牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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流牙

「……以上が、事の顛末だ」

 

ある日、博麗神社に砕牙達が集まっていた。

議題は簡単、先日発覚した暗黒騎士の存在を幻想郷にいる魔戒騎士に伝える為である。

 

簡単な顛末を聞くと、砕牙と玲司は苦い顔をした。

それもその筈、二人は暗黒騎士に浅からぬ因縁があるからだ。

 

「暗黒騎士……」

 

「和真、その話は本当何だな」

 

「ああ、俺の弟子がしっかりと顔に必殺の刻印が刻まれているのを確認したそうだ」

 

「その暗黒騎士は…… バルドなんだな…」

 

「ああ」

 

「ならこうしちゃ居られねえ。シルヴァ、探しに行くぞ」

 

〈ええ、行きましょうゼロ〉

 

玲司は話を聞くや否や、早々に神社を去っていった。

 

「全く彼奴は……」

 

「仕方がないさ、彼奴は親を殺されてる。にしても和真、お前が弟子を取るなんてな… どうなんだ?そいつ」

 

「優秀だよ、基礎がしっかりしてるから三年もすれば魔戒騎士になれるだろうな。それじゃ、俺は睦月の修行を見なきゃならないから」

 

和真も、そう言って守矢神社に戻っていった。

 

神社に残ったのは、霊夢と砕牙だけだ。

 

「ねえ砕牙。暗黒騎士って何なの?」

 

「闇に墜ちた魔戒騎士だ。奴のせいで多くの騎士と法師達が散っていった。その中には…… 俺の父さんと母さんも……ッ!!!!」

 

「…… 砕牙のお父さんとお母さん、どんな人だったの?」

 

「凄い人だったよ。今の俺なんかじゃ… 足元にも及ばない位にね……」

 

自身の父と母、その事を他人に話すのは初めてだと思いながら、砕牙は自身の幼少期の頃を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十数年前……

 

「うわぁ~!」

 

当時六歳の砕牙は、夜の街を歩いていた。

魔戒騎士の家に生まれた砕牙は、滅多に街に来ることは無く、目に写るもの全てが真新しく、そして輝いていた。

 

「坊や、ちょっと此方においで」

 

その時、見知らぬ露店商の男に声を掛けられた。

砕牙は、誘われるままに露店商の近くに寄っていった。

 

「なぁに? おじさん」

 

「良いものを見せてやろう。 ほら」

 

露店商が見せたのは、カタカタと動くロボットの玩具だった。

 

普段、普通の子供が持っている様な玩具を知らない砕牙は、ロボットの玩具に釘付けになった。

そのせいか注意力も散漫になっていたのだろう。

 

露店商の男の口が裂け、牙を剥いて自分に襲い掛かろうとしていた事に、砕牙は気がつかなかった。

 

「旨そうな子供だ…」

 

「うわぁ!?」

 

露店商の男は、その牙を砕牙に突き立て……

 

 

ガキンッ!!!!

 

 

…… られる事は無かった。

 

砕牙の体に魔界文字が、結界となって砕牙の体を守っていた。

 

「な!? 結界だと!? 一体、誰がこのガキに!?」

 

「わぁぁぁ!!」

 

「む!! 逃がすかぁ!!!!」

 

砕牙は露店商の男が化け物であると気づき、必死になって逃げ出した。

当然、ご馳走にありつけなかった男は、砕牙を追いかけ始める。

 

その時。

 

 

ザクッ!!

 

ダァン!! ダァン!!

 

 

「グァァァァァッ!!?」

 

「はぁぁぁぁあっ!!!!」

 

男を何か鋭利な物が、体を切り裂き、銃弾が体を貫き、現れた何者かが、男を蹴り飛ばした。

 

「わぁぁぁ!! わふっ!?」

 

砕牙も誰かにぶつかり、その人物に抱き止められた。

 

砕牙が顔を上げてよく見てみると、そこには砕牙がよく知る一組の男女が立っていた。

 

「母さん! 父さん!」

 

その男女は砕牙の父と母、道外流牙(どうがいりゅうが)とその妻、莉杏(リアン)だった。

 

「莉杏、砕牙を安全な所へ」

 

「分かったわ。砕牙、こっち」

 

砕牙は莉杏に連れられて、物陰に隠れた。

 

「ここで待ってて」

 

砕牙はコクリと頷き、莉杏は流牙の隣へと立った。

 

すると、リーンと鈴の音が響き、それを聴いた流牙が、手に填めたザルバの蓋を上げる。

 

〈ホラー メイガス。子供しか食らわない悪趣味なホラーだ〉

 

「子供を餌にするなんて…… 許せない!!」

 

「どの道砕牙を狙ったんだ…… 逃げられると思うなよ!」

 

「ブハァッ!? ッ!! 魔戒騎士に魔戒法師!? じょ、冗談じゃねえ!!」

 

メイガスは、二人が魔戒騎士と魔戒法師である事に気が付くと、一目散に逃げていく。

 

「逃がさんと言った!」

 

流牙は逃げるメイガスの逃げ場を無くす為、路地を利用し、壁づたいに走って、メイガスの前に立つ。

 

慌てて反対に逃げようとするが、既に莉杏が回り込んでいて、逃げ場は無くなった。

 

「観念するんだな」

 

「チ、チクショウ!!」

 

メイガスは、やぶれかぶれで流牙に突っ込むが…

 

「はっ!! ふん!だぁぁっ!!」

 

流牙は、メイガスの腕を止めてアッパー。続けて胴体に正拳突き。更に顔面に蹴りを入れ、柄と鞘を改造した魔戒剣で斬り裂いた。

 

「ガッ!? ゴホッ!? グワァァァッ!?!?」

 

「止めよ!!」

 

 

ダン!ダン!ダァン!

 

 

莉杏は魔導銃を三発放ち、止めを刺そうとするが…

 

「調子に…… 乗るなよォォォォ!!!!」

 

メイガスは、ピエロの様なホラーとしての姿に戻り、銃弾を弾くと、空へ舞い上がった。

 

「あっ! 流牙!」

 

莉杏の声に頷くと、流牙も壁を蹴って屋上へ上がっていった。

 

「来たか魔戒騎士、早速だが死ね!!」

 

メイガスは、ボールをジャグリングしながら、次々と流牙に投げつける。

 

しかし流牙は慌てず、魔戒剣を構えて居合い斬りでボールを全て落とした。

 

その速度は、一般人なら少し抜いて戻した様にしか見えない速さだった。

 

「悪いけど、遊びは終わりだ」

 

流牙は魔戒剣を天に掲げて円を描いた。

すると、円の内側に光が渦巻き、円を砕く。

蓄積された光は、金色の風となって溢れ、黄金の鎧を流牙の身に纏わせる。

 

その姿は、未来の砕牙が纏う牙狼の鎧とは細部が違っていた。

 

全体的に攻撃的かつ豪奢になり、仮面も威厳が増していた。

襟と肩は翼を模していて、模様も嵐の様に流線形になり、牙狼剣もそれに合わせて鍔が翼の様になっていた。

 

牙狼・翔……

 

流牙の為だけにある流牙専用の牙狼。

流牙の諦めない心が呼び起こした希望の象徴。

 

そしてホラーにとって恐怖の対象であるその者が今、メイガスの前に姿を現した。

 

「お、黄金騎士!? バ、バカな!?」

 

『ホラー メイガス。貴様の陰我… 俺が断ち切る!!!!』

 

牙狼・翔となった流牙は、メイガスに走り出す。

 

「来るな…… 来るなァァァァ!!!!」

 

『ハァァァァ!!!!』

 

自暴自棄になったメイガスは、我武者羅にボールを投げつけるが、牙狼・翔の牙狼剣・翔の一閃によって全てかき消される。

 

『ダァッ!!』

 

「グホッ!?」

 

そして、メイガスを牙狼剣・翔で打ち上げ……

 

『ウオォォォォッ!!!!!』

 

股下から、真っ二つに斬り裂いた。

 

「ギャァァァァァァッ!?!?!?」

 

メイガスは、悲鳴に近い断末魔を上げて消滅した。

 

そして莉杏と砕牙の前に着地した牙狼・翔は、牙狼剣を納めて鎧を解除し、流牙に戻った。

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ様。流牙」

 

「父さん!」

 

「ああ。砕牙、無事だったか?」

 

「うん!」

 

自分に抱きつく砕牙を見て、流牙は人懐っこい笑みでフッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして一人で行ったの!」

 

所変わって、ここは流牙の盟友、D‐リンゴの経営するリサイクルショップ。

ここで、砕牙は莉杏による説教を受けていた。

 

「あれだけ危険だから一人で行っちゃ駄目って言ったでしょ!?」

 

「……… ごめんなさい」

 

「大体ねぇ……」

 

「まぁまぁ莉杏ちゃん。砕牙も反省している事だし、それぐらいにしてやんな」

 

「こってりし過ぎは善くないでしょ!?」

 

「母ちゃんの言う通りだ」

 

「お母しゃん、にぃに虐めちゃめっ!!」

 

そんな莉杏の説教を止めたのは、この店の店主で魔戒法師のD‐リンゴと雪姫、そして二人の娘で、砕牙の妹の花梨だ。

 

「もう!二人共砕牙と花梨に甘いんだから!! ほら、流牙からも何か言ってあげて!!」

 

「まあ良いじゃないか。こうして無事だった訳だし」

 

「もう…… 流牙ったら…」

 

「アハハハ…… まぁ真面目な話、砕牙に聞いて置きたい事があるんだ」

 

流牙は真面目な表情になり、砕牙に目線を合わせて問いかけた。

 

「砕牙、今日お前は初めてホラーを見た。どうだった?」

 

「…… 恐かった」

 

「そうか… それでいい」

 

流牙は砕牙の頭を撫で、更に続ける。

 

「ああいう奴等が、人々を襲ってる。何も知らない、幸せに暮らしている人々を…… 俺達は、そんな人々を守り、ホラーを狩る魔戒騎士だ。魔戒騎士になるために、その感情は必要な物だ」

 

「流牙…… まさか…」

 

「ああ。予定より少し早いけど…… 砕牙、明日から本格的な修行に移る」

 

「本当!!」

 

「ああ。今の砕牙なら、きっと出来るさ」

 

「うん! 僕頑張るよ! 絶対に父さんより強い牙狼になるんだ!!」

 

「おっ? 言ったなぁ~!」

 

本格的な修行をすることを砕牙に言い、砕牙は父から直接指導を受ける事を嬉しく思っていた。

 

「それなら力を付けねえとな! 今日は砕牙の好きな肉多目のケバブを作ってやるよ」

 

「「本当!? D‐リンゴ!!」」

 

「何で流牙まで反応してんのよ」

 

「いや… ケバブと聞いてつい……」

 

「全くもう…」

 

「「「「アハハハハハハ!!!!」」」」

 

その日は、砕牙にとって賑やかな日になった。

 

 

 

 

 

翌日、流牙は砕牙を連れて海岸へ来ていた。

 

「これから、魔戒剣の使い方を教える。かなりきついけど、砕牙ならやれると信じているぞ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

「いい返事だ。まず、魔戒剣とは何だ」

 

「魔戒剣はソウルメタルで出来た剣です!」

 

「そうだ。そしてソウルメタルは持ち主の心の有り様で幾らでも重さを変える不思議な金属だ。試しに持ってみろ」

 

そう言って流牙は、砕牙の目の前にソウルメタルの剣を突き刺す。

 

「よぉーし!」

 

砕牙は意気揚々と剣を抜こうとするが…

 

「うーん…… 抜けないよ?」

 

重くて抜く事は出来なかった。

 

「力任せじゃ駄目だ。そうだな…… 剣に翼が生えてるってイメージしたらどうだ?」

 

流牙のアドバイスを元に再び剣を握る砕牙。

砕牙は剣に翼が羽ばたいているのをイメージしながら持ち上げた。

 

「うっ… くっ…… で、出来た」

 

なんとか持ち上げる事が出来た砕牙はそのまま目の前に持ってくる。

 

「よし。じゃ、それを出来る限り続けて」

 

「う、うん…」

 

それから砕牙は剣を持ち上げ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ~…… うわっ!?」

 

暫くして、砕牙は剣を落とした。

 

「三十分か…… 初めてにしては良くできてるじゃないか。これから毎日、この剣を持ち上げ続けるんだ。一時間持ち続けられたら、今度はその状態で、剣を振るえ、いいな?」

 

「うん。分かったよ」

 

「その意気だ」

 

そう言って流牙は砕牙の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「く、くすぐったいよ。父さん」

 

「あはは!! 悪い悪い。じゃ、次は型の練習だな。今度はこっちだ」

 

流牙は木刀を砕牙に渡し、自身も木刀を取って構える。

 

「いいか? これが基本の構えだ」

 

流牙は左腕を垂直に立て、 木刀を腕に這わせた。

 

「はっ!!」

 

そこから流れる様に木刀を振るい、最後に上段斬りで動きを締めた。

 

「最初はゆっくりやるから、父さんの動きについてやってみて」

 

「うん!」

 

流牙は最初からゆっくりと木刀を振るい始め、砕牙もそれに倣って、見よう見まねで木刀を振るった。

 

「違うぞ砕牙! もっと鋭く振るうんだ!!」

 

「はい!」

 

「おっ。やってるみたいだね」

 

すると、海岸に一人の男がやって来る。

 

「遅かったな。啓示」

 

「ごめんごめん。ちょっと手間取っちゃってね」

 

その男は当時、救済騎士 狼望 であり、後の暗黒騎士 狼暴 である博麗啓示だった。

 

「始めまして。僕は啓示、流牙から話は聞いているよ? 砕牙君だよね?」

 

「始めまして!! 道外砕牙です!」

 

「うん。いい返事だね。これは将来有望かな?」

 

それが、砕牙と啓示の最初の出合いだった。

 

「あんまり甘やかさないでくれよ?」

 

「分かってるよ」

 

「砕牙、啓示が俺が指令で居ない間、お前の修行を見てくれる。ちゃんとやれよ?」

 

「うん、分かった。よろしくお願いします! 啓示さん!!」

 

「未来の黄金騎士を育てられるなんて光栄だな。こちらこそ、よろしく。砕牙君」

 

この時は、あんなことになるとは流牙も、砕牙も、そして啓示ですら、分かっていなかった……

 

「それじゃあ、続けようか? 砕牙」

 

「うん!」

 

それから砕牙と流牙は、夕方になるまで剣を振るい続けた。

沈む夕陽が二人を照らす頃、二人の動きは、ほぼ完全に一致していた。

 

 

 

 

 

 

 

砕牙が寝静まった頃、流牙は莉杏と共に過ごしていた。

 

「砕牙はどう?」

 

「凄いの一言。俺が教えた事を殆どやってのけたよ。そっちは? 花梨はどう?」

 

「こっちは、まだ法力を覚醒させただけで何も。本格的なのは、五歳になってからかしら」

 

今日の自分達の子供の事を報告し合う二人。

その時、ふと莉杏が表情を柔らかくする。

 

「どうかした?」

 

「ううん。人生分からないものだなぁーって。こうして流牙と子供を作るなんて、全く考えてなかったから」

 

「俺だってそうさ、莉杏と俺に子供が出来るなんて考えてなかったよ」

 

二人は、幸せそうに眠っている砕牙と花梨に目を向け二人も幸せそうに微笑んだ。

 

「覚えてる? ボルシティで私が言った事」

 

「うーん…… なんだっけ?」

 

「もう! 私と流牙の子供ならきっと強くなるって事よ! …… どう思う?」

 

「ああ、それか。そうだな… きっと強くなる… いや、強くしてみせるさ」

 

「むにゃむにゃ…… 父さんより強い牙狼になるんだぁ~…… 」

 

突然聞こえた砕牙の寝言に吹き出しながら、二人は自分達の子供を強くしてみせると誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから半年がたった頃、運命は残酷にも幸せだった道外家に襲い掛かった。

 

「う…… ん? 父さん? 母さん?」

 

真夜中、砕牙はふと目が覚めた。

喉が乾いたのか、水を飲みに来たところ、流牙と莉杏が居ない事に気がついたのだ。

 

砕牙は可笑しい事に気がついた。

そもそも、今日指令がある事を砕牙は聞いていない。

だから、二人が家に居ないのは可笑しかった。

 

「どこ言ったのかな……」

 

砕牙は言葉では言い表せぬ不安に駆られた。

 

 

キン…… ガキィン……

 

 

すると、森の方から剣の撃ち合う音が聞こえてきた。

 

砕牙はその音に誘われ、夢中で音が聞こえる場所に急いだ。

 

「はぁっ…! はぁっ…! はぁっ…!」

 

剣撃の音が聞こえてきた場所に着くと、そこには。

 

「はぁっ!!」

 

『………』

 

父、流牙が黒ローブの男と剣を交え、母、莉杏は流牙の援護のため魔導銃で隙を伺っていた。

 

「答えろ! 何故闇に墜ちた!! 啓示!」

 

『啓示…? 知らんな、そんな奴。私はバルドだ!!』

 

「何!? ぐぁっ!?」

 

流牙とバルドと名乗る男は、互いに譲らず鍔迫り合っていたが、問いかけに気を取られた流牙が隙を突かれ弾かれた。

 

「流牙!?」

 

「手を出すな莉杏! こいつは俺がやる!」

 

流牙は、魔戒剣で円を描き、牙狼・翔の鎧を召喚した。

 

『ハァァァァ!!!!』

 

『…… ヌン!』

 

互いの剣はぶつかり合い、火花を散らす。

そして、牙狼・翔が、バルドの胴体を斬り裂いた時だった。

 

『こんなものか? 黄金騎士!』

 

『何? !? グァッ!? ガッ!?』

 

金色の粒子と共に鎧が砕かれ、鎧の下の流牙も斬られていた。

 

『グッ…! ハァァァァ!!!!』

 

このままでは勝てないと踏んだ牙狼・翔は剣を振るい、闇を振り撒き、漆黒を纏って牙狼・闇となった。

 

『闇の力か… 面白い! 貴様の闇と我が闇、どちらが優れているか、勝負!!』

 

『ダァァァァッ!!』

 

牙狼・闇はマントを広げ、大空に飛び立ち、バルドもそれを追って空中戦を繰り広げる。

 

『啓示!! 何故闇に墜ちたんだ!! 答えてくれ!!』

 

『啓示…… ああ、そいつか。そいつは――――』

 

『!? 何だと!?』

 

『残念だったな!!』

 

動揺の隙を突かれ、牙狼・闇はバルドの剣によって叩き落とされた。

元より怪我を負っていた事により動きが鈍っていたのも原因だろう。

 

『拍子抜けだな…… これで最強の魔戒騎士など…』

 

『グァァァァッ!!!!』

 

バルドは、牙狼・翔の足を踏み砕き、動きを封じた。

 

『貴様にはもっと相応しい闇をくれてやろう…… 受け取れ!!!!』

 

バルドが剣を突き立てると、闇が流牙を呑み込んでいた。

 

「父さん!!」

 

砕牙は、流牙の危機に思わず声を出してしまった。

 

「砕牙!? どうしてここに!?」

 

『砕牙…… 来るな……』

 

『ほう…… 貴様らの子か。丁度いい、更なる絶望に叩き落としてやろう!!』

 

バルドは砕牙に向かって歩き出す。

 

「止めて!!」

 

莉杏は、何とか阻止しようと魔導銃をバルドに放つが……

 

『邪魔だ』

 

「きゃあっ!?」

 

『莉杏!!』

 

「母さん!!」

 

莉杏は、流牙の元に吹き飛ばされ、莉杏も闇に沈み始めていた。

 

『さて…… ん?』

 

「ひっ!?」

 

バルドは砕牙の顔を覗き込み、何かを思案するそぶりを見せた。

 

すると……

 

 

ヒュンヒュン!!

 

タンタァン!!!!

 

 

『むっ!? グァッ!?』

 

小さな刃が、バルドの顔に×印の傷を付け、銃弾がバルドを貫く。

 

バルドが背後を見ると、流牙と莉杏が刃と銃弾を放っていた。

 

『グッ… フフ… おのれ…』

 

『グッ… ダァッ!!!!』

 

そして流牙は最後の力を振り絞り、牙狼剣・翔をバルドに投げつけた。

 

『ゴハッ!?』

 

牙狼剣・翔はバルドの脇をかすり、浅いながらも手傷を負わせた。

 

『クッ、私もまだまだか… 貴様らに免じて、こいつは殺さないでおいてやる。こいつは此方側の者の様だからな』

 

「どういう…… 事だ…!」

 

『簡単だ。こいつの体と心には闇がある。何れこいつも暗黒騎士となるだろう』

 

「なん…… だとぉ…!!!!」

 

『去らばだ、道外流牙! フハハハ!!!!』

 

そう言って、バルドは去っていった。

 

砕牙は、暫く呆然としていたが、沈み行く両親を見て、慌てて二人の元に向かった。

 

「父さん!! 母さん!!」

 

「砕牙…… 無事だったのね…」

 

「砕牙、よく聞け。父さん達はもうすぐ闇に呑まれる。だから、これからはお前が牙狼を受け継ぐんだ!!」

 

「そんなの…… 嫌だよぉ!!」

 

「泣くな…… 守りし者になれ!」

 

そう言って流牙はザルバを外し、砕牙に握らせた。

 

「ザルバ… 砕牙を頼む…」

 

〈ああ、任せておけ…〉

 

「砕牙、花梨をお願いね?」

 

「砕牙…… 強くなるんだ!」

 

そう言い遺すと、二人は闇の底に消えていった。

 

「父さん!! 母さん!! ……… う… うわぁぁぁぁぁん!!!!」

 

雨が降り始める中、牙狼剣・翔は…… 独りでに輝き続けていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日がたった。

砕牙はリュメと言う偉大な魔戒法師に引き取られ、花梨はD‐リンゴ達に引き取られた。

 

「砕牙…… 大丈夫かい?」

 

「リュメ様…」

 

「これから牙狼剣を回収するよ。一緒に来るかい?」

 

砕牙は静かに頷き、リュメと共に牙狼剣の元に向かった。

 

リュメと共に牙狼剣の元に着くと、既にリュメのお付きが、持ち上げる所だった。

 

「砕牙… 辛いかもしれないけど、今は耐えるんだよ」

 

砕牙は何も言わず、ただ父が使っていた剣を見ているだけだった。

 

その時、異変が起こった。

 

 

キィィィィィン!!!!

 

 

心地好い音が牙狼剣から響き、お付きを吹き飛ばして地面に突き刺さった。

 

突き刺さった衝撃が辺りを襲い、砕牙とリュメは吹き飛ばされそうになった。

 

 

ガオォォォォォッ!!!

 

 

「牙狼剣が…… 本当の主を求めている!? そんなバカな!?」

 

牙狼剣が拒絶した事にリュメは驚き、牙狼剣の叫びを聞いた砕牙は、ある決意をする。

 

「ザルバ…… 僕が牙狼になれば…… 剣を抜けるのかな……」

 

〈恐らくな。だが小僧、その道は酷く険しいぞ?〉

 

「父さんと母さんに約束したんだ! 父さんよりも強い牙狼になるって!! だから僕はやる、牙狼になって皆を守る!!」

 

その日から、砕牙の牙狼になるための戦いは始まった。

 

来る日も来る日も、剣を振るい続け、少しでも父を追い抜こうと必死に振り続けた。

 

最初の一年…

牙狼剣は抜けず、地面に突き刺さったまま。

 

月日が経ち、ソウルメタルを正しく扱える様になり、魔戒騎士としての一歩を踏み出した。

 

五年後……

それでも牙狼剣は抜けず、地面に突き刺さったまま。

 

更に月日が経ち、剣技は達人の域に入り始め、顔付きも変わってきた。

 

あの日から七年……

やはり牙狼剣は抜けず、苛立つ砕牙は牙狼剣を蹴るも、やはり抜ける事はなかった。

 

幾重もの夜を越え、幾つもの朝を向かえ、砕牙は剣技も体術も、並みの魔戒騎士を越えていた。

 

あの日から十年がたち、砕牙は十六歳になった……

 

修行着は既にボロボロになり、身体中の傷が目立ってきた砕牙は、何時もの様に特に期待もせずに牙狼剣の柄を握った。

 

すると、何時もとは違う感触が腕に伝わる。

 

怪訝に思いながらも、牙狼剣を引き抜くと……

 

 

キィィィィィン!!!!

 

 

以前と同じように心地好い音が響き、牙狼剣は遂に、地面から離れた。

 

羽の様に軽い牙狼剣に驚きながらも、砕牙は刀身に自分の顔を写し込み、闇に沈んだ父に思い馳せる。

 

「……… 父さん」

 

思い出されるは父の最後の言葉。

 

 

『砕牙…… 強くなるんだ!』

 

 

その言葉を胸に、砕牙は牙狼剣を構え、父と同じ様に剣を振るった。

 

「はぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

砕牙は、霊夢に自分の過去を語り終え、魔戒剣を振るっていた。

 

「凄い人だったんだね。砕牙のお父さんとお母さん」

 

「ああ、二人が居たから今の俺がいる。だからこそ、俺が…… この幻想郷を守ってみせる!!」

 

すると、空間にスキマが開き、紫が現れた。

 

「紫さん。どうしました?」

 

「砕牙、霊夢。指令よ」

 

紫は、赤い封筒を砕牙に渡す。

それを受け取った砕牙は、置いていたコートを身に纏い、台座に置いていたザルバを、指に嵌める。

 

「了解。 行こう、霊夢、ザルバ」

 

「ええ」

 

〈ああ、指令でホラー狩りは久しぶりだな〉

 

そして砕牙は霊夢と共にホラーの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

彼の戦いはまだ始まったばかり。

これから起きる出来事をどう解決するかが、彼の黄金騎士としての資質が、試されるだろう……

 




未だ戻らぬ兄と祖父を思い、少女は今日も主に仕える。

その心を、利用する者がいると知らずに……


次回 桜 ~Blossom~


幽玄の騎士が、桜と共に舞い踊る!
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