ソードアート・オンライン 〜再びのBoB〜   作:大路京太郎

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三人寄れば

ギャラリーを振り切り、急ぎ目的の武器屋を目指すキリト。

 

地図を見て最短ルートを確認し、通り道にある長いエスカレーターに乗り、背後を見て誰もついてきていないのを確認するとドッと疲れが抜けたような気がした。

 

――たぶん、一度クリアしたからだったんだろうなと、先ほどのゲームを振り返るキリトは考える。

 

開幕とリロード時の弾道予測線が見えないレーザーや最後の6発同時撃ちは、おそらくクリア防止の為の措置なのだろう。

 

あの手の、ほとんど運が左右しないゲームは難易度を変えなければ上手い人は何度でもクリアできてしまう。

 

そうなればあのゲームは事実上無限に金を吐き出すATMとなってしまうからだ。

 

「もう、これ以上俺はプレイしない方がいいんだろうな…」

 

頼まれてもやるまいと、前回含め合計で50万クレジット以上稼いだキリトはそう心に誓う。

 

もっとも、次プレイするときにはショットガンかマシンガンに持ち替えるくらいの事はやってきそうなので、仮にプレイしてもクリアなど出来そうにないのだが。

 

更にその次にはどうなることやらとちょっと面白い想像をしていると、1分半ほどかかるエスカレーターは既に終盤に差し掛かっていた。

 

そしてそこから更に数分歩くと以前シノンと武器を選んだ店が見つかる。

 

中に入るとそれなりに人はいたが、キリトに注目する人は少なかった。

 

「…思ったよりも顔は知られてないんだな」

 

BoBはエントリー式のイベントで、大規模なイベントではあるが参加者はもちろん観戦者もそこまで多いわけではない。

 

初心者は参加しようとは思わないし、中堅以上の者もよほど自信がなければ大した賞品もないイベントで、しかも強い者ばかりと分かりきっている所に行くのはメリットは少ない。

 

もちろんそういう事は関係無しに楽しもうとする者はいるだろうが、だいたいが予選の第一試合で負けて笑い話になるのがオチだ。

 

そして観戦の方も、ほとんどがフレンドが参加するとか、ハイレベルの戦闘が見たいとかそういう者でもなければする者は少ない。

 

BoBは生放送で実況されたり、他のゲームの中からでも観れたり、トトカルチョなどでそれなりに大きなお金が動くほどのイベントではあるのだが、それでも休日の真昼間にわざわざ見るほどのものではないというのが実際の所である。

 

例えば、晩御飯中にテレビをつけると野球の番組をやっていたとする。

 

しかし、興味のない又は他に見たい番組がある場合、ほとんどがすぐにチャンネルを変えてしまうだろう。

 

一部、お父さんが野球好きでチャンネルを変えると怒られるという家庭もあるのだろうが、少なくともBoBは地上波ではやっていないのでそれは今回関係ないだろう。

 

そういうわけで、人目を気にせずに銃を選んでいたキリトだが――

 

「…………」

 

何を買えばいいのか全く分からずカタログの前で無言で立ち尽くしていた。

 

武器というのは本人の好みや適正で決める事が多いのだが、チュートリアルを受けていないキリトはその両方が分からない上に、コンバートしたデータのため銃に合わせたステータスにする事も今からではできない。

 

そういった条件に加え、「銃に関して無知」というのも重なると本当にどうしようもなかった。

 

「さ、さすがに見た目からどれがマシンガンでどれがライフルだとかは判別できるんだけどな?」

 

当たり前すぎて「知ってる」とも言えない銃の知識を言い訳のように独り言をつぶやくキリト。

 

もう帰っちゃおうかなと思ったその時、背後から近づく二人分の気配を敏感に察知する。

 

振り向くとそこには――ニットキャップを被った、全身の装備をピンクに染めた目立つファッションの小柄な女の子ともう一人、こちらは黒に染めた装備をした、ポニーテールとつり目がちな目、それと両頬のタトゥーが印象的なちょい怖めな女性が立っていた。

 

「こんにちわ!もしかしてお困りですか?」

 

ピンクの装備の子がそう尋ねてくる。

 

どうやら、親切で声を掛けてくれたらしい。

 

普通なら初対面の相手は警戒して突っぱねるところだが、見たところ悪い子には見えない。

 

その子の身長がかなり低いので微妙に中腰にしながら、正直に今の状況を話す事にする。

 

「実は、自分に合った武器の選び方が分からなくて…」

 

すると、ピンクの装備の子は意外そうに聞き返してくる。

 

「え、あれだけ動けるんならアサルトライフルで特攻するスタイルでいいんじゃ」

 

それは、いつかシノンに聞いた事のある闇風というプレイヤーのスタイルだ。

 

一昔前までの、AGI型と呼ばれる速度特化のプレイヤーに多い型だったと記憶している。

 

それはそうと。

 

「…もしかして、さっきの見てたんデスか?」

 

「うん。あ、でも追いかけてきたとかじゃなくてたまたまだからね!」

 

慌てて弁解するピンクの装備の子。

 

買い物くらい誰だってするだろうから、そこを疑ったわけではない。

 

キリトが気にしたのは、見られていたという事実だ。

 

なんだかとても恥ずかしくなり、早くここから立ち去りたくなってきたキリトに、今まで沈黙を保ってきたもう一人から声がかかる。

 

「前に装備してた光剣とハンドガンはどうしたの?」

 

ハンドガン――それがファイブ・セブンのことを指しているのは間違いあるまい。

 

詳しくキリトの装備を知ってるこちらの怖い方は、どうやら前回出場したBoBを見ていたらしい。

 

キリトは、ガンナーに転向したいが既に定まっているこのステータスで装備できるメインの武器を探しているが、どうすればいいのか迷っている事をさっきの補足として説明する。

 

「ろくに銃を知らなくて、正直お手上げ状態でして…」

 

そんな初心者のような――実際初心者なのだが、BoBの優勝者であるとはバレているので本当の事を言うわけにはいかない――事を言うキリトに、ピンクの装備の子は確認するように聞いてくる。

 

「チュートリアルは?」

 

「受けてないです」

 

「だよね………」

 

即答するキリトに落胆するピンクの装備の子。

 

頭をかき「うーん、どうしたらいいかなぁ」と真面目にキリトの事を考えてくれているものの、良案は浮かばないようだ。

 

チュートリアルはいつでも受けられるものだが、当然の事ながら無駄に長い。

 

虫のいい話だが、できる事なら受けたくないというのがキリトの本音だ。

 

そこで、二人を見ていたタトゥーの人が呆れながらに提案する。

 

「はぁ……だったら、試射させて貰えばいいじゃない」

 

「ああ、なるほど!」

 

 

それから暇だから手伝うと言う二人の監視の下、様々な銃を射撃場で撃ってはみたがしっくりくるものは無かった。

 

結局決まらないメインウェポンをどうしようかと悩んでいると、「無理にスタイルを変える必要はないから、今はそのお金はとっといておきな」という助言を頂いたキリトは、おとなしくその言葉に従う事にしたのだった。

 

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