「よっ!真姫。」
メールで真姫に呼び出された俺は真姫行きつけの喫茶店へと来ていた。
メールには話があると書いてあったが、真姫が俺に話ねぇ…。
正直何の話かは分からないが、できるだけ力になってはやろうと思う。
「遅いわよ。」
これでも急いできたんだが…。
まぁ文句を言っても仕方がないか。
「悪い、悪い。」
「まぁ別にいいけど…。」
俺が素直に謝るとすこし照れた様子で許してくれた真姫。
…素直じゃないなぁ~。
「それでどうしたんだ今日は?真姫が俺に話があるなんて初めてじゃないか?」
「…そうだったかしら?」
「俺の記憶だと初めてだと思うぞ?しかしあの真姫が俺に話とはなぁ~。真姫も成長したんだな。」
俺はそう笑顔で真姫に告げる。
「は、はぁ!?それどういう意味よ!」
なんで怒るんだ?
褒めたのに…。
「どういう意味ってそのままの意味だよ?」
真姫がまた反論してこようとしたのでさらに俺は話を続ける。
「誰かに相談するなんて今までの真姫には考えられなかったことだ。真姫は人に相談するなんて情けないとか恥ずかしいとか思うかもしれないけど、相談するってことは真姫が思っている以上に大切なんだ。…それを成長したって言わずになんて言うんだよ。」
俺がそういうと真姫は思うところがあったのか顔を俯かせている。
…ちと言い過ぎたかな。
「…それで話って何なんだ?今くらい素直になってみなよ。」
「…スクールアイドル。」
「ん?」
「私がスクールアイドルになるって言ったら翔人はどうする?」
真姫が不安な顔で俺に尋ねてくる。
そんなの決まってるだろうに…。
「もちろん全力で応援するぞ?」
「…え?」
「何でそんなに驚いた顔をしているかは知らないけど、俺は全力で応援する。幼馴染を応援することのどこが変なんだ?」
「どこがって…その…私がアイドルなんて変じゃない。」
真姫はそういうとまたうつむいてしまう。
自分で言って落ち込むなよ…。
「どこが変なんだ?真姫はかわいいし、音楽について誰よりも知ってる。俺は真姫以上にアイドルにふさわしいやつなんていないと思うぞ?」
「は、はぁ!?あんた何言ってるのよ!」
「何って思ってる事言っただけだけど…。」
真姫は顔を赤くして俺に文句を言ってくる。
なんか今日は真姫に文句言われてばっかだな…
…まぁ普段もそんなに変わらないか。
「…穂乃果たちに勧誘されたのを悩んでるんだろ?」
俺がそういうと真姫は体をビクっとさせる。
…わかりやすすぎだろ。
「俺はやってみてもいいと思う。あいつらならどんな真姫でも受け入れてくれる。俺だって練習は見るし、真姫も楽しくできると思うぞ?…それに医者のことでいろいろ悩んでたりもするんだろ?俺は真姫なら勉強と部活の両立なんてこと簡単にできるって信じてるしな。もちろん今まで通り真姫の勉強だって見るさ。」
「…わかったわ。素直になって考えてみる。」
「おう、それがいいと思う。」
真姫が素直になれば今まで見えなかったものが見えてくるはずだ。
そうすればおのずと自分の進む道が見えてくるだろう。
「それはそうと翔人…、来週の日曜は仕事?」
「次の日曜か?」
俺はスマホを起動してスケジュールを確認する。
「次の日曜は…今のところ何も予定はないな。何かあるのか?」
「前に言ってた買い物を手伝ってもらおうと思って…だめ?」
そう言うと真姫は上目遣いで俺を殺しにくる。
普段とのギャップがすごいな…。
ってそうじゃなくて!
「いいぞ。約束してたことだしな。」
「本当!?やった!」
まぁ俺と買い物するくらいでうれしいならいくらでも付き合うんだけどな。
「じゃあまた土曜にでも連絡するな。」
「ええ、よろしくね。」
話がひと段落ついたところで時計を見てみるともう7時をまわっていた。
「そろそろ時間だし帰るか?」
「そうね。じゃあ私はこれで。」
そう言って席を立って歩き出す真姫だったが俺が腕をつかんで静止させる。
「…何?」
「こんな時間だぞ?一人で帰るのは危ない。家まで送ってくよ。」
「別に大丈夫よ?普段もこのくらいの時間に帰ってるんだし。」
俺が送るように言うが真姫は引き下がらない。
だが俺がいるのにそれは叶わないぞ、真姫!
「いや、だめだ。普段はそうかもしれないけど、今は俺がいるんだ。もしここで俺が真姫を送らなくて真姫にもしものことがあったら俺は一生自分を許せなくなる。」
「はぁ…。昔からそういうところは変わらないわね。」
まぁ俺だしな。
人はそんな簡単には変われない。
「分かったわ。じゃあ家まで一緒に帰ってくれる?」
「もちろん。」
そう言って俺は真姫と一緒に店を出た。
-------------------------------------------------------------------------------
後日
「…翔人君何でそんなにうれしそうな顔をしているの?ハァ…。」
「えっ?そんな顔に出てます?」
別に隠していたわけではないが顔に出ているとは思わなかった。
「出てるわよ…。ハァ…。」
「斑鳩さんは元気出してくださいよ。いくらアクセサリーショップで社長と鉢合わせして減俸されたからって落ち込むことないじゃないですか。」
そう、斑鳩さんはさぼったのが社長にばれて減俸をくらってしまった。
斑鳩さんはアクセサリーショップであったことがばれた原因だと思っているが、本当は以前俺と斑鳩さんの話を聞いていた別のマネージャーが社長に言ったらしいのだ。
よって俺はお咎めなし。斑鳩さんは減俸。
かわいそうだとは思うが、こう何日も元気がないと俺の方まで調子がくるってしまう。
「分かったわよ…。それより嬉しいことって何があったの?」
「穂乃果たちのグループに新メンバーが入ったんですよ。それも3人!しかも驚いたことに3人とも知り合いなんです。」
「3人とも?相変わらず女の子の知り合いは多いのね…。」
そう言って斑鳩さんは溜息をつく。
「失礼ですね。1人は幼馴染ですし、残りの2人は以前不良に絡まれているところを助けただけです。」
「不良に絡まれているところを助けた!?」
俺が知り合った原因を言うと斑鳩さんが大声を上げて尋ねてきた。
「ええ。見過ごすのは気が引けたので。」
「ハァ…。翔人君に行ってもしょうがないのかもしれないけどあんまり危ないことはしないでよ?何かあったらダメでしょ?」
「まぁそこら辺はわかっていますよ。危なくなる前にはどうにかしてますし。」
「…そういう問題じゃないんだけどな。」
そう言ってまた溜息をはく斑鳩さん。
「溜息ばかりついてると幸せが逃げますよ?」
「全く…誰のせいよ。…それはそうと翔人君、今週末はライブだけど調子はどう?」
「ばっちりですよ!」
そう今週末はライブなのだ!
色々準備が大変だったがなんとかここまでくることができた。
久しぶりのライブで俺も興奮が抑えきれない。
そう考えているとふと頭の中に疑問が生まれる。
…ライブ?
何か忘れてる気がする…。
何だっけ?
忘れてたってことはあんま大したことじゃないと思うんだけど…。
そんなことを思っていると斑鳩さんが、
「そういえば翔人君に言われて最前列のチケット用意したけど何枚必要なの?」
「チケット?」
………………………あ。
「あー!!」
「どうしたの!?急に大声出して?」
「忘れてた…。」
そういえば穂乃果たちのためにライブのチケットをとっておいたんだった。
あいつら何も言わないからてっきり忘れてた…。
あいつらも忘れてたらなんとかなるんだけど、海未が忘れるはずがないしな…。
きっと俺が渡すのを待っているのだろう。
3人ともあんなに楽しみにしてくれてたんだ。
早く渡しにいかないと!
「斑鳩さん5枚くらいもらえますか?」
「5枚?それだけでいいの?」
「はい、あんまもらっても渡す人もいないですし。」
そう言って俺は苦笑いする。
穂乃果、海未、ことりの3人は確定としてあと2人くらい欲しいっていう人がいるかもしれない。
だからこその5枚だ。
それに、俺がもらいすぎるより当日のチケットに回してもらった方が多くの人に楽しんでもらえるしな。
「分かったわ。…はい。」
そう言われると俺は斑鳩さんからチケットを受け取る。
それでチケットを見てみると、
「7枚?斑鳩さん俺5枚でいいって言ったんですけど?」
「まぁ受けっ取っておいて。なんとなく7枚必要な感じがするのよ。」
「必要な感じ…ですか?」
「ええ。女の勘とも言うわね♪」
斑鳩さんは笑顔でそう告げる。
女の勘…ね。
まぁ斑鳩さんの言うことはよく当たるから一応7枚もらっておくか。
女の勘かどうかは置いておいて。
「じゃあもらっておきますね。…じゃあ今からちょっとチケット渡してきますね。」
「え!?今から?どうせ渡すの穂乃果ちゃんたちなんだから夜家にでも行って渡せばいいんじゃない?」
穂乃果たちに渡すって言ったっけ…?
いや、言ってない。
…何でもお見通しの斑鳩さんには少し恐怖を感じるよ。
「何で穂乃果たちにあげるか知っていることは置いておくとして、今なら学校で練習してると思うんでついでに練習でもみようかと思って。」
「そういうことね。なら穂乃果ちゃんたちも喜ぶと思うしいいんじゃない?」
「ということで音ノ木坂まで送ってもらってもいいですか?」
「翔人君最近私ばっかり使ってない…?まぁ私に心を開いてくれたってことでいいのかしら…。」
「何か言いました?」
「何でもないわ。…それじゃあ行きましょっ♪」
こうして音ノ木坂へと向かう2人であった。