ソードアート・オンライン 〜再びのBoB〜   作:大路京太郎

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帰り道

 

大声を出した事で罠が意味をなさなくなってしまい、慌てて場所を移す二人。

 

そこで、一呼吸してからレンは先程の話の結論を述べる。

 

「やっぱりBoBは参加しなくて良いかな」

 

「ありゃ、なんで?試してみたくないの?自分の実力ってやつを」

 

「うん。やっぱり、SJで優勝できたのもチームだったからだし、心細いよ」

 

正確には、レンはチームではなくたった二人のコンビで戦ったのだが。

 

「またそんな事を言ってー。昔はソロで他のプレイヤーを暗殺しまくってたくせにー」

 

「まだ忘れてなかったか!」

 

「むふふ、だって、それを見たから私はレンちゃんに近づいたわけだしー?」

 

唐突に昔の事を掘り返すピトに動揺するレン。

 

これまでの人生の中で一番知られたくない黒歴史――二番目の、SJでの壊れたテンションのシーンも含めてピトにはだいたい知られている事に戦慄する――を話題にされるのは精神的に辛いものがある。

 

早く話題を変えなければと思うレンの視界に、都合よく異変が起きた。

 

「ピトさん!モンスター!引っかかってる!」

 

「おおう、駄弁ってる場合じゃなかったね」

 

二人がいる岩陰からほんの100メートルほどの距離に、ブービートラップに引っかかり足を損傷した巨大なワニ型モンスターがいた。

 

「それじゃ、いつも通り行こうか…!」

 

ピーちゃんと名付けた愛銃を抱いたレンが、上げまくった敏捷性により人外の速度でモンスターの方へ駆ける。

 

「うっわ……ったく、なんであれでBoB参加を戸惑うのか疑問でならないねぇ」

 

先走るレンに置いて行かれたピトはモンスターに傷一つ負うことなく的確に急所に弾丸をバラ撒いているレンを見てそう呟いた。

 

※ ※ ※

 

午前の狩りも終わり街へ戻る帰り、話題は再びBoBへと移る。

 

「まぁまぁ、騙されたと思って出てみ?今までハイレベルな戦闘やプレイヤーを腐るほど見てきたこの私が、レンちゃんならいけるって太鼓判押してるんだからさ!」

 

普段わりとふざけた態度のピトにしては、本気っぽい響きをその声に感じ内心驚くレン。

 

「そんなこと言って、結局この前のSJも強引に参加させられたんだっけ…」

 

砂漠はまだ続く。

 

開けた場所なので敵も味方も隠れる場所がないという理由で、堂々と歩いて帰る二人。

 

それなりに名と実力の知れた二人なので手を出すPKもそうそう居ないだろうが、私怨で襲ってくる者がいないとも限らない。

 

それと、この辺りのエリアには時々中ボスっぽい超巨大なサソリ型モンスターがポップするとの情報もあるので常に警戒は怠らない。

 

――はずなのだが、会話する二人はとてもではないが緊迫した様子には見えない。

 

一時期敵同士だった二人とは思えないほどに心を許し、弛緩した空気がそこにはあった。

 

「あーあ、参加してくれるなら今度の神崎エルザの東京でのライブのチケット、融通してあげても良いのになー」

 

「っ!?」

 

レンがファンで”あった”歌手、神崎エルザは非常に小さな会社で契約しており、そのせいでライブは毎回小さな会場で行われている。

 

その上なまじ人気であることから、チケットは激レアであり、毎回レンは抽選で落ちている。

 

ピクッと反応したレンを見やり、ピトは畳み掛けるように言う。

 

「今ならお友達の分も用意してあげられるのになー。なー」

 

「………」

 

レンが反応したのはチケット欲しさだけではなく、『神崎エルザの正体を知っているから』なのだが、それを分かった上でピトはレンに誘いをかける。

 

「ち・な・み・に、これ逃すと次に東京でライブやるのはだいぶ先だったような気がするなー。ねぇ、どうする?どうする?」

 

「ぐぬぬ…」

 

ネチネチと続けるピトに対し我慢の限界が訪れる。

レンは右腕を振り下ろし、

 

「あーもう、何でもいいから暴れてやる!!」

 

「はい出場決定ね」

 

「はっ、しまった!勢いで乗せられて言質を取られた!?」

 

※ ※ ※

 

レンとピトが狩りからGGOの首都グロッケンへ戻ろうとしている同刻、キリトはコンバートを終えた所だった。

 

「うへぇ、やっぱこの姿か…」

 

街の適当な店の窓ガラスを鏡代わりに自分の姿を見ているキリトは、誰が見ても美少女と呼ぶであろう容貌だった。

 

この姿こそ、多くの男プレイヤーと一部の女プレイヤーを魅了し惑わせたキリ子…もといキリトのGGOでの姿だ。

 

「それにしても、この装備も懐かしいな」

 

コンバートしても、アイテムや装備までは引き継がれない。もちろんお金も。

 

久しぶりに着る、わりとデザインの良い初期装備をしげしげと眺め感慨深く呟く。

 

「この身一つでのし上がっていくにしても、この所持金じゃリボルバー式の拳銃すら買えないしなぁ」

 

シノンに頼らず大会に出る、というのは今の所曲げたくないが、誠に遺憾ながら一からやっていくと光剣を買うところまで進めない可能性の方が高い。

 

圧倒的に、元手が足りないのだ。

 

「しょうがない、気は進まないけど…」

 

今後の方針を決め、キリトは歩き出す。

かつてシノンと一緒に行った、思い出の店を目指して。

 

 

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