3月29日(水)
手直し完了。
*Le*
時間は少し戻り、二十歳ぐらいの一人の青年が廃墟の屋上に腰を下ろしていた。
黒いコートで身を包んだ青年の髪は茶色で、腰まで届きそうな長髪は首の後ろで1つに結ってある。
前髪は目にかかる程度、左目はきつく閉じられており、右目は眼帯で隠されている。
青年はピクリとも動かず、夜風に身を任せていた。
ふと、静寂な空間にヴァイオリンの音色が僅かに響く。
まるでその時を待っていたかのように、青年はゆっくりと目を開けた。 そこには、燃え盛る炎を切り取ったような緋色があった。
「始まったか‥‥‥」
そう呟くと、ようやく立ち上がり、建物と建物との空間を飛び越えヴァイオリンの音色のもとへ近づく。
ある程度近づくと、そこで歩みを止める。
これ以上近づけば、向こうが此方の気配に気づくか、此方がヴァイオリンの音色と共に聞こえる歌声によって気絶させられる可能性が高い。
過去に一度、無理矢理近づいて意識を持っていかれそうになり、危うく建物から落ちかけたことがある。
暫くそこに佇んでいると、ヴァイオリンの音色が止まり、再び静寂が辺りを包んだ。
狼煙が空に上がるのを確認すると、直ぐ様そこに向かい、建物から飛び降りる。 静かに降り立ったそこは、気絶している男と壁に大きく書かれた文字だけがあった。
壁に凭れている男は、耳に傷を負っている。 しかし、その傷はダガーやサーベルよりも鋭利な物で造られているモノだ。
壁に目を向ければ、大きく落書きされていた。
その壁に文字をなぞるように手をついて、文字を読もうとした。 だが、ローマ字で書かれたその言葉は一見すれば英語の様だが、解読できないので英語以外の言語である事が解った。
この落書きは毎回見るのだが、読めもしないのに何故かイラッとさせられる。
そう言う意味のだろうか、と青年は思った。
壁の落書きに、気絶させているだけの
前も
そんな事を考えていたら、けたたましいサイレンが反響しながら此方に近づいてくる。
「チッ、今回は思ったより
青年はそれが
まぁ、今回も変化はなかったから、良しとするか。
青年は黒いコートを翻し、銃口を真上に向けると、引き金を引いた。
銃口からはワイヤーが飛び出してきて、アンカーが建物に刺さる。 それを確認すると、引き金から指を離した。
青年の体はワイヤーに持ち上げられて、青年はそのまま漆黒の中に紛れ込んだ。
壁に書かれていた文字
「E pezzo d`mbecille」
=「お馬鹿さん」。
イタリア語です。
市警察に向けて書かれたモノですね、はい。