GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第一楽章   作:フォレス・ノースウッド

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こっちでは久々の投稿。

GとGXを混ぜて錬成中の第二部でクリスの学園エピ入れられるか~~と悩んでたのですが、迷うくらいだったら本編は迫るカウントダウン――『月の落下』を巡る本筋に注力して番外編枠で描くかってことにしました。




装者たちの放課後その①

《ルナアタック》を戦い抜き、夏休みを通り抜けて、リディアンに入って初めての〝二学期〟に入った元守護神ガメラな私こと――草凪朱音。

 義務教育期間のほとんどを、新学期が九月から始まるアメリカで過ごした私にとって、残暑の尾は引く日本の九月での二学期は、大分久しぶりである。

 そんな私はその日の放課後を、真夏よりは幾分勢いが静まった夕焼けの陽光が照らされる図書室で過ごし、読書中。

 今何を読んでいるのかと言えば、ルネサンス時代のイタリアの思想家の著書――《君主論(THE PRINCE)》。

 前校舎は《ルナアタック》の時にほとんど倒壊してしまったが、幸いなことに図書室が置かれていた区画が受けたダメージが微々たるもので、蔵書されていた書物のほとんどは元ミッションスクールの新校舎へ移転することができた。元はイタリア語で書かれ、私が読んでいる英訳版のこの哲学書も込みで。

 なぜこの本を読んでいるのかと言えば、どこかで内容の一部を引用した〝うろ覚え〟があったからなのだが。

 

「〝君主はライオンのような勇猛さとキツネのような狡猾さをもって国家を統治するべき〟………」

 

 私はその一節の英文を、小声で呟く。

 この言葉を引用したのは間違いない、ただ思い出せたのはここまでだ。

 我ながら記憶力は良い方で、知識欲は旺盛だが、それで得られた知見をひけらかす程の自己顕示欲は無い、だから余程の機会が無い限りこの手の引用を自分からすることは無いし、あった時はすぐに思い出せる筈なんだけど、実際は現状覚えが無いとなると。

 

「あの〝神隠し〟なのかな……」

 

 頬杖を付いて、窓の向こうの夕暮れを眺める私は、夏休みの間に起きた〝神隠し〟の後に身に着けていた自分の瞳と同じ色な翡翠の宝石が埋め込まれたブレスレットに目を移す。

 

「もう少し、教えてくれてもいいんじゃない?」

 

 思わず、おそらくは私へのプレゼントとして贈られたであろう腕輪に話しかけてしまう。

 無論、腕輪の翡翠は夕陽を受けて煌めくだけで、何も応えてくれなかった。

 

「焦るなってことか」

 

 まあ、自分が〝神隠し〟の間、どれだけ濃密な体験をしていたのか気にはなるけど、無理をしてでも思い出したいってわけではない。

 忘れてると認識できてるってことは、記憶が蘇る余地は確かにある。

 今はその確信を持てるだけでも良いかと、私は本を棚に戻そうと退席した。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、当の朱音本人は読書に夢中になって気づかずにいたが、なまじ夕陽に照らされて読み耽る姿が様になっていたせいで、その朱音を夢中で眺める生徒たちが少なからずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 図書室を後にした朱音は、帰り支度の為に教室に向かっていたのだが――。

 

「~~~ッ!」

「ん?」

 

 道中、校舎内を走る足音と聞き覚えのある吐息(こえ)を耳にし、十字路な曲がり角の手前の壁に背中を密着させた。

 聞き耳を、段々と荒れた息と足音の主との〝距離〟とタイミングを見計らって。

 

「Hello~クリス」

 

 角から若干口元がにやけた自身の顔を、横向きにひょっこりと出した。

 

「なっ!」

 

 朱音の翡翠の瞳は、自分がいきなり飛び出してきて仰天するリディアンの制服姿なクリスの顔を捉え、あわや彼女と頭部同士ぶつかりかける直前に顔を引っ込めつつ、そのまま相手の手を取りクリスをこちらに手繰り寄せた。

 

「あっ!あぶねえだろ……と言うかどこに連れてくんだよ」

「事情は大体分かってる、黙って着いて来て」

 

 一度大声を出しかけ、再度小声で悪戯を咎めてくるクリスの手を握ったまま、校舎内を進む朱音は、現状使われる予定のない〝社会科準備室〟の前で止まり、扉を開けると。

 

「暫くここで隠れてて、連中が来たら上手く誤魔化しておくから」

「すまねえ、恩に着るわ……」

 

 片手を立てて詫び入れたクリスが準備室に入って扉を閉め、内側から鍵がかかった音を聞いたと同時に、朱音の聴覚は彼女を追いかけている足音の主たちが近づいているのを嗅ぎ取って程なく。

 

「ちょっとごめん!」

 

 それとなくずっと廊下を歩いていた体で背後から自身を呼びかける声に応じて朱音が振り返ると、女子三人が駆け寄ってきた。

 クリスと同じ水色のネクタイなので、今年度は二年生な先輩方。

 一人は茶髪にカチューシャ。

 もう一人は前髪も後ろ髪も切り揃えたショートカットに眼鏡。

 さらにもう一人はウェーブがかった長髪をポニーテールで纏め。

 この三人組のことは朱音も一応存じている。

 二学期からリディアン高等科に転校してきたクリスに何かと交流を試みようとしているところを、何度も目にしたことがあったからだ。

 

「今この辺に髪は銀色で、後ろから見るとクラゲみたいな二つ結びの子見かけなかった?」

 

 

 三人と代表して、眼鏡の二年生がクリスのことを聞いてきた。

 やはり彼女たちから誘われて逃げていた最中だったか、と朱音は内心自身の推理が当たっていたことを秘めたまま。

 

「あ~その人でしたらさっき凄い急ぎ足で通り過ぎていきましたよ、走りにくそうな厚底を履いてるのに、多分今頃自分とこの教室に戻って帰り支度しているんじゃないでしょうか?」

「そっか、ありがとう」

 

 外面は涼しげに素知らぬ顔で指差し、それらしい言い分を吐くと、三人はその方角へと走り去って行った。

 

「もういいよ」

 

 戻ってくる気配は無いと確認した朱音が準備室の扉をノックすると、隠れていたクリスが出てきた。

 

「ほんとに助かったぜ……それにしてもよ、誰がクラゲだよクラゲ!バカ響もだけどあいつらまでさッ!」

 

(そう言われても、クラゲだよね)

 

 クリスはよく響から頭がクラゲみたいだと揶揄されてはぐぬぬとプンすか気味に否定するも、実際彼女の髪型は後ろから見るとそうとしか言い様のない髪型となっている為、本人をよそに朱音も心中では響と同じ印象を抱かされているのであった。

 

 

 

 

 

 

 余談。

 

「あれ?」

「どしたの小路?」

「さっきの一年、もしかして草凪さんじゃ……」

 

 この三人の間で先程クリスを追いかけている道中話しかけた相手が朱音だと後から気がついた瞬間、彼女たちの口から黄色い声が轟いた。

 

「どうしよ~~私そうとも気づかず話しかけちゃったよ」

「そう言えばサイン貰うの頼まれてたのに……しまった~~」

 

 なまじ抜きん出て大人びた美貌を持ち、あの翼と並んでも見劣りしないオーラの持ち主なゆえに、当の本人の認識以上にすっかりリディアンに咲く高嶺の花の一輪となりつつある朱音だった。

 

 

 

つづく。

 

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