牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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今回、最後のオリジナル魔戒騎士が登場します!!

あと皆さん、金狼感謝祭見ました?
来年は、炎の刻印と絶狼の年ですよ!!!!

やったぜ!これで勝つる!!!!


桜 ~Blossom~

幻想郷に、朝が来る。

この上なく当たり前の事だが、幻想郷の特定の場所ではその限りではない。

 

地獄、地底、そして冥界。

 

地獄と地底では光が射す事はなく、また冥界でも、四六時中亡霊や人魂が飛び交い、霧が立ち込める鬱蒼とした場所であった。

 

今回は、そんな冥界に住む少女のお話……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! やっ! たあっ!」

 

一人の少女が、屋敷の中庭で剣を振るう。

それは洗練された物であり、一振り一振りが光を纏って軌跡を描く。

 

しかし少女はそれに満足はせず、また慢心もしない。

彼女は何処までも自分を半人前と称し、剣を振るう。

既にそれは、一人前の物へと成っていることに気づかずに……

 

「ふぅ… 今日はこれで終わりっと…」

 

日課が終わり、少女が自身に課せられた仕事を全うしようとしたとき…

 

「よ~む~! お腹すいた~!」

 

今日も、腹ペコ亡霊の声が響き渡る。

 

「はぁ… はい、ただいま!!」

 

そんな亡霊に溜め息を一つ吐くと、少女は仕事に掛かる。

己が主の命を果たす為に。

 

少女の名は魂魄妖夢、冥界に建つ屋敷、白玉楼の主、西行寺幽々子に仕える庭師兼剣術指南及び、魔戒法師西行寺幽々子の弟子で半人半霊の魔戒法師である。

 

「朝御飯をお持ちしました。幽々子様」

 

「ありがとう妖夢。今日も美味しそうね!」

 

妖夢の持ってきた山の様な量の食事を、目を輝かせて見詰める桃色の髪の毛を持つ女性。

 

彼女が白玉楼の主、西行寺幽々子である。

 

「幽々子様… 出来ればもう少し量の方を…」

 

「なぁ~にぃ~?」

 

「…… もういいです」

 

従者の意見など何のその、幽々子は妖夢の言葉を無視して食事に没頭する。

その様子に妖夢は頭を抱えて諦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

朝餉を終え、縁側で洗濯を始めた頃、縁側でお茶を啜っていた幽々子の隣に、スキマが開く。

 

勿論、こんなものの中から現れる人物は一人しか居ない。

スキマから姿を現したのは大賢者八雲紫だった。

 

「あら~、紫じゃない」

 

「久しぶりね幽々子」

 

親友であるこの二人は、唐突に紫がやって来ても驚かないし驚かせない。

まあもっとも、それを見ている妖夢は何時までも慣れずに驚き続けて居るのだが……

 

「どうかしたの? 何時もはもっと軽い感じで来るじゃない?」

 

「今回ばかりはふざけていられないのよ、幽々子。今回は魔戒法師として、盟友である貴女に会いに来たの」

 

それを聞いた幽々子は、何時もの笑顔を途絶える。

そして真面目な顔になっていた。

それは紛れもない、歴戦の魔戒法師の顔だった。

 

「そう…… 妖夢。貴女も此方に来なさい。関係の無い話では無いから」

 

主に言われては断れる筈もなく、妖夢は洗濯を早々に終わらせ、幽々子の隣に来た。

 

「それで? 何のご用かしら? 八雲法師」

 

「ええ、少し警告をと思ってね。幻想ホラーの事、忘れていないわよね?」

 

「当たり前よ。忘れたくとも忘れられる訳無いじゃない」

 

「どうやら、奴等の封印を解いたのは暗黒騎士… それも、ロボの可能性が高いそうよ」

 

「それじゃあ啓示が暗黒騎士になって幻想郷に居るって事? あの啓示が闇に堕ちるなんて……」

 

「私も信じたくはないけど……」

 

この会話に一人着いていけない妖夢は、二人に訪ねた、暗黒騎士とは、と。

 

「すみません。ロボとか啓示とか、私サッパリ分からないのですが」

 

「そう言えばまだ妖夢に話して無かったわね。啓示は霊夢の父親で魔戒騎士だったのよ」

 

「お師匠様と兄さんが武者修行の旅に出た後に来たのがその啓示さんなのですか?」

 

「そうよ。でも啓示は……」

 

紫が啓示について、妖夢に語ろうとした時。

 

 

ドー……ン……

 

 

少し離れた場所から衝撃音が響き渡る。

 

「これは……」

 

「邪気ね」

 

「! 幽々子様」

 

「ええ、今人魂達からも報告があったわ。冥界の入り口でホラーが暴れている様ね。妖夢、貴女に命じます。魔戒法師としてホラーを狩りなさい」

 

「はっ!」

 

幽々子からの命を受けた妖夢は、素早く装備を整え、師匠から授かった二振りの愛刀、楼観剣と白楼剣を携え、自身の半霊と共に風の様に去っていった。

 

そんな妖夢を見届け、幽々子は蝶の使い魔を使って現場の様子を紫と共に見ることにした。

 

「さてさて♪ お手並み拝見といこうかしら? 黄金騎士様♪」

 

その様子を見る幽々子は、恋する乙女のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡って、何故冥界にホラーが現れたのか?

それは、簡単な事だった。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「グキャァッ!!!!」

 

「はっ!」

 

「グキュウッ!!」

 

冥界の入り口付近に大量に現れた素体ホラー達を狩っていた砕牙と霊夢。

 

しかし数が多すぎた為に何匹か冥界に逃げてしまったのだ。

 

「数が多いわ…… ねっ!!」

 

「くっ…… そっ!! 何匹があっち(冥界)に行ったみたいだな。早く片付けよう、霊夢!!」

 

「分かったわ!!」

 

二人は連携を強化した戦法を取り、素体ホラー達を一網打尽にした。

 

「八方龍殺陣・堅!!!!」

 

霊夢が素体ホラー達の真下に魔導スペルカードで発生させた結界でホラー達を打ち上げ……

 

「はあぁぁぁぁぁああっ!!!!」

 

結界を蹴って、ホラー達の中を通り抜けながら魔戒剣でホラーを切り裂き、消滅させた。

 

先程の衝撃は、この時の物である。

 

「よし! ここは片付いた! 急ごう霊夢!」

 

「うん!」

 

ホラーを片付けた二人は急いで冥界に入り、ホラー達を探したが、冥界の入り口で見たのは……

 

「ふぅ、数が多かったけど何とかなったわ」

 

銀髪の少女が、ホラーを殲滅した跡だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入り口にたどり着いた妖夢は入り口から現れたホラーを観察する。

妖夢は魔戒法師だが、実戦はこれが初めてなのだ。

 

「数が多い…… 大体二十…… でもこれなら行ける!」

 

妖夢は二振りの愛刀を抜き放ち、ホラーの群れに突撃していった。

 

「魂魄妖夢。参ります!」

 

いち早く気がついた先頭のホラーは、妖夢に何の躊躇も無く突っ込んでくる。

大方、自らよりも格下と断じたのだろう……

その判断が命取りになるとも知らずに。

 

「キシャァッ!!」

 

躊躇無く妖夢に牙を向けるホラー。

しかし妖夢は剣の達人だ。

 

「はあぁぁぁぁっ!!」

 

すれ違いざまに楼観剣で切り裂き、ホラーは断末魔を上げる事無く消えた。

 

その様子を見て、動揺を見せるホラー達に剣を突きつける妖夢。

 

「さあ…… 次は誰だ!」

 

少女とは思えない気迫を迸らせる妖夢に恐れを抱きながらホラー達は自身の本能に従い妖夢を食らいに掛かる。

それが自分達の死期を早めているとも知らずに…

 

「消えなさい! 魔導スペルカード、極・冥断剣!!!!」

 

妖夢は楼観剣と白楼剣を掲げ、二つの刀身に霊力を流して一つの巨大な刀とし、ホラーの群れに向かって振り下ろした。

 

「でえぇぇぇぇぇぇい!!!!!!」

 

霊力の刃は、ホラー達を次々と消し飛ばし、二十いた素体ホラーを全て討滅した。

 

「数が多かったけど何とかなったわ」

 

「これは…!?」

 

「ホラーがいない…」

 

すると、冥界の入り口から砕牙と霊夢がやって来る。

 

〈砕牙、どうやらあのお嬢ちゃんがやったみたいだぜ〉

 

「は? 君、それ本当? 」

 

「これ、妖夢が全部やったの?」

 

「うん、そうよ霊夢。 初めまして黄金騎士 牙狼 私は魔戒法師の魂魄妖夢、よろしくお願いします」

 

妖夢は、半霊を抱きながらにこやかに挨拶する。

 

「ああ、よろしく妖夢。それにしても… あの数を一人でやるなんて…… 」

 

「ええ、この刀のお蔭よ」

 

〈成程、魔刻鉄か。確かにホラーの爪で作られたその刀なら納得だ〉

 

「どう? 家の妖夢の実力は」

 

すると、白玉楼から幽々子と紫がやって来る。

 

「紫さん…… と、誰?」

 

砕牙は初めてみる幽々子に困惑し、そして瞬時に実力を見抜いた。

 

「始めまして道外砕牙君。私はこの冥界を統べる者、西行寺幽々子よ。よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします。 西行寺法師(この人、相当な実力者だ!)」

 

「あん♪ だめだめ、そんな堅苦しい言い方は、気軽にゆゆちゃんで良いわよ?」

 

「あはは…… じゃあ幽々子さんで……」

 

このやり取りに何処かデジャヴを感じながらも砕牙は苦笑いをし、そんな様子を見て霊夢は面白くないように口を尖らせる。

 

「…… 随分と手が早いのね、砕牙」

 

「はっ? 何の事だよ」

 

「知らない」

 

「「あらあらあら♪」」

 

そしてそんな霊夢を見て、幽々子と紫はクスクスと口許を扇子で隠しながら笑うのだった。

 

「幽々子様、お戯れはその位にして…」

 

「それもそうね。貴方達に色々聞きたいし、白玉楼にご招待しましょうか」

 

白玉楼に招待された砕牙達は、長く続く階段を上っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、一人の少年が幻想入りする。

いや… 正確には()()()()()と言うべきか。

 

「この空気、この風…… 久しぶりだな、幻想郷」

 

〈妖夢と幽々子はどうしているのかしら?〉

 

「彼奴の事だ、どうせ自分はまだ半人前とでも言っているのだろう…」

 

少年は、天女を象ったペンダントと会話しながら冥界の入り口を見据える。

 

「行くかカルヴァ、白玉楼へ」

 

そうして少年は自身の半霊と共に、白玉楼へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼で砕牙は、幽々子にこれまでの事を話していた。

 

「まあ、それは大変ね」

 

「その上、暗黒騎士まで現れましたから」

 

「大変でしょうけど、貴方は黄金騎士よ。自信をもって!」

 

「はい!」

 

幽々子に励まされる砕牙を見て、ザルバは懐かしい物を見たかの様に話す。

 

〈こうして居ると、以前に幻想郷に来た時の事を思い出すぜ〉

 

「うふふ、ザルバは変わらないわね」

 

〈それは此方の台詞だぞ、幽々子〉

 

「やっぱり幽々子さんも初代牙狼と?」

 

以前に初代牙狼がこの幻想郷に現れたと聞いたのを思い出した砕牙は幽々子に聞くが、それを聞いた幽々子は顔を赤らめて頬に手を当てて語り出す。

 

「ええ、笑顔が素敵で、強くて妖怪も人間も関係無く接していた誰よりも優しい人。それが彼よ♪」

 

「それって砕牙みたい」

 

「俺?」

 

〈そうだな。確かに似ているかもしれん〉

 

「幽々子はそうやって何時も私から彼を独り占めするんだから……」

 

「あら? 自分の気持ちを素直に言えなかったヘタレが何を言っているのかしら?」

 

紫のこの愚痴を切っ掛けに、二人は言い争いを始めてしまった。

 

「な、何よ!? 貴女にだけは言われたくないわよ!このボケナス大食らいピンク頭!!!!」

 

「なんですってぇー!? そっちにだって言われたく無いわ!! 腹黒スキマBBA!!!!」

 

「「何よ!」」

 

まあ、言い争っている内容は小学生と何ら変わりの無い幼稚な物であるのだが……

二人はそれだけでは飽きたらず、ポカポカと互いを殴り合い始めてしまった。

 

「ああ… また始まった…」

 

「ほっときなさい妖夢。その内飽きるわよ」

 

〈全くこいつらは…… ちっとも変わってねえな〉

 

何時か見た懐かしい光景に、溜め息しか出ないザルバだった。

 

「ん?」

 

そんなとき、不意に仮面を被った少女メメが現れる。

 

「やあメメ。久しぶり」

 

メメは喋ること無く、砕牙に赤い封筒を渡して消えた。

 

「あら、あの子まだ居たのね」

 

「ホント謎ですよ。指令か」

 

砕牙は、受け取った赤い封筒に魔導火を着けて内容を確認する。

 

「『黄金騎士 牙狼の称号を持つ魔戒騎士に命ずる。

冥界にて咲き誇る西行妖の邪気に呼び寄せられし者あり。その者の名はメジス。邪気を取り込んで成長するホラー也。

今宵、冥界にてメジスを迎え撃ち、西行妖を死守せよ。』」

 

〈西行妖か。また随分と物騒な名前が出てきたな〉

 

「ザルバ。その西行妖ってなんだ?」

 

砕牙がその疑問を口にすると、砕牙以外の者は、皆顔に皺をよせ、苦い顔をしていた。

 

すると幽々子が立ち上がり、屋敷の奥に砕牙を連れていく。

 

「此方よ、砕牙君」

 

幽々子に連れられるまま歩くと、そこには枯れた桜の大木が鎮座していた。

 

「これが西行妖。そして… 生前の私の墓よ」

 

「お墓… ですか」

 

「かつて物の怪に憑依されたと言われた桜があった。その桜を見た者は翌朝その桜の下で自殺した…… 私はその最後の自殺者」

 

「!?」

 

「そして、生前の私と知り合った紫が、私の遺体を触媒にして西行妖を封印した。何の陰我か、私は亡霊としてこの世に留まる事になったけれど… お蔭で彼にも会えたし、半分半分と言った所かしら?」

 

幽々子は、西行妖と自身に纒わる話をなんとも無い様に、されど儚げに語り続ける。

砕牙はその姿に何処か悲しみを覚えた。

 

「幽々子さんは…… それでよかったんですか?」

 

「優しい。やっぱり優しいわ砕牙君。魔戒騎士に向いていないと思う程に…… でもそれこそが、一番牙狼に相応しい者なのかもしれないわね」

 

幽々子と砕牙は、その枯れた西行妖を見つめ続けていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズシン… ズシン…

 

 

大きな足音が、夜の冥界に響き渡る。

その足音の主はホラー メジス。

ホラーとしての個体名は与えられているものの、メジス自体はまだ素体ホラーである。

 

陰我と邪気を吸収して進化する特殊なホラー、謂わばホラー食いのホラーなのである。

 

そんなメジスの行く手を阻む者がいた。

 

「あれが、メジスか!?」

 

〈ああ、気をつけろよ砕牙! 彼奴が進化したら手がつけられないぞ!〉

 

魔戒剣を構え、メジスを見据えていた砕牙だった。

 

「キシャアァァァァッ!!!!」

 

「はあぁぁぁぁぁああっ!!!!」

 

メジスは、己の食事を邪魔する砕牙に憎しみを込めて吠え、砕牙に襲い掛かる。

 

また砕牙も自身を奮い立たせるように吼え、魔戒剣を抜き放ち、メジスに飛びかかった。

 

魔戒剣の刃と、メジスの牙がぶつかり合い、互いの得物は火花を散らして凌ぎを削り合う。

しかしどんなに巨大でも素体ホラー、黄金騎士である砕牙の敵ではない。

 

「だあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

砕牙はメジスの牙を砕き、メジスの巨体をひっくり返した。

 

「ゴアアァァァァァッ!!!??」

 

 

ドッシィィィィィン!!!!!

 

 

メジスの巨体は地面を揺らし亀裂を作り、回りの木々を揺らした。

そんな衝撃が冥界全土に響く。

 

砕牙はその隙を見逃す筈も無く、すかさず空に円を描き、黄金の鎧を召喚して牙狼に変身した。

 

『ハァァァァァ……!!!!』

 

牙狼は、牙狼剣を腕に備え付けられている刃に刀身を滑らせ構える。

 

メジスは漸く起き上がりその巨体を西行妖の元へと向かわせる。

自らの進化すると言う我欲を叶える為に。

 

『何故其処まで西行妖にこだわるのかはわからないが、彼処は幽々子さんの体が眠る場所。貴様等に汚させる訳にはいかない!!!!』

 

牙狼は、西行妖の元に向かうメジスの大木の様な両足を、牙狼剣を大きく振りかぶって切り裂き、メジスの動きを封じ込めた。

 

『タアァァァァァァ!!!!』

 

「ガァァァァァァ!!!!!?」

 

『ホラー メジス!! 貴様の陰我、俺が断ち切る!!!!』

 

そして倒れこんだメジスの無防備な頭頂部に牙狼剣を突き立てた。

 

『オオォォォォアア!!!!』

 

「ギャァァァァァァ!!!!!!」

 

メジスは血飛沫を上げて消滅する…… 筈だった。

 

〈ちょっと待て砕牙、牙狼剣に邪気が封印されていないぞ!〉

 

『何だと!?』

 

ザルバが気づいた異変を直ぐに確認すると、確かに牙狼剣には邪気が封印されてはいなかった。

では邪気は何処に行ったのか?

 

〈砕牙! あれを見ろ!〉

 

『あれは!?』

 

確かにメジスは消滅した。

しかし先に切り離された両足が健在だった為そこからサイズを変えて復活したのだ。

 

そして今戦うのは無謀と思ったのか、メジスは霧に姿を変えて白玉楼にある西行妖に向かっていった。

 

「逃がすか!!」

 

牙狼の鎧を送還して砕牙に戻り、急いで砕牙は白玉楼に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼では……

 

「…… 来たわよ」

 

霧になったメジスが、一足先に白玉楼にたどり着き、紫達魔戒法師組と相対していた。

 

「砕牙はどうしたの?」

 

「今、此方に向かっているわ」

 

「そうですか…… なら、砕牙が来るまで弱体化させるか倒すかしましょう!!」

 

妖夢を筆頭に霊夢は魔導筆を構え、 紫は魔導筆と傘を、幽々子は魔界文字が刻まれた扇子を開き、妖夢も楼観剣と白楼剣を構える。

 

「「はっ!! やあぁぁぁぁっ!!!!」」

 

紫と幽々子の連係術、死蝶間線を放ち、メジスに逃げ場を無くしながら、攻撃していく。

 

その連係の凄さに、霊夢と妖夢は舌を巻く。

 

「す、凄い!!」

 

「流石です!! お二人とも!!!」

 

「関心してないで貴女達も!」

 

「「はい!」」

 

紫に叱咤され、二人の闘志が燃え上がり、二人は同時に魔導スペルカードを宣言する。

 

「魔導スペルカード、夢想封印・法!!」

 

「魔導スペルカード、絶・現世斬!!」

 

霊夢は、無数の弾幕をメジスに向かって放ち、そんな霊夢の前に待機していた妖夢は、絶・現世斬で打ち出し、更に加速と威力を付けて放った。

 

「ギャァァァァァァ!!!!」

 

余りの威力に、メジスは再び青転してしまった。

そして、霧の様に霧散していく。

 

「「やったぁ!」」

 

二人は連係が決まり、ホラーメジスを倒した事に喜び称え合うが……

 

「まだ気を抜かないで!」

 

現実は非情か、幽々子の忠告通りメジスは霧の中から更に小さくなって現れ、西行妖に取り付いた。

 

そしてそこから、邪気と妖力を吸い上げる。

 

「うぐっ!?」

 

「幽々子(様)!?」

 

妖力と邪気を吸い上げられる度に幽々子は苦しがる。それもそうだろう、西行妖に遺体が封印されているから幽々子は亡霊として留まれるのだ。

全て吸われてしまったら封印は意味を成さず、遺体は再び現世に晒される事になる。

 

そうなってしまえば、幽々子はもう亡霊として留まる事が出来なくなる。

 

紫と妖夢は焦り、西行妖に取り付いたメジスを攻撃しようとしたその時。

 

「汚れた手で西行妖(それ)に触れるな」

 

 

ザシュ!!!!

 

 

「ガァァァァァァ!!!?」

 

何者かが現れ、西行妖に取り付いたメジスを切り裂き、引き剥がした。

 

二振りの刀を持った編笠の男は、幽々子の前に着地し、幽々子の安否を確認した。

 

「ご無事ですか? 幽々子様」

 

「貴方!?」

 

「説明は後で…… 妖夢!幽々子様を頼むぞ」

 

「あっ! はい!」

 

男は、幽々子を妖夢に託すとメジスの前に立ち、怒りを顕にする。

 

「貴様…… よくも僕の主を…… 許さん!!」

 

〈幻想郷での初仕事です! 気合いを入れますわよ、妖夜!!!!〉

 

「応!!」

 

男は、二振りの刀…… 魔戒刀を水平に広げ、踊る様に一回転する。

すると、男の回りに緑色の円が現れ、男は刀をクロスして円の縁に添え、扇形に刀を振って円を空に打ち上げ円を砕いた。

 

円の中から緑色の光が溢れ、男を包み込み、若草色の鎧が召喚され、男に纏われた。

 

鎧は武者の様に武骨、されどスラリとした無駄の無い装飾が印象を変え、騎士と言うよりは侍といった風貌であった。

 

仮面も狼と言うよりは狛犬と言うのが合っており、口元はマウスガードにより犬歯しか見えていなかった。

 

「あれも…… 魔戒騎士…?」

 

「ええ、あれこそ幻想郷を初めから守護していた魔戒騎士。 幽玄騎士 魄狼 〈 H A K U R O 〉よ」

 

「…… 私の兄さんです」

 

「妖夢の?」

 

新たな騎士の登場に驚きながら、霊夢は魄狼の戦いを見るのだった。

 

『………』

 

「キシャアァァァァッ!!!!」

 

何もしない魄狼に痺れを切らせたのか、メジスは魄狼に爪を振り下ろす。

 

『…… フッ!』

 

魄狼はそれを冷静に魄狼剣と狼観剣をクロスさせ、止めた。

 

『貴様の罪は一つ…… 僕の主、幽々子様を傷つけた事だ!!』

 

魄狼はメジスの爪を砕き、腕に飛び乗り、首に向かって走っていく。

 

『ハァァァァァ…… セヤァァァァァッ!!!!』

 

魄狼は、魄狼剣を一閃させてメジスの首を吹き飛ばし、メジスを今度こそ完全に消滅させた。

 

その時、丁度砕牙がやって来た。

 

「霊夢!! 皆!! メジスは!?」

 

「それなら、あの騎士が…」

 

霊夢が魄狼を指差すと、魄狼は砕牙に近づいて砕牙の前に立つ。

 

『貴様が、黄金騎士 牙狼の称号を持つ道外砕牙か?』

 

「ああ… お前は?」

 

『僕は…』

 

魄狼は鎧を解き、元に戻ると、砕牙に名乗る。

 

「僕は魂魄妖夜(こんぱくようや)、幽玄騎士 魄狼の称号を持つ」

 

「魂魄?」

 

「ええ、妖夢の兄よ」

 

「兄さん、何故今幻想郷に?」

 

「その前に言って置きたい事がある」

 

妖夜は、砕牙の胸ぐらを掴み叫ぶ。

 

「さっきの戦いは何だ!!」

 

「いきなり何だよ!?」

 

「さっきの戦い…… お前は回りの人魂や被害を気にして、戦いに集中していなかっただろう!!」

 

「そ、それは…」

 

確かにメジスとの戦いで砕牙は回りに気を配り戦いに集中していなかっただろう。

そのせいでメジスが生きている事にも気がつかなかった。

 

「でも! 例え死んでいても、魂をホラーに喰われるなんて……!」

 

「その結果がこれだ! 戦わなくてもよかった魔戒法師が戦う羽目になり、幽々子様達を危険に晒した!!」

 

「……」

 

砕牙は妖夜の主張に何も言う事が出来なかった。

 

「お前は甘い。こんなのが黄金騎士だとは…… 牙狼の称号も墜ちたものだな!!」

 

「さっきから聞いていれば!! 貴方ねえ!!」

それを聞いた霊夢が激昂し、妖夜に噛みつこうとするが、砕牙がそれを止めた。

 

「いいんだ霊夢…… 妖夜の言う通りだ…… 俺は… 牙狼に相応しく無いのかも…」

 

「そんな事……!」

 

「ふん、言い返す気力も無いか、腰抜けめ!! 例え黄金騎士だろうと、僕はお前を認めない!! 僕達魔戒騎士は、唯ホラーを狩り続ければいいだけだ!!」

 

砕牙はフラフラと意気消沈しながら、白玉楼を去っていった。

 

「砕牙……」

 

霊夢は…… その背中を唯見詰める事しか出来なかった……

 




己の信念を見失い、戦意を失う金狼。

牙を無くした金狼の為、紅白の巫女が立ち上がる。


次回 再起


立ち上がれよ砕牙! 俺様達は待ってるぜ!

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