「…来たか」
「ええ、来ましたわ」
リングの力で転移するとそこにはギルド長モモンガ、アウラ、マーレ、シャルティア、コキュートスの5名が構えていた。
「おはようございます、ニンフルサグ様」4人の守護者は口々にそう言った。
モモンガから事情は聞いている。そしてギルドメンバーには従っているのね。
人好きのする笑顔で答える。
「ええ、お早うみんな、元気にしてた?」
挨拶の基本として4人それぞれに握手を交わしていく。
まずはアウラ
「はい!最近は侵入者もいないんでペットと過ごしてました」
「それは良かった。ペットはかわいくていいわね、今度娘と一緒にお邪魔するわ」
「はい!喜んで!」
くるっと方向を変え、マーレと握手をする。
「あ、わわわ、ニンフルサグ様に握手をしてもらえるなんて!」
「どうってことないわよ。おなじドルイドとして貴方の力は信頼しているわ」
「あ、ありがとうございますぅ」
次にコキュートス
「武芸ニ励ミナガラ、我ガ階層ヲ守護シテオリマス」
「大事な仕事だものね、期待しているわ」
最後にシャルティア
「ご機嫌麗しゅうぞんじんす。そのう、今度化粧の仕方を教えてくれるでありんすか?」
「それくらい。おかまいなしよ」
みんな私を慕ってくれているようね
心の中で口を吊り上げる。
彼らは随分と操りやすそうだ。
一通り握手が終わった後4人に問いかける。
「さて、貴方たちは今日集まって何をするつもりなの?」
それにコキュートスが答える
「ハ、守護者全員ガ集マリ次第、忠誠ノ儀ヲ行ウ予定デス」
「なるほど、ありがとね」
「ハイ、御方ニ感謝サレルトハ、至極ノヨロコビデゴザイマス、オヤ、デミウルゴス、ソレニアルベドガ来タヨウデスナ」
振り向くと闘技場の入り口からデミウルゴスとアルベドが現れた。アルベドはモモンガに微笑みかけ、デミウルゴスは私たち4人にお辞儀をした。
デミウルゴスは上品な物腰で口を開いた。
「皆様、お待たせして申し訳ございません」
次にモモンガに話しかける
「このデミウルゴス、御御方の命に従い参上いたしました」
「ご苦労だった」
私に向き直り、同じように話しかけようとしてくる。ちょうどいいわね。握手を求めるように手を上げれば、両手で応えてくれた。
「私どものためにお目覚めになっていただき誠にありがとうございます。貴方様が活動されるお姿をこの目で再び見れたことを感謝いたします」
「ええ、変わらない忠誠を誓ってくれてうれしいわ」
そして…アルベドの方に向く。なんか目つきがおかしいのよ。もしかして彼女は私のことを憎んでいるのかしら。
楽しいわね
「お早う、アルベド、何か聞きたいことがあるんじゃないの?」
握手を求めると事務的に応えてくれた。
「はい」
と一瞬モモンガの方を向いたのでこちらも合わせて見てみると、モモンガが明らかにビクリと動いた。
「ニンフルサグ様、なぜ、お眠りになっていたのですか?他の至高の恩方々と同じタイミングで、モモンガ様が寂しがるようなタイミングでお眠りになった訳をお聞かせください。」
貴方の大切のところはそこなのね。
すぐに用意していた答えを聞かせる。
「本体の場所を敵にばれそうになったの、ほとぼりが冷めるまでこのナザリックに本体を移しておとなしくしておく必要があったのよ」
「しかし、眠る必要は無かったのでは?」
おおう、けんか腰ね…
「それは私が提案したのだ」
ちょうどいいタイミングでモモンガが援護射撃をしてくれた。
「かつてあった1500人の襲撃がまたあるとも限らない。ニンフルサグの討伐隊としてな。本体をナザリックに移したところで大多数の追跡に対応できない可能性もあるだろう。それならば、彼女にはもしものときのために本体に戻り防御に専念させたほうがいいと考えたのだ」
モモンガの答えにアルベドは完全に納得したようね。
あの時はリアルの私を知らないのに行動してくれてうれしかったわ。
「申し訳ございません!モモンガ様の深遠な考えを自分の都合で解釈してしまったことを深くお詫びいたします」
モモンガには忠誠を誓っている。私には誓っていない。彼女だけが特別なのかしら。それならどうして…
「他に誰か質問したいものはいるか」モモンガが絶望のオーラを出しながら言う。しばらくの静寂の後デミウルゴスが口を開く。
「いえ、私どもからは何もございません」
「そうか、ならばこの話は終わりだ。守護者皆集まったようだな。そろそろ始めたい」
「モモンガ様、まだ二人ほど来ていないようですが?」
モモンガはすぐに残りの二人が来ない理由を説明した。守護者が納得の表情を浮かべると、アルベドが口を開く。
「では、皆、至高のお二方に忠誠の儀を」それはちょっと待って欲しいわ。
「ごめんなさい、アルベド、その前に私がモモンガに忠誠を誓う必要があるわ。ロマネ、ロココいらっしゃい」
しばらくおとなしくしていた二人をそばに寄せてモモンガの前に立つ。
初対面が全てを決めるのだから、立場を、そして方針を見せ付けないといけないでしょう。こういう開けた場所でなければ、様々な準備が出来ただろう。占い師と同じで、あらかじめ小道具を用意しておくといい結果になることが多い。健康的な人間を演じたいのなら、ダンベルやランニングマシーンを部屋の片隅においておけばいい。賢者ならば、経済や政治に関する本、アイドルなら品のある綺麗なティーカップもいい。最高のタイミングで最適なものを見せることができれば、最上の評価が得られる。しかしそういう場所が用意できないときは自分の演技に頼るしかない。これがとっても厄介で、ミスが許されないから神経が磨り減ってしまうのよ。今回がそういう場面なわけだけど、今の私には舞台を整える方法がある。右手を広げ大げさにゆっくりと振る。唱えるとあまり雰囲気に合わないので無詠唱で行使する。
すると、あたりに華やかなベロニカの花が咲き乱れた。花言葉は忠誠心。色は青、ピンク、紫、白。この呪文はユグドラシルのときから回りに花を咲かせるだけの呪文だった。コンソールで花を選び、範囲指定したあとに発動する使用だったけど、今は考えるだけでいいみたい。ちなみにこの呪文には毒のある花も咲かせられるという裏技があり、ちょっとした罠としても使えた。ただし錬金の素材には使えないから、演出好きにしか人気がなかったのは確かね。
咲いた花を見てアウラとシャルティアが感嘆の声が聞こえてくる。
守護者たちの興味が最高潮に達したことを感じながら、モモンガにむけペティコートの裾をつまみゆっくりとお辞儀をする。
「モモンガ
これで私はモモンガの下ということになった。
力関係はしっかりとね。平等な関係だとアルベドに刺されてしまうわ。あれ、女の嫉妬に近いものを感じるのよね。
「ニンフルサグの娘、姉のロマネ、」
「同じくニンフルサグの娘、妹のロココ、私たちもお母様と同じく忠義に尽します。」
すると頭のどこかからメッセージが流れた。
『ニンフルサグさん!』
『何?』
『俺、この後どう言えばいいですか!』
『そうね』
身長の関係で顔が見えにくいことをいいことにニヤリと笑みを浮かべる。
いままで誰にも見せなかった笑みを。
なんて言わそうかしら
アルベドに突き刺さる言葉をいくつか考えてみようかしら
私はお前たちギルドのみんなを愛している、とか
もっと致命的になるような言葉を…
それとも点数稼ぎする?
それはいいわね
「大儀であった」
当たり障りの無い言葉、それでいて重い言葉を選んでみた。
ちょっと物足りないわよねぇ
それくらいでいいの
「それではニンフルサグ様、ご息女と一緒にモモンガ様のお側にお付きください」
デミウルゴスに言われるまま動く。
よし、娘たちもこちら側になったわ。
「…では皆、至高の御方々に忠誠の儀を」
階層が若い方から順番に忠誠を誓っていく。
対するモモンガはというと、絶望のオーラに後光のようなものを背負いながら今後のセリフを相談していた。
『俺、こんな経験したこと無いからこの後どうしたらいいか分からないんですけど』
『私だってないわよ。二人でなんとかしましょう』
このあとしっかり勉強会をする必要があるわね。
営業マンとアイドルに出来ることは愛想を振りまくことなんだから。
「面を上げよ」
素晴らしい演説とは何かなんて分からないけど、耳障りのいい言葉は分かる。私も、モモンガも、だから経験から引き出して言えばいい。
その前に私から質問、貴方は何がしたいの?今思い浮かんだものを口に出せばいい。
ええ、それはいいわね。賛成するわ。
「諸君、お前たちはすばらしい!
私の持つ展望を問題なく実現できると強く確信した!」
その言葉に守護者たちは感嘆の表情をみせた
「この場にいる皆が私が何者なのか知っているだろう
しかし自己紹介というのは大切だ
お前たちがしてくれたように、
私も名乗ろう
私がアインズウールゴウンの絶対の支配者
モモンガである
私がこれまでそうであったように
これからもそうであるように
永久にこの座に就くことを誓おう」
アインズは歓声に沸く守護者たちが静まるのを待った
なぜ待つのか聞けば、ナチスが演説のときに良く使った手らしい
そういえばモモンガはミリオタでもあったわね
守護者たちが静まりピンと張り詰めた空気が漂うのを確信してから口を開く
「私は私がやるべき使命を強く確信している
このナザリックの地に再び名誉と恐怖を取り戻すことだ!
かつて、アインズウールゴウンの名を聞けば
力なきものは震え上がり
無法者はその野蛮な本性をあらわにした
しかしそれは過去のものだ
ではこのままみすみす消えていくのか
ナザリックが?
アインズウールゴウンが?
消えていいはずが無い!
私はお前たちが、
かつての仲間たちが遺していった息子や娘たちが
私の望みを叶えてくれると強く信奉している
なぜなら私はお前たち全員を愛しているからだ
さあ、子供たちよ。我がギルドを伝説にするために
かつての仲間たちに届くように
話し合いをしようじゃないか!」
守護者から歓声が上がった。数こそは小さいけれど魔法などで何倍にも増幅した歓声は闘技場全体に広がった。
とくにアルベドはうれしすぎて顔が崩れているわ。
何も分からないこの状況でここまで言えるのはモモンガのいいところね。
ギルドのためなら何でも出来るところは楽しみがいがある。
私だって帰るつもりは無い。
私は好きなことをやってきた。
これまでもそうだったし
これからもそうでしょう
それに、
私があの世界で心残りだったのは子供を作れなかったことだった
こんな素敵な贈り物をもらったのよ
人生のリセットボタンを押すくらいわけないわ
「現在、ナザリック地下大墳墓が原因不明かつ不測の事態に巻き込まれていることは間違いない」
モモンガは会議を始めた。
まず、最低でもナザリックは草原に転移したと報告。
守護者と私に自分の領域で異変があったか聞いたが特に異常は無かった口々に言った。
その後、セバスが帰還し、私に軽くお辞儀をした後、半径1キロは人工物が見えなかったと報告した。
今のところ外の世界の情報は限られている。
そう判断し、警護と隠蔽について会話を進める。
警護については完全に門外漢だから特に何も言わず観察する
会議は力関係を把握する重要な機会だけどこうまではっきりしているとつまらないわね
イエスマンで固めていると行動しやすいからまあよしとしよう。
娘たちも特に口出しすることなくじっと聞いている。
人間換算で中学生くらいの歳でこういうものを見るって貴重ね。連れてきてよかったわ。
「ニンフルサグさんとアウラとマーレだが…ナザリック地下大墳墓の遮蔽は可能か?」
その問いかけには答えられそうね
「ええ、マーレと協力すれば可能です。ナザリックを中心…いえ、中心をナザリックからそらして森をつくり、各種罠や魔物を配置しましょう。これならばナザリックを完全に多い尽くすことも可能です」
もう1つ言えばその森を突破した者の力を事前に知れることにもつながる。ゲームのようにナザリックから遠い位置から少しずつモンスターを強くしていけばより正確に測れるだろう。レベル上げの狩場と思われたら心外だけど。
「マーレは大丈夫か?」
「は、はい。高位のドルイドが2人…1人と1柱でしたら問題なく出来ると思います。」
「よし、では、3人は協力してそれに取り掛かれ。」
「畏まりました」
「今日はこれで解散だ。各員、休息に入り、それから行動を開始せよ。どの程度で1段落つくか不明である以上、決して無理はするな。最後に各階層守護者に聞きたいことがある。」
お前にとって私は一体どういうような人物だ
その問いかけに守護者が各々の回答を言っていく、忠誠心を図るのにちょうどいいわね。あとで記録しておきましょう。
タブラはとんでもない子を生み出したわね。
アルベドはモモンガが大好き。
モモンガのためなら何でも出来ちゃう子。
私がキューピッドとして行動したら案外簡単に落とせるかも。
「ニンフルサグさん、あなたも聞きますか?」
「いえ、聞かなくても問題ありません」
「分かった。各員の考えは十分に理解した。今後とも忠義に励め」
『では、俺は円卓の間にいます。情報交換と行きましょう』
『ええ、私は娘たちを家に帰してから行くわ。いろいろ言っておかないといけないことがあるの』
都合の悪いことは口止めしなくちゃいけないわ。
守護者が拝謁の姿勢を取ったことを確認して娘たちと転移した。
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娘たちへ口止めが終わった後、言われたとおり円卓の間へ訪れた。
そこにいるのはモモンガ一人
「お久しぶりです。ニンフルサグさん」
「久しぶりね。モモンガ」
「離れてから1年くらいですね。いつ帰ってきたんですか?」
「それがね」
真実を言うと彼は舞い上がってしまうことはわかっていた。
彼の行動方針を決めかねないものだ。
「わからないのよ」
瞬間、モモンガが緑色に光り輝いた。たしか状態異常回復のエフェクトだっけ。
「何か光ったみたいだけど大丈夫?」
「ああ、どうも精神が昂ぶると沈静化されるみたいで」
なるほど、それは便利ね。
「話を続けるわ。記憶を思い返して、ありのままを話すわ」
「貴方からメールを受け取っていたけれど仕事でこれなかった」
「ええ、それは知っています」
「昨日は少し早く終わってね。実際に帰ってきたのは日が変わる少し前だったの」
私は転移直後寝落ちしたのではと見当違いのことを考えた。それはありえないことね。
若さを保つためのサイボーグ化の影響で睡眠は必要なくなっていた。
部分的に残っている脳は非常時に麻酔が打たれるけど、事前に知らせるためのアラームはなっていないからその線は薄い
内臓バッテリーにはプラグを挿して充電していたし、体内時計は1/100秒で把握できるから時間に狂いは無い。
「さすがに間に合わないからワインでも飲みながらメールでも打とうと考えていたわ。
ワインを持ってきて、パソコンの前に座ったあたりで私の記憶は途切れているの。ちょうど12時になったあたりよ
そして気づいたら第七階層の寝室の1つにいた」
分かっているのはこれだけね。
と言うと、モモンガに7回目の精神沈静が起こった。
「なるほど、だったら他のメンバーも来ているかもしれません
ニンフルサグさんはサイボーグでしたね。サイボーグだから来れたという線はありますか?」
「捨てきれないわね。私自身をインターネットにつないでいたからそれで来れたのかもしれない」
しばらくの間沈黙が流れる
「それでも、俺はあきらめませんよ」
「可能性が少しでもあるなら俺は探します」
「そうね」
一呼吸置き、語りかけるように言う
「みんなモモンガを待っているわ」
きっとみんな、貴方の姿をみたらびっくりするわ
「私も貴方にあえてとても感謝しているの」
「そう…なんですか?」
「ええ、そうよ、だって家族みたいなものでしょ」
何回目かの精神沈静がおこる
モモンガったらとても幸せそうね。それでいいのよ。誰にどう利用されてようが幸せならいいの。
かつての私のように。
貴方は私が幸せにする。その代わり貴方は私を楽しませる。
どう見てもたくさんのメリットがあるわ。
「それじゃあ詳しい打ち合わせを始めましょうか」
そうしてナザリックの夜は更けていった。
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おまけ
「ところでモモンガ、アルベドが貴方にご執心みたいだけどなんでなの?」
「え、それは」
「なあに」
「サービス終了前に」
「うん」
「アルベドの設定見たら『実はビッチである』て書いてあったので」
「うん」
「『モモンガを愛している』に変えたんです」
「そう、お幸せに!」
「ちょっ」
「ちゃんと責任取りなさい」
「…はい」
私の演説は、大量のヒトラー、まろやかさを出すための少佐、そして隠し味のヘイムスカーで出来ています
モモンガさん幸せ計画発動!