真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~   作:りせっと

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1話 ~国吉灯、クラスメートと戯れ合う~

 ある1人の少年がバックを片手で持ち、肩にかけながら橋の歩いて渡っている。

 

 その表情は家を出たときよりも若干眠気が取れているように見えた。それでも完全に眠気が飛んでいないのか、瞼はいつもの時と比べると若干閉じているようにも見える。

 

 

 

「おーい、灯」

 

 

 

 男の声が少年の耳に届いた。少年の名前は灯と言うらしい。灯はその声が聞こえた方へと振り返った。男の太い声で最後まで根付いていた眠気が飛んでいったことを灯は感じた。

 

 

 

「よぉ岳人、それにモロ」

 

 

 少年は立ち止まり2人が歩いてやってくるのを見てる。

 

 2人とも男だが体格は非常に対照的だ。1人は一言で言うならばマッチョ。身長も平均より高い灯よりもさらに高い。そしてもう1人は逆に細い。線の細さは女子並みで身長も平均以下だ。

 

 

 

「相変わらず無駄に筋肉つけてるなぁ、少しはモロに分けたらどうだ?」

 

 

 

 いきなり人を馬鹿にした発言をしたこの少年、国吉(くによし)灯(あかり)は川神学園2年F組所属の生徒だ。

 

 灯は誰が見てもかっこいいと思う顔立ちをしている。身長は日本人の平均よりやや高いといったとこ、だが茶髪でショートウルフな髪がかっこよさを引き出している。俗に言うイケメンっというやつだろう。

 

 

 

「無駄って言うな! 俺様自慢の筋肉なんだぞ!」

 

 

「僕だって岳人の筋肉なんていらないよ!」

 

 

 

 灯の言葉にすぐさま反論する島津岳人と師岡卓也ことモロ。マッチョな方が岳人で背が低く線が細い方がモロだ。この3人は同級生であり現在クラスメートだったりする。

 

 そこにもう3人、灯と同じクラスメートが到着する。

 

 

 

「おぉ大和、風間、椎名。お前らだって岳人の筋肉は無駄だと思うよな?」

 

 

「いきなり何の話してんだお前ら?」

 

 

「あぁ、無駄だね」

 

 

「大和テメェ!!」

 

 

「しょーもない……」

 

 

 

 バンダナがトレードマークで灯と同じく整った顔付きであるのが風間翔一、風間には及ばないが中々整った顔立ちをしているのが直江大和、青髪が特徴的の美少女が椎名京。

 

 この3人と岳人、モロは幼馴染のため仲が良く、灯ともクラスメートであるため仲が良い。

 

 ただ灯と風間たちは2年から仲良くなり始めた訳ではない。1年のある時期から交流が始まった。

 

 

 ただ今は現在行われていることに話しを戻そう。

 

 大和は瞬時に会話の内容を理解して返してくれたが、京は理解してくれたもののどうでもいいと判断したようだ。その京の判断はきっと正しい。

 

 

 

「お前らどれだけ俺様の筋肉を馬鹿にしてるんだよ、いいかぁ? 俺様のこの鍛え上げられた筋肉はなぁ…」

 

 

「お前の筋肉の話聞いても1銭も価値ねぇよ」

 

 

 

 話しを降っておきながら全く興味がないのか、灯は体を反転させて学校へと足を進める。どうやら岳人の話をスルーして進むようだ。その表情は呆れつつ、メンドクサイと言う感情が見える。

 

 それに合わせて岳人を除く皆も止めていた足を動かし始めた。皆思っていることは一緒らしい。

 

 

 

「少しは聞いてくれよ!!!」

 

 

 

 岳人の叫びが朝から空しく響いた瞬間であった。

 

 

 岳人の声が響いてから少しすると

 

 

 

「美少女! 参! 上!」

 

 

 

 空から女の子が振ってきた。この表現はありえないと思うが実際その通りの出来事が起きてるのだから仕方ない。

 

 空から降ってきた女の子は風間、灯に負けず劣らずのイケメンだ。それでいてほとんどの人が美少女だと言うだろう。それほどにまで整った顔をしているのだ。

 

 

 

「よーお前たち、ん? 何だ、灯もいるのか?」

 

 

「よぉモモ先輩、今日先輩が履いてるパンツの色を言って朝の挨拶を完了しようじゃないか」

 

 

「お前が私と戦ってくれるなら教えてやってもいいぞ」

 

 

「それは割りに合わない、交渉は決裂だな」

 

 

「何だったら見せてやっても良い」

 

 

「触らしてくれるなら考える」

 

 

「それはちょっとなー」

 

 

「朝からする会話じゃないでしょ2人共!!」

 

 

 

 モロの突込みが今日も冴え渡る。突っ込み役のモロは朝から大忙しだ。

 

 この空から降ってきた少女は川神百代。世界に名を轟かす武道家だ。轟かしている理由は単純、あまりにも強すぎるからだ。数多くの有名な武道家が彼女に挑み、結果10秒経たずに返り討ちにあっている。

 

 そしてその世界的有名な百代と灯が話している会話の内容はモロの言うとおり朝からするものではない、が灯と百代、この2人はいたって真面目な顔をしている。本人たちはいつだって真剣なのだ。

 

 

 

「いいじゃんかーたーたーかーえーよー」

 

 

「イーヤだねー」

 

 

 

 まるで子供のような言い争いをしつつも、百代は灯を捕まえようとする。灯は捕まらないように動き回っている。この光景は約1年前からお決まりになりつつある。

 

 

 1年前、風間や大和、灯が川神学園に入学してきた時だ。百代は1年生に強い奴はいないか、そして可愛い子がいないか確認するため1年生のクラスを徘徊している時、灯を見つけた。

 

 灯は百代のお眼鏡にかかるほど、強かったのだ。戦う前から強さなどわかるはずもない、それは一般人の話しだ。ある一定のラインの強さまで来ると戦う前から相手の力量は何となくだが理解することが出来る。

 

 早速戦闘を申し込む百代、だが基本怠慢な性格である灯はそれを拒否。それに納得できなかった百代が勝手に勝負を挑んできたのだ。百代の攻撃を冷静に捌きつつ反撃する灯。この争いは学園長であり、川神院の総代である川神鉄心が来るまで続いた。

 

 時間で言うとほんの5分程度だが、それだけの時間、百代とやり合えていた人は今までいなかった。そのため灯に正式な勝負を今の今まで申し込んではいるのだが、灯はそれを拒否。軽いど付き合い程度なら付き合うこともあるが、1年経った今でも正式な勝負は受けていないのだ。

 

 そして現在、機会がある事に勝負を申し込む百代、それから逃げる灯の姿が誕生した。

 

 ちなみにそのことが切っ掛けとなり、灯は風間たちとも交流を持つようになったのだ。

 

 

「……姉さんいつものようにほっといて、学校行こうか」

 

 

 大和たちは灯と百代を置いて学校に向かうことを決めたらしい。これも風間ファミリーの中ではお決まりになりつつある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでは、明日から行われる東西交流戦の班分けを決めたいと思う」

 

 

 

 2年F組の担任、小島梅子の声が教室に響き渡る。その声は威厳があるもので教室の空気は多少張り詰めたものとなった。

 

 時は午後。既に午後1つ目の授業をこなし、今の時間が本日最後の授業。ただ授業ではなく、緊急ホームルームが行われてる。理由は明日から開始される東西交流戦が行われるからだ。

 

 天神館と呼ばれている川神学園と同じような武闘派学校が川神に修学旅行に訪れることから話は始まった。

 

 近年学生の強さが東高西低と呼ばれることが気に入らないから、と言うことで修学旅行ついでに学園全体に喧嘩をふっかけてきたのだ。川神学園……いや、学長の川神鉄心はそれを了承。そのため、交流戦の事を決めるべく、本日ホームルームが急にやる必要が出てきたのだ。

 

 

 

「1クラスから約30人が戦士として出場、残りは救護班となる」

 

 

 

 東西戦は学年から200人選出の集団戦、大将を倒せば決着となる。武器に多少の制限はあるが、基本ルール無用の戦いだ。

 

 

 

「私たちは戦えないから救護班ね」

 

 

「はい! 頑張ってる皆さんをサポートします」

 

 

 

 小笠原千花と、このクラスの委員長、甘粕真与は真っ先に救護班を選ぶ。彼女たちの能力を考えると妥当な判断だろう。

 

 

 

「アタイは選手として出る系! イケメン捕まえちゃるわ!!」

 

 

 

 2年F組のろくでなし代表羽黒黒子は戦士としての出場。出場する理由は大層不純なものであった。

 

 

 

「僕も救護班かなー」

 

 

「俺もだ、戦うのはゲームの中だけで充分だ」

 

 

「俺も救護班……もとい撮影班として活動するぜ、天神館のパンチラをゲットしてやる!」

 

 

 

 それぞれ役割が決まっている中

 

 

 

「俺も救護班だ、正直怠い」

 

 

 

 灯が救護班を希望した。

 

 

 

「えぇ! 灯くんは選手として以外考えられないわ!!」

 

 

 

 灯の意見に真っ先に反対したのは、このクラスのマスコット的存在である川神一子だ。通称ワン子。ちなみに彼女は真っ先に選手として希望している。彼女の猪突猛進な性格、そして川神院で鍛えられた強さを考えると当然だろう。

 

 

 

「ワン子ちゃんよぉ……そんなこと言ってもやる気が出ねぇよこんな戦い」

 

 

 

 灯が机に突っ伏したまま反論する。たかが喧嘩と言うことが理由でやる気が出ないらしい。先日の学長の話し、東西交流戦の話しを聞かされた時も絶望的にメンドクサイ顔をしていた。

 

 

 

「やる気が出ないとかの問題ではないだろう灯、お前は選手として出場すべきだ」

 

 

「んな苦虫噛み潰したような表情で言うなよ、お嬢」

 

 

「お前の強さは認めるが他の態度は認められたものではないからな」

 

 

 

 複雑な表情で灯を見つめるのはドイツからの留学生、クリスティアーネ・フリードリヒ。通称クリス。灯がお嬢と呼んでいるのは、彼女の言動・行動から来ている。クリスはドイツ軍中将が親の箱入り娘なのだ。

 

 彼女は騎士道精神を大事にしており、不真面目な態度が目立つ灯とは相反することが多い。彼女が編入して1週間たった辺りから、何とか公正させようとしているが焼け石に水状態である。

 

 そしてその態度に腹を立てたクリスが1度戦闘で灯に決闘を申し込んでいる。クリスの勢いに負けた灯は、渋々その決闘を受けた。結果灯はクリスを開始5秒、ワンパンチでノックアウトさせてる。その決闘以降から灯の強さだけは認めている。

 

 決闘以降も何かと文句を言ってるクリスだが、灯はそんな彼女を嫌ってはいない。その理由は――

 

 

 

「どうどうどう、まぁ落ち着けよ」

 

 

「自分は馬ではない!!」

 

 

「まぁまぁまぁ、怒ったら美人な顔が台無しだぜ」

 

 

「今それは関係ないだろう」

 

 

「これで胸が大きければ完璧だったのに……残念だ」

 

 

「国吉灯ーーーーー!!!!」

 

 

 

 彼女をからかうととてもいい反応をするからだ。

 

 灯は哀れんだ顔でクリスの胸をガン見してる。その視線を感じ取ってかクリスは胸を腕で隠しながら吠えた。

 

 

 

「ワン子ちゃんとお嬢様はもうひと頑張りだ」

 

 

 

 そう言って隣にいるワン子の胸に触ろうと手を伸ばす――が、

 

 

 

「何触ろうとしてるのよ!!」

 

 

 

 ワン子も吠えた。クリスとワン子、2人揃って胸を隠しながら灯にむかって「うぅ~~~っ」と唸っている。まるで番犬みたいだ。

 

 灯は触れなかったことが気に入らなかったのか、軽く舌打ちをしつつ、伸ばした手を引っ込める。

 

 

 

「大体俺が出なくたって…………」

 

 

 

 そこまで言って

 

 

 

(ん!?)

 

 

 

 灯に電流走る。

 

 

 

(いや、待て? この東西戦は集団戦だろ。んで天神館はこの川神学園と同じくらいの武闘派。ってことは天神館の女子生徒も戦いに出てくるはずだ。その中には勿論美人で可愛くてスタイルが良い女子生徒もいるだろう。戦闘ではその女子に普通に違和感なく近づくことが出来る…………

 

 つまり美人で可愛い娘のおっぱいが触れるかもしれない! あわよくばそこから口説くのも有りだな。そうと決まればっ!!)

 

 

「いや、やっぱり俺は選手として出るぜ!!」

 

 

 

 この結論が出るまで1秒もかかってない。何とも欲望塗れな結論を出し、灯はテンションが先ほどとは別人のように高くなっていた。

 

 

 

「どういう風の吹き回しだよ? さっきまで死ぬほどめんどくさそうな顔してたのに」

 

 

 

 大和が疑問に思うのも当然だ。さっきまで救護班を希望してやる気の欠片も見られなかったのだがら。

 

 

 

「俺が出れば勝つ確率が上がる、いや100%負けはない。理由はそれで十分だろ」

 

 

「何か別人のように目がキラキラしてるね」

 

 

 

 目ざとく京が突っ込んでくるが灯は全く気にしていない。それほどにまで今彼は上機嫌なのだ。

 

 

 

「国吉、貴様変なこと考えてないか?」

 

 

「滅相もない」

 

 

 

 小島先生に疑われながらも、灯の東西戦出場が決定した。

 


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