明日、続きをうpできたら良いなぁ・・・・・・(遠い目)
一方その頃、弥王の方は、グランツに人気のない燭台の明かりがぼうと灯っている部屋に通されていた。
こうもあっさりと部屋に通されると思っていなかった弥王は、ほくそ笑む。
初めてハニートラップという物を使ったが、それにしては上々の出来だろう。
ぶっつけ本番でこんなに上手くいくなんて思っていなかったが。
もし、今、姉貴が近くに居るなら、感謝していただろう。 自分に姉貴が居て良かった――。
弥王は、今は居ない姉に頭が上がらない。
さて、部屋に入った次は何をしようかな。
最低限、変死事件の事は吐き出させるとして。
自分としてはこのままさっさと殺ってしまいたいのだが。
そんな事を考えていた弥王の耳に、グランツの声が聞こえた。
「ひとつ、訊きたい事があるのだけれど、いいかな?」
「えぇ、どう――ッ!?」
弥王が頷こうとした時には、弥王の視界が揺らいだ。
一瞬、何が起こったのか弥王は反応が遅れる。
あ――、やばい。 これは非常にマズイ。
想定外だった。 まさか、初対面の女を突然押し倒すなんて思わないじゃん。
弥王は、ベッドの上に押し倒されたのだ。
目の前にはグランツの顔と、その背後に仄暗く天井が映っている。
幾ら自分も男の子とは言え、力になると成人男性には力になると敵わないよなぁ、これ。
今は貞操の危機よりも命の危機を感じる。
弥王は考えを巡らせた。
「正直に答えて貰おう。 君はファブレットの何だ?」
紺碧の瞳が自分を射貫くように見つめてくる。
その質問で、弥王は彼が変死事件の容疑者――
彼が狙うのは、無差別の10代から20代半ばの女性だ。
その代わり、別の事件の犯人である可能性が浮上した。
変死事件とは別に、婦女子失踪事件が起こっていたのだ。
その調査も同時に依頼されていて、筋金入りの男嫌いで定評のある女王陛下からは、「もし見付けたら、
グランツがその婦女子失踪事件の犯人であると言う可能性が出てきたのだ。
婦女子失踪事件の被害者は何れも10代後半から30代前くらいの
先程のグランツの質問は、自分が犯人であると言う事を暗に言っていた。
「それを訊いてどうするの?
彼に近いと知ったら・・・・・・例えば私が、彼の恋人だとでも言えば、私を殺す?」
「!?」
無表情に問う弥王の言葉に、グランツは狼狽した。
殺気を孕んだ冷たい目。
今にも殺されそうな緊張感が身体を
何だ、この恐怖にも似た緊張感は? まるで、死宣告者――それも、スラムにいるような、ちゃちな死宣告者を自称するチンピラのような連中以上――と対峙しているかのようだ。
彼女が死宣告者なら、グレア・ファブレットと一緒に居た事を考えると
グランツの口から、言葉が零れた。
「もしかして君は・・・・・・
言い終わる頃には、その目には畏怖の念が籠もっていた。
こんな所で不吉な死宣告者に会ってしまうなんて・・・・・・!
「ふっは・・・・・・はは・・・・・・っ」
グランツの恐怖に染まった目を見た弥王の口から、乾いた笑いが零れた。
そんな馬鹿な、と、グランツは零す。
「
狼狽えて、グランツが弥王から手を離したその時に、弥王は渾身の力でグランツを蹴り飛ばした。
よろめいたグランツが体勢を立て直さない内に弥王は素早く起き上がり、チェストの上に置いてある果物ナイフを取り上げて、それをグランツの胸に深々と突き刺した。
少しして、白いシャツの下から赤い染みが広がって、グランツは力なくその場に倒れた。
弥王がパチン、と指を鳴らせば、弥王の姿が男性的なシルエットに戻り、弥王は髪を解いてドレスの下に仕込んでいたいつもの白いシャツを取り出し、ドレスを脱ぎ捨てて着替え始める。
「・・・・・・冥土の土産に教えといてやるよ」
冷たくなっていく息絶えた骸に、弥王はゆっくりと語りかける。
その声は、底冷えするような冷たさを感じた。
「
ユリアの呪幻術師――通称、
その者達は文字通り、呪術・幻術を黒魔術として扱う者と、音を奏でる事により幻術を扱う者の事で、彼らは俗に言う【裏の力】と言う物を持つ人間に分類される者。
そんな者達の中でも一際、その力が強いのが弥王と璃王である。
とは言っても、時代と共に
それは、最近では
「――まぁ、オレが
それと――」
ポケットからオイルを取り出して、ドレスにそれを染みこませ、残りをグランツの亡骸を中心に部屋にオイルを撒いていく。
オイルの独特の臭いが鼻を付いたが、ホールの中を漂っていた香水の匂いよりはマシだと思う。
弥王は途中で言葉を止め、グランツが生前に訊いてきた質問を思い出した。
『君はファブレットの何だ?』
「オレは――」
弥王は、先のグレアの言葉を思い出す。
『彼女は私の恋人だよ』
別に、気にしている訳ではない。
解っている。 自分と彼との間にそんな関係は有り得ない。
今までも、そして、これからも。
これはただの憧憬だ。
弥王としてはグレアの事は、ちゃんと上司として尊敬して、憧れているつもりだ。
確かに殺意を抱く事もあるが、それはただの反抗期なだけで。
弥王は火の付いているカンテラを床に置くように落とした。
すると、オイルが染みついたカーペットや亡骸に火が燃え移り、あっという間に小さな部屋は紅蓮の炎で満たされる。
弥王は、グレアの言葉を掻き消すように言った。
「――グレア・ウォン・ファブレットの部下だ」
†補足†
グレアのフルネームは、グレア・ウォン・ファブレット。
基本的にミドルネームは省略している。