未来で彼らがどうなるのか…
メンバー全員の物語を書いていきたいと思ってます!
まずは穂乃果です!
それでは本編をお楽しみください。
Happy Xmas
海外進出をして早一年。
俺にもようやくおだやかな日々が訪れる。
平和だな~なんて考えていると、斑鳩さんが運転しながら話しかけてくる。
「ねぇ、翔人君。どう、アメリカは?来てから一年くらい経つけど」
どうやら斑鳩さんも同じことを考えていたようだ。
まぁ何年もマネージャーしてもらってたら当然なのかもしれないけど…
「まぁ楽しいですよ。日本にいたらできない体験とかいろいろできますし」
「日本とどっちがいい?」
「…」
また痛いところをついてくるな…
もちろんアメリカだって悪くはない。
でも生まれ育った日本と比べると、やはり日本に軍配が上がるだろう。
でもそんな弱音は吐いてられない。
今が一番大事な時期だ。
手を抜くことは許されない。
「どうせ翔人君のことだから真面目に『今が大事な時だ。手なんか抜けない』なんて考えてるんでしょ?」
ご明察。
さすがは斑鳩さんだ。
俺の考えていることは筒抜けのようだ。
「でもそれは間違いよ。考えても見て、これは翔人君の人生なのよ。いくらでもわがままを言うことはできる。もちろん翔人君がいいならこんなこと言わないわ。最近の翔人君はどこか元気がないんだもの。日本で活動したいってわがまま言ってもいいのよ?というか言いなさい」
最初は良いこと言っていたのに最後のセリフで台無しだよ…
とは言っても斑鳩さんの言うことはおおむね正しい。
確かに日本を離れてから一年、”彼女”と一度も連絡を取っていないことが大きな原因だろう。
日本で過ごした17年間、常に隣にいた彼女が。
日本を出てから本当の気持ちに気づくなんてな…
もちろん連絡をしようとすればいつだってすることはできる。
グローバルな時代だ。
携帯電話という便利なものもあるし、インターネットを介せばメールを飛ばすのも簡単だ。
しかし、俺はそれができなかった。
メールは来るのだが、なんだか恥ずかしくて一度も返していない。
……意気地がないな俺は。
「1人考えているところ悪いんだけど、これからのスケジュール確認なんだけどいい?」
先に考えるようなことを言ったのは斑鳩さんなのに…なんて思いつつも口では斑鳩さんに勝てないことは数年の経験でわかっているので、素直に頷く。
「まずは今向かっているニューヨークから日本に飛ぶわ。その後…「待った!!」
「何?話始めたばかりなんだけど…」
「日本に飛ぶってどういう意味ですか?今日は新曲のPVの撮影って聞いてたんですけど…」
「あぁあれは嘘よ」
「はぁぁぁぁ!?」
確かに新曲を先月だしたばかりで、すぐ次の曲を出すなんておかしいとは思っていた。
…くそっ、やられた。
これが斑鳩さんだってことは誰よりもわかっていたはずなのに。
「ちょっとうるさいわよ…運転してるんだから静かにしてちょうだい」
「意味わかりませんよ!?日本ってなんでですか!?」
「もちろん理由があるわ。今週はクリスマスでしょ?それに年越しも近い。だからライブをすることになったのよ、日本で」
「………」
ツッコミどころが多くて、どこから何を言えばいいのかが分からない。
まずライブ。
聞いてない。ライブと言えば歌の練習やダンスの練習などすることがいくつもある。
俺の場合、いつもライブの一カ月前から練習を始めている。
遅くてもそれぐらいなのに、今回は一週間しかない…だと?
意味が分からない。
そしてなぜ日本でやるのか。
クリスマスや年越しならアメリカでも同じだ。
わざわざ日本に行ってやる必要性を感じられない。
様々なことが頭を遮る中、斑鳩が告げる。
「ほら、男がうじうじ考えない。何事も大事なのは度胸よ」
横暴な斑鳩さんに何も言えず、俺はなされるがまま空港へと向かった。
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「ありがとうございました~またおこしください」
ふぅ…
これで今日は終わりかな?
なんて考えていると、お父さんから店を閉めるように言われる。
あれ?今日何か終わるの早くないかな?
そう考えるも私は店を閉め始める。
私は高校を卒業した後、大学には行かず穂むらを継ぐことにした。
海未ちゃんは大学へ。ことりちゃんは海外へ。
それぞれみんな自分の道を歩き始めていた。
暖簾をしまうために外へ出る。
そしていつも隣にある一軒の家を見上げる。
そこは海未ちゃんやことりちゃんよりも付き合いが長く、私にとって一番大切だと思っている男性、斎藤翔人君の家だ。
通称ひろ君は私たちの卒業式の日に一人アメリカへ行ってしまった。
私たちに何も言わずに…
それを知ったのはマネージャーである斑鳩さんが教えてくれたからだ。
ひろくんと連絡を取れなくなって数日後、連絡先を知っている海未ちゃんが斑鳩さんに電話したのだ。
ひろくんは今どこで何をしているのか、と。
その問いに帰ってきた答えは、
『アメリカでアイドル活動を始めているわ。…もしかして聞いてない?』
その言葉に私、海未ちゃん、ことりちゃんの三人は目を見開いた。
トップアイドルとして活躍しているひろくんには日本が狭く感じたのであろう。
事実そのような相談を私は何度も受けていた。
『日本が狭く感じるんだよ…』
と。
今考えればひろ君はずっと悩んでいたんだと思う。
私には何かは分からないが、きっとスケールの大きい悩みだ。
私はいつもそのひろ君の嘆きに曖昧に笑って返事をしていた。
それがいけなかったのかもしれない。
あの時ひろ君の力になってあげていれば…
ひろ君の家を毎日見るたびに思ってしまう。
そんなことを考えていると、ひろ君の家へと入っていく人影が見えた。
ひろ君の家のお客さんかな?
でもひろ君の家は今誰もいない。
ひろ君のお父さんは、世界的に有名な医者で海外を飛び回っているし、お母さんは敏腕弁護士として、日本中を飛び回っている。
そしてひろ君はアメリカだ。
そのことを教えてあげようとひろ君の家の前に行き、お客さんに話しかける。
「あの~今この家には誰もいませんよ?」
その人を見ると私は目を奪われた。
整った顔立ちに、文句のつけようのないスタイル。
サングラスをつけているためよりかっこよく見えた。
「What happened?」
え、英語!?
私が話しかけると、その人は英語で答えた。
どうしよ…英語なんて話せないよ。
こんなとき海未ちゃんがいれば…なんて思うが、そう都合よく現れるはずもない。
自分から話しかけた以上、何も言わず去るなんてできないし…
そう私が困り果てていると、
「…アッハッハッハ!!!」
目の前の男性が急に笑い始めた。
何かおかしいことでも言ったかな?なんてさらに困り果ててしまう私。
「ちょっとした英語も話せないのか?さすが穂乃果だ。俺の期待通りの反応ありがとう」
そう思っていると笑いながらそう告げる目の前の男性。
それより、今穂乃果って…もしかして…!
目の前の男の人の正体に気付いたと同時に、彼はサングラスを取った。
「久しぶりだな、穂乃果」
「ひろ君…?」
その人の正体は私の思い人であり、ずっと私のなかで会いたかった人であるひろ君だった。
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久々に実家に着くと、俺はすぐに穂むらへ向い、現在は高坂家からこれでもかというくらいのもてなしを受けていた。
家に着く前に俺は真穂さんに家の換気をお願いしておいたのだ。
その時、
『久しぶりの日本なんだし、今日はうちにいらっしゃい。たくさんごちそうしてあげるわ』
と言われたためだ。
目の前には向こうじゃ食べる機会がそうなかった和食や、お饅頭といった日本ならではのものがずらーっと並んでいる。
そんなことを考えながら、食事をしていると真穂さんから声をかけられる。
「それにしても久しぶりねぇ。アメリカはどうだった?」
「楽しかったですよ。日本じゃ経験できないことばかりでした」
そう言いながらも俺は箸をすすめる。
おっ!この漬物うまいなっ
やっぱ日本と言ったらたくあんに限る。
「良かったわねぇ~。海外ってことは正司さんに会ったの?」
「はい。短い期間でしたけど会えました。6年ぶりでしたね。しっかり会うのは」
斎藤正司…俺の父だ。
凄腕の医者らしく海外を飛び回っている。
そのため俺や母さんと会う機会は数えるほどしかない。
たまに家族電話なんかで話すときもあったが、やっぱり直に会うのとは違う。
…そういやちょっと剥げてたな。
疲れてたのか?
俺に遺伝しないといいなぁ~なんて考えていると今度は雪穂から声がかかる。
「でも何で翔人君は日本に来たの?」
「あぁ、明後日ドームでクリスマスライブあるの知ってるか?それに特別ゲストとして出演することになったんだよ」
「ホントっ!?私亜里沙とそのライブ行くんだよ!でもゲストなんて書いてなかったけど…」
「なんでも事前の発表はしないんだってさ。急に決まったこともあって。…聞いてくれよ、俺この話聞いたの昨日だぞ?いくら何でもおかしいと思わないか?」
そう告げる俺に苦笑いの高坂家一同。
何度か斑鳩さんに会ったことがあるため、同情してくれているのだろう。
「それにしても亜里沙と行くのか?あれはカップルで行くのが普通だって聞いたけど。…って雪穂じゃ彼氏なんかできないか」
そう告げ一人笑い始める俺。
そんな俺に雪穂は顔を真っ赤にさせ反論する。
「べ、別に彼氏なんていらないし!っていうか私に釣り合う男性がいないだけだし!…ってそれなら翔人君はどうなのさ。彼女いないの?」
ツンデレなのか?なんて適当なことを考えながら聞いていると、雪穂が質問してくる。
そんな雪穂の質問に穂乃果は肩をビクッとさせたことを俺は見逃さなかった。
「アメリカにナイスバディのお姉さんはたくさんいたんだけど…。どうやら俺は国際恋愛は出来ないみたいだ。やっぱり彼女作るなら日本人に限るよ」
「聞いた!?穂乃果、雪穂。アンタたちでもチャンスあるわよ!玉の輿に乗っちゃいなさい」
「「ちょ、ちょっとお母さん!!」」
「ハハハッ」
そんな楽しい会話を続けながら俺は食事を堪能した。
食事を終えると、俺は自分の家に帰った。
なぜか穂乃果も一緒だけど…
家に入り、まず気が付いたことはキレイだということだ。
一年くらい放置しておいたのにほこり一つないなんて…と考えていると横から声がかかる。
「へへーん。きれいでしょ?穂乃果が毎日掃除してたんだよ」
「毎日!?そりゃあ悪いことしたなぁ」
「ううん。全然そんなこと思ってないよ」
「とは言えありがとな」
そう告げ俺は穂乃果の頭をなでる。
すると穂乃果は嬉しそうに顔の表情を緩めた。
そんな穂乃果にドキッとする俺。
しばらく見ない間にずいぶんと女性らしくなったな…なんて思いながら穂乃果を見つめる。
すると俺の視線に気づいた穂乃果が、
「どうしたの?」
と声をかける。
そんなセリフに慌てた俺は、
「な、何でもない」
と告げるほかなかった。
リビングへ行きソファーに寝ころんだ俺は、
「何も変わってないなぁ…」
と独り言をもらす。
そんな俺を見つつ、穂乃果は真面目な顔になると俺に意を決して話しかけた。
「ねぇひろ君。…何で何も言わずに行っちゃったの?」
「………」
「私はもちろん、海未ちゃんやことりちゃんも心配したんだよ?急にひろ君がいなくなるんだもん!」
「………」
「もしかしてひろ君が、私たちのこと嫌いになってアメリカに行っちゃったのかなって考えたりもしたんだよ…」
「ッ!それは違う!!」
穂乃果の問いになんて答えようか悩んでいた俺だったが、最後に告げられた言葉には全力で否定した。
「俺がお前たちのこと嫌いになるわけないだろ?嫌いになれって言われても無理な話だよ、それは」
そんな俺の言葉に一瞬嬉しそうな言葉を浮かべる穂乃果であったが、すぐに元の表情へと戻る。
「だったら何で?」
「…羨ましかったんだ」
俺は観念して、思っていることを告げることを覚悟する。
「羨ましい?」
「あぁ。お前たちのラストライブを見て思ったんんだ。羨ましいって。俺もこんなふうになりたいって。…でも今の俺じゃそんなことは不可能だ。そう思った俺は何度も話の来ていた海外進出を決めたんだ。丁度日本は狭く感じていたし、何か見つかるかもしれない…。自分を成長させたい…その一心でな」
穂乃果は俺の言葉を真剣に聞いてくれた。
一言も聞き漏らすことがないように。
そして俺がすべてを言い終えると、穂乃果は悲しそうな顔をして告げ始めた。
「…そっか。…でもひろ君はそれで本当によかったの?」
「よかったって…?」
穂乃果の質問の意図をわかりかねた俺は尋ねる。
「だって、海外のひろ君の姿…なんか無理してた」
「ッッ!!」
「動画を見て確かにダンスや歌はうまくなってたって思ったよ?それこそこっちにいたときとは比べ物にならないくらい…。でも楽しそうじゃなかった。こっちにいたときの楽しそうな表情で歌って踊るひろ君はいなかった」
「………」
「それでも本当によかったって言えるの?」
その言葉にいてもたってもいられなくなった俺は穂乃果に抱きしめる。
「ひ、ひろ君!?」
急に抱きしめられて驚いた穂乃果は声をあげる。
「…穂乃果。ちょっとうるさくなるけど我慢してくれるか?」
「うん…」
その言葉をきっかけに、俺は涙をこぼした。
そして年を考えずに号泣した。
本当はわかってたんだ、そんなこと。
アメリカにいるとき、常にみんなのことを考えていた俺がいた。
そしてそれは日に日に大きくなるばかり…
そして気づいたんだ。
俺がアイドル活動を続けられたのは、俺の心の傷を癒してくれた幼馴染たちとμ'sがいてくれたからだと。
海未、ことり、そして穂乃果…
近くにいすぎて当時は理解できなかったけど、今なら分かる。
この三人が身近にいたからこそ俺は頑張ってこれたのだと。
そう考えると涙が止まらなかった。
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「落ち着いた?」
泣いているひろ君を抱きしめ返しながら、私は告げる。
しかし、まさかひろ君がそんなことを考えているなんて思ってもいなかった。
私にとってひろ君は、常に上にいる存在で追いかけるべき目標だと思ってたから…
でもやっぱりひろ君も人間なんだね。
そう思い一人安心する私。
「あぁ…ごめんな迷惑かけて」
「そ、そんなことないよ!困ってるときはお互い様だよ!」
「そっか…ありがとな」
そう笑顔で告げるひろ君に目を奪われる私。
うぅ~その笑顔は反則だよ…
「…っと悪いな。いつまでも抱きしめたままだった」
あっ…
もう少しそのままでもよかったのに…なんて思うが、恋人でもないのにそんなことは言えない。
「そういや穂乃果。明日暇か?」
「明日?特に用事はないと思うけど、どうかしたの?」
「久しぶりの日本だしちょっと案内してもらいたくてな」
「それなら穂乃果に任せて!ひろ君を楽しませてあげるよ」
「それは楽しみだ。…じゃあ今日はそろそろお開きだな。時差ボケで眠いんだよ。明日は集合昼過ぎでいいか?」
「いいよ~。じゃあ時差ボケで起きるの辛いだろうから、明日は起こしに来てあげるね!」
「穂乃果に起こされる日がくるなんて…俺も落ちぶれたもんだ」
「ちょ、ちょっとそれどういう意味!?」
口では怒っているが、顔では笑っていた。
それもそのはずだ。
こんな会話をするのも一年ぶりなのだから。
ささいな会話であっても話すこと自体がうれしいのだ。
「まぁそんなに怒るなって…。じゃあ明日は頼むよ。起こされないと普通に一日中寝てそうだから」
「了解。じゃあまた明日ね」
「あぁ、おやすみ」
そんなひろ君に手を振って自宅に戻ろうとする私。
そしてひろ君の家を出たところで、ふとあることに気が付く。
あれ?明日って24日…
クリスマスイブ…?
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翌日
俺は穂乃果と共に最近できたショッピングモールへと来ていた。
「へぇ~一年の間にこんな場所が出来てたのか。無駄に広いな~」
「先月オープンしたばかりなんだよ!私雪穂と来たんだけど、迷子になっちゃったし…」
「おいおい…迷子ってお前」
穂乃果のカミングアウトに呆れる俺。
でも内心少し安心した自分もいた。
変わってないな…と。
一年という時間は短いようで長い。
だから、穂乃果という人間が変わってしまう可能性は十分あるのだ。
そんなことを考えながら俺たちは地下街にやってきた。
「あっ!これ今大人気のいちごのショートケーキだよ!…こっちにはモンブラン!あっちにはロールケーキ…!もーっ、こんなに食べられないよ!」
お前は全部食べる気でいたのか…?
というか今日の目的はケーキ巡りだったのか?
確かに案内してほしいとは言ったけど、ケーキの案内は頼んだ覚えは…
とは言え、穂乃果はとても嬉しそうな顔を見たら止めるわけにもいかないか…
あいつはやっぱり笑顔が似合う。
「食いすぎると太るぞ?またダイエットする羽目になってもいいのか?」
「大丈夫だよ!」
そう元気よく告げる穂乃果。
何が大丈夫なんだか…なんて思う俺だったが、言っても聞きそうにないので仕方なく穂乃果の言葉を受け入れる。
「分かった分かった。全部買ってやるから少し落ち着け…」
「ホント!?やった!」
今日飛び切りの笑顔を見せる穂乃果に苦笑いしつつ俺は店員に頼んで袋に詰めてもらう。
その光景に穂乃果はめちゃくちゃ歓喜していた。
ケーキぐらいで穂乃果の笑顔を見れるなら安いもんだと思っていたのだが、会計をするときにその考えは失せていた。
…次からは少し自分に厳しくしよう。
その後も遅めの昼食を食べたり、ゲームセンターで遊んだり、ショッピングセンターで買い物をしたりと、普通のカップルみたいなことをした俺たち。
まぁカップルじゃないけどな!
時折俺の正体がばれそうになったりもしたが、難なく乗り切った俺たちは現在、俺のおすすめの店で誰も客がいない中ディナーを食べていた。
「どうだ?昔からずっとここのファンなんだよ。店自体は大きくもないし、綺麗とも言えないけど、味は保証する」
俺がそう告げると、穂乃果は出てきた前菜を食べ始める。
「っ!確かにおいしいよこれっ!」
「だろ?俺も教えてもらったときはそう感じたよ」
「…ひろ君。今日はありがとね。私を誘ってくれて」
「俺の方が感謝しなきゃいけないだろうに…今日案内してくれたのは穂乃果なんだから」
「それでもだよ。今日は本当に楽しかった」
そう笑顔で告げるほのかに目を奪われる俺。
そしてその笑顔に俺はついに決心した。
「…なぁ穂乃果。ちょっと話があるんだけど聞いてくれるか?」
「どうしたの?」
俺が改まって告げたので疑問に思ったのだろう。
顔には疑問が浮かんでいる。
「俺はアメリカに行ってから色々気づいたことがあるんだ」
「気づいたこと?」
「あぁ…俺はアメリカにいたとき常にみんなのことを考えていたんだ」
「みんなってμ'sのみんな?」
「そうだ。…中でも穂乃果、お前の笑顔を思い出すだけで俺は頑張れた。」
「………」
「昔は毎日のように顔を合わせてたのが当たり前で、気づきもしなかったが、俺は穂乃果の笑顔にいつも励まされていたんだ。それをアメリカで過ごすことで、より感じることができた。そして俺は気づいたんだ。俺の本当の気持ちに…!」
「ひろ君の本当の気持ち…?」
「あぁ。………穂乃果、これからも俺の隣で一緒に笑ってくれないか?」
俺はそう告げ、用意しておいた婚約指輪を机の上に出す。
「………え」
「これからも俺の隣にずっといてほしいんだ。俺はお前とこれからの人生を歩みたい」
「ひろ君…それって……」
「あぁそうだ!穂乃果、俺と結婚してくれ!!」
店に誰もいないとのことだったが、俺が貸し切りにしたためである。
もちろん穂乃果に告白する場を設けるためだ。
「……私なんかじゃひろ君に迷惑ばかりかけちゃうかもしれないよ?それにアイドルとしてのひろ君に迷惑かけちゃうし」
「迷惑?フッ…今更だな。お前にはもう数え切れないほど迷惑をかけられてる。今更気にするようなことはない」
「うっ…言い返せない……」
「だろ?それにアイドルなら引退する。明日をもってな」
「えっ!?聞いてないよそんなこと!!」
穂乃果がこの日一番の大声を上げる。
もちろん俺がアイドル活動をやめることを告げるのは穂乃果が最初だ。
「誰にも言ってないし…ていうか昨日決めたからな。別にアイドルに魅力を感じないとか飽きたわけじゃないんだ。やりたいことが見つかってな」
「やりたいこと?」
「あぁ。自分で会社を立ち上げて、アイドルやアーティストをプロデュースしたいんだ」
「それって…」
「あぁ俺がμ'sにしたことと同じようなことをしたいんだ。あのときの俺はそれなりに大変だったけど楽しかった。そしてそれはお前たちも同じだったはずだ。そんな気持ちを多くの人に味わってもらいたいんだ」
「そっか…確かに私たちも楽しかったもん。ああいう気持ちを多くの人に味わってもらいたいっていう気持ちはわかるよ。まさかひろ君がそんなこと考えてるなんて思ってもみなかったけど」
「まぁな。…それでどうなんだ、返事は。」
「………ホントに後悔しない?」
「くどいぞ…。むしろ穂乃果と一緒に歩き始めれないと後悔しそうだよ」
「そっか…」
穂乃果はそう告げると下を向く。
やっぱり俺じゃダメだったか…と思った次の瞬間、
「はいっ……!こちらこそ……よろしくお願いします!」
と顔を上げ、涙を流しながら笑って返事をする穂乃果。
そんな穂乃果に昨日と同じく、居ても立っても居られないなくなった俺は席を立ちあがり、穂乃果を抱きしめる。
「ひろ君…痛いよ…」
「ごめん…でもこうしたい気分なんだ」
「もうっ…甘えん坊さんだね、ひろ君は…。でも私も甘えん坊みたい」
そう告げ俺と同じように穂乃果も抱き着いてくる。
そして俺は穂乃果と顔を見合わせる。
そんな二人にこれ以上の言葉はいらなかった。
俺を上目遣いに見上げる穂乃果が、そっと瞼を閉じる。
穂乃果の長いまつ毛の端には先ほどの涙の雫がまだ張り付いている。
俺はそれを指先でやさしく拭い、その手をそっと穂乃果の柔らかい頬に添える。
そうして俺は穂乃果と唇を重ねた。
こんなクリスマスを過ごしたい…