GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~   作:フォレス・ノースウッド

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またおまたせしました(汗、ガメフォギア本編最新話です。
サブタイは『乗っ取られる基地』って意味。
今回長くなった理由は、司令の『陽動に陽動作戦』を原作そのままにやってしまうと、多数の犠牲者(主に一課や自衛隊の皆さん)を出してしまうことになるので、どうアレンジしつつ、でも司令の脅威的戦闘能力とそれに足を引っ張る甘さ、フィーネの目的の為なら了子さんの仮面も平然と被る外道さを原作同様に表現できるか悩みに悩みまして。
そんでどうにかこうにか、次回から最終決戦の幕開けです。


#56 - Occupy Base

 二課本部内、デュランダルが保管されている最深区画――アビスへと繋がるエレベーターから、目と鼻の先の回廊にて、独自のアレンジを加えた拳法の構えを握り拳で撮る弦十郎と……一連の事件の首謀者にしてネフシュタンの鎧を纏って所謂〝無形の位〟に似た佇まいで不敵に立つ、終わりの名を持つ者――《フィーネ》が対峙する。

 

「一応問うておくが、いつから気づいていた?」

 

 二人とも臨戦態勢を崩さず、互いを見据える中、フィーネ――櫻井了子は蛇染みた嘲笑を顔に浮かべたまま、昔なじみの同僚であった弦十郎に問いかけた。

 自分が〝内通者〟にして――〝首謀者〟である事実にして真実を、いつ頃から見抜いていたのかを。

 

「さてな………いつ頃だったか、かなり前からお前をマークしていたぐらいしか覚えていない」

「そこではぐらかすか………曲りなりにも〝風鳴の血〟を宿すだけのことはあるわけだ、お前も」

「言っていろ」

 

 睨み合い、鋭利な緊張感が漂う中……これから戦おうとする二人の間で躱されるブラックユーモア。

 了子(フィーネ)当人に対しては、はぐらかす態度を見せた弦十郎だったが………実際は広木防衛大臣が暗殺された直後辺りより、彼の〝直感〟は彼女が内通者の正体ではないかと、疑惑を胸の内にて密かに抱かせていた。

 そこからどうフィーネが長年の朋友(せんゆう)だった事実に対する〝確信〟を得るに至ったかは………経緯を詳細に並べ立てて行くとどうしても長くなってしまうので、端的に表すれば、二課本部のセキュリティに侵入しようとした犯人たるアメリカ政府もご丁寧な〝道案内〟をも逆手に取った緒川ら二課調査部所属のエージェントたちによる奮闘があってのものだ――と言っておこう。

 

「そっちこそ、よくもまあ見え透いた〝陽動〟をかまして来れたものだな」

 

 朱音に忠告されるまでもなく弦十郎は、東京スカイタワー周辺に出現したノイズは装者を二課本部から遠ざける為の〝陽動〟であることに感づいていた。

 

「お陰でお前自身と言う〝決定的証拠〟を炙り出すことができた」

「陽動に陽動をぶつけてきたわけか………そちらこそ喰えないやり口をかましてくれる」

 

 その上で敢えて向こうの陽動の乗り、弦十郎はクリスも含めて全装者を東京スカイタワーに向かわせ、迅速にリディアン生徒と近隣住民たちの避難誘導を完了させ、フィーネが本部に現れるのを待ち構えていたのだ。

 既に決定的証拠たるネフシュタンを纏った櫻井了子(フィーネ)の姿は、緒川がスーツのポケットに掛けられていたペン型隠しカメラで撮影され司令室に送られ、藤尭らオペレーターメンバーの素早い対応で政府関係各署にデータも転送済み。

 

「だが、もし私がソロモンの杖を使い、派手に立ち回ろうとした場合はどうしていた?」

「本部(ここ)はお前の庭だ、そんな派手なパフォーマンスを使うまでも無く、最下層(アビス)に辿り着ける自信があると踏んでいた、何せ〝できる女〟だろう? お前は?」

「ふん、そこは否定せずにいよう」

 

 弦十郎の意趣返しを、半ば肯定しつつも軽く払う。

 確かにあり得た可能性、装者不在で実質ガラ空きになった本部をリディアン校舎とその周辺ごとノイズの群体を使役して攻め立てる〝手段〟を提示してきたフィーネの挑発にも、弦十郎は日頃了子(かのじょ)がよく自称に用いていた表現を使って切り返す。

 実際この二課本部基地を一から設計したのはフィーネ自身であり、弦十郎の言う通り庭も同然、彼に看破された通り、前述の手をわざわざ使わずともハッキングと隠し通路を使い、完全聖遺物を二つも所持していることもあり、アビスに保管されたデュランダルに辿り着ける確固とした自信が彼女にはあった。

 

「だが、融合症例となったこの私を止められるか!?」

 

 その自信の源の一つを、嘲笑たっぷりかつ高らかに述べ立てるフィーネ。

 

「応とも! お前をぶちのめし一汗かいた後で、たっぷり話も聞かせてもらうぞッ!」

 

 そして構えを取る全身から発する覇気をさらに高め、威風堂々に〝止めてみせる〟と意志表明する弦十郎。

 問答はこれにて終わり――二人の間から開戦の鐘が鳴った。

 

 

 

 

 

 ほぼ同時に、両者は駆け出す。

 先制攻撃を掛けたのはフィーネ、両手に握る刃が連なった蛇腹鞭の右手側(かたわれ)を、弦十郎めがけ振るう。

 対して弦十郎は疾駆する勢いを緩めぬまま全身を左側に逸らして躱し、フィーネは間髪入れず左手側のもう一振りを振るうも、彼は飛び上がって二度目の凶刃から逃れた。

 そのまま天井の上面を、強靭な握力を有した指で抉る形で掴んで吊り下がり、すかさず両足を面に密着させ足場にして踏み込み、フィーネへと一気に迫る。

 荒れ狂う猛牛の如き突進の勢いを乗せて振り上げた拳が繰り出す正拳を、右へギリギリの紙一重のすれ違いでフィーネは回避し、ネフシュタンの飛行能力によるホバリングで後退し、弦十郎の拳は回廊に巨大な亀裂を走らせた。

 

「ちっ……」

 

 疑念と苛立ちから、眉間に皺寄せ舌打ちする。

 なぜなら――直撃を免れた筈だと言うのに、鎧の一部に小さくはない罅が入っていたのだ。心当たりがあるとすれば……彼の正拳から生じた衝撃波の余波しかない。

 

(バカな……)

 

 弦十郎には一切の聖遺物を身に纏っても、懐に持ち合わせてもいない、完全に生身。

 己が身一つの拳を掠めただけで……完全聖遺物(ネフシュタン)に傷を付けたと言うのか?

 

(解せんッ!)

 

「骨ごと血肉を断ってくれるッ!」

 

 苛立ちと、確かに起きた〝事実〟を振り払う様に、一撃目よりも段違いの超速で振るい、今度は二振り同時に弦十郎へと蛇腹の刃を突きつけた。

 

 

「ふんッ!」

 

 それを弦十郎は何と声に籠り全身から発する気迫さと裏腹に、子どもが投げたボールをキャッチするかの如き軽々しさで、鞭を二振りとも鷲掴み。

 

(何だとッ!?)

 

 フィーネが驚愕の心境に浸る暇(いとま)も許さぬまま、驚異的なパワーで鞭をフィーネごと弦十郎は自身へと引き寄せる。

 竜巻の暴風じみた吸引力に、フィーネはまともに抗えない中――。

 

「デェェェェーーーリャァァァーーー!」

「がっ!」

 

 ――弦十郎はとても生身の人間のものとは信じがたい、強烈なアッパーパンチを裂帛の気合いを発すると同時に、フィーネの腹部へと豪快に叩き込んだ。

 まともに直撃を受けたフィーネは、余りの威力に気を失わせられ、宙にアーチを描いて舞う中、弦十郎は鞭を再び掴むと天井に、壁面に、そして回廊の床へと連続で投げ振るい、さらなる叩き込んだ。

 

「バカな……」

 

 投げの連打が収まったことで、ネフシュタンの再生能力により意識を取り戻すフィーネだったが、思考は混乱の渦に呑み込まれかけている。

 完全聖遺物と〝生体融合〟の形で纏った自分を、生身で完全に圧倒する弦十郎の、仮にも一介の人でありながら人知を超えた圧倒的が過ぎる戦闘能力に。

 以前から彼が高い身体能力を有していること自体はフィーネも存じてはいたが………ここまで規格外な領域にまで達していたとは、彼女からしてみれば完全に想定外だった。

 

「よもやここまでのデタラメ具合とは思わなかったぞ、さしずめ〝生きた憲法九条抵触〟と言ったところか?」

 

 内心の動揺を悟られまいと、皮肉なユーモアと微笑を浮かべて態勢を立て直しつつも。

 

「どうやってここまで鍛え上げた?」

 

 その戦闘力の源泉を問いかける。

 

「知らんのか?――飯食って寝て映画をたっぷり見て鍛える!――男の〝鍛錬〟ってのはな、そいつで充分だ!」

 

 対して弦十郎は、全く理屈の通らない……しかし妙に確かな説得力を持った〝持論〟を、堂々と表明した。事実その言葉の通りのやり方でこの戦闘能力の高さなのだから、性質も始末も悪い………とフィーネも思わざるを得ない。

 然れども――。

 

「だがいかなその剛腕でも、人の身である以上はッ!」

 

 ――弦十郎とて人間、特異災害を前では聖遺物をも圧倒する戦闘さえ、紙切れ同然の無力に帰する。フィーネはカード状の待機形態であった〝ソロモンの杖〟を杖に変えて起動しようとしたが。

 

「遅いッ!」

 

 相手はがソロモンの杖を使うと予測していた弦十郎は、彼女が杖を通じてノイズに指示する前に震脚で床を砕き、破片の一角を蹴り飛ばす。

 破片は杖を持つフィーネの手に命中し、杖は弾き飛ばされ天井に突き刺さった。これでノイズを用いた攻め手も封じられ。

 この機を逃すまいと弦十郎は、右腕を振り上げフィーネへと肉薄し。

 

「これでお前の企みも終わりだ――」

 

〝フィーネッ!〟

 

 と、トドメの一撃をこの一声と当時に叩き付けようとした……が――。

 

 

 

 

 

「弦十郎君……」

 

 

 

 

 

 フィーネにしてネフシュタンの鎧を纏った姿のまま、彼女は〝櫻井了子〟の顔を見せつけ、声で弦十郎を呼びかけ。

 

「なっ!?」

 

 彼の面持ちに、逡巡の表情が浮かぶ。

 その僅かな〝隙〟を見逃すフィーネではなかった。むしろその隙を生み出す為に、わざと櫻井了子の仮面(かお)を、弦十郎に見せつけたのだ。

 

「ふっ…」

 

 邪悪に弦十郎の〝甘さ〟を嘲ってほくそ笑み、彼女は躊躇わず蛇腹の刃で弦十郎の胴体を………串刺しにした。

 

「司令ッ!」

 

 緒川の瞳からはスローモーションで、刺し貫かれた腹部と口から、血を大量にまき散らして崩れ落ちる弦十郎の痛ましい姿を捉え、フィーネは傷口にめがけ、緒川の方へ彼を蹴り飛ばした。

 せめてフィーネがアビスへ行く為に使おうと今手にしている二課専用端末を破壊しようと銃弾を連射し、内数発の弾丸は曲線を描いて飛びゆくも。

 

《ASGARD》

 

 翳したフィーネの手から発せられた、彼女自身の〝能力〟であるマゼンダ色で円形状のバリアによって。

 

「そこに横たわる甘ったれと違い、お前の射撃の腕は正確に知っているぞ」

 

 全弾、虚しく防がれた。

 

「殺しはせん、お前達にそのような〝救済〟など与えはしない、せいぜい己の無力さを噛み締め、私の積年の悲願が成就される瞬間を見届けるがいい」

「待て!」

 

 フィーネは同僚(とも)たちへ改めて決別の意志も込めた言葉を吐き捨て、端末を使ったハッキング操作で両者の間にあった隔壁を閉めた。

 追いかけて刺し違えてでもフィーネを止めたい衝動に駆られる緒川だったが。

 

「何とかもって下さいね……」

 

 床に血溜まりを流して倒れた、最後の止めこそ受けなかったものの重傷なのに変わりない状態の弦十郎を見捨てられない想いの方が勝り、急ぎこの場で止血含めた応急処置を始めた。

 

「ぐっ……」

「暫くはお喋りも禁物ですよ、司令……」

 

 止血作業を進めながら緒川は。

 

(本当に〝最後の希望〟となってしまいましたね……装者(あやねさん)たちが)

 

 心中にて……一人呟いた。

 

(頼みます)

 

 

 

 

 

 ネフシュタンを纏ったままフィーネは直通の高速エレベーターで最深部(アビス)に到着し、中央に保管されていたデュランダルの前で歩を止め、眼前に3Dタッチパネルコンソールを出現させ、操作し始める。

 

「目覚めよ――天を衝く魔塔、彼方(かなた)から此方(こなた)へと――」

 

 本部内のありとあらゆる機能をクラッキングで本格的に掌握していきながら、デュランダルを、そして二課本部の皮を被った、彼女が〝悲願〟を達成するべく作り上げた天を仰ぐ塔――〝カ・ディンギル〟を目覚めさせる言葉(パスワード)を唱えていく。

 

「――現れ出でよッ!」

 

 デュランダルが発光し始め………今まさにカ・ディンギルは、地上に、そして現代の人類に、異名の通りの〝真の姿〟を……現そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 応急処置を施した弦十郎の腕を肩に担いで、緒川は司令室に入る。

 室内にいた藤尭やあおいらオペレーターたちや未来は、ソファーへと横たわった満身創痍の弦十郎の姿に驚きを隠せなかった。

 

「司令!」

「処置は済ませてあります」

「と言うことは……この怪我は」

「櫻井了子、いえ……フィーネから付けられたものです、それより脱出の準備は?」

「手筈通り、司令が負けた時を見越して完了してますよ、暗号も朱音さんに送って」

 

 藤尭がそう言った直後、司令室の照明が落ちた。残る灯りは非常灯とコンソールの光のみ。

 

「本部内からクラッキングを受け、各システムが書き替えられていきます!」

「櫻井了子(あのひと)の仕業なら……」

「掌握は時間の問題ですね、全員本部より退避! 未来さんたちもここの非常用エレベーターを使ってシェルターに!」

「はい! みんな、早く乗って!」

「うん……」

 

 緒川からの指示を受けた未来は、級友たちを催促させて非常用エレベーターに乗り込んだ。

 続いて司令を緒川と職員の一人が二人がかりで、エレベーターに乗る。

 

「何とか誤魔化してくれよ……」

 

 コンソールがフィーネのクラッキングで灰色一色に染まっていく中、どうにか藤尭はギリギリまで本部メインコンピュータに保存されていたデータ諸々を可能な限り自身のタブレットPCへと、無事に転送し終えた。

 櫻井了子が首謀者にしてフィーネである事実は、二課職員全員が周知の事実、知らないのは朱音除いた装者と、民間協力者の未来のみ。

 

〝もし司令が負けた場合、本部がフィーネに乗っ取られる可能性があります〟

 

 その事実の知る唯一の装者だった朱音からの提言もあり、そうなった時を見越して避難用の設備がハッキングされるまでの時間稼ぎとして、司令室の機能も〝掌握した〟とフィーネに欺かせる為のダミープログラムを、弦十郎とエージェントらが彼女のアジトに踏み込む以前から、予め組み立てておいたのだ。

 現に想定していた〝最悪〟に加え、想定外に等しかった〝本部そのものがカ・ディンギル〟であった事態に対しても、潔く本部からの退避と言う対応ができ、司令室に残っていたオペレーターの職員たちもエレベーターに乗る。

 

「頼むよ……止まんないでくれよ」

 

 最後まで残っていたあおいたちが乗るエレベーター内は、クラッキングで途中停止しない様祈りつつ大事なデータが入ったPCを抱える藤尭の震え声が響く。状況が状況なので、彼を咎める余裕はあおいたちにない。むしろ口にしないだけで同じ心境を抱えていた。

 そうして………幸いにもどうにかエレベーターフィーネの魔の手に嵌る前に到着して開き、灯りが非常灯のみの暗い避難通路を走って、シェルターへと向かっていく。

 途中、藤尭のタブレットPCから警告音が、暗い回廊で反響(こだま)する。

 

「なんてこった……」

「何があったの?」

「最奥区(アビス)に繋がるメインエレベーターが独立起動! デュランダルから高エネルギー反応も!」

 

 それは……〝天を仰ぐ塔〟が覚醒の鼓動を鳴らしたと、報せるものだった。

 

 

 

 

 一方で地上のリディアン校舎と近辺はと言えば、周辺住民の避難が完了したことで閑静を通り越した静寂が流れていた。民間人の避難誘導に尽力していた陸自や特機一課の面々も、完了と同時に弦十郎からの指示でその場から離れており、リディアンは昼だと言うのに、空が灰色の雲によって蒼穹がすっかり覆われているのもあり、寝静まった真夜中の学校によく似た、不気味な沈黙が流れている。

 そしてこの静寂は……言葉通りの……〝嵐の前の静けさ〟であり、突如この沈黙は、天地を裂こうとするかの様な巨獣の咆哮を思わせる轟音によって、盛大に破られる。

 最大震度:七へと悠に達した地中から発せられる巨大な変動(ゆれ)が、リディアン周辺の地上を震撼させ、中央棟を起点に校舎の外壁には亀裂が走り、窓ガラスが割れ落ちて行き。

 亀裂が大地にも大きく痛々しく走り、支えを失ったリディアン校舎が倒壊、崩れ落ちる直前―――地中ごと突き破る巨躯なる円錐状で、先端には円形の〝砲口〟を携える、極彩色の紋様が描き込まれた………それ自体が〝砲身〟じみた塔。

 この塔こそ、長年二課本部地下エレベーターシャフトに化けていた……《カ・ディンギル》の姿。

 リディアン校舎の大半を完膚無きにまで破壊し尽し、建物の無数の破片残骸をまき散らして、塔は暗く淀む灰の曇天によって覆い隠された天へと、大地を揺らがして立ち登っていく。

 塔は灰色の雲海を容易く貫き超えたところで、ようやく〝浮上〟を止めた。

 

「まるで我が積年の悲願を阻もうとしている様だな………だが無駄なことだ、その程度で邪魔立てできるなど笑死だぞ、〝姫巫女〟に紛い物のシンフォギアを与えし――〝地球(ほし)の意志〟よ」

 

 地上では、辛うじて完全に倒壊は免れたか中波以上の痛みを受けて廃屋と化した校舎の一角の屋上に降り立ち、鎧を解いて櫻井了子の姿になったフィーネが、曇天を見上げてそう嘲り呟く。

 直後、地上の向こうから、瓦礫の上を駆け走る足音が聞こえてきた。

 

「噂をすればなんとやら………やっとのご到着か」

 

 雲が隔てる空の遥か向こうのある〝星〟へ見上げていた視線を、フィーネは眼下の地上へと見下ろす。

 

「まだその姿を―――私達の前で見せつけるか? 櫻井ぃ……了子」

 

〝フィーネ〟にとっては、計画を成功させる為の〝駒〟の一つでしかなかった………シンフォギアの担い手たる装者の少女たち、朱音、響、翼、クリスの四人。

 響は目の前の状況を受け入れられず信じがたい瞳で呆然とし。

 翼も、驚愕で言葉を失い。

 クリスはと言えば、忌々しく歯ぎしりをして睨みつける………中。

 

「いや―――フィーネッ!」

 

 フィーネからしてみれば〝想定外〟そのものであり、悲願成就の過程に於いて最大の障害と言っても過言ではない一方、ある意味で〝似た者同士〟な存在である異端の装者――《草凪朱音――ガメラ》――は、翡翠色の瞳から鋭利な槍を思い起こさせる眼光をフィーネに突きつけ、担架を勢いよく切らせる。

 

 対してフィーネは、弦十郎に深手を負わせた時と同様の蛇じみた邪気に満ちる微笑で、彼女らを見下し見下ろすのであった。

 

つづく。

 


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