牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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家の作品の霊夢ちゃんは素直です。
守銭奴ではありません。

八雲家も其れほど暗躍してません。

それだけは記して置きます。


砕 ~Saiga~

ホラーファントマの人里襲撃の翌日…

博麗神社ではいつも通りの朝がやって来た。

霊夢は日課である祝詞を済ませ、いつも通りに掃除をしようとした。

 

「ん~… 今日もいい天気になりそうね~」

 

体を伸ばし、掃除に入ろうと境内に降りた時、そこには何時もとは違う風景があった。

 

「はっ! ふっ! はぁぁっ!!」

 

一人の少年が剣の素振りをしているのである。

彼の名は道外砕牙、訳あって昨日からこの博麗神社に居候しているのだ。

 

「………」

 

ああいうのを洗練された剣技というのだろうか、と霊夢は砕牙の振るう魔戒剣の軌跡をいつの間にか目で追っていた。

 

「ん?」

 

すると、じっと見つめている霊夢に気がついたのか、砕牙はニコッと人懐っこい笑みを浮かべて霊夢に声を掛ける。

 

「おはよう、霊夢」

 

「おはよう、砕牙」

 

何故二人が同居することになったのか?

それは昨日の夜まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名は道外砕牙… 魔戒騎士だ」

 

霊夢に名を尋ねられた砕牙は、ハッキリと自身の名を言う。

 

「道外…… 砕牙…… 変わった名前ね…」

 

「ははっ、そうかな?」

 

「それより、さっきの化け物は何!? 貴方の鎧は一体なんなの!?」

 

「いや、そんな一辺に言われても…」

 

「それは、私が説明しましょう。」

 

すると、紫が二人の言い合いを止める。

 

「貴女は?」

 

「私の名は八雲紫。始めまして、道外砕牙さん…… いえ、黄金騎士 牙狼 」

 

「!? 牙狼を知っている!? 貴女は何者なんですか」

 

砕牙は紫の口から牙狼の名が出た事に驚き、紫を警戒する。

紫は、そんな砕牙を見てクスクスと笑う。

 

「…… 何が可笑しいんですか」

 

「ウフフ♪ いえね、反応があの人そっくりだからつい…」

 

「それより、貴女は何故牙狼を知っているのですか?まさか… ホラー…」

 

砕牙が剣を抜こうとすると…

 

「フフ、確かに人間では無いけれど、ホラーでも無いわよ。私は…」

 

紫は懐から、一本の毛筆を取り出す。

それを見た砕牙はようやく合点がいったのか、剣から手を離し、紫に頭を下げて謝る。

 

「魔戒法師!? 申し訳ありません、今までの無礼をお許し下さい。八雲法師」

 

「いいわよ、そんなに畏まらなくても、普通にゆかりんでいいわよ?」

 

「あはは… では紫さんで…」

 

「ねえ… 私さっきから話しに着いていけないんだけど…」

 

ここで二人はようやく霊夢の存在を思い出す。

 

「そういえば… 霊夢に説明してなかったわね…… ここで話すのも何だし、博麗神社に行きましょうか」

 

そう言うと紫は空間に裂け目を創り、博麗神社への直通の道を開いた。

 

「これ…… さっきの… これで移動してたのか…」

 

「そ、紫の境界を操る程度の能力よ」

 

二人は紫の後に続き、博麗神社へと移動した。

 

 

 

 

 

所代わって、博麗神社の客間…

 

「それじゃ改めて話しを聞こうじゃない」

 

「うん、どれから聞きたい?」

 

〈それは俺様が話そう〉

 

すると砕牙の指輪、ザルバが声を出す。

当然、物が喋る所を見たことの無い霊夢は驚いてしまう。

 

「ええ!? ゆ、指輪が喋った!?」

 

〈失敬な!! 唯の指輪じゃない!! 魔導輪だ!!〉

 

「貴方は相変わらずねえ、ザルバ」

 

〈ああ、久しぶりだな。紫〉

 

砕牙はザルバと紫が知り合いであることに驚いていたが、後からでも聞けると思い詮索はやめておいた。

 

〈それで? 何が聞きたい、嬢ちゃん〉

 

「嬢ちゃんじゃなくて、博麗霊夢よ。そうね… まず、魔戒騎士っていうのを聞かせて貰おうかしら」

 

それを聞くとザルバは解説し始めた。

 

〈分かった。魔戒騎士とは、古の魔獣ホラーを討伐するために生まれた騎士達の事を差す。さっきも見たように鎧を召喚して戦う。〉

 

「砕牙が着ていた黄金の鎧ね。」

 

〈そうだ。魔戒騎士には一般騎士と称号持ちがいる。砕牙はその称号持ちの中でも最強の称号、黄金騎士 牙狼〈GARO〉の称号を受け継いでいる。〉

 

「へぇ~ 砕牙って凄かったんだね」

 

「まあね」

 

〈次に魔戒法師だが… これは騎士とほとんど変わらない。鎧を召喚せず、法術を用いて戦う。〉

 

「じゃあ、次はあの化け物について聞かせて」

 

〈ホラーか、ホラーは〉

 

「人を食らう化け物だ」

 

ホラーについてザルバが語ろうとした時、砕牙が途中で言葉を被せる。

 

〈おい砕牙、今俺様が話して〉

 

「ホラーについて話したって仕方無いだろ。霊夢、お前はこの先を知る覚悟があるか?」

 

「…… あるわ、ホラーが人を襲っているなら、博麗の巫女として、見過ごす訳にはいかないもの」

 

「そうか…… なら明日はホラーを狩りに行こう。口だけなら何とでも言えるからな」

 

砕牙の言い種に霊夢は少しムッとするが、砕牙も別に霊夢を嫌っているから言っているのでは無い。

むしろ、心配しているからこのような言い方をしたのだ。

 

「それじゃ、これから砕牙は家の神社に居候ね」

 

すると、霊夢が何故か砕牙を神社に居候させると言い出した。

 

「はぁ!? い、いきなり何を」

 

「だって… 砕牙何処に住むのよ」

 

「いや、野宿でも…」

 

「駄目よ!! 貴方が居なかったら誰が、私にホラーの事を教えるのよ」

 

至極真っ当な事を言われてしまった砕牙は完全に霊夢に押し負けてしまった。

そこからなし崩しに、博麗神社に居候が決まってしまったのである。

 

ザルバと紫は終始笑っていて、自分のいった事を自覚した霊夢は顔を真っ赤にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも良かったのか?霊夢」

 

「何が?」

 

「いや、見ず知らずの俺を居候させて…」

 

「砕牙は別に私に何もしないでしょ?」

 

「そりゃそうだけど…」

 

「ならいいじゃない…… それに嫌じゃないし…」

 

「何か言った?」

 

「何でも無い!! 朝ごはん出来てるから食べましょ」

 

ほんのりと顔を赤くした霊夢の様子が分からず困惑していた砕牙だが、再び霊夢に呼ばれていそいそと神社の中に入った。

 

 

 

 

 

 

あっという間に夜になり、二人はホラー狩りの為の準備をしていた。

 

「霊夢、止めるなら今だぞ」

 

「大丈夫。やるわ」

 

「準備は出来たみたいね」

 

例のあの裂け目からやって来たのか、紫が鳥居に立っていた。

だが一人ではなく、もう一人、紫と同じ様なゆったりとした着物を着ている女性が。

 

「君が、牙狼だね?」

 

「はい、道外砕牙です。 貴女は?」

 

「私は八雲藍。紫様の式だ」

 

そう言う彼女の後ろには彼女の物と思われる九本の尻尾が揺れていた。

 

〈元気そうだな。藍〉

 

「ああ、お前は相変わらずだな、ザルバ」

 

「じゃあ、藍さんも魔戒法師なんですか?」

 

「ああ、主に魔導具の制作をしている。ソウルメタルの扱いも長けているから、剣が壊れたら何時でもおいで」

 

「頼もしいです」

 

砕牙は藍と話をしていると、闇が濃くなり、ホラーの活動が活発になる時間帯になった。

 

「そろそろ行きましょうか」

 

紫はスキマを開き、ホラーが出ると思わしき場所へと繋げた。

砕牙達は各々の装備を持ち、スキマに飛び込んでいった。

 

スキマを抜けるとそこは人里で、祭りでも開いていたのか、夜でも人がまだ沢山いた。

 

「霊夢、この中にホラーがいる。昨日話した通り、ホラーは人や物に宿る陰我を嗅ぎ付け、憑依する。ホラーだと思う奴を一人で探してくるんだ」

 

「でも、どうやって?」

 

「怪しい動きをする奴を見つければいい、ただし!絶体に手は出すな。見つけたら知らせろ」

 

「うん。分かった」

 

そう言って霊夢は一人きりでホラーを探す。

この沢山いる人々の中から一匹のホラーを見つけるのは至難の技だが、霊夢は持ち前の感を頼りに探していく。

 

「………」

 

「あらら! 博麗の巫女様じゃあないですか!! おじさん酔っぱらっちゃったよ~」

 

「おっ!霊夢ちゃん、ちょっと寄ってくかい!?」

 

「あら霊夢ちゃん、霊夢ちゃんもお祭りにきたの?」

 

すると、霊夢は一人の女性を見つける。

霊夢はその女性を確認すると、砕牙達の元へ戻って行った。

 

「で? どいつか分かったか?」

 

「うん、あの女の人だと思う」

 

「どうしてそう思う」

 

「あの人、さっきからうろうろしながら人の顔ばかりを見ているの」

 

「見ているだけかもしれないぞ」

 

「確かに顔を見ているだけかもしれないけど、それなら祭りが終わって無いのに、人気の無い暗がりの方へ行くかしら?」

 

「成程ね…」

 

砕牙は霊夢の理屈や調査結果を聞きながら考える。

これなら最後まで霊夢に任せてもいいんじゃ無いかと…

それは当然、悪い意味も含まれているが…

 

「よし。なら最後までやってみるか。」

 

結論をだした砕牙は、自身のライター型の魔導具、魔導火を霊夢に見せる。

 

「それって… 昨日砕牙がホラーに翳していた奴よね?」

 

「そう魔導火だ。使い方はこうだ」

 

砕牙は、魔導火の使い方を教えて、それを手渡す。

 

「それで、さっきの女の人を確かめろ。違ったら戻ってきな」

 

砕牙の言葉にコクリと頷いた霊夢は、魔導火を抱えて、先程の女性が向かって行った場所へ走っていった。

 

「大丈夫かしら… 霊夢」

 

「今は信じるしか在りませんよ、紫様」

 

やはり育ての親として心配なのか、不安な表情を見せる紫とそれを慰める藍。

 

砕牙は今の内に聞いておきたい事を聞くことにした。

 

「紫さん。今まで幻想郷にホラーが出た事は?」

 

「…… もう何百年も姿を見せていないから幻想郷のホラーは全て封印したと思ったのだけれど…」

 

「まさか… 誰かが封印を解いた?」

 

「可能性はあるわね。でも何の為に…?」

 

「魔戒騎士は居ないんですか? 」

 

「今は魔戒法師が私達二人を含めて五人しかいないの… 騎士は昔に行方不明になったままよ」

 

「そうですか…」

 

幻想郷にホラーを解き放った黒幕がいる可能性が浮かび上がった事に砕牙はとても嫌な予感を感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢が追っていた女性は少し開けた所に出た。

霊夢は彼女にホラーである事を確かめる為に接触を図った。

 

「すみません」

 

「? 何か用かしら」

 

素っ気無い態度を取る女性に、霊夢は即座に砕牙に借りた魔導火を着火させ、女性の顔の前に翳した。

すると、女性の瞳が真っ白に濁り、魔界文字の羅列が浮かび上がった。

 

「ッ!? ホラー!?」

 

「ウフフ… バレたなら仕方無いわね… 博麗の巫女は後のお楽しみにしておくつもりだったのだけど」

 

女性は獰猛な笑みを顔に浮かべた。

瞬間、ホラーの本性を表し、霊夢に襲いかかった。

 

「ァァァァッ!!」

 

「うっ!! くっ!! きゃっ!!」

 

いかに博麗の巫女と言えども所詮は人間、ホラーの一撃に魔戒法師では無い霊夢が耐えられる筈はなく、吹き飛ばされ、木に激突してしまう。

 

「かはっ!?」

 

「シャァァァァ!!」

 

「嘗めんじゃないわよ!! スペカ!! 夢想封印!!」

 

低い唸り声を上げて接近するホラーに霊夢は渾身の弾幕をお見舞いするが…

 

「シュゥゥゥゥゥ……」

 

「うそっ!? 夢想封印が!」

 

余り効果は無く、表面を焦がす程度であった。

 

その様子を砕牙達は木の上から見ていた。

 

〈いいのか?砕牙。 助けに行かなくて〉

 

「………」

 

「霊夢…」

 

砕牙はザルバの問いかけには答えず、ただ霊夢をじっと見詰めるだけだった。

 

「ガァァァァァ!!」

 

「スペカが効かないなら……」

 

スペカが効かないと分かった霊夢は自身のお払い棒を構えて…

 

「物理で勝負よ!!」

 

自信満々にホラーに向かって行った。

 

「「「!?」」」

 

それには流石に砕牙達も驚いた様子で、霊夢の事を見ていた。

 

「やぁぁぁぁっ!!」

 

霊夢が向かって来たホラーに対し、お払い棒でポカンと頭を叩く。

 

「グギャッ!?」

 

すると、効果があったのかホラーは少し怯んだ。

 

「よし! これなら!!」

 

霊夢はここぞとばかりに棒でポカポカとホラーを叩くが、お払い棒自体はただの棒。

ホラーにダメージが通るわけも無く…

 

「シャァァァァ!!!!」

 

「え? きゃっ!?」

 

霊夢は首を捕まれて、吊り上げられてしまった。

 

「う、ぐぅぅ…」

 

「シュゥゥゥゥゥ…」

 

勝ち誇った様に唸るホラー、しかしそれが命取りになってしまった。

ホラーは霊夢を直ぐに捕食せず、いたぶろうといたのだ。

 

 

グサッ!!

 

 

その為後ろには注意が行かず、砕牙の魔戒剣の一撃を食らう事になってしまった。

 

「グギャァァァァ!?」

 

剣を抜き取り、霊夢を抱き上げ、ホラーから離れる砕牙。

霊夢はそんな砕牙の顔をぽーっと見ていた。

 

「いいか?よく見てろ」

 

砕牙は霊夢を降ろし、向かって来るホラーの攻撃を躱し、ちょうど霊夢の目の前で止め、見せつける様に言う。

 

「これがホラーだ」

 

霊夢の目に写ったのは、まさに悪魔と呼ぶに相応しい、異形の怪物だった。

 

砕牙はホラーを蹴り飛ばしながら霊夢に訴える。

 

「ホラーは人に化け…」

 

戻って来たホラーを受け止め、拳打で怯ませ…

 

「人を襲い…」

 

再び掴み、霊夢の目の前に見せつける。

 

「人を食らう!!!!」

 

「………」

 

そんなホラーを霊夢は最大限に嫌悪した表情で見つめていた。

 

「そしてホラーを倒せるのは……」

 

砕牙はホラーを奥に投げ飛ばし、魔戒剣を天に翳し、円を描いて、内側を砕く。

砕けたその空間から光が溢れ、砕牙を照らし、自らの纏う鎧を召喚する。

 

次々と砕牙に纏われていく黄金の鎧、最後に金狼の仮面が纏われ、砕牙は牙狼へと変身した。

 

『魔戒法師と魔戒騎士だけだ!!!!』

 

仮面越しから聞こえる曇った激しい声を聞き、霊夢は戦慄する。

今霊夢は砕牙が確認した覚悟の本当の意味を理解したのだった。

 

『フンッ!!』

 

 

斬!!

 

 

「ギャァァァァッ!!!!」

 

牙狼剣が光を放ちながら、素体ホラーの体を切り裂いていく。

 

『デヤァッ!!』

 

 

斬!!

 

 

「ガァァァァァ!?」

 

切って少し距離を置き、牙狼剣を左手に添えて構える。

そして牙狼は叫びながら素体ホラーに体当たりし、そのまま引き摺って……

 

『ォォォオオオオ!!!!』

 

真っ二つに切り裂いた。

 

『ハァッ!!!!』

 

 

斬ッッッッ!!!!!!

 

 

「ギャァァァァッ!!!!」

 

ホラーは断末魔を残して、文字の様になり消えていった。

その様子を呆然と眺める霊夢。

 

牙狼は彼女に振り向き、鎧を解く。

そして砕牙は少し難しい表情をしたあと、人懐っこい笑顔でニコッと笑ったのだ。

 

それに釣られて、霊夢もニコッと笑う。

 

「どうする?霊夢。 今ならまだ間に合う。今まで通りに生きるか、ホラーと戦い続ける道を選ぶか」

 

再び砕牙は霊夢に答う。

霊夢は少し迷った表情を浮かべると……

 

「私… やるよ。ホラー達と戦う… だから砕牙、私にホラーとの戦い方を教えて?」

 

ホラーと戦う決意を示したのだった。

 

「そうか…… それじゃあ、これからよろしく。パートナー」

 

「こちらこそよろしく。私の騎士様」

 

砕牙は霊夢に手を伸ばし、霊夢はその手を取る。

 

これが二人の… 後に魔戒見聞録と言う書物に記される事になる戦いの始まりだった。




太古より森羅万象に影響するという月の満ち欠け、どうやらホラーだけでなく妖怪にも影響があるみたいだぜ。

次回 半妖

満月の夜には気を付けな?
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