GAMERA-ガメラ-/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第一楽章 作:フォレス・ノースウッド
番外編:不良怪獣ゼットンくんとガメラ姉さん。
前世が守護神ガメラで、現在はリディアン音楽院高等科の女子高生な人間ながら〝シンフォギア装者〟として災いに立ち向かう守護者である私こと草凪朱音。
その日の土曜の、学校は休みなので私服姿の私は、紙袋二つに入った多種多様な玩具を抱えて、今住んでいるマンションのご近所な、ちょっと昭和の風情残る住宅街を歩いている。
その近所の町内会の会長さんから頼まれて、地元イベント景品用の玩具を代わりに公民館へ運んでいる最中だ。
おっと、例の目印代わりのお店が見えてきたから、公民館までもう少し。
そのお店とは駄菓子屋さんも込みで、ここら辺りには特に昭和の雰囲気がくっきり残っており、あの時代には生まれてもいない自分すら、まるで当時にタイムスリップしてきた感覚があって、いつ通ってもこの空気感が私の感性には独特の心地よさを与えてくれた。
ちなみに、その駄菓子屋を営むお婆さんは実は子ども嫌いらしい………それ自体は人それぞれって割り切れるけど、そんな人がなぜその子どもたちメインの客層な店舗を経営してるのかはさすがに謎だと思わざるを得ないけど、草凪朱音(いまのじぶん)も子どもの内なので、現状本人に聞いても煙たがれる可能性から、今は聞かないでおくことにしていた。
(今日はまだ来てないのか~ゼットンくん)
例の駄菓子屋近辺でよく見る光景を述べよと、言われたら、私なら真っ先に『チボ高のヤンキーたち』を上げる。
正式名称『私立地球防衛高等学校』――略して『チボ高』。
リディアン現校舎からもそれ程離れてない地区にある、将来の防衛組織のエリート隊員養成施設みたいな名前に反して、コテコテのヤンキーたちが通う不良学校。
確か、駄菓子屋近辺をたむろしてる、これまた昭和臭が濃厚すぎるラフな改造学ランとリーゼントヘアなツッパリ男子たちはゼットンくんの他にケン、ブーチン、タケシ、ナオキって名前だったよね?ゼットンくん本人の話では。
「ピポポポポ~~」
「よおゼットン!遅かったじゃねえか」
あ、来た来た~♪ 最強クラスの戦闘能力を持つ大怪獣でありながら、今はチボ高で高校生活を送っている『ゼットンくん』。
「やあゼットンくん、こんにちわ♪」
「ゼットーン~!?」
私は彼に呼びかけると、お馴染みの鳴き声で『朱音ちゃん!?』と呼んで応じてくれた。
「え?なに?ゼットン噂のリディアンのイケメンマドンナ草凪と知り合い?」
どうして私の存在が男子オンリーな不良校にまで伝わっているのか分からないことはさて置き、ゼットンくんの話を反芻して、おそらくケン君と思われる男子が自分と彼との関係性に言及してきた。
「君は~ケン君だよね?」
「はい!え?俺たちのこと知ってるんすか!?」
「この前ゼットンくんに色々助けてもらってね、その時君らのことも聞いてたんだ」
「お前いつの間に!?」
「しかもこんな美人と!?」
この前、私は音楽教室の子どもたちへの差し入れのお菓子を運ぼうとしていた。
その時に、たまたま通りがかったゼットンくんが『よろしければ、お手伝いしましょうか?』と気前よく申し出てくれたのである。
「助かったよ、お陰で中のお菓子は無事なまま、子どもたちに届けることができたから、改めてありがとう♪」
「ピポピポポ~(〃´∪`〃)ゞ」
ゼットンくんは後頭部をかきながら『どういたしまして~』と少し気恥ずかしそうな様子だ、可愛いな~。
「ゼット~ン! ピポポポポ?」
「今日は一人でも運べる量だから大丈夫♪」
あれ?ケン君たち急に静まり返ったけど、どうしたのかな?
「あの……」
タケシ君が代表して質問してくる。
「今ので、会話できてたんすか?」
「うん、できてたよ」
「今の鳴き声からどうやってっすか!?」
続いてブーチン君からも、いざ聞かれたら当然と言えば当然の疑問を投げかけられた。
「最初の〝ゼットン〟で荷物を持ってる私を心配して、後半の発光音で今日も手伝おうかって尋ねてくれたんだ」
「そんな繊細なニュアンスが!?」
ナオキくんのリアクションを筆頭に、他のゼットンくんのクラスメイトも同じくらいびっくりしてる。
「口数は少なそうなイメージだけど、心遣いのできる優しい子だよ、この君らの友は」
「ピポポポポ~~!!」
ゼットンくんの胸部の発光器官の点滅具合がいつもより速まった。
「お前まさか、照れてんのか!?」
「そんな照れることないよ、素敵な長所なのだから、もっと誇っていい♪」
あれ?今度は胸の発光部に手を当てたまま固まっちゃった……。
「ゼットンく~ん?もしも~し」
顔の前で手を振ってみるけど、微動だにしない。
「初恋で機能停止したんじゃねえか?」
「ゼットンッ!」
「分かった! 言わねえから一兆度の火球はやめろ!」
タケシくんが小声で級友たちにボソッと言った途端、急に覚醒したゼットンくんが興奮し出した。
「一兆度は周囲への被害が大き過ぎるね、せめて威嚇程度に抑えたまえ」
「ゼ、ゼットン……」
申し訳なさそうに、私に頭を下げてくるゼットンくん。
「私に謝らなくていいよ、せっかくの学生ライフを自分の能力で太陽系ごと吹っ飛ばすことにならなくて何よりだ」
「言うこと聞いた!?」
「じゃあ私はこれで――」
と、当初の目的に戻ろうとしたが、まだゼットンくんはなにか言いたいらしい。
まず景品が入った紙袋を指差して、次に自分を指して、目的地はどこ?と首を傾げてくる。
「今日も手伝ってくれるのかい?」
「ゼッートン!」
「ありがとう~じゃあお言葉に甘えて、お願いします♪」
私は紙袋をそっと渡すと、ゼットンくんは丁寧に受け取ってくれた。
「届け終わったら、お礼にご馳走するよ、甘いものは好きかな?」
「ピポポ~♪」
「そうか、行きつけの喫茶店にお勧めのお菓子あるから、後でそこに案内するよ、じゃあ友達のみんな、ゼットンくんお借りするね~」
四人の級友たちに手を振って、私はゼットンくんを伴って目的地の公民館へと足を運ばせていった。
―――
二人が並んで歩き去っていく、四人から見たゼットンの背筋は不自然なほど伸び、その足取りは怪獣軍団の先頭を歩くときより緊張していた。
残されたケンたちは、しばし呆然とその背中を見送った。
ケン「……ゼットンが女の子とデートに行った」
ブーチン「ゼットン本人の中では、もうデートだな、あれ」
タケシ「しかし、なんで草凪さんなんだ?」
ケン「そりゃ美人だからだろ」
ナオキ「それだけじゃねえよ」
ナオキは、遠ざかる二人を見つめた。
ナオキ「みんなゼットンを見たら、〝怖い〟だの〝強い〟だの〝ウルトラマンを倒した最強怪獣〟って言うけどさ、草凪さんは最初からあいつを優しい子”として見た」
ブーチン「なるほど……」
タケシ「そりゃ確かに惚れるわ」
チボ高のゼットンくんといつもつるむ一同はほぼ同時に頷いたのだった。