「はっ!」
「ずぁっ!」
打ち付けられる剣戟の音、和真と砕牙は互いに剣を交えていた。
「ふん!」
「ほっ!」
砕牙が魔戒剣を降り下ろしては和真が魔戒盾で受け止め、その隙に和真が攻撃すれは、砕牙は体を捻らせ、宙を舞い、和真に蹴り入れる。
「づぁっ!」
「おっと! へへっ、捕まえたぜ」
「しまっ!?」
「どぉりゃぁぁぁぁ!!!!」
しかし、砕牙の足を和真は軽々と掴み、豪快に投げ飛ばし、砕牙を木に叩き付ける。
「ぐぁっ!?」
「俺の勝ちだな」
叩き付けられた砕牙は体勢を立て直す前に、剣を突きつけられるが…
「いいや。引き分けだ」
「ん? あっ!」
砕牙は咄嗟に魔戒剣を和真の腹に突きつけていた。
「だ~!くそっ!! 今度こそ勝ったと思ったのによぉ~!」
「こっちは最強の魔戒騎士の称号を背負ってるんだ、簡単に負けて堪るか」
和真は悔しがりながら砕牙の手を掴み、起き上がらせる。
「きゃ~! カズくん惜しかったですね!霊夢さん」
「それに私はどう返せばいいのよ……」
縁側で和真に黄色い声援を送る早苗と、それを呆れながら眺め、けれど内心砕牙が負けなかったことにほっとする霊夢がいた。
余談だが、和真と早苗は再会してから一日と経たずに結婚した。
結婚式は行っていないものの、既に周囲からは、新婚バカップルという名誉?ある称号を貰っている。
今でも早苗は東風谷を名乗っているが、式を挙げたらすぐさま、雨宮早苗に改名するつもりである。
「はぁ…… もうお昼だし、料理するの手伝って、早苗」
「はいはーい♪ それにしても霊夢さんも早く砕牙さんに告っちゃえばいいのに……」
「早苗~♪ 貴女、法師としての修行がしたいって言ってたわよね~」
「えっ? あっはい、そうですけど…」
「スパルタコースで相手してあげるから覚悟しておきなさい……」
「そ、そんなぁ~!」
この話題で弄るのは辞めようと心に決めた早苗であった。
「お前の嫁さん…… 面白いな」
「あっはっは、そうだろ? やらないぞ」
「別に欲しいとは言ってねえ」
〈おーいおいおい!! 和真がまさか嫁さん貰うなんて!? しかもあんなに可愛い子を~! 俺はこんな日は来ないとばっかり…… うわぁぁぁぁっ!!〉
和真が嫁自慢を始めると、和真の眼帯型の魔道具ディルバが、その恐竜を彷彿させる赤い眼から大粒の涙を流していた。
〈お前さんはまだ泣いているのか?ディルバ〉
〈だってよぉ~ ザルバの旦那!和真はそんなもんに興味ない鈍感とばかりぃ~!〉
〈甘いな、鈍感において砕牙とこいつの父親に勝る者は居ないぜ〉
「ザルバ…… それはどういう意味だ…」
〈おっと、口が滑ったぜ。しっかし牙狼の称号を受け継ぐ者は、何故総じて色恋沙汰には鈍感な奴ばかりなんだ?〉
「お前…… その口開きっぱなしにするぞ…」
砕牙とザルバが言い合いをしていると……
「霊夢ぅ~! いるかぁ~?」
神社の入り口の方から声が聞こえてきた。
「何だぁ?」
「誰か来たのか? 霊夢!!」
「はーい、どうかした?」
「客っぽいぞ」
「誰かしら?」
霊夢を呼んで鳥居を見ると、階段から角を生やした幼女と女性がやって来た。
「萃香!? それに勇義も!? どうしたの? 普段は地底に居る筈でしょ?」
やって来たのは、博麗神社に砕牙と同じく居候している鬼の伊吹萃香と、普段は地底に住んでいる鬼の星熊勇義だった。
「魔戒騎士って奴は居るかい?」
「ああ、俺達だが… 何か用か?」
「お前が萃香の言っていた道外砕牙か… ふーん… ちょっといいかい?」
「勿論だ。何でも…… ってうおっ!?」
すると、勇義がいきなり砕牙に殴りかかってきた。
「いきなり何すんだ!?」
「ちょっと腕を試すだけだって。ただし… 本気だけどねっ!」
再び殴りかかってくる勇義。
砕牙は、振るわれる腕を冷静に見切り、伸びきった所に拳を二の腕にぶつけて弾いた。
「はぁっ!!」
「ふん!はぁっ!」
手刀を避け、拳を躱し、舞うように体を宙に浮かせて勇義を蹴りあげる砕牙。
だが勇義も鬼としての意地か、足を掴もうとする。
「せやぁっ!」
「うわっ!?」
しかし、砕牙は捕まれる寸前、勇義の首に足を掛け、そこを軸に回転し、勇義を地に叩き付けて、関節を極めた。
「これでとう?」
「はぁ… はぁ… 合格だ… 済まないね。いきなり腕を試したりして」
砕牙は関節技を解いて、勇義を立たせる。
「どうしたの勇義?何時もならお酒飲みながら戦うのに…」
「ああ~ 実はな…」
「勇義の奴、今噂の怪物に能力を取られちゃったんだよ……」
「「「何だって(ですって)!?」」」
なんと勇義は幻想ホラーに能力を取られたのだと言う。
「それいつ頃の話!?」
「ほんの数時間前さ。ただし今行っても、もう居ないだろうけどね」
「勇義、お前体は大丈夫なのか?」
「正直、体がだるくなってきたよ。だから戦闘もさっきので精一杯だ」
「勇義の能力は?」
「力を操る程度の能力さ。筋力を上げたり速度を上げたり、単純に力を上げたりね」
「かなり厄介だな…」
「急いで地底に行く準備をしないと」
霊夢は神社に戻って、地底に行く準備を始めた。
「奴は自分の力を試したがっていた。だから地底で開かれる闘技大会に必ず出場してくるはずだ」
「叩くならそれしかないか…」
「なら、俺の出番だな」
すると和真が大会に出ると言い出した。
「和真… だが俺達は…」
「確かに、俺達魔戒騎士は人に無闇に剣を振り翳せない…… が、剣闘騎士である俺は例外だ」
〈そうか、確か剣闘騎士はこういう事態に備えて、剣を使わないという誓約の元、ホラーが紛れていると思しき武闘大会に出場出来るのだったな〉
「そういう事♪ さて、こっちーやの飯食ったら地底に行くか!! 勇義と萃香だっけか?お前達も食ってけよ!こっちーやの飯は旨いぞ」
「…… 新婚だとは聞いていたけど、ここまでバカップルなのかい? あの二人は」
「あははは…」
勇義ですら引く和真と早苗のバカップルぶりに、砕牙は苦笑いをするしかなかった。
昼御飯を食べ終えた一行は、地底に続く旧地獄街道を進んでいた。
そこは道なりに灯籠が置いてある、殺風景で暗い道だった。
「なんと言うか…」
「何となく魔界道に似ているな」
「魔界道って?」
「霊夢には話して無かったけ?」
魔界道……
それは、砕牙達が元いた世界の各地に点在し、通常一週間掛かる道のりを、たった一時間で歩き切れてしまったり、魔戒騎士達を管理する番犬所の本部、元老院への道を開く魔界の道である。
「まあ、魔界道を開くには時間や時期が重要になるし、魔戒騎士にしか道は開けないからな~ 色々と使い勝手の悪い道なんだ」
「なんか話聞いてると魔戒騎士って色々特権があるみたいね」
「あっても使わない奴が殆どだけどな」
そんなことを話ながら進んでいると、出口が近づいてきた。
「見えてきたよ。ここが地底の街だ」
旧地獄街道をぬけると、そこには地上とは何一つ変わらない町並みが広がっていた。
違う所といえば人より妖怪の方が大勢いるということだけだろう。
「へぇ~ 地底っていう位だからもっと鬱蒼としてるのかと思ったらそうでも無いんだな」
「まあね、でもここまで多いのは初めてじゃないかな?」
「さて、今日は遊びに来たんじゃ無いんだ。さっさと闘技場へ行って参加しないとね」
広場に所狭しといる人々と妖怪を掻き分け、闘技場の受付にやって来た。
其処には受付と思われる妖怪がいた。
「参加する奴は早くエントリーしてね!ただし!命の保証はしないよ!」
「ああ、すまない。一人受付を頼みたいんだが…」
「あれ?勇義さんはさっき登録しましたよね?」
勇義が受付に話しかけると受付は勇義は既に参加登録したという。
「どういう事だ?」
「分からない…… もしかして…」
〈十中八九幻想ホラーの仕業だろうな。奴がこの鬼の嬢ちゃんに化けているんだろう〉
「嬢ちゃんとは、言ってくれるねぇ」
〈おっと、つい言っちまったぜ。確か… 勇義、と言ったな〉
「んなこと今はいいだろ? なぁ俺、参加したいんだけどいいか?」
ザルバと勇義が何故か火花を散らしている間に、和真は受付にエントリーを済ませる。
「本気か?参加してるのは妖怪ばっかだぜ?命の保証はしないよ」
「ああ、そもそも死ぬ気はねえ」
「そうかい… なら止めねえよ。ほれ、番号札だ。細かいルールは後で説明されるが、武器と能力は使用禁止だ」
「オーケー… 早苗、俺の武器を預かっといてくれ」
和真は番号札を受付から受け取り、自身の魔戒盾と魔戒剣を早苗に預けた。
通常、女性にソウルメタル製の物を持ち上げる事は出来ないが、早苗は自分の能力、奇跡を起こす程度の能力を使って、持ち上げると言う奇跡を起こした。
「うん、分かった。しっかり預かるから、カズくんも気を付けてね?」
「ああ、勿論だ」
和真は優しく早苗を抱き寄せ、数秒後、選手の控え室に向かった。
「私達も観客席に行きましょ?」
「霊夢、万が一に備えて何時でも戦える様にしてくれ」
「分かったわ」
和真と別れた一行は、闘技場の観客席に向かった。
観客席に入ると、そこは既に熱気に包まれていた。
「凄いな…」
「それだけ娯楽に飢えてるんだよ、地底の人々は…」
砕牙達が闘技場の熱気に呑まれていると、唐突にアナウンスが始まった。
《大変お待たせしました!! 間もなく、地底大闘技大会が始まります!! 実況は毎度お馴染み、清く正しい射命丸文と!》
《解説の古明地さとりで送ります…… 所で… 何で私が解説何ですか?》
《いや~ さとりさん心読めるんで、選手の心読んで解説してくれるかなぁ~と》
《人が多くて無理ですよ》
《あやや!? それは誤算でした!? まあでも、地霊殿の主が解説ですから、ある程度の箔が付くのでそれはそれで良しです♪》
《それでいいんですか…》
《何はともあれ、地底大闘技大会、開幕です!!!!》
実況の文の開幕宣言に会場は更に盛り上がりを見せる。
「いよいよ始まるな…」
「カズくん… 大丈夫かなぁ…」
「心配すんな、彼奴は強いよ」
《さあ緊張の第一試合!対戦者は… 妖怪一の暴れもの牛鬼!! 対するは今大会唯一の人間、雨宮和真!!》
アナウンスと共に、入場口から現れる和真と、巨体を顕にした牛鬼…
お互いに対面に立ち、牛鬼は睨み、和真は笑みを溢す。
《和真選手はなんと!先日、地上の守矢神社の風祝、東風谷早苗さんと入籍したと言う新婚さんです!! 羨ましいですね~》
「チッ… おい!人間!」
「ん? 何だよ牛」
「お前の嫁… べっぴんさんだなぁ~ 俺が勝ったら彼奴をくれよ? 可愛がってやるぜぇ~」
「あぁ…?」
牛鬼は挑発のつもりなのか、それとも本気で言っているのか……
何れにせよ自身の強さに疑問すら抱いていないのだろう…
《それでは!! 試合開始です!!》
しかしそれは…
「ヒャッハー!! 死ねぇ!! 人間!!」
きっと昨日までの話だろう…
「てめえ…… 人の女に色目使ってんじゃねぇ!!!!」
ドン!!!!
「グギャッハァァァァァ!?!?」
轟音と共に振り抜かれた拳は牛鬼の顔面に直撃し、牛鬼は無様な悲鳴を上げながら壁に埋まり、会場は静寂に包まれた。
《か、開始と同時に試合終了!! 強い!! 牛鬼に指一本触れさせず、拳一つで黙らせたこの男は何者だー!!》
「いいか? 次にそんなふざけた事を抜かしてみろ? お前を潰すぞ…」
「ずびばぜんでじだ……」
文の終了宣言と共に我に返った観客は、盛大な拍手と歓声を上げ、闘技場の熱気を更に引き上げた。
「砕牙!! 和真が勝ったわよ!!」
「あいつも中々やるねぇ~」
「先ずは一回戦突破だな。良かったな早苗…… 早苗?」
砕牙達も和真の勝利に盛り上がっていたが…
「俺の女だなんて… カズくんったら♪」
頬に手を当て、いやんいやんと体をくねらせている早苗。
約一名…… 別の意味で盛り上がっていた……
ワァァァァァァァッ!!!!
「「「!?」」」
歓声に驚き、砕牙達が闘技場を見ると…
《試合終了!! やはり強い!! 勝者 星熊勇義選手!》
既に第二試合が始まっていて砕牙達と一緒に居る筈の勇義が、対戦相手を血塗れにして倒していた……
それから和真は順調に勝ち進んでいき、遂に決勝戦まで勝ち残った。
「砕牙、いよいよ決勝戦よ…」
「ああ… ある意味ここからが本番だ…」
「ようやく私の偽者と当たる訳か… 砕牙、会場の避難は私と萃香に任せな」
「私の能力を使えば誘導は楽勝だからね」
「頼むよ、勇義、萃香」
「カズくん……」
一方の和真は……
〈和真ァ…… いよいよだな……〉
「ああ、手筈通りに行けば楽なんだが… そうも行かねえよなぁ~」
〈弱気になんなよ和真〉
若干弱気になっていた。
《さあ!! いよいよ決勝戦です!! 決勝に勝ち進んだ豪傑二人の登場です!!》
そんな中、入場を促すアナウンスが流れる。
〈っと、出番だぜ和真!!〉
「おう!行こうぜディルバ!!」
和真はディルバと共に気合いを入れ直し、意気揚々と闘技場へと走って行った。
《さあ!先ずは大会の優勝候補!! 元鬼の四天王、星熊勇義の登場です!!》
入場口から現れた、偽の勇義。
勿論、幻想ホラーの擬態であることをだれも知らないが、今までの試合、偽の勇義は勇義が絶対にやらない方法で相手を倒していた為、疑問に思う者が多く、会場はざわつくだけだった。
《あやや? なんか反応が薄いですね… まあ次行きましょう! 続いて、人間でありながら、屈強な妖怪達を一撃の下倒してきたダークホース、雨宮和真選手の入場です!!》
勇義?とは逆の入場口からやって来た和真に会場は大盛り上がりを見せる。
《それでは!! 試合開始です!!》
文の試合開始の合図と共に和真と勇義?は、互いに走り、拳を振るった。
「はっ!!」
「ふん…」
和真の拳は勇義?の手で受け止められ、また勇義?の拳も和真の手によって受け止められ、互いに足で牽制し合った。
「人間の割には中々やるねぇ…」
「お前、勇義じゃないだろ…」
「何をいっている?」
「惚けんな… 本物の勇義はお前みたいに姑息な手は使わねえ…… てめえ何の為に勇義に化けた!?」
「ふん… お見通しと言う訳か…… 私の目的は… 強い人間や妖怪を食らう事だ!!」
勇義?は口から牙を覗かせ、和真に噛みついた。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!!!」
《おおっと!勇義選手、雨宮選手に噛みついたぁ!?》
「ふふふ… やはり強い者はいい… 肉と血が旨い… それに貴様、今までのカスとは比べ物にならんくらい旨いな… もっと食わせろ!!」
和真の血肉を食らった勇義?はホラーとしての本能が目覚めたのか、ホラーとしての姿、ジャッカルに角が生えた様な姿に戻った。
《あれは!?》
《あややややや!?!? 勇義選手が化け物に!?》
「実況!!!! こいつは闘技場にいる妖怪や人間を全員食らうつもりだ!!!! 急いで避難させろ!!」
《本当ですか!? スクープと言いたい所ですが…》
《そんなこと言っている場合ではありません!皆さん!!急いで闘技場の外へ!!》
「押すなー! でも急いで逃げろー!」
和真が実況席に指示を出すと、さとりが適格な指示を出し、萃香が避難誘導を始めた。
「余計な事を…… だが貴様が食えれば一先ずはそれでいいか…」
「生憎…… 俺の血肉は高いぞ?」
「減らず口を!!」
ホラーは脚力を使い、一気に加速し、和真を角で貫く為に突進をかけた。
「ッ!? 速い!!」
「チッ… 外したか…」
和真は傷ついた体で何とか避けたものの、引っ掛かり、多少のダメージを負ってしまった。
「次は外さん…!」
「くっ!早苗!!」
和真が早苗の名前を叫ぶと…
「!砕牙!! 合図よ!!」
「分かってる!! 早苗!!」
「はい!」
早苗が砕牙に魔戒盾を渡し、砕牙は魔戒盾をホラー目掛けて投げつけた。
「グァッ!?」
盾は見事突進中のホラーに当たり、跳ね返って和真の左腕に着く。
ホラーは軌道が逸れて壁に激突、その隙に砕牙は魔戒剣を和真に投げ渡した。
「ナイス!! 砕牙!!」
二つの武器を受け取った和真は、剣と盾を重ね合わせる。
「貴様…… 魔戒騎士だったのか……」
「そういうこった… ディルバ!!」
〈幻想ホラー パズワルディ。力を追い求め、強き者の血肉が好物な、ホラーにしては正々堂々としている奴だ〉
「だが… 結局はホラーだ。人の害にしかならない」
「フフフ…… 私はついている… 魔戒騎士!! 貴様が強者であるならば、私に食われろ!!」
「へっ…… 断る!!」
和真は重ね合わせた剣と盾を天に掲げ、二つの武器を擦り合わせる。
盾の輪郭に沿って光の円が現れ、和真はその内側を魔戒剣で砕く。
すると、砕けた円から、スポットライトの様に、銅色の光が和真を照らし、赤銅の鎧を召喚する。
召喚された鎧は、足元から和真に纏われる。
刃の付いた具足、剣闘士の様でありながら、豪奢な装飾があしらわれた胴鎧、鉄球の様に棘のある肩に、メリケンサックが付いた手甲。
そして、狼と言うより、猟犬の様な顔立ちの隻眼の仮面。
和真は義狼へと変身した。
『さあ… 来やがれ!! パズワルディ!!』
「その挑戦、乗ったァァァァッ!!!!」
パズワルディは挑発に乗り、義狼に向かって突進する。
対する義狼は義狼盾を前に構え、自身もパズワルディに向かって突進した。
「私に突進勝負を挑むか!! 面白い!!」
『ハァァァァァァァァァッ!!!!!!』
ガキィィィィィィィン!!!!!!
鉄と鉄がぶつかる音を出し、衝撃を撒き散らし、丁度闘技場の中心で止まった。
『グッ、ヌゥゥゥ!!』
「フハハハハッ!!」
怪物の矛と騎士の盾は互いに拮抗したまま動かない。
「愚かな!! 貴様の肩の傷では後、数秒しか持つまい!! 私に突進で挑んだのが間違いだったな!!」
『グッ、ガハッ!!』
確かに、義狼は先に受けた肩の傷で、後、数秒も持ちこたえることは出来ないだろう。
だが、パズワルディは忘れている。
騎士の真の武器は盾では無いことを……
そして彼が、一人では無いことを。
『フ、フフッ…… 甘いぞパズワルディ…』
「何だと?」
『グッ!ズァァァァァッ!!!!』
義狼は銅狼剣を引き抜き、切り裂きながらパズワルディを打ち上げた。
「なっ!? 剣だとォォォォォ!!?」
『行けぇぇぇぇ!!!! 牙狼ォォォォォ!!!!』
義狼の叫びを聞いた砕牙は、客席から闘技場に身を躍らせ、魔戒剣を引き抜き、前方に円を描く。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
そしてその円をその手で砕き、鎧が砕牙の周りを回って、足から胴と鎧が纏われ、最後に金狼の仮面が砕牙に被さり、牙狼と成った。
「何ッ!? 黄金騎士だと!?」
『ハァァァァァ……… ダァァァァァッ!!!!!』
「ガァァァァァァッ!!!!!!」
パズワルディは牙狼が現れた驚きにより、回避を忘れた為、牙狼剣の一撃を躱せず、真っ二つになって消滅した。
パズワルディを切り裂き、闘技場に着地した牙狼は、砕牙に戻り、既に義狼から戻っていた和真に歩み寄る。
「和真!! 無事か!?」
「ああ… 何とかな… リヴァートラの刻もあるから大丈夫だ…」
「ふぅ…… そうか……」
「カズくん!!」
すると血相を変えた早苗が和真に走り寄ってきた。
「カズくん、大丈夫!? 怪我は!?」
「大丈夫だよこっちーや、俺は生きてる。ほれ、ピンピンしてるだろ?」
「もう!こっちは本気で心配したっていうのに…」
「ごめんごめん、でも俺は早苗を残して死ぬ気はねえよ」
「も、もう!カズくんったらぁ♪」
新婚バカップルは所構わずイチャつきだした。
「全くコイツらは…」
「ほんっとバカップルね……」
その様子に砕牙と霊夢は呆れるしかなかった。
余談だがその後、天罰なのかは分からないが、このあと和真は戻ってきた文や観客達に無理矢理表彰台に立たされ、怪我をしたままインタビューまで応えさせられると言う地獄を味わった。
親から子へ、子から孫へ……
世代を越えても受け継がれるその使命を胸に、彼女は書き続ける。
その記録が、きっと人々の役に立つと信じて……
次回 書 ~Memory~
けれどそれは…… 誰かに歪められた虚構に過ぎない。