牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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再起

博麗神社の縁側、砕牙はそこで佇んでいた。

特に何かをするわけでもなく、虚ろな瞳で、ただ地面を眺めているだけだった。

 

「砕牙の様子は?」

 

「駄目…… もう何日もあんな感じ」

 

そんな砕牙を、影から心配そうに見詰める霊夢と和真。あれから一度も、砕牙はホラー狩りに出ておらず、鎧を纏うばかりか魔戒剣すら持っていなかった。

 

「その妖夜って奴、一体何様のつもりなんだ。砕牙はそいつが居ない間、幻想郷を守って来たってのに… おまけに牙狼に相応しく無いだと? 冗談も大概にしやがれってんだ!!」

 

「でも…… 砕牙自身は、その事を認めちゃってる…それをどうにかしないと」

 

「ほっとけよ、あんな奴」

 

すると、二人の元に玲司がやって来る。

その表情は、何時ものおちゃらけた表情では無く、酷く険しい物だった。

 

「それどういう意味だよ!!」

「言葉の通りだ。言葉一つで潰れる様な奴、魔戒騎士でも何でもない…… ただの足手まといだ」

 

「彼奴が何れだけ苦労して牙狼なったか!! お前だって知らない訳じゃねえだろ!? 録に師匠も居ない、それでも彼奴は牙狼になった! それをたった一言で否定されるなんて…… あんまりだろ……」

 

玲司の言いぐさに激昂し、玲司の胸ぐらを掴みあげる和真、それに対して玲司は―――――

 

「それでも潰れちまったら意味が無いだろ」

 

―――― 然も当たり前の様に、平淡に返した。

 

「てめえ…… それでも彼奴のダチか!? 彼奴があのまま潰れて行くのを、黙って見てるのか!? お前はそれでいいのかよ!!」

 

和真は、今にでも殴りかかりそうになる右手を必死に押さえながら、玲司に怒鳴り付ける。

 

しかし……

 

「言い訳無いだろ!!」

 

玲司もまた激昂し、和真の手を外す。

 

「だが俺達は魔戒騎士!! 守りし者だ!! 彼奴ばっかにかまけていられねえ…… こればっかりは、彼奴が自分で立ち上がるしかねえんだよ……」

 

その言葉の意味を理解したのか、和真は怒りと憤りを何とか押さえ、苦い顔をした。

 

「そうだよな…… こうしてる間にも、ホラーは暗躍している。砕牙ばっかに構っている訳には、いかねえよな………」

 

その時だった。

三人の間にスキマが開き、中から紫と幽々子が出てくる。

 

「はぁい♪」

 

「元気にしているかしら?」

 

「元気だったら、こんな顔していないわよ……」

 

「そう…」

 

そう言って、紫は縁側の砕牙を見る。

 

「砕牙はまだ?」

 

「ええ、ずっとあんな感じ…」

 

「霊夢、私に任せてくれないかしら?」

 

「幽々子が?」

 

「ええ、きっとやって見せるわ」

 

幽々子は手に何かを持つと、そのままフヨフヨと浮いて、砕牙の元へと向かった。

 

「大丈夫かしら……」

 

「幽々子ならやるわ。それより霊夢、貴女にやってもらいたい事があるの」

 

「やってもらいたい事?」

 

「そう、上手くいけば貴女の戦力の向上に繋がるし、何より砕牙の助けにもなるわ」

 

『砕牙の助けになる』 その言葉を聞いた瞬間、霊夢にはその話を受けないと言う選択肢は頭の中から消えていた。

 

「やるわ。私だって、砕牙を支えたい、隣で戦える位強くなりたい!!」

 

「かなり危険よ? それでも?」

 

「今までも充分危なかったでしょ?」

 

「そうね。じゃあ、行きましょうか」

 

紫はスキマを開き、中に入っていった。

霊夢も入ろうとするが、何かを思い出した様に、玲司に向き直る。

 

「玲司、咲夜の事だけど……」

 

「彼奴の話はしないでくれ…」

 

明確な拒絶、しかし霊夢は、これだけは玲司に伝えて置かなければならないと思い、強引に聞かせた。

 

「いいから聞きなさい。…… あの子、倒れたらしいわ」

 

咲夜が倒れた。

その事を聞いた玲司は、言葉には出さなくても、表情は驚きの色に染まっていた。

 

「うわ言でずっと貴方の名前を呼んでいるらしいわ… 玲司、貴方ずっと紅魔館に戻っていないんでしょ?」

 

「………」

 

「早く会いに行って。このままじゃ、本当に咲夜が壊れちゃう」

 

「……… ああ、ありがとな、霊夢」

 

玲司は霊夢に礼を言って、博麗神社を去っていった。

 

「さて、俺もお仕事しますか。頑張れよ、霊夢」

 

「ええ、貴方も」

 

それに続く様に和真も神社を去る。

霊夢は、今だ沈んでいる砕牙を一瞥して、ほんの微か、届く筈の無い音量で小さく告げた。

 

「行ってきます。砕牙」

 

そうして霊夢も、スキマの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢がスキマの中に消えても、砕牙は未だ地面を眺め続けている。

そんな砕牙の視界を真っ白な手が塞いだ。

 

「だーれだ?」

 

「………」

 

しかし砕牙はそんな事気にも留めず黙り続けた。

 

「もう! ちょっとは反応してくれても良いのに!」

 

「……… 何の用ですか?幽々子さん……」

 

「気づいているなら最初から答えなさい!」

 

扇子で、ポカリと砕牙の頭を叩く幽々子。

それでも砕牙は反応薄く、ピクリと動いてそれっきりだった。

 

「…… やっぱり気にしてるの? 妖夜の事」

 

「…………」

 

「もしそうなら謝るわ、あの子の主として」

 

「……… 彼奴の言った通りなんですよ……」

 

やがて砕牙は、ぽつりぽつりと話し出す。

だが、相変わらず何処を見ているのかは分からなかった。

 

「俺は牙狼に相応しく無いんです…… 守りし者だ、黄金騎士だって言っても…… 結局、身近な奴でさえ守れない…… 俺は…… 無力だ…」

 

「なら、諦める?」

 

「え?」

 

「そうでしょう? 牙狼に相応しく無いなら戦わなければいい。そうすれば、悩む事は無いわよ?」

 

『諦める』

 

この言葉を聞いた砕牙は、胸の奥がズキリと痛むのを感じた。

けれど、今の砕牙にその痛みの意味は分からない。

 

「でも、私は貴方が牙狼に相応しく無いなんて思わないわ。それはきっと、紫も霊夢もそう…… だから気にする事は無いのよ。貴方が貴方らしくいれば」

 

「俺が…… 俺らしく……」

 

「もし、貴方が明確な証が欲しいなら、丁度いい物があるわよ?」

 

幽々子は持ってきた袋から、盤と、魔界文字が書かれた沢山の駒を取り出した。

 

「これは……」

 

「バルチャス。聞いたことは有るでしょ? 昔の格言にこう言うのがあるのを知ってる? 『バルチャスを制する者は―――――」

 

「――――― 最強の魔戒騎士の資質あり』……」

 

「そう言う事♪ そして最強の魔戒騎士と言えば?」

 

「黄金騎士…… 牙狼……」

 

「そう、貴方の持つ称号よ。 バルチャスで私に勝てれば、貴方には、立派に黄金騎士の資格があるって事でしょう?」

 

にこやかに砕牙に笑いかけ、バルチャスの駒を盤に並べ、魔導筆で術を掛ける。

 

「これでよし! さっ、始めましょう。ルールは通常のバルチャスと同じよ。やったことは?」

 

「一応は……」

 

「ならいいわ」

 

そう言うと、幽々子は騎士が書かれた駒を真ん中に置く。

それを見た砕牙は、同じく騎士の駒を真ん中に置く。

 

「それじゃ、勝負ね」

 

二つの駒を縦にして重ね合わせると、二人は駒の上で印を組み、力込める。

 

「「はっ!」」

 

すると、駒の上で内なる魔界の様な空間が小さく広がり、その中には、魔戒剣を構える影の騎士が二人が睨みあっていた。

 

これは、二人のイメージが形になったもの。

二人のイメージに強く残っている者の姿が、影として写り込む。

 

イメージからして、砕牙は自身の父、流牙。幽々子は初代牙狼の継承者であると思われる。

 

〈ほう、流牙に刀牙か、これは見物だな〉

 

そして、二人のイメージが剣を交える。

互いに切り合い、蹴飛ばし、殴り合い……

そうした攻防が一時続くと、幽々子のイメージが砕牙のイメージを切り裂いた。

 

「うわっ!?」

 

その瞬間、砕牙の駒は弾け飛び、 魔界文字となって消滅した。

 

「バルチャスは最後の駒を破壊するまで続くわ。さっ、どんどん行きましょうか」

 

そうして幽々子は、また騎士の駒を真ん中に置き、砕牙も負けじと騎士の駒を真ん中に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃霊夢は現代の京都にいた。

場所は、かつての日本の最高権力が集い、天皇が暮らしていたとされる、都の光宮の跡地。

 

その近くに併設されていた陰陽師の名家、安倍家を祀っている神社の地下だった。

 

地下は、とてもじゃないが広々としていて、まるで何かを封じ込めているかの様だった。

 

「ここが……」

 

「ええ、かつて陰我の蔓延していた京の都を当時の黄金騎士と共に守り抜いた、安倍家の天才陰陽師にして平安最強の魔戒法師、安倍星明が残した魔導具、葛子姫よ」

 

霊夢と紫の目の前には巨大な鳥居と祠が鎮座していて、何者も寄せ付けない結界が張ってあった。

 

「もう千年以上前に張られた結界の筈なのに…… まだ強力に法力が作用しているなんて」

 

「流石、平安最強の魔戒法師ね。でも…… 境界を弄ってやれば……」

 

紫が結界に手を翳すと、結界に人一人入れる程の大きさの裂け目が出来た。

 

「さあ霊夢、ここからは貴女一人で行きなさい」

 

霊夢は頷くと結界に入り、祠の封印を解き放った。

 

 

グルルル……

 

 

封印を解き放った瞬間、奥から獣の唸り声が聞こえ、地面を震撼させながら霊夢に近づいてくる。

その獣を見た瞬間、霊夢から冷や汗が額から流れ落ちた。

 

「こんな化け物を従えていた安倍星明って一体どんな人だったのよ!?」

 

獣は霊夢を見定める様に、睨み付ける。

やがて、獣の中で霊夢の価値が決まったのか、獣は咆哮を一つ上げると、霊夢に迫った。

 

「いいわ、砕牙の為だもの! やってやろうじゃない!」

 

霊夢も、魔導筆と魔導スペルカードを持ち、獣へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方玲司は、ラナウェイを討伐した時以来に紅魔館へとやって来ていた。

だが、あんなことを言った手前足取りは重い物だった。

 

〈ゼロ、やっぱり会いづらい?〉

 

「まあね。でも咲夜が俺のせいで倒れたなら、キチンとしないと」

 

〈ゼロ…… 私は今まで沢山の絶狼を見てきたわ。誰も彼も皆、愛なんて要らないなんて言ってたけど…… 誰よりも寂しがり屋だった。せめて貴方だけでも、私は幸せになってもらいたいのよ〉

 

「気持ちは嬉しいけど、俺はお前が居ればそれで十分さ、シルヴァ」

 

暫くすると、玲司は森を抜けて湖に出ていた。

顔を上げると、紅くそびえ立つ紅魔館があった。

 

「相変わらず趣味の悪い館だ」

 

そうこうしてる内に門の前までたどり着き、玲司は歩みを止めた。

まだ玲司は、咲夜に対して罪悪感があるからだ。

 

〈行かないの? ゼロ〉

 

「咲夜に何て言えば良いんだよ…… 身勝手に頭ごなしに振った奴だぞ? そんな奴にあった所で……」

 

「玲司さん!? 戻ってきたんですね!!」

そんなやり取りをシルヴァとしていると、門番の美鈴に見つかってしまう。

 

「早く中に! 咲夜さんが待ってますよ!!」

 

「おい美鈴!俺は……!」

 

「何言っているんですか!? さっ、早く!!」

 

美鈴に捕まった玲司は、瞬く間に紅魔館の中に放り込まれた。

 

「くそっ… 美鈴の奴…」

 

「あら玲司。ここで何をしているのかしら?」

 

すると、レミリアがベランダから飛び降りて、玲司の目の前にやって来る。

その顔は心なしか怒っている様にも見えた。

 

「レミリア、俺は…」

 

「分かってるわよ。さっさと行きなさい。貴方のせいで咲夜の紅茶が飲めないのよ、だから責任をもって咲夜をどうにかしなさい。なんなら抱いても良いわ、手段は問わないから」

 

「はぁ!? お前何言って…」

 

「つべこべ言わずにさっさと行く事、良いわね?」

 

そう言いつつレミリアは、紅い槍を作り出して玲司の喉元に突きつけた。

暗に責任を取らないと殺すと言っているのだ。

 

故に……

 

「アッハイ」

 

素直に従う以外の選択肢は玲司には無いのだ。

 

 

 

 

 

レミリアから咲夜の部屋を教えてもらった玲司は、咲夜の部屋の前に立つ。

これからどの様な事を話そうか悩んだが、答えは出なかった為、早々に扉を開けて部屋に入った。

 

目に入ったのは、咲夜が眠っている姿だった。

咲夜は息苦しそうに、呻いていた。

 

玲司は、そんな咲夜に近づいて頭を撫でた。

 

「嫌ぁ…… 行かないで…… れいじぃ……」

 

寝言で、玲司の名前を呼びながら涙を流す咲夜。

玲司は自分の自分勝手な言葉のせいでこんな重荷を背負わせたのかと、自身の行動に少し後悔した。

 

「咲夜」

 

自身にとっては最愛とも言える咲夜の名前を呼びながら、玲司は咲夜の頬を撫でる。

 

すると…

 

「うぅ…… 玲司……?」

 

「お早う、咲夜」

 

咲夜が目を覚ました。

咲夜は玲司を見た瞬間、息を飲み、ポロポロと涙を流して玲司の顔を眺めた。

 

「もう…… 二度会わないんじゃなかったんですか……?」

 

「そのつもりだった」

 

「0は1にしちゃいけないんじゃなかったんですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

「だったらどうしてここに居るんですか、早く何処にでも行けばいいじゃないですか……」

 

咲夜も意地になっているのか、本当は今にでも玲司に抱きつきたい筈なのに、玲司の思いを邪魔したく無いと、自分の思いとは反対の事を口にしていた。

 

咲夜は、何処までも一歩後ろを着いていく瀟洒なメイド長なのだ。

 

「だからって、俺のせいで泣いている咲夜を放っておけるかよ」

 

「でしたら、もう泣き止みました。ですから出ていって下さい」

 

「咲夜…」

 

「出ていって…… 私の事は放って置いて……」

 

「咲夜!」

 

「いい加減に……!?」

 

咲夜は我慢が出来なくなり、玲司を怒鳴ろうとしたが、それは出来なかった。

 

咲夜が振り替えると、玲司の顔がすぐ近くにあり、唇には、柔らかい何かが当たる感触があった。

それが玲司の唇だと気が付くのには時間がかかってしまったが…

 

「…… 狡いですよ… 玲司は…」

 

「ごめん、でも今の俺に気持ちを伝える手段が他に無かったから」

 

〈ゼロ、悪いけどホラーよ〉

 

タイミングが悪いとはこの事か……

ホラーの出現に玲司は直ぐ様表情を変える。

 

「分かった。何処だ」

 

〈人里ね、それもかなり沢山!!〉

 

「行ってしまうんですか?」

 

咲夜は不安の籠る声で玲司に訪ねた。

玲司がまた居なくなると感じたから。

そんな咲夜を見て、玲司はシルヴァを外して咲夜の首に架けた。

 

「必ず取りに戻ってくる。約束するよ」

 

そう言うと、玲司は紅魔館を後にした。

 

〈大丈夫よ咲夜。ゼロは出来ない約束は絶対にしないわ〉

 

「はい」

 

咲夜はシルヴァに励まされながら、再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方博麗神社では……

 

「…… 私の負け。流石、牙狼の称号を受け継ぐ者ね」

 

最初でこそ幽々子は勝っていたが、徐々に砕牙に負けていき、最終的に幽々子が先に全ての駒を破壊されてしまっていた。

 

「…… こんなことで何が分かるんですか…」

 

「あら? 最初に言ったわよ? バルチャスを制する者は…」

 

「そんなの只の言葉遊びじゃないですか!!」

 

バルチャスには勝ったものの、明確な自信が付けられなかった砕牙は苛立ち、幽々子を怒鳴り付ける。

 

「そうね…… なら、このまま貴方は何もしないの? 力はあるのに、失われていく命を黙って見過ごすの?」

 

「それは!?」

 

「それに貴方は少なくとも、誰かの思いを背負って牙狼になった筈よ。それすらも忘れてしまったの?」

 

幽々子の言葉に思い当たる所が有るのか、砕牙はそれっきり黙って俯いてしまった。

 

その時砕牙が思い出していたのは、父、流牙の言葉。

 

 

『砕牙…… 強くなるんだ!』

 

 

(そうだよ…… 俺は、父さんに強くなるって誓ったじゃないか!! あの時だって……)

 

 

『砕牙…… 強くなれ……』

 

 

(牙狼の英霊とも約束したじゃないか!! それなのに…… 俺は……!)

 

砕牙が、さまざまな事を思い出していた時、ザルバは砕牙と幽々子に告げる。

ホラー出現の報せを……

 

〈砕牙! 幽々子! ホラーだぜ。それも大量だ!〉

 

「何ですって!?」

 

〈場所は人里だ!…… だが、どうする砕牙。 行くのか?行かないのか?〉

 

「俺は…… 俺は……!」

 

砕牙は、魔法衣と魔戒剣を掴み、人里に向けて走っていった。

 

その様子を、幽々子は微笑ましく見ていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里に着くと既に、和真、睦月、妖夢、早苗、そして妖夜が、ホラー達と戦っていた。

 

「キリがありません!! 師匠!!」

 

「諦めんな睦月!! 剣を振るい続けろ!!」

 

「はあっ!!」

 

「せいっ!!」

 

人里は混戦状態になっていて、人里の住民達は避難した後なのか誰一人いなかった。

 

その中に、砕牙は自身の魔戒剣を抜き放ちながら突入していった。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

ザシュ!! ザクッ!! ドシュ!!

 

 

「ギェエェエエェエェッ!!!!」

 

全員が固まり、円陣を組むと、妖夜は苛立ちを隠さずに砕牙に怒鳴った。

 

「足手まといの腰抜けが一体何をしに来た!?」

 

「うるさい!!!!」

 

しかし、砕牙はそんなことを気にも留めずに再びホラーの群れの中に飛び込んでいった。

 

「彼奴…」

 

「へっ、どうよ。あれがお前が足手まといといった魔戒騎士だ。少しは考えを改めたか?」

 

「何をバカな事を……」

 

〈喧嘩をしている場合ではありません!! 来ますわよ!!〉

 

「「!」」

 

カルヴァの忠告により、ホラーの接近にいち早く気が付いた妖夜と和真は、互いの後ろにいたホラーを切り裂いた。

 

「フン、やるな」

 

「てめえも…… なっ!」

 

〈おい和真。玲司の奴が来ているぜ〉

 

「何!?」

 

ディルバの言葉通りに、向こうの方を見ると……

 

「はあぁぁぁぁっ!!!!」

 

玲司が二本の魔戒剣を携え、ホラーを切り刻みながらやって来ていた。

 

「玲司!」

 

「和真! これどうなってやがる!?」

 

「分からねえ。とにかくまずは殲滅だ!」

 

「貴様が銀牙騎士か」

 

「そう言うお前は幽玄騎士だな」

 

「フン… 精々足を引っ張るなよ!!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

三人の魔戒騎士は、各々の武器を持ち、ホラーの群れに飛びかかっていった。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

砕牙は次々とホラーを斬っていた。

しかしホラーの数が多すぎるのか、一向に勢いは止まらなかった。

 

(ホラーが多すぎる!? 一体どこから!?)

 

「キシャァァァァァッ!!!!!!!!」

 

「くっ!! 邪魔だぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

ザン!!

 

 

「シャァァァァァッ!!!?」

 

やがて、ホラーの数が漸く数える程になった時、異変は起こった。

 

「バカな!?」

 

「嘘だろ……」

 

ホラー達は、二、三体単位で融合し、一回り大きくそして強大になった。

 

「はっ!!」

 

その時、蝶の使い魔が、ホラーと砕牙達の回りを旋回して法力を振り撒き、辺りに結界を張った。

 

「幽々子さん(様)!」

 

「砕牙君、忘れ物よ」

 

結界を張ったのは幽々子だった。

幽々子は砕牙に何かを投げ渡す。

 

〈おいおい砕牙、俺様を忘れて行くとはどういう事だ!?〉

 

「あっ!? ご、ごめんザルバ」

 

渡された物はザルバであった。

砕牙は、余りに必死で急いでいたので神社にザルバを忘れてきてしまったのだ。

 

「答えは見つかったの?」

 

「はい!俺は俺の道を行きます!! 誰に何と言われようと、俺が黄金騎士である限り、俺は戦う!」

 

砕牙はザルバを左手に嵌めると、前に出てホラー達を睨みつける。

 

そして魔戒剣を天に掲げて円を描いた。

 

円の内側は砕け、そこから光が溢れだして砕牙を包み込む。

更に黄金の鎧が召喚され、砕牙は牙狼となった。

 

『ハァァァァァ……』

 

鎧からはまるで砕牙を祝福するかの様に緑の魔導火が溢れだし、その瞳は、以前までは黒に近い紫だったが、今は鮮やかな紫色に変わっている。

 

それは、砕牙が完全に牙狼の鎧に認められた証だった。

 

牙狼は牙狼剣を構えてホラー達に言いはなった。

 

『貴様らの陰我…… 俺が断ち切る!!!!』

 

「キシャァァァァァッ!!」

 

その瞬間融合ホラーが牙狼に襲い掛かるが、牙狼は慌てず受け止めて、牙狼剣で切り裂いた。

 

『ハアァァァァッ!!!!』

 

「俺達も行くぞ!」

 

玲司達も、牙狼の戦いに参戦しようとするが、それを幽々子に止められた。

 

「ここは砕牙君に任せましょう」

 

「何故です!?」

 

「そんなに彼が信用出来ないの妖夜。なら彼に聞いてみましょうか。砕牙君!」

 

幽々子の呼び掛けに、牙狼はホラーの攻撃を受け止めながら聞く。

 

「貴方がホラーを幾ら倒してもそれは尽きないわよ?」

 

その問いに対して砕牙は速答する。

 

『俺は魔戒騎士だ! 全てのホラーを討滅する!!!!』

 

そして牙狼はホラーを切り裂き、残りのホラー達に向けて牙狼剣を構える。

 

すると、勝ち目が無いと思ったのかホラー達は更に融合して一体の巨大なホラーになった。

 

「なっ!? まだ融合するのか!?」

 

「ガアァァァァァァッ!!!!」

 

『グアァァァ!!!!』

 

巨大な爪が牙狼を捉え、牙狼は吹き飛ばされていった。

 

その時!

 

「ちょっと!? もう始まってるじゃない!?」

 

ボロボロの巫女服を着た霊夢がやって来た。

 

「あら霊夢、遅かったじゃない」

 

「遅かったじゃないじゃ無いわよ!! それに…… 砕牙!?」

 

「ええ、見事に立ち直ったわ」

 

「良かった……」

 

霊夢は砕牙が、牙狼となって戦っているのを見て心底安堵していた。

修行している間も砕牙の事が気が気じゃなかったのだ。

 

「霊夢、貴女も修行の成果を見せる時よ」

 

「分かっているわ。はっ!!」

 

霊夢は魔導筆で円を描くと地面に巨大な紋章が現れ、そこから、牛車と融合した巨大な獅子が現れた。

霊夢は、牛車の部分に乗ってホラーに突撃していった。

 

「行って!! 葛子姫!!」

 

「ガアァァァァァァッ!!」

 

これこそ平安最強の魔戒法師、安部星明が遺した魔導具、葛子姫である。

 

葛子姫は、その巨体から生み出されるパワーを生かしてホラーに体当たりし、ホラーを吹き飛ばした。

 

「砕牙!!」

 

『霊夢!? な、何だこれは!?』

 

〈葛子姫か。また懐かしい物を引っ張り出して来たな〉

 

「いいから早く乗って!!」

 

『わ、分かった。ハッ!!』

 

牙狼は葛子姫の先頭に乗って、牙狼剣を構えた。

そして、葛子姫の車輪の轟音は、轟天の聖なる蹄音と同じ効果を持つ為、牙狼剣は牙狼斬馬剣へと姿を変えた。

 

『ウオォォォォ!!!! ハアッ!!!!』

 

牙狼は葛子姫の突撃と同時に牙狼斬馬剣を突き込み、融合ホラーを消滅させた。

 

そして鎧を解除して、霊夢に向き直って砕牙は謝った。

 

「心配かけてごめんね。霊夢」

 

「ううん。 大丈夫、砕牙はきっと戻ってくるって信じていたから」

 

「ありがとう、霊夢」

 

幽々子は、そんな二人を見て妖夜に語りかける。

 

「あれでもまだ認められない?」

 

「あれぐらい当然ですよ。やはり僕は認められない」

 

そう言って、妖夜は去っていった。

 

「まだまだ打ち解けるには時間がかかるかしら? でも、頑張ってね。砕牙君」

 

「ガアァァァァァァッ!!!!」

 

ホラーから守り抜いた人里には、葛子姫の勝利の雄叫びが、木霊していた。




少女は飛び続ける、風よりも早く。

少女は伝え続ける、ネタを求めて。


次回 文 ~Scoop~


明日の号外に乗るのは、誰なのか……
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