀流はソウルメタルを二つ扱う事になる。つまり、精神と肉体の疲労は通常の二倍だ、この程度で弱音を吐いていたら絶狼の称号と鎧はやれんな」

 

「むっ…… 弱音なんか吐くもんか!! 俺は… 父さんより強い魔戒騎士になるんだぁぁぁ!!」

 

「フッ…… よく言ったぁぁぁ!!!!」

 

銀河に叱咤された玲司は、再び魔戒剣を手に銀河に向かって行った。

 

〈全く… これだから二人は……〉

 

「いいんじゃないシルヴァ。玲司は確実に強くなっているわ」

 

〈そうね… 玲司がゼロを追い越すのも、そう遠くは無いかも知れないわねぇ…〉

 

「うふふ♪」

 

〈うふふ♪〉

 

修練所には、剣を打ち合う音と、貴婦人二人の笑い声だけが、響いていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…… ん…」

 

「気がつきましたか? 玲司」

 

「咲夜…?」

何かデジャヴを感じたが、玲司が目を覚ますと目の前に咲夜の顔と胸があった…

とどのつまり、玲司はフランによって気絶した後、咲夜に膝枕で懐抱されていたのだ。

 

「悪い、足疲れたろ?」

 

「いいえ。私はお嬢様のメイド長ですから」

 

答えになっていないような気がするが、まあいいかと感じ、玲司は特には追求しなかった。

 

「それよりも玲司、また魘されていた見たいですが、本当に大丈夫ですか?」

 

〈また、二人の夢を見ていたの?〉

 

「ああ… 何で今になって……」

 

「二人…… とは…?」

 

「俺の両親だ」

 

「両親…… ですか?」

 

「ああ… 俺の大切だった…」

 

玲司が両親について話そうとした時……

 

〈ゼロ! ホラーよ!〉

 

「分かった。どの辺だ?」

 

〈地底の入り口近くよ!〉

 

「そうか、急ごう」

 

ホラーが現れた事をシルヴァが知らせた。

 

玲司が紅魔館から出ようとした時…

 

「待って、玲司!私も一緒に!!」

 

「はぁ!? 何言ってんだ!? 危険だから戻ってろ!!」

 

「大丈夫です。私も魔戒法師ですから」

 

そう言って、咲夜は魔導筆を取り出した。

 

「お前… 何時の間に…」

 

「霊夢の指導や阿求、パチュリー様の書物などを参考に」

 

〈流石ね咲夜! レミリアにこの従者あり!って感じよ!〉

 

「恐れ入ります、シルヴァ」

 

「はぁ… 分かった、ついてこい」

 

「はい!」

 

こうして、咲夜は玲司と共にホラー狩りへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……… 指令か」

 

「はい、師父よ」

 

銀河は、自らの一番弟子であり、玲司にとっての兄弟子である風雲騎士 波怒〈 B A D O 〉の称号を持つ、春風楓徒(はるかぜふうと)と共に黒い指令書を見ていた。

 

銀河は、指令書を魔導火で燃やし、魔界文字を読み取った。

 

「『銀牙騎士の称号を持つ者に命ずる。

風雲騎士と共に、闇に堕ちた魔戒騎士を討伐せよ。』…… 暗黒騎士か… 厄介だな…」

 

「ええ、既に何人もの騎士と法師が犠牲になっています。 そのなかには…… 牙狼の称号を持つ道外流牙殿と、その妻である莉杏殿も……」

 

「黄金騎士が…… して、その子供は?」

 

「現在は、ラインシティにて鎧共々リュメ様が保護しております」

 

「ならば安心だ。血脈が続く限り、いずれ黄金騎士は甦るだろう…… では、行くか楓徒」

 

「はい、師父よ」

 

銀河と楓徒が旅立とうとするその時…

 

「父さん……」

 

「玲司… 起きていたのか…」

 

起きていた玲司がやって来た。

 

「父さん… 俺嫌だよ! 父さんが居なくなるなんて… まだ教わっていない事沢山あるのに…」

 

「玲司… 心配するな。 俺は死にはしない、少しの間留守にするだけだ。 だがな、何事も絶対は無い…… だから今言っておく、もしも俺が死んだら… その時は…… お前が絶狼を受け継ぐんだ。いいな?」

 

「…… うん…… 分かった…」

 

玲司は溢れる涙を拭いながら頷いた。

 

「それでこそ、俺の自慢の息子だ」

 

銀河は、その武骨な手で、玲司の頭をクシャクシャと撫で、旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その約束が果たされることは無かった。

 

数日後、戻って来たのは、二振りの魔戒剣と、いつも着ていた黒いコート、そして… 魔導具のシルヴァだった。

 

「そんな…… あなた……!」

 

静葉はコートを抱いて泣き崩れた。

玲司は父の剣とシルヴァを手に取り、シルヴァに尋ねた。

 

「シルヴァ…… 父さんの最期は…… どんなだった?」

 

〈…… 楓徒を守り、あなたの事を託して、銀河は逝ったわ……〉

 

「そっか…… なら俺が泣くわけにはいかないな。父さんは最期まで守りし者として死んだんだし…」

 

〈玲司…! あなた…!〉

 

「玲司……」

 

そう言う玲司は、泣きながら笑っていた。

 

「兄貴… 頼みがある」

 

「何だ……」

 

「俺を弟子にしてくれ」

 

「俺でいいのか? 師父を守れなかった俺がお前の師匠で……」

 

「だからこそだ。父さんの剣を最後まで見たのは兄貴だ。だからこそ、その目に焼き付けた父さんの剣を、俺に教えてくれ」

 

楓徒は少し考え……

 

「あい分かった。今日からお前は俺の弟子だ!次代の銀牙騎士、凉邑玲司!」

 

玲司が弟子になることを承諾した。

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか? シルヴァ」

 

〈ええ、ここから邪気を感じるわ!!〉

 

「そうか…… 咲夜! 警戒を怠るなよ!」

 

「分かりました!」

 

玲司と咲夜は現場に着くと、辺りから邪気が出ているとシルヴァに忠告され、背中合わせで、周りを警戒していた。

 

するとドスドスと、何かが走り来る音が辺りに響き渡る。

 

「キュァァァァァッ!!!!」

 

そして、ダチョウの様な風貌なホラーが、玲司達の前にやって来た。

 

「こいつは!?」

 

〈魔獣ラナウェイよ! 兎に角走りに関しては今までのどのホラーよりも速いわ!〉

 

「そいつは厄介だな…」

 

そう言いながらも、玲司は二振りの魔戒剣を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、母さん」

 

父が死んで、九年もの月日がたった…

玲司は漸く楓徒の修行を終え、母の待つ家に帰って来たのだ。

 

「…… 母さん?」

 

家に入ると、静葉は銀河のコートと魔戒剣の前で踞っていた。

 

「何だ…… ちゃんと居るなら返事してよ、母… さん…」

 

そこで玲司は静葉に異変が起こっていることに漸く気がついた。

だが、頭では分かっていても、心が否定していた。

 

故に玲司は、その場から動けなかった。

 

「母…さん…?」

 

〈玲司! 避けて!!〉

 

シルヴァの声に反射的に反応した玲司は、黒い何かが襲って来るのを辛うじて避けた。

そしてその襲撃者は……

 

「…… 嘘だろ…… 嘘だと言ってくれ…… 母さん!!」

 

死人の様に蒼白くなった静葉だった。

静葉はホラーに憑依されてしまったのだ。

 

「ヴヴヴァァァァ……」

 

「母さんは魔戒法師なんだぞ! なのに…… どうしてホラーなんかになっちまったんだよ…」

 

〈玲司…… 静葉を切るしかないわ…〉

 

「分かってる!! でも……!?」

 

「ウガァァァッ!!!!」

 

説得を試みた玲司だったが、そんなものに意も返さず静葉は襲い掛かってきた。

 

「ごはぁっ!」

 

「シャァァァッ…」

 

玲司は地面に叩きつけられ、静葉に首を締め付けられる。

 

「母…… さ…… ん……」

 

〈玲司!〉

 

「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

グサッ!!

 

 

「ギャァァァッ!?」

 

しかし玲司は、食われる直前、自分の手の中にあった物を静葉に突き立てた。

 

それは… 父、銀河の魔戒剣だった。

 

「はっ…! はっ…! ッ…!父さん…」

 

《玲司…… 今こそ、俺の鎧を受け継ぐ時だ!》

 

銀河の激励を剣から聴いた気がした玲司は、もう一本の剣を持って、かつて銀河がしていた様に構える。

 

「母さん…… ごめん!」

 

その瞬間、玲司は光に包まれ、絶狼へと変身した。

 

『母さんの陰我…… 俺が切り裂く!!!!』

 

絶狼は、二振りの銀狼剣を連結させて、銀牙銀狼剣にして、静葉に向かって走り出した。

 

『オオオオオ!!!!』

 

「キシャァァァァ!!!!」

 

そして…… 絶狼は銀牙銀狼剣を静葉に突き刺した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピギャァァァァ!!!!」

 

「はぁぁぁぁっ!!!!」

 

「はっ! ふっ! はぁっ!」

 

ラナウェイの素早い動きに翻弄され、玲司と咲夜は未だに一撃も与える事は出来なかった。

それどころか、途中引っ掛ける様にして、ラナウェイは遊んでいたのだ。

 

「くそっ!ちょこまかと!」

 

「速すぎる…… 時間を止めても、動いた瞬間に避けられるなんて!!」

 

〈二人共、落ち着いて。咲夜、結界は張れるかしら?〉

 

「弱くてもいいのなら」

 

〈構わないわ〉

 

「分かりました… はぁっ!!」

 

咲夜は、玲司と自分の回りに、円になるようにナイフを投げて、結界を作った。

 

〈ゼロ、結界が破られる瞬間を狙うのよ〉

 

「成程、そう言う事か!!」

 

精神を研ぎ澄まして待ち構えていると、結界がラナウェイによって破壊される。

 

「キュァァァァァッ!!!!」

 

「そこかぁ!!!!」

 

破壊された結界を頼りに、玲司は魔戒剣を振り抜いた。

 

「キュァッ!?」

 

魔戒剣は見事にラナウェイを切り裂き、ラナウェイは体制を崩して倒れた。

 

その隙に、玲司は魔戒剣を頭上で重ねて、左右に回転して円を二つ描く。

 

二つの円は重なり合い、円の内側が砕けて銀色の光が玲司を照らし出す。

 

そんな玲司の周りを旋回するように鎧は現れ、玲司の体に纏われていき、玲司は絶狼へと変身した。

 

『魔獣ラナウェイ!! 貴様の陰我…… 俺が切り裂く!!!!』

 

絶狼は銀狼剣を構えて、飛び上がった。

 

『ズァァァァァァッ!!!!』

 

ラナウェイの首を目掛けて、剣を降り下ろす様はまるで処刑人。

しかしラナウェイはその剣を素早く起き上がり、絶狼を吹き飛ばす事で防いだ。

 

そしてそのまま離脱を図るラナウェイ。

 

〈ゼロ! ラナウェイが逃げるわ!!〉

 

『させるかよ! ギンガァァァァ!!!!』

 

絶狼が叫ぶと、光の中から銀色の体を持った一角獣(ユニコーン)が現れた。

 

これが絶狼の第二の相棒、魔導馬 銀牙だ。

牙狼の轟天とは違い、体は銀色で、頭には角と蒼い鬣が映えていた。

 

『咲夜!』

 

「はい!」

 

絶狼は銀牙に咲夜を乗せて、ラナウェイを追いかけ始めた。

 

ヒヒィィィィィンと甲高く鳴く銀牙に頼もしさを覚えつつ、銀牙を走らせる。

 

しかしラナウェイの方が僅かに速く中々追い付けないでいた。

 

『くそっ! このままじゃ見失っちまう!!』

 

「私に任せて下さい!霊夢に作って貰った魔導スペルカード 殺人ドール・リッパー!!!!」

 

咲夜は、魔導スペルカードによって上乗せされた法力を用いて、殺人ドールの弾幕を放った。

 

「キュァァァァァッ!!?」

 

完全に倒す迄は行かなかったが、お陰で動きを止める事に成功した。

 

「今です!玲司!」

 

『ああ!』

 

絶狼は銀牙を走らせ、ラナウェイに追い付くと、銀牙の角をラナウェイに突き刺し、上に放り投げた。

 

『ハァァァァァァ…… ハァッ!!!!』

 

「ピギャァァァァ!!!?」

 

絶狼は飛び上がって、ラナウェイを銀狼剣で横十文字に切り裂き、ラナウェイは断末魔を上げて消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『母さん……』

 

絶狼は静葉に銀牙銀狼剣を突き刺したまま動かなかった。

まるで、そこだけ時が止まったかのようだった。

 

「れい…… じ……?」

 

『!? 母さん!?』

 

静葉本人の声を聴いた絶狼は静葉から銀牙銀狼剣を抜き取る。

 

「そう… 鎧を受け継いだのね…… ありがとう…… 私を止めてくれて…」

 

『母さん…… なんでホラーに…!』

 

「判らないわ…… もしかしたら、ホラーになれば…… あの人が来てくれるかもって…… 」

 

『バカだ…… 大バカだよ! 母さんは…』

 

「ごめんね、優しいあなただから、きっと自分を責めるわよね…… でも全部私のせい…… 玲司は何も悪く無いわ…」

 

『母さん……』

 

「シルヴァ…… この子をよろしくね…」

 

〈…… ええ〉

 

「玲司…… きっとあなたは…… あの人よりも強くなれるわ…… だから、自分を見失わないで…」

 

『ああ! 約束する! 絶対に自分を見失わない!そして…… 父さんよりも強い騎士になるよ……!』

 

「ああ…… 安心した…… ありがとう、私の… かわいい玲司……」

 

そして静葉は、ホラーになった人間の末路である消滅にしたがい消えた。

 

『う… うぅっ……! ウォォォォォォォォ!!!!!!!!』

 

そして辺りには、猛り狂う銀狼の叫び声だけが、響き渡った……

 

〈もう… 玲司とは呼べないわね…… これからよろしく…… ゼロ……〉

 

そんなシルヴァの呟きも、銀狼の咆哮によって、掻き消された……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラナウェイを倒し、銀牙と鎧を元に戻して、絶狼から玲司に戻った。

だがその顔は、何時もの笑顔とはまるで違う表情をしていた。

 

「玲司……?」

 

「咲夜…… お前、俺の事好きか?」

 

「ふぇ!?」

 

いきなりのことで咲夜は頭が真っ白になった。

その為、わたわたと慌てながら喋り出す。

 

「わ、わわわ私が、がががっ!! れ、れい、玲司を、すすす、好きかっですってぇ!?」

 

「落ち着け咲夜」

 

玲司は慌てる咲夜の顔を両手で押さえ、向かい合う形にする。

 

「で、どうなんだ?」

 

「わ、私は…… 好きです…… 玲司の事が、好きです……」

 

「そっか……」

 

その言葉に玲司は、微妙な顔になる。

 

もしかして自分は選択肢を間違えただろうか?と考える咲夜だが、玲司は気にせず続ける。

 

「俺もだ…」

 

「え?」

 

「俺も… 咲夜の事が好きだ。今まで色んな女の子と出会って来たけど…… 咲夜程魅力を感じた子は居ないし、一緒に過ごしていて更にその思いが強くなっていた。咲夜も俺の事が好きだって言ってくれたのは、すっごく嬉しかった」

 

咲夜は意外にも、脈が無いと思っていたが、実はそんなことはなく、両思いだと気づいた。

けれど、玲司は咲夜が舞い上がる暇も与えずに… 咲夜の理解出来ない事を言った。

 

「でもさ…… 駄目なんだよ… 俺が何かを求めちゃ…」

 

「…… どういう事…?」

 

「俺… 玲司って名前だけどさ… 絶狼〈 Z E R O 〉なんだ…… 0を1にしちゃいけないんだよ…… 1になったら… また0に戻ろうとする…… 何かを得ても、結局無くなるなんて…… 俺は嫌だ……」

 

「玲司…… 嫌…… 言わないで……」

 

咲夜にはわかってしまった…

玲司が次に言わんとしている事を。

 

「だから… 咲夜の思いには答えられない……」

 

「お願い… 止めて!!」

 

「さよなら…… 咲夜……」

 

そして玲司は…… 闇の中に消えていった……

 

「そんな…… 玲司ぃ……」

 

その場には、静かに涙を流す咲夜だけが…… 残された……




憧れるものに追い付くため、少年は奮闘する。

けれど少年に待っていたのは… 非情な現実だった…


次回 贄 ~Sacrifice~


少年は知る、その力が希望ばかりでは無いことを…
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