GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第一楽章 作:フォレス・ノースウッド
Finale – Guardian of children
特異災害発生の警報とアナウンスがけたたましく響き続ける首都東京の中心二重サンクと西端の山間部との中間に位置し、在日米軍横田基地が置かれている福生市街地の真下に張り巡らされた地下水道の一角にて、陽光の届かぬ闇の中を走る面々がいた。
手に持ったライトを頼りに、とてもこの場に似つかわしくないあどけなさの残る成長過程の外見(からだ)に鞭打って、荒々しく息を吐きだしながら走り続ける小学校高学年ほどの年頃で、ちょっとした小学生最後の夏休みの思い出作りも兼ねた冒険途中だった子どもたち。
一人は一番小柄で茶髪。
もう一人は一行の兄貴分らしき昭和時代のガキ大将風な面影のある黒髪短髪。
もう一人はオタク気質と知識量の高さが窺える眼鏡と癖っ毛に一番華奢な体躯。
もう一人は、この中で唯一アメリカ人の血も引く年相応よりかなり大柄で金髪。
「あ~~もう分かってるっての!!」
金髪大柄の一人が、懐のスマートフォンからやかましく鳴り続けるノイズ出現警報に毒づき。
「スマホに文句言えるよゆーあんならもっとその図体走らせろブロディ!」
ガキ大将風の一人が、苦言を呈する流れも挟まれる中、少年たちは一心不乱に自分らに迫る〝特異災害〟から逃げ続けていた。
同時刻。
夏の鮮烈な蒼が彩り、巨大な入道雲たちが宙を闊歩する上空を飛翔する飛行物体の一つ。
正体は無論、現状装者たちの中で、ルナアタックにおける限定解除(エクスドライブ)の様なイレギュラーを除き、唯一単独飛行できる地球の力(マナ)が生み出し異端のシンフォギア――ガメラの担い手たる朱音だ。
前世の自身(ガメラ)の力の源泉でもあったプラズマエネルギーを用いて、アーマーからは反揚力浮遊(リパルサーリフト)と腰部と脚部等の推進器からのジェット噴射のハイブリットによって、現存する航空機体をも凌駕する加速力、機動力、旋回性を以て、この大海原(おおぞら)を文字通り水を得た魚の如く疾駆していた。
〝~~~♪〟
彼女の翡翠色の眼光が見据える先には、この空を傲岸にも飛び回る飛行可能な特異災害――ノイズたち。
『好きに選んでいい~~♪』
夏の蒼穹から五感と心(むねのうた)に刺激を受けたことで胸部の勾玉から、疾走感溢れるギターサウンドを主軸をした伴奏(メロディ)が響く中、朱音の潜在意識から新たな歌の詩が創造されていき。
『雨はまだ~~降~らないらしい~~―――1・2――1・2・3・4ッ~~♪』
上空を翔けるスピードを一層速め、掌中のプラズマエネルギー噴射口から放出された炎(プラズマ)をライフル――武器(アームドギア)へと固形化させ。
『昨日・今日・明日もきっとずっと言われ続けてきたよ~~良いことよ~り悪いことが多いこと~~♪』
《烈火球――プラズマ火球》
銃口から、超放電現象の産物たる火玉を連続で撃ち放つ。
『遥か・何処か・いつか・彼方忘れ去って消えるだろう~~冴えないけ~ど下がってても~意味が無いだろ~う~~♪』
《烈火球・嚮導》
続けて朱音の歌声に宿るフォニックゲインを糧に、彼女の周囲にも炎が複数出現し、一斉掃射。
火球(プラズマ)の群れは、相対するノイズの群体に着弾、通常の炎では燃焼不可な物体すら一瞬で灰燼に帰す猛火の花火(ばくはつ)が蒼穹にて幾つも煌めき、次々とノイズを飲み込んで灰化も嬌声を鳴くことすら許さず消失させていく。
『絶望の中で~~小さな光見つけたよ~~♪』
《旋斬甲――シェルカッター》
さらに自身の前世の甲羅(うしろすがた)を模したシールドを生み出し、辛うじて火球の猛攻を逃れた残る個体めがけ投擲、盾は彼女の脳波操作で高速回転しながら自ら飛び。
『その声と心だって~~気づいたよ~~――』
《旋律囃――フォニックビュート》
前世にて戦った怪獣たちの技を見本に、ルナアタックの渦中にて黙示録の赤竜との激戦にて編み出した新技の蛇腹(むち)を手首より滲出させ。
『叫ッ――んで~~ッ!!』
残るノイズたちへめがけ、突進。
『もっとちゃんとなんでやっとだってだって言って去った愛や才能~~現実~世界~振り返る暇ない Ride or die then~どんでん返し~~♪』
歌唱がサビへと移りてより高まったフォニックゲインの出力は、朱音当人と遠隔操作する甲羅(たて)にかつての自分(ガメラ)と勝るとも劣らぬ超音速の飛行性を齎し
『Here we go~Going up~~隔たりを砕いて会える時を~~♪』
鞭ならではの変幻自在な機動から繰り出す斬撃は、盾の回転連撃とともに千々にて両断せしめていき。
『何もせずにただ待っていた~何もせず苛立っていた~~♪』
《超烈火球――ハイプラズマ》
最後の足掻きとばかり残った数で融合しようとするノイズたちへ、ライフルの銃口から巨大の火球を打ち込み、形態変化の中途で盛大に爆発四散焼失した。
『終わりも告げずに絡まっていた~~こんな僕を僕は待っていた~~♪』
夏空の宙域は、朱音と雲海たちを残して飛行型のノイズは一掃されたが、勾玉からは伴奏が継続されたまま、はっと翡翠色の瞳を見開く彼女は地上へと急降下する。
『――最果ての淵で歌う精一杯~ッ♪』
装者の歌声(フォニックゲイン)だけでなく、森羅万象、地球に生きるあらゆる生命、この惑星そのものにも常に流れ行きて存在するエネルギー――マナを通じて、朱音の脳裏が受け取ったのだ。
まだ残っている〝災厄(ノイズ)〟を前に、抗う術を持たず生命を脅かされている幼き少年少女たちの姿を。
『傘を忘れて~~来る筈のない迎えを待つ~~♪』
《雷光集束波――フォトンスパイラルシュート》
銃口(ライフル)より出力を敢えて抑えて放たれた荷電粒子の線流が、大規模工事予定の標識やバリケードで囲まれた更地(くかく)に円を描き。
『行き先は選んでいい~~雨はしばらく~降らないらしい~~♪』
アームドギアをライフルから打突機能(パイルバンカー)を有したハルバートへと変化させた朱音は上段に振り上げ、急降下の勢いを相乗させて円の中心に、プラズマエネルギーで炸裂射出された杭を叩き込み、大地を円状に砕いて風穴を開けて、そのまま地下の闇へ飛び込んだ。
この地区の真下には、対水害用の放水路(シールドトンネル)があり。
(見つけた……)
陽光が注がれる地下施設内にはそこに逃げ込んだあの四人の少年たちと、人間(かれら)を狙って次元の狭間から現れたノイズの大群がいた。
朱音は反揚力(リパルサーリフト)による姿勢制御で宙を舞うように瓦礫らと降下しながら、甲羅が発する防護フィールドで少年たちを保護しつつ、ハルバート形態のアームドギアを、エレキギターへと変質させて深呼吸し――。
『もう何度~~あと何度~~訪れるかな~~?』
――弾き語りで歌唱を再開。
『ドキドキも~ワクワク~~も身体に詰め込んで~~♪』
ゆっくり降りていく朱音が演奏するギターと勾玉からのを重ね掛けした伴奏と、自身の歌声が〝神殿〟とも喩えられる放水路(くうどう)一杯に響き渡る。
『もう何度~あと何度たった一度でいいから~その声に~その顔に触れて~♪』
その音色は、施設内にいるノイズたち全ての活動(うごき)を拘束、停止せしめ、朱音の全身から膨大なフォニックゲイン――マナのエネルギーを全方位へ放出され。
『向かってゆ~く未来~~♪』
瓦礫の山と言う即席の舞台へと朱音が降り立つと、エネルギーは彼女の背後にて、前世(ガメラ)の姿へと形作られ。
『始まっていた未来~~♪』
そびえ立つ巨体(ガメラ)が顔を大きく振り上げると同時に、天地震わせる雄叫びを上げ、同時に発せられた衝撃波は放水路内にいたノイズたちは全て、肢体が灰化して崩壊、消滅していくのだった。
「ふぅ~~」
演奏を終えて残心の呼吸を終えた朱音に、風穴から降り注ぐ太陽光、まるでアーティストを魅せるスポットライトだ。
彼女の勇姿を前に、間一髪で助けられた〝少年少女〟たちは皆、言葉を失うほどに見惚れている。
「お、おいボコ……」
〝ボコ〟と言うあだ名で呼ばれた少年の一人が、朱音の方へと歩き出す。
朱音もギターを携え、ギアアーマーを装着したたま少年へと歩みゆく。
「怪我は――してないようだね、よかった」
少しかがんで目線を合わせた朱音は、少年に微笑む。
「はい、お姉さんは……なんなんですか?」
「う~ん」
問われた朱音は少しの思案を経て、自らをこう称する。
「私は―――災いの敵、生きとし生けるものたちの味方で――〝最後の希望〟さ」
その名は―――GAMERA。
First movement―FIN.
これにて第一部の本編はフィナーレです。
シンフォギア原作で言う二期のG以降はどうするかは……まだアイデア練ってる最中ですが、せっかくボコくんたちの平行同位体を出したので、朱音と彼らとの交流回な番外編後日談も出す予定です。