牙狼〈GARO〉 ~東方魔戒録~   作:響く黒雲

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継承

「はぁぁぁっ!!」

 

「ギエェェェェ!!!!」

 

今砕牙は、人里に現れた素体ホラーを相手に戦っていた。

 

「霊夢!!」

 

「分かってるわ!! はぁぁぁ…… はっ!!」

 

霊夢は魔導筆でホラーを吹き飛ばし、一ヶ所に固める。

「これで…… どうだ!!」

 

更に魔導筆で魔界文字の印と陣を描き、素体ホラー達に向けて放ち、魔法陣に触れたホラー達は動きが止まり、固まった。

 

「今よ! 砕牙!!」

 

「ああ!」

 

砕牙は魔戒剣を鞘から抜き放ち、天に円を描き、金色の光と共に鎧を召喚した。

 

召喚された鎧は、足下から砕牙に纏われ、砕牙は牙狼へと成った。

 

『貴様らの陰我、俺が断ち切る!!!!』

 

牙狼は、鞘から牙狼剣を抜き、ホラー達に向かって走り出しだす。

 

『ハッ!!』

 

一匹…

 

『フン!!』

 

二匹…

 

『オオッ!!』

 

三匹と、動けないホラー達を走り様に次々と切り裂いていき、走り抜け、牙狼剣を鞘に納めると共に、ホラー達は一斉に血しぶきを撒き散らして爆散していった。

 

『ハァァァァ……』

 

その数、合計十三体…

その数を相手にして、全く引けを取らなかったのは、砕牙が黄金騎士 牙狼として申し分無い実力を持っているということであろう。

 

『これで最後か…』

 

「やったわね、砕牙」

 

『ああ、後は紫さんに頼んでッ!!』

 

その時、異変は起こった。

 

「砕牙?」

 

『ガッ…!? な、何だ!? この痛みはッ!! ガァァァァァッ!!!!』

 

「砕牙!!!!」

 

突然、牙狼は苦しみだし、中に居る砕牙の叫びが響き渡る。

 

『グァァァァァァァッ!!!!』

 

「砕牙!! どうしちゃったのよ砕牙!!!!」

 

しかし、霊夢の声は砕牙には届かず、牙狼はのた打ち回るだけである。

その体からは、黒い瘴気が漏れだしていた。

 

「霊夢!!」

 

「紫!? どうしよう!? 砕牙が!!」

 

すると、空間にスキマが現れ、中から紫と籃がやって来た。

 

「分かってるから、落ち着きなさい霊夢。貴女は黄金騎士を支える魔戒法師でしょ!!」

 

「でも…」

 

『グワァァァァァッ!!!!!!』

 

苦痛に叫ぶ牙狼を見て、霊夢は目に涙を浮かべる。

 

「紫様、砕牙のあの現象は…」

 

「ええ、体に邪気が溜まり過ぎているのよ。迂闊だったわ… 幻想ホラーは唯でさえ邪気が通常のホラーよりも多いのに」

 

「紫様、一刻も早く鎧を解かないと…」

 

「分かってるわ。籃、砕牙の動きを止めて頂戴」

 

「かしこまりました」

 

籃は身体中から、魔界文字の書かれた札を取りだし、砕牙の回りに、五芒星になるように配置し、魔導筆で術を発動させた。

 

「魔戒五星縛…… ハアッ!!!!」

 

札を起点に、五芒星が描かれ、砕牙の動きが止まった。

 

紫は魔導筆を刀に変化させ、牙狼の鎧の三角形の紋章に狙いを定める。

 

「覚えて置きなさい霊夢。魔戒騎士の鎧が暴走した時は、鎧の紋章を貫くのよ!!!!」

 

そして紫は、刀を紋章に突き立てた。

 

「ハアッ!!!!」

 

『グアァァアァァァアアッ!!!!』

 

刀は紋章を砕き、牙狼の鎧は光を放ちながら、強制解除された。

 

「ザルバ!! 砕牙は!?」

 

霊夢は急いで砕牙に駆け寄る。

 

〈大丈夫だ。だがこいつの体を詳しく調べる必要がある〉

 

「永遠亭なら十分な設備があるわ。籃、準備を」

 

「かしこまりました」

 

意識を失った砕牙は紫達に永遠亭へと搬送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

目が覚めた砕牙が見たものは、見知らぬ天井だった。

 

「あっ!砕牙。目が覚めたのね」

 

横を見ると、横には鈴仙がいた。

 

「ここは永遠亭よ。待ってて、直ぐに皆を呼んでくるから」

 

そう言って鈴仙は部屋を出ていった。

 

 

 

 

暫くすると…

 

「砕牙ぁ!!!!」

 

いの一番、霊夢が砕牙に飛び込んだ。

 

「ぐほっ!? れ、霊夢…… 痛い…」

 

「あっ… ごめんなさい…」

 

「少し落ち着きなさい霊夢」

 

「紫さん…」

 

すると、紫、籃、鈴仙、永琳、玲司が入ってきた。

 

「紫さん… 俺は一体…」

 

「鎧が暴走したのよ」

 

「鎧が!?」

 

「砕牙、お前今まで何れだけホラーを倒した」

 

玲司からの質問にザルバが答える。

 

〈さっきので百体目だな〉

 

「あ~ そりゃ体に邪気が溜まる筈だな…」

 

「邪気が溜まり過ぎているから鎧が暴走したのね」

 

「本来なら、直ぐに浄化の儀を行わないといけないんだが…」

 

〈俺様達は、紫の能力を使っても、幻想郷から出られないからな…〉

 

その時……

 

「……!? ザルバ!?」

 

〈な、何だ!?これは!?〉

 

ザルバと砕牙が突然、金色の光に包まれた。

 

「どうした!? 砕牙」

 

〈皆離れて!! 強制的に転移させられるわ!!〉

 

シルヴァの忠告を受け、直ぐ様皆砕牙から離れる。

それと同時に光が輝きを増していく。

 

「砕牙!!」

 

「霊夢!!」

 

光が弾ける瞬間、霊夢は砕牙を抱き締め…

 

 

キュィィィィン!!!!!!

 

 

二人は、幻想郷から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある場所では…

 

「ここは…」

 

大いなる悪夢が目覚めようとしていた。

 

「…… 思い出した…… 我が使命は、数々の同胞を滅ぼした、黄金騎士の系譜を断ち切ること!!」

 

その悪夢は空間を切り裂き、ある人間を見る。

その人間は砕牙と霊夢だった。

 

「フッフッフ…… 見つけたぞ!! 黄金騎士 牙狼!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュィィィィン!!!!!!

 

 

「くっ!!」

 

「きゃっ!!」

 

転移させられた霊夢と砕牙は見知らぬ森に落ちた。

 

「…… 無事か? 霊夢…」

 

「……… うん、大丈夫…… 砕牙は?」

 

「こっちも無事だ…… ザルバ、お前も大丈夫か?」

 

〈ああ、なんとかな〉

 

二人は起き上がると、辺りを確認した。

 

「ここは…… 何処なの…?」

 

「分からない… ザルバ、分かるか?」

 

〈あの塔に見覚えないか?〉

 

ザルバが教えた場所を砕牙が見ると、そこには、頂上に白い翼のオブジェがある巨塔があった。

 

「あれは英霊の塔!? じゃあここは英霊の森か!?」

 

〈ああ、何の意図かは分からんが、運よく英霊の塔にこれたんだ、浄化の儀を受けておこう〉

 

「浄化の儀って、あの塔で受けるの?」

 

「ああ… そして黄金騎士にとって… 大切な場所だ…」

 

砕牙は霊夢をつれて、英霊の森を塔に向けて進んでいく。

 

「俺は彼処で牙狼の称号を受け継いだんだ」

 

「じゃあ砕牙にとって大切な場所なんだ?」

 

「それだけじゃ無い、あの塔には歴代の牙狼の英霊達が眠っているんだ」

 

霊夢に英霊の塔について話していると、あっという間に英霊の塔の入り口前に着いた。

 

入り口には牙狼の三角形の紋章が掘られていて、厳格な雰囲気を醸し出していた。

 

「それじゃあ霊夢、ここで待っていてくれ」

 

「どうして?」

 

「塔の中には牙狼の称号を持つ者にしか入れないんだ」

 

「そう… 分かった。ここで待ってる」

 

砕牙は霊夢と別れ、英霊の塔に入った。

 

塔の中にある英霊の間に行くと、天井に描かれた紋章が輝き、英霊達の声が響く。

 

《牙狼の称号を受け継ぐ者よ。何用でこの塔に訪れた》

 

「浄化の儀を受けに来た!」

 

《良かろう…… ならば、我らが祝福を授けよう》

 

砕牙が英霊の間の中心に立つと、紋章が動き、床が回転を始め、光が溢れ、金色の光が砕牙を包み込んだ。

 

《道外砕牙よ。お前の体に蓄積された邪気は今、お前の陰我と共に消え去るだろう》

 

そして回転と光の照射が終わり、浄化の儀は終了した。

 

「英霊達よ! 教えてくれ! 何故俺を幻想郷へと導いた!」

 

砕牙のその問いに、英霊達は答える。

 

《幻想郷の創設者、八雲紫との盟約だ。幻想郷が危機に陥った時、我ら牙狼の称号を持つ者が救いに行くと…》

 

「では… 俺達はどうやって幻想郷に戻れば!?」

 

《問題は無い…… 然る後、おのずと戻れるだろう》

 

《今は、幻想ホラーから幻想郷を守るのが先決だ。行け!若き牙狼よ!守りし者としての使命を果たすのだ!》

 

それを聞いた砕牙は英霊達に一礼して、英霊の塔を去った。

 

 

 

 

 

 

「お帰り。どうだった?」

 

「ああ、問題は無いよ」

 

英霊の塔から出た砕牙は待っていた霊夢と森へ戻る。

 

「さて… どうやって幻想郷に戻ろうかしら?」

 

「英霊達は然る後に戻れるって言っていたけど…」

 

色々と考えたが答えは出ず、取り合えず英霊達の言うことを信じて待ってみることにした。

 

「ねえ… 砕牙」

 

「なんだ? 霊夢」

 

「私ね。砕牙に会えてよかったよ」

 

「いきなりどうしたんだよ?」

 

「さっき砕牙が暴走して、苦しんで… 私凄く心配したわ…… お母さん見たいに居なくなっちゃうんじゃないかって…… ねえ砕牙、居なくならないよね? 砕牙は私の前から居なくなったりしないよね?」

 

「どうだろうな… 俺は魔戒騎士。 いつ死ぬとも分からない命だ…… 」

 

「そう… だね…」

 

砕牙の曖昧な回答に少し、気を落とす霊夢だが、そんな霊夢の頬に砕牙は手を添えて言う。

 

「だが…… それでも俺は……」

 

しかし、砕牙がその言葉を告げる前に異変は起こった。

 

「? どうした霊夢、しっかりしろ!」

 

霊夢の動きが完全に止まってしまったのだ。

それだけではなく、周りも完全に止まっていた。

 

「どうなっている!?」

 

〈誰かが時間を止めた様だ〉

 

「その通りだ、黄金騎士よ」

 

すると、背後の空間に裂け目が現れ、そこから黒い肉体に白い骨の鎧、そして棘を生やした魔物だった。

 

「貴様の仕業か! 一体何が目的だ!」

 

「無論、牙狼の称号を持つ者の抹殺だ!」

 

「ふざけるな! 霊夢を元に戻せ!!」

 

「ならば俺と戦え! 戦わぬならそこの女の命は貰う」

 

すると、魔物は棘を霊夢に飛ばし、寸前で止める。

 

「貴様…!」

 

「どうする? 黄金騎士よ」

 

砕牙は魔物を睨み付けながら、魔戒剣を抜いた。

 

「そうだ!それでいい!行くぞ!」

 

〈思い出したぜ!こいつは魔獣ザジ 厄介な相手だぞ〉

 

ザジは砕牙に飛びかかり、その巨大な腕を降り下ろす。

 

「くっ…!」

 

砕牙はその一撃を魔戒剣で防ぐ。

 

「中々やるな!黄金騎士!」

 

「お前を倒して、霊夢を救う!!」

 

砕牙は後ろに後退すると同時にザジの肉体を切り裂いた。

 

「グオッ!?」

 

ザジはその衝撃で膝をつき、怯む。

勿論、砕牙がその隙を見逃す筈は無く、ザジの懐に飛び込んで、魔戒剣を突き刺す。

 

「だぁっ!!」

 

「グハッ!!…… 見事だ…… だが… まだ終わりでは…」

 

ザジは、何か不可思議な事を言って、霧のように消えた。

 

砕牙は魔戒剣を納め、急いで霊夢に駆け寄ると…

 

「……… あれ?」

 

時間が進みだした。

 

〈(どうやら時間が進み始めた見たいだな)〉

 

「(ああ、よかった)」

 

心の中で、ホッとしていた砕牙とザルバに霊夢は不思議そうな顔をする。

そして、時間が止まる前の砕牙の言葉を聞き直した。

 

「俺は…… 何?」

 

「(…… 今言うのは止めておこう…) 俺は守りし者だ。だからこれからも、幻想郷を守り続けるって言いたかったんだ」

 

「…… ホントにそれだけ?」

 

「ああ…… それだけだ」

 

「ふーん…」

 

そんな話をしていると、スキマが開いた。

 

「やっと見つけたわ!!」

 

そこから、ひょっこりと紫が出てくる。

 

「紫さん!? 」

 

「まさか英霊の森にいたなんで…… 何処かおかしな所はない?」

 

「ええ、何とも無いわ」

 

「そう…… 砕牙は浄化の儀を受けたのね?」

 

「はい、お陰様で」

 

「詳しい事は、幻想郷で聞きます。早く帰ってらっしゃい。皆心配してるわよ?」

 

「分かったわ」

 

霊夢と紫は先にスキマに入っていく。

 

「砕牙!早く来なさいよ!」

 

「ああ、今行く」

 

砕牙もスキマに入ろうとしたその時…

 

「いや、貴様はこっちだ」

 

「!?」

 

再び、魔獣ザジが現れた。

 

「ザジ!? 何故生きている!?」

 

「黄金騎士への怨念が有る限り、俺は何度も甦る!!」

 

「砕牙!」

 

霊夢がザジに飛びかかろうとするが…

 

「邪魔だ、失せろ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

ザジが腕を一振りし、スキマを強制的に閉じた。

 

「霊夢! 紫さん!」

 

「これで邪魔者は消えた… 次は我らの番だ!!」

 

ザジは再び腕を一振りし、砕牙と自身を次元の狭間に送り込んだ。

 

そこは、ビルや道路等の建造物の廃墟や残骸が浮かび、月と太陽が同時に空に輝き、星々が周り続ける世界だった。

 

「ここなら、鎧の制限時間は無い… 鎧を纏え!! そしてここを貴様らの系譜の終焉の地にしてやる!!!!」

 

そう叫ぶとザジは巨大化し、全身に骨の棘を生やし、翼を出す。

 

「いいや…… ここは、お前の陰我が消え去る処だ!!!!」

 

砕牙も、魔戒剣を天に掲げ、円を描く。

砕牙はその円をくぐり抜け、牙狼の鎧を纏い、牙狼へと変身した。

 

『ハァァァァッ!!!!』

 

「ツアァァァ!!!!!!」

 

ザジの肉体に牙狼剣がぶつかるが…

 

『な!? 硬い!?』

 

「その程度の剣で、俺を斬る事は出来ない!!」

 

『グアッ!!』

 

逆に吹き飛ばされてしまう。

 

瓦礫にぶつかり何とか、起き上がるが、既にザジが迫っていて、牙狼剣を持つ右腕を押さえつけられた。

そして、ザジが腕を牙狼に向かって振り下ろす

 

『うわあぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

砕牙が死を覚悟したその時…

 

 

ガキンッ!!!!

 

 

あり得ない方向から、牙狼剣でザジの腕が防がれた。

 

「え?」

 

辺りを見回すと、砕牙は真っ白な不思議な空間にいた。

 

「ここは…」

 

『ここは内なる魔界だ』

 

「誰だ!?」

 

砕牙が声のする方に向くと、そこには砕牙が纏っているはずの牙狼がマントを着けた状態でいた。

 

『我が血を受け継ぎ、牙狼の称号を持つものよ』

 

「牙狼!?」

 

しかし、瞳の色は砕牙の様に紫色では無く、緑色だった。

 

『お前は、大いなる力を召喚する資格を得た』

 

「大いなる力…… まさか!? それは轟天ですか!?」

 

〈そうか!幻想郷で封印した素体ホラー達で丁度百体!!〉

 

轟天…

それは、魔導馬と呼ばれる、黄金騎士の魔導輪ザルバに続く、第二の相棒である。

 

しかし、それを獲得するためには、己の内なる影との戦いに勝たねばならない。

 

「だが俺は… 内なる影との試練を受けていない!!」

 

正論を言う砕牙に、牙狼は諭す様に話す。

 

『牙狼が光ならば、ザジは闇…… 今この戦いこそが、お前の内なる影との戦い…… と言えるだろう…』

 

そのもの言いに、砕牙は淡い期待をこめて訪ねる。

 

「貴方は…… もしかして俺の……!」

 

しかし、言い切る前に牙狼は否定する。

 

『いや…… 俺はお前の父ではない……』

 

分かりきっていた答えに、落胆する砕牙だが…

 

『だが… お前の父や、俺…… いや、俺達英霊は、何時でもお前を見守っている』

 

そして、その牙狼の緑の瞳が、優しく砕牙を見詰め…

 

『砕牙…… 強くなれ……』

 

砕牙に向けてエールを送った。

 

「はい!」

 

砕牙はそれに力強く答え、現実世界に戻ると、ザジが腕を振り下ろす処だった。

 

その時、牙狼剣から眩い光が溢れ、ザジを吹き飛ばす。

 

やがて光が収まり、ビルにめり込んだザジが目にしたものは……

 

『ハァァァァ……』

 

黄金の騎馬、轟天を駆る牙狼の姿だった。

 

『行くぞ…… 轟天!!!!』

 

牙狼が叫び、轟天の腹を蹴ると、轟天はヒヒーンと、甲高い鳴き声を放ち、ザジに向かって走り出した。

 

「ヌウゥゥゥゥッ!!!!」

 

ザジもビルから這い出て、轟天と牙狼に向かって飛び立つ。

 

ザジが、轟天に向かって腕を振るうものの……

 

『ハッ!! ツァッ!!』

 

「グハァアァアァッ!!!!」

 

あっさりと飛び越えられ、轟天の後ろ足で蹴りを食らい、ザジは再び吹き飛ばされて行った。

 

〈長引かせると不利だ! 一気に決めるぞ!〉

 

『分かった!! 轟天!!!!』

 

再び轟天が甲高い鳴き声を上げて、その場で地面を踏みしめると、轟天の蹄から、光の波動と共に心地好い蹄音が響き、牙狼剣を身の丈程もある、牙狼斬馬剣に変える。

 

『フン!! ハッ!!』

 

轟天がザジに向かって走り出し、牙狼は牙狼斬馬剣で、瓦礫や廃墟を破壊しながら突き進む。

 

「ゴハァァァァッ!!!!!?」

 

『フッ!! ハァァァァッ!!!! タァッ!!!!』

 

そして、ザジにたどり着き、牙狼斬馬剣をザジに突き刺し、真っ二つに切り裂き、轟天と牙狼は近くの廃墟に火花を散らせて、ドリフトしながら着地した。

 

「ぐっ…… 我らは何度でも甦る…! その度にお前達は知るだろう…! その… 称号を呪う者の存在を…!」

 

『確かにそうかも知れない…… だが、過去の英霊達がお前に言ったように!! 俺やこの先に称号を受け継ぐ者達の言うことは…… 未来永劫変わらない!!!!』

 

「なん…… だと……!?」

 

そして砕牙は、死にかけのザジに声高らかに宣言する。

 

 

 

『我が名は牙狼!!!! 黄金騎士だ!!!!』

 

 

 

「うっ!? グァァァァァァッ!!!!!!」

 

そしてザジは、光に包まれながら消えていった。

 

牙狼は消え行くザジに背を向けて鎧と轟天を戻し、砕牙に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷… 博麗神社…

 

神社の境内では、ソワソワしたようにうろつく霊夢と紫と玲司がいた。

 

「ちょっと落ち着けよ霊夢」

 

「貴女がソワソワしたって何も始まらないわよ」

 

「分かってるわよ!! でも、早くしないと砕牙が…!」

 

「大丈夫だって、彼奴は最強の魔戒騎士、牙狼なんだぜ?」

 

「でも…」

 

その時、境内の空間が歪み始める。

 

「「「!?」」」

 

異変に気がついた三人はそれぞれ、魔導筆と魔戒剣を

構えるが…

 

「ぐはっ!?」

 

そこから現れたのは、満身創痍の砕牙だった。

 

「「「砕牙!!!!」」」

 

三人は急いで、砕牙を縁側まで運ぶ。

 

「一体何があったの!? あの魔獣は!?」

 

しかし、あわてふためく三人を他所に砕牙は笑っていた。

 

「心配ないよ…… 全部、終わったんだ…」

 

「どうしたの? 凄く嬉しそうだけど…」

 

「ああ、貰ったんだ…」

 

「貰った? 何を?」

 

「言葉だ」

 

「言葉?」

 

「ああ、父さんや沢山の英霊達が貰ってきた言葉…… 霊夢…… これで俺はもっと強くなれる……!」

 

そう言って、砕牙は縁側に寝転がり、瞼を閉じた。

意識が途絶える寸前… 砕牙の脳裏に浮かんだのは、強く、雄々しく、そして優しい緑色の瞳をした牙狼の姿だった……




少女は思い馳せる… 己が捨ててしまった者に……

しかし叶わぬ夢と苦悩し、少女は涙を流す……

けれど運命は、再び少女と少年を巡り合わせた…


次回 銅 ~Gladiator~


奇跡の少女の想いは、赤銅の騎士に届くのか……
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