穂乃果たちと別れた俺は今ライブが行われる講堂へと向かっている。
向かっている中で俺は穂乃果たちのことを考えていた。
先ほど穂乃果たちに俺の初ライブのときの話をしてもらったのは感謝を伝えたかっただけではない。
その話は穂乃果たちにも同じことが言える、ということを伝えたかったのだ。
確かに学校でライブをやる以上俺とは違い、観客が0の可能性は低いだろう。
しかし俺はその可能性が0だとはとても思えないのだ。
俺が観客0から始めたから不安に思っているだけかどうかはわからないが、俺はそう思う理由がしっかりある。
まず穂乃果たちのアイドル活動が学校全体に知れ渡っているのかどうかだ。
以前聞いた話ではグループ名やメンバーの募集をポスターで行ったらしい。
確かにそれはいい方法だと思う。
最初の活動はそういう小さなところから始めるものだ。決して間違ってはいない。
しかしその結果がグループ名の意見一枚だけなのだ。
グループメンバーの募集にいたっては0だ。
そんな状態で不安に思うなというのは無理な話だ。
次は希さんが言っていた”乗り越える壁”だ。
まだあった回数は数回だから俺は希さんについてそれほど詳しいことは知らない。
しかし何度か会っただけでも何かすごい人というのはわかった。
…きっとそのすごいというのが希さんが言うスピリチュアルなのだろう。
まぁスピリチュアルは置いとくとしても、希さんが言っていた”乗り越える壁”は妙に説得力があった。
もし観客が0だとしたらそれは乗り越える壁だといえるだろう。
最後は観客についてだ。
学校でライブをやるといってもこの学校は人が少ない。
3年生は下級生の活動なんかに興味がないかもしれない。
2年生は穂乃果たちと同じ学年ということで穂乃果の友達が来てくれるかもしれない。
1年生は一クラスしかない上今は他の部活動も新入生の勧誘をしているため来る人はかなり限られると思われる。
…2年生しか望みないじゃん!
しかし2年生だと部活に入っている子は自分の部活で忙しいはずだ。時期的にも自分たちの代になって今は意識の高いときなのかもしれない。
…え?
やばくないか?
よくよく考えたら今日来る人数なんてよくて15人くらいなんじゃないか?
よくて…だが。
穂乃果たちのためにも観客0人はやめてほしいところだ。
あいつらがどれだけ頑張ってきたかは俺が一番理解している。
穂乃果は苦手な早起きを毎日頑張って朝練に参加し、海未は恥ずかしがりながらも歌詞を作り、ことりは3人のために寝るまも惜しんで衣装づくりを頑張っていた。
ここまでしたら報われてほしい。
そう思う自分がいる。
俺だって頑張らなかったわけではない。
だが俺の時以上に穂乃果たちのことは報われてほしいのだ。
だけど結局は穂乃果たちの悲しむ顔を見たくないというのが一番の理由かもしれない。
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色々考えていると講堂の入り口までやってきていた。
ライブが始まる20分前。
意を決して俺は講堂のドアを開ける。
シーン…
誰もいない。
「ま、まだ20分前だしな。誰もいなくても不思議じゃない。」
そう口では言うが内心俺は焦っていた。
確かに20分前だし有名なアーティストのライブってわけじゃないのでそんなに早い時間から会場に来る人はそんなにいないだろう。
しかし、0はなくないか?
1人くらいいてもいいだろ。
俺がそう思っていると、会場の準備をしていたと思われる女生徒から声をかけられた。
「お客さん!?」
やけにびっくりしてるな。
まぁこの子も誰も客がこなくて焦っていたということかな。
「まぁそうですけど。」
「って男!?失礼ですけどなぜここに男性が?」
思いっきり警戒されてるな…。
まぁ女子高に男がいたら警戒されのも無理はないか。
「えっと…幼馴染がライブをするって言ってたんで見に来たんですけど。」
「幼馴染?穂乃果の?」
「穂乃果もそうですけど、ことりと海未もそうです。」
「あっ、そうだったんだ。ってことはあなたもしかしてアイドルの翔人君!?」
…え?
あいつら勝手に学校で俺のこと話してるの?
「…まぁ一応そういうことになってますね。」
「キャー!!本物の翔人君だ!後でサインもらえますか?あっ、私ミカって言います!」
どうやら俺のファンだったようだ。
まぁこれが普通の反応なのかな?
「サインするくらいならいつでもいいけど、穂乃果たちのライブが終わった後でいいかな?」
「はい!それはもちろんです!」
そしてどうやら穂乃果たちのこともしっかり考えている子のようだ。
さっきのビラ配りの子といいこの子といいあいつらは友達に恵まれてるな…。
「君は…」
「ミカです!」
…名前で呼ばないとだめなの?
「…ミカは穂乃果たちの友達?」
「はい!高校に入って初めての友達です。」
「そうか…。いつも穂乃果が迷惑をかけてるだろ?いつもありがとう。」
「いえいえ~。確かに迷惑かけられることもあるけど友達だったらお互い助け合わないと!」
友達だったら…か。
助け合う…ね。
ホントにいい友達を持ったな。
「それにしてもこの会場結構手が込んでるな。これもミカが?」
「はい!私のほかにもあと2人いて3人で穂乃果たちの活動をサポートしてるんです!私たちも音ノ木坂はなくなってほしくないですからね。」
そうだったのか。
やっぱり穂乃果たち以外にも音ノ木坂のために何かしたいって思ってる子はいるんだな。
「それにしてもよく手の込んだ会場だな…。これなら今度のライブでも手伝ってもらいたいくらいだよ。」
「今度のライブ?」
しまった。
つい口が滑って…。
…まぁここまで言っちゃったんだし別に隠すことでもないし話しちゃうか。
「えっと…、今度この学校でオープンキャンパスをするときに俺がここでライブをすることになったんだ。」
「えっ?…えー!?ここで翔人君がライブを!?」
まぁそうなるだろうな。
俺でも自分の学校のオープンキャンパスにアイドルが来るなんて知ったら同じ反応を示すだろう。
「あぁ。あとこの話は学校で発表されるまでオフレコで頼む。ついでに穂乃果たちにもまだ内緒にしといてくれないか?」
「?何でですか?」
「その方がおもしろいだろ?」
そう言って俺はニヤリと口角を上げる。
「穂乃果たちから聞いてはいましたけど翔人君って結構いたずら好きなんですね…。」
…一体あいつらは俺についてどういう情報を流しているのだろう?
後で聞いてみるか。
「まぁそういうことでよろしく頼む。」
「了解です!」
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「それにしても客はまだ俺だけか?」
ミカと話していても客が誰も来ないため俺はミカに問いかける。
「はい…。まだ翔人君だけですね…。一応ビラ配りとか他の2人と一緒にギリギリまでやってたんですけど…。」
さっき会ったあの子か…。
ここまで頑張ってくれたんだからこんなに落ち込む必要ないのに…。
「ミカがそんなに落ち込む必要ないだろ?君たちは穂乃果たちにとってかなり助けになったはずだ。例え客が来なくてもそれは穂乃果たちの実力だ。決して君たちのせいじゃない。」
「そうはいっても気持ち的には申し訳ない気持ちでいっぱいですよ…。私たちも手伝うって言ったのにもし観客が0人だったら手伝った意味がないですし…。」
それには同感だ。
俺もコーチをしてきた以上もしそうなってしまったらそういう申し訳ない気持ちは少なからずもつだろう。
とはいえいつまでもこのようなネガティブ思考でいてもしょうがない。
ここは話を変えるしかないか…。
「それよりミカ、さっきの話の続きなんだけど、もしよかったら俺がやるライブのときも会場準備をしてくれないか?やっぱりこれだけできるっていうのはすごいと思うんだ。もちろん無理なら断ってくれて構わないけど。」
「私がですか!?でも私なんかが手伝って迷惑になりませんかね…?」
「大丈夫だ。それにさっき言ったろ?学生でここまで完成度の高い会場準備は久しぶりに見た。迷惑なんてとんでもない。」
「なら是非手伝いたいです!」
「ホントか!助かるよ。他にも誘える友達がいたら誘ってくれておいてくれないか?人手が多いにこしてことはないからな。」
「OKです!…それよりさっき久しぶりに見たって言いましたけど以前はどこで完成度の高いところを見たんです?」
「UTX。A-RISEだ。」
「あ、A-RISEですか!?やっぱりすごいんだなぁ~…。」
「まぁな。あそこは学校全体でA-RISEを応援してるからな…。穂乃果たちのμ'sだって学校全体が応援してやればA-RISEと同じくらいのことはできるはずだ…。まぁ演技は別としても…。」
「まぁスクールアイドル始めたばかりの穂乃果たちじゃ敵うはずないですよね…ハハハッ…。」
なんて会話をしていたらもうライブ開演まで1分を切っていた。
ミカもそれに気づいたのか、講堂を見渡すと顔が下に向いてしまった。
ブーッ!
そんな俺たちのことなど知らないかのように無情にもブザーが鳴り響いた。
~穂乃果side~
ブーッ!
ついにライブが始まる。
ここまで海未ちゃんとことりちゃんと、そしてひろ君と一緒にやってきたんだ。
絶対楽しいライブにするぞ!
そう思い私は瞑っていた目を開けて講堂を見渡す。
そこで私の目に映ったのは誰もいない空席だけの講堂であった。
「えっ……。」
私は頭の中が真っ白になった。
~穂乃果side out~
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ブザーが鳴って弾幕が上がると、顔から笑顔が消え、表情が固まっている穂乃果、海未、ことりの3人が見えた。
……畜生。
もっと俺が気を回していれば!
もっと宣伝をしていれば!
穂乃果たちにこんな顔をさせずにすんだのに…!
あの時二度と…二度と穂乃果たちにこんな顔はさせないと誓ったはずなのに…!
俺は一体何をやってきたんだ…。
俺がそんな風に思っているとミカが、
「ごめん…がんばったんだけど…。」
と、穂乃果に謝っている。
違う。悪いのは君じゃない。
悪いのは…俺だ。
「…そりゃあそうだ。…世の中そんなに甘くない!」
いつも前を向いている穂乃果ですらこんなことを言う始末…。
…このままでいいのか?
俺は自分に問いかける。
おそらくこのままだと穂乃果たちは一生消えないトラウマを負ってしまうかもしれない。
そんな彼女たちを見ていて俺は楽しく過ごせるのか?彼女たちは笑って過ごせるのか?
答えは…否だ。
……俺はいつまでもこんな幼馴染をみていたくはない。
そう思った俺は穂乃果たちに語り掛ける。
「それでいいのか?」
「「「えっ?」」」
「それでいいのかって聞いたんだ。ここまで辛い練習をしてきて…衣装づくりを頑張って…廃校阻止のためにがんばって…その集大成がこんなことで終わってもいいのかって聞いたんだ!」
俺の大声に穂乃果たちは少し驚いているようだった。
まぁ普段大声出さないもんな…。
だが俺はそんな穂乃果たちに構わず話を進める。
「確かに今のお前たちにとっては辛いかもしれない…。その気持ちはわかるさ、俺だって一度体験したんだ。………でもな…横を見てみろ!」
「「「!!」」」
驚いた様子で穂乃果たちは横に振り向く。
ことりは穂乃果と海未を、海未は穂乃果とことりを、そして穂乃果は海未とことりを。
「俺はライブのときに来てくれた穂乃果たちに救われたんだ。そう…救われたんだよ!決して一人じゃないって思わせてくれたからな。…でもお前たちは違うだろ?何のための3人なんだ?お互いを支え合うためなんじゃないのか?隣にいる幼馴染は自分を支えてくれないほど無責任な奴なのか?」
「違うよ!海未ちゃんとことりちゃんはいつだって私を支えてくれるもん!」
俺の言葉に対して穂乃果が反発してくる。
そうだ。その通りなんだよ。
それでこそ穂乃果なんだ。
俺は少し微笑みながらやさしく穂乃果に問いかける。
「だったら不安なことなんて何もないんじゃないか?隣には海未とことりがいる。それに役不足かもしれないが、観客としてお前たちのライブを準備を手伝ってくれた3人と俺がいる。」
「でも…。」
まだダメか…。
ここであと1ピースがそろえばきっと穂乃果たちは立ち直れるはずなんだ。
だが、その1ピースがなんなのかがわからない。
くそっ!大事なところで!
そして最後のピースについて俺が模索しようとして後ろを向くと…
「ハァハァハァ…。…あれライブは?あれ?」
息を切らした生徒が一人講堂の入り口で立っていた。
ここまで長かった…。
次回で初ライブの話は終わりそうです!
そしたら原作通りμ'sのメンバー加入の話を書いていくと思います。
オリジナルの話もちょくちょく入れていきますね。
次回第18話
「First Live:後」
お楽しみに~!