後1話、時間差で投稿しまーす!
「公爵! 何なんだ、今の言い訳はッ!?
ゲイなのッ!? ゲイの気でもあるのかッ!?」
「落ち着けよ、私にそんな趣味はないし・・・・・・それに、仕方ないだろ?
ああでも言わないと、彼女は引き下がってくれそうになかったしな」
会場の隅の方、バルコニー付近へと移動した弥王は、捲し立てるようにグレアに先程の行動について問い詰める。
さも気にしている様子のないグレアの返答に、弥王は納得できなかった。
「だからって、あんな・・・・・・ッ!
女の口なんて、壊れた財布のファスナーより緩いんだぞ!?
変な噂が流れる方が困る!」
赤面して反論する、弥王。
弥王が懸念しているのは、「ファブレット公爵に恋人が出来たんですってー」と言う噂から、背びれだの尾ヒレだのが付いて「ファブレット公爵に奥さんが~」という噂が流れる事だ。
そんな大層な噂が流れては、色々と問題になりかねない。
一般庶民や下級貴族の話であるなら、特に気にするような事はないが、グレアは上流階級の貴族だ。
そういう噂は背びれ尾ヒレが付いて流れるだろう。
そうなった時に巻き添えを食らうのは、弥王の方である。
「そう言えば、ファブレット公爵にいつも付いてる紫の男性、あの時の子に似てないかしら?」となるのは、弥王の方が非常に困るのだ。
「まぁ、落ち着けよ」
しかし、弥王の小言はグレアには効かないらしい。
弥王は溜息を吐いて、呆れた様に言った。
「大体、他の言い訳もあったんじゃないのか?
こ・・・・・・っ、恋人だなんて、そんなすぐ怪しまれるような嘘を吐かなくてもさ」
「その事は何とかなるさ。 何だっけ・・・・・・人の噂も45日・・・・・・とかって言葉があってだな」
「知ってるよ。 陛下の好きな日本の言葉だろ?
でも、実際にスキャンダル系の噂は至らない話が付いてくる訳でだな・・・・・・」
「そうなれば、別れたとでも言えばいい訳だ。
私が何て言われているか、お前達がよく解っているだろう?」
グレアの言葉に、弥王は「あぁ、もう、好きにしろ!」と吐き捨てて、その場を後にした。
あぁ、知ってますとも。 公爵が「女誑し」で有名な事は!
そう、グレアは「女誑し」で有名だったりするのだ。
今まで流れた噂は数知れず、定番の「女を取っ替え引っ替え」から「何処かの国の王女をも誑かして国際指名手配中」まで、本当か嘘か解らない様な噂が幾つも流れている。
なので、グレアはスキャンダル系の噂が流れても痛くもかゆくもない。 むしろ、通常運転だ。
「はぁ」
「おやおや。 美しいレディに溜息は似合わないよ? お嬢さん」
ホールから出ようとした扉の前で立ち止まって溜息を吐くと、背中からグレア以外の男性の柔和な声が舞い降りてきた。
歯の浮くようなキザったらしい言葉に振り返ってみれば、弥王の背後に金髪碧眼の優男が柔和な笑みを浮かべて立っている。
男の顔を見た瞬間、弥王は気を張り詰めた。
肩までの流れるような波を打つ金髪に、少しだけ細められた紺碧の瞳。
間違いない。 彼が今回の
直ぐ様、弥王はその顔に微笑みを張り付けた。
「美しいだなんて、そんな事はないですわ、グランツ男爵。
話しに聞いていたよりも、貴方の方がずっと素敵でしてよ?」
裏声を駆使して、精一杯に淑女を演じる、弥王。
王宮には、上流階級の淑女がよく来ていた為、弥王は記憶の中の彼女達の言動を思い出しながら演じる。
我ながら上出来だ、うん。
「随分口がお上手だね、レディ。
謙遜する所もまた、魅力的だ」
弥王の手を取ると、グランツは弥王の手の甲に軽く口付ける。
うがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・
ジョワ・・・・・・ッと、弥王の全身に身の毛が弥立ち、虫酸が皮膚という皮膚を駆け巡った。
こんな格好させられて、恋人の振りまでさせられ、更にその挙げ句にこんな仕打ち・・・・・・! もう、お婿に行けない・・・・・・!
弥王は内心で泣きたくなった。
そして、それは殺意へと転移する。
必ず殺してやる、このキザ男・・・・・・!
いやむしろ、今殺したい!
「ところで、さっき一緒に居たのは、ファブレット公爵ではなかったかな?」
「えぇ、私、グレア様とは幼い頃からの知り合いで。
久し振りにお会いして、連れてきて貰いましたの。
でも・・・・・・」
殺意に流されそうになって一瞬、グランツから意識を外していた弥王は、グランツの質問を少しだけ聞き流したモノの、直ぐに頭を切り替えて答える。
殺意を押し殺しつつ、弥王が俯けば、グランツは弥王の顔を覗き込んできた。
「どうしたんだい?」
「グレア様ったら、私が居るというのに他の女性ばかり見ているから・・・・・・私、つい、彼に文句を言ってしまって。
そしたら口論になったので、気分も乗らないしこれから1人で帰ろうかと思っていた所なんですの」
グランツの同情を引くように、弥王はさめざめと泣いて見せる。
男は女の涙に弱い。
弥王はそれを熟知している。
ホモかゲイかオカマかサイコパスでない限りは、女に目の前で泣かれれば、男は放っておけなくなる。
その心理を利用する為の演技だ。
顔を手で覆い、その指の隙間からグランツの表情を盗み見る。
彼の目には、同情の色が見えてきた。
よしよし。 掛かってくれてるな。
て言うかオレ、演技上手すぎだろ。 俳優になれるんじゃないか、これ?
弥王は、心の中でガッツポーズをした。
「可哀相に・・・・・・なんて無責任な男だ。
嗚呼、泣かないで、レディ。
君に涙は似合わないよ?」
弥王の話を聞いたグランツが、弥王の肩を抱いて耳元に囁く。
息の掛かる距離で耳元に囁かれれば、弥王は寒気とそれに比例して、腹の底から沸き上がる殺意を感じた。
うがあああああぁぁぁぁあああああ!
もう無理、この場で殺したい! I kill youしたいぃぃぃ!
弥王は殺意でご乱心だ。
しかし、と思いとどまる。
ここは落ち着くべきだ。 冷静になれ、オレ。
少年よ、冷静になれ。
今ここで殺るのはリスクが大きい。
暗殺は、人目のない所でひっそりと、確実に。
それが、
弥王は、冷静さを取り戻し、初めて裏警察に来た時に受けた説明を思い出す。
ルールを守ろうとするなら、必然的に
自然的に相手を人目の付かない所へ。
あぁ、これならできそうだ。
いつだったか、姉貴が誰かに習っていた事だ。 いや、自分が王宮でいつもやっている事の逆の事を――。
「なら、貴方が慰めて涙を止めて下さらないかしら?」
グランツを涙ぐんだ瞳で上目遣いで見上げて、弥王は頭をグランツの肩に傾ける。
その時、グランツの頬に仄かに紅が差したのを弥王は見逃さなかった。
「優しい貴方に一目惚れ・・・・・・シルクの様な金紗の髪と言い、蒼穹のように澄んだ碧眼と言い、私のドストライクですわ。
多くの英国の人を見てきたけれど、貴方の様な素敵な人は初めてお会いしました。
ねぇ、2人きりでお話ししたいわ。 何処か、人の居ない所で・・・・・・」
グランツの頬に手を添えて、頬から顎に輪郭をなぞるように指を滑らせ、弥王は微笑んだ。
妖艶なその微笑みにグランツはノックアウトされたらしく、弥王の薄い肩に手を回す。
おいおいおい、マジかよ。
こう言う言葉がスラスラ出てくるオレも大概だが、こんなあからさまなハニートラップに引っ掛かるこいつはどうなんだい?
案外簡単にハニートラップに引っ掛かったグランツに、弥王は内心で苦笑した。
「あぁ、良いとも。
2人きりでゆっくり話をしよう・・・・・・夜が明けるまで」
肩から腰へと手を滑らせて、グランツは弥王を会場の外へ連れ出す。
耐えろ、耐えるんだ、オレ・・・・・・ッ!
大丈夫、貞操の危機は感じるが、イザとなれば急所を撃ち抜けばいい。
その為のJNY75
確実に殺れる時を待つんだ、オレ・・・・・・ッ!
今のオレはそう、エルリック・シーズの任務に協力している時に女装させられた、ジョニー・セコッティンス・・・・・・ジョニスだ!
女装の神、ジョニス、オレにその演技力を・・・・・・!
段々と現実逃避を始めていく、弥王。
その傍らで、弥王は別の事も考えていた。
これだけ単純な奴が、変死事件に関与しているとは思えないのだ。
変死事件に関与するなら、それだけの頭が要りそうなモノだが・・・・・・。
弥王は、そんな事を考えながら、グランツが誘導するままに白い通路を歩いて行った。
グレア・ファブレット
年齢:22歳(後に23歳)
誕生日:1929年12月1日
星座:射手座
血液型:O型
身長:185cm
体重:79kg
出身国:英国
趣味:読書、剣の手入れ
特技:暗記、説得
好き:甘味、紅茶、弟妹、“ミオン”
嫌い/苦手:警視総監/身内以外の女性
異名:不明
武器:片手剣、短剣
名門貴族・ファブレット公爵家当主にして、英国女王直属武装警察「
天才的な頭脳と端正な顔立ちを持ち、老若問わず女性から人気を集める。
しかし、本人は女性が苦手な為、極力避ける方向で。
ただ、身分上、寄ってくる女性(何処ぞの貴族の娘だの、何処ぞのマフィアのボスだの)を全力で避ける事が出来ない為、それが少々女誑しに見えてしまう事もあり、噂にせびれや尾びれが付きまくった結果、「女を取っ替え引っ替えしている挙げ句、何処かの国の王女にまで手を出して国際指名手配中の女誑し」と呼ばれるに至る。
更には女王から「ロリコン シスコン 女誑し」ととどめを刺される事も。
4人の妹と2人の弟がおり、兄弟の中で一番扱いが可哀相な兄さん。
弥王と璃王が活躍しだしてからと言うモノ、めっきり出番が無くなり、裏警察の本部に引き籠もるようになった。
それと同時に「絶対零度の
そして、書き忘れてはいけないのが、彼は童顔で中性的な顔をしている為、よく性別を間違えられる。
その為、彼に性別の話は禁句だ。
間違っても、「そこの麗しのレディ」と言ってはいけない。
それを言えば、100%の命中率でカッターナイフが飛んでくる。