真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~   作:りせっと

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3話 ~国吉灯、武士道プランを知る~

「フハハハハ! 皆の者ご苦労であったな!」

 

 

 

 交流戦が終わって場所を移し、今は工場からさほど離れていない港に2年生が集合している。そこで我が軍の大将であった九鬼英雄が労いの言葉を送っている。上から目線なのはご愛嬌だ。

 

 

 

「おい、キンピカ。誰だよこの可愛い子。S組って言ってんぞ」

 

 

 

 灯は英雄に対して義経の説明を要求した。それもそのはず、可愛い女の子を見逃すはずもない灯が知らない子なのだ。

 

 ちなみになぜ灯がキンピカと呼んでるのかと言うと――そのまんま、金色の服を着て登校しているからである。

 

 

 

「誰じゃその女? 此方も知らんぞ」

 

 

「俺も知らねぇなぁ。小さくもないから興味もないが」

 

 

「私も知りません。英雄、彼女は一体誰なのですか?」

 

 

 

 現S組所属の人たちもどうやら知らないようだ。

 

 

 

「我をキンピカと呼ぶでないわ! 彼女、義経は武士道プランの申し子だ」

 

 

「義経ちゃんも言ってたけど武士道プランって何だよ」

 

 

「明日の朝、テレビを見よ。それが1番手っ取り早いわ」

 

 

 

 英雄はこれ以上この子、武士道プランについて語るつもりはないらしい。

 

 

 

「……まぁいいか、可愛いし」

 

 

 

 灯も聞くのがめんどくさくなったようだ。軽くため息をついて、視線を英雄から義経ヘと移す。

 

 

 

「義経ちゃん、今から俺たち希望者は打ち上げに行くんだが一緒にこないか?」

 

 

 

 港についてからすぐ、風間が「打ち上げしよーぜ!」と言い出したことがキッカケで川神学園2年の生徒たち希望者を募って打ち上げをすることが決まっていた。そして決まれば話しが早く食のスペシャリスト熊谷満が店を繕い予約して、今現在、後は行くだけとなっている。

 

 

 

「えぇ! 義経も行っていいのか?」

 

 

「あぁ、今日編入で知らん奴ばっかりだが、気の良い奴らだからな。きっと楽しいぜ」

 

 

 

 義経は灯の言葉に心動かされそうになったが

 

 

 

「……誘ってくれたのは嬉しいけど、義経は明日の準備をしなきゃ行けないんだ」

 

 

 

 遠まわしに断りの言葉を伝えた。本当に申し訳なさそうな表情をしている。

 

 

 

「そうか、なら今度は一緒にな。んじゃまた明日」

 

 

 

 灯は仕方ない、そんな表情を浮かべつつも心から残念に思っている。

 

 

 

「! あぁ、また明日! えぇと……」

 

 

 

 義経はまた明日、この言葉が嬉しかったらしいだが――

 

 

 

「灯だ、国吉灯」

 

 

「うん! またな国吉くん!」

 

 

 

 名前が分からなかったがそれを感じ取った灯が直ぐ様名乗る。名乗った瞬間すぐ呼んでくれたのでやはり名前を知りたかったらしい。

 

 灯と挨拶した後、英雄に帰ることを伝えて港を去っていった。

 

 

 

「灯くん何してんのよ、早く行きましょう!」

 

 

 

 ワン子からもう出発することが伝えられたので義経から視線を外し、打ち上げメンバーに合流する。そして灯はあることで頭が一杯になった。

 

 

 

(どーやって教師にばれずに酒を飲むかなぁ……)

 

 

 

 バレたら停学ものの考えだった。

 

 

 

「どうしよう、ここからの帰り道がわからない」

 

 

 

 義経は帰り道が分からず、港で30分迷い続けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東西交流戦が行われた翌日、川神市はある1つの話題で持ちきりだった。それは昨日英雄が言っていた武士道プランだ。

 

 武士道プランとは歴史的有名人である源義経、武蔵坊弁慶、那須与一を現在に転生させることである。

 

 様はクローンな訳なのだが、そのクローンが川神市にやってきて、尚且つ川神学園に編入して来るということだった。これで騒がない人はいないだろう。

 

 

 

(義経たちが編入してくるんだよな、義経があんなに可愛かったんだ。那須与一、武蔵坊弁慶がもし女だったらそっちも相当可愛いに違いない)

 

 

 

 灯も他の生徒たちとは少々ベクトルが違うが気にしている者の1人。

 

 

 

(いやだけど女である可能性は低いか…? いや、義経が女だったんだ。那須与一か武蔵坊弁慶どちらかが女であることは充分に考えられる……それとも九鬼がサプライズで他に編入してくる女子生徒を隠しているワンチャン……)

 

 

 

 朝から欲望全開の思考をしている灯。東西交流戦後という疲れるイベントが前日にあったのに関わらず遅刻しないのはこのような考えを昨日からしていたためである。こんな美味しいイベントに遅れるわけにはいかないと気合を入れて起床した。

 

 ちなみに酒は小島先生が目を光らせて飲むことが出来なかった。灯が早起き出来た理由には酒を飲まなかったことにもある。しょうがなく川神水で我慢したのだ。

 

 

 

(ん?)

 

 

 

 ふとある気配を感じ取ったので視線を向ける。その視線を向ける方向は前でも後ろでも左右でもなく上だ。

 

 

 

(モモ先輩かよ……お!)

 

 

 

 百代が大きく跳躍しながら前に進んでいる。そして灯には百代の下着――パンツが目に入ってきた。正確に言うと体ごと目線を少し動かして目に入れた。ちなみに色は黒だ。

 

 

 

(こりゃ朝から良いことがあったな)

 

 

 

 珍しく朝からテンションを高くして灯は学園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 武士道プランの子たちが川神学園に編入する、ということで朝のHRが緊急の学年集会が開かれた。生徒皆、武士道プランの子が気になっているのかテンションが高い生徒が非常に多い。

 

 

 

「この川神学園に、転入生が6人入ることになった」

 

 

 

 学長である川神鉄心が全校生徒の前で武士道プランの詳細について話し始めた

 今話した内容を聞いて生徒皆が一斉にざわめき始めた。当初武士道プランの人数は3人で編入する人数も3人のはず。だがそれの倍、6人が川神学園に編入するからだ。

 

 

 

「おっしゃ! こりゃワンチャンくるかぁ?」

 

 

 

 灯は自分の考えが的中したと思いガッツポーズを決める。

 

 

 

「何ガッツポーズしてんだよ灯」

 

 

「予想が的中するかもしれないんだ」

 

 

「意味が分からん」

 

 

 

 隣にいた岳人が呆れた表情をしたが灯はそれを全く気にしていない。目を輝かせて学長の説明を聞いている。

 

 

 

「武士道プランの申し子たちは全部で4人じゃ。残り2人は関係者。まずは3年生、3年S組に1人入るぞ。葉桜清楚、挨拶せい」

 

 

 

 学長の声と共に、身のこなしをしなやかに、女の子が1人前に出た。そして壇上に上がっていく。

 

 その姿を見て男たちは彼女に釘付けになり、思わずため息を吐いた。なぜならば上がってきた彼女がとても可愛らしく、清楚だったからだ。

 

 

 

「こんにちは、初めまして、葉桜清楚です」

 

 

「これからよろしくお願いします」

 

 

 

 非常に透き通った声かつ、柔らかな態度で挨拶をした後、男子生徒のため息は歓声に変わった。一部の女子…百代からも歓声と文句が上がった。「可愛いのに何でSクラスなんだよー」っと。

 

 何人かの先生がうるさくなった生徒を静めようとするも効果は薄い。

 

 

 

「が、学長、質問がありまーす!!」

 

 

 

 福本育郎、通称ヨンパチが全校生徒の前に関わらず手をあげ質問していいかと許可をもらう。

 

 

 

「全校の前で大胆な奴じゃのう。言うてみぃ」

 

 

 

 学長が質問を許可する。そう、彼女には大きな謎が1つある。

 

 

 

「是非、3サイズと、彼氏の有無を……!」

 

 

 

 だがヨンパチがした質問はそんな謎とは一切関係ないものだった。

 

 

 

「この俗物がーっ!!」

 

 

 

 当然の如く、担任である小島先生が鞭を振るって教育的指導をする。叩かれた音は聞いているだけでも痛くなってくるようだった。

 

 叩かれて倒れながらも満足そうな笑みを浮かべているヨンパチに灯は

 

 

 

「ヨンパチ、彼女のスリーサイズはB82W57H81のCカップだ。メモしておけよ」

 

 

 

 彼が求めていた情報を事細かに伝えた。その表情は真剣そのものだ。

 

 

 

「さっすが灯!! 頼りになるぜぇ!!」

 

 

 

 ヨンパチは直ぐ様立ち上がり、満面な笑みを浮かべ灯に向かって親指を立てる。

 

 

 

「だろう」

 

 

 

 灯もヨンパチに向けてドヤ顔しつつ親指を立てた。無駄に洗練された特技が活かされた瞬間だった。

 

 ちなみに周りの男子生徒のほとんどが(灯……良くやった!!)っと心の中でガッツポーズを決めている。皆欲望に忠実なのだ。

 

 

 

「国吉、よくぞ見抜いた!」

 

 

 

 学長も喜んでいた。基本この学長もエロジジィなので喜ぶのは当然だ。ただ教職として今の反応は失格なのかもしれない。

 

 

 

「えぇっ…何で当たったんだろう!?」

 

 

 

 当人の葉桜清楚も自分のスリーサイズが当てられたことに驚きを隠しきれないようだ。

 

 

 

「彼氏の有無は……うぅむ、分からん」

 

 

 

 灯でも彼氏の有無は眼力で見抜くことが出来ないので、どう判明させるか悩むが

 

 

 

「国吉! いい加減にしないか!!」

 

 

 

 小島先生はいい加減、灯を止めないとマズイっと思ったのか一喝する。だが鞭は振るわない。

 

 2年の始めに鞭を数多く、本当にたくさん振ってきたのだが1発も当たらないからだ。自分の鞭が当たらなかったことに落胆し、驚いたが……5月の終わり、ついに彼女は鞭を振っても無駄だと悟った。それ以降口では叱るが灯に鞭を振るうことは無い。

 

 

 

「ごほん…それは皆さんのご想像にお任せします」

 

 

 

 葉桜は気を取り直し、恥じらいつつも何とか答え辛い質問に答える。その姿は非常に可愛らしいものだった。

 

 

 

 

 

 そして彼女、葉桜清楚の大きな謎とは――葉桜清楚、そのような英雄の名は聞いたことがない。

 それについての説明は本人からあった。葉桜清楚とはイメージでついた名前、つまり誰のクローンか教えてもらっていないのだ。本人曰く25歳ぐらいで教えてもらえるらしい。

 

 

 

「なるほど……どんな英雄なんだろう?」

 

 

 大和は誰もが思っている疑問を解決するために考える姿勢に入ろうとしたが

 

 

 

「大和、そんなことどうでもいいだろう」

 

 

「ん?」

 

 

「大切なのは葉桜清楚という女性が非常に可愛く魅力的だ! っということだ」

 

 

「……お前ブレないなぁ」

 

 

 

 灯に横槍を入れられたので考えるのを放棄した。その表情は呆れている、だがそれと同時にどんな状況でも変わらない灯にある種感心した。

 

 生徒皆のテンションが更に上がってきたところで次の武士道プランの子の紹介に入る。

 

 

 

「2年に入るのは3人じゃ。全員が2年S組に入る」

 

 

「ほー。此方たちのクラスとは命知らずな奴」

 

 

 

 2年S組の1人である不死川心が酷い発言をする。だがそれぐらい2年S組は競争心が激しく、見下し合いも激しいのだ。一般人よりも少し優れているぐらいじゃあっという間にS組から排除されてしまう、エリート中のエリートが所属するのがS組だ。

 

 

 

「まずは源義経、そして武蔵坊弁慶、両方女性じゃ」

 

 

 

 学長から紹介が入り2人の女性が姿勢良く歩いてきた。

 

 1人は武士道プランの代表格、源義経。凛としていて可愛らしいのが特長だ。そしてもう1人――非常に整った顔立ちでくせっ毛のある髪が特徴的、身長も高くモデルみたいだ。そしてグラマーな体型で色気が出ている。

 

 

 

「こんにちわ、武蔵坊弁慶です。これからよろしく」

 

 

 

 非常に落ち着いた様子で全校生徒に挨拶をする。その動作もどこか色っぽい。その色っぽさを見て男子生徒は大きな歓声が上がった。所々結婚してくれーと声が上がっているぐらいに。

 

 そしてその弁慶を見て灯は

 

 

 

「あの色気たまらんなぁ、同い年が出してる色気とは思わん」

 

 

「灯、さっきからニヤニヤ顔が止まってないぞ」

 

 

「にやけるのは仕方ないだろ」

 

 

 

 非常に満足そうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

「だけどな大和」

 

 

「うん?」

 

 

「あいつらよりまだマシだろ」

 

 

 

 そう言われて大和は灯が指差した方向を見る。

 

 

 

「べんけーい!! 俺様と付き合ってくれー!!!!」

 

 

「ヤベェ自然発射しそう!! たまんねぇなぁ!!!!」

 

 

 

 岳人とヨンパチが女性は受け付けないであろう、気持ち悪い表情をして叫んでいた。実際同じクラスメートである小笠原千花からは引かれている。男だって引いてしまうぐらい気持ち悪い。

 

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

「しっかし弁慶、美人だなぁ」

 

 

 

 その後義経が弁慶と葉桜に応援されつつ、模範的な挨拶を行なった、が灯はそんなの聞いておらず、ずっと壇上に立っている美少女3人組を見続けていた。

 

 挨拶が終わり最後の武士道プランの子であり唯一の男子、那須与一の紹介に入ろうとしたとき

 

 

 

「あれ? そう言えば与一はどこに行ったんだ?」

 

 

「ここ到着する時までは一緒だったよね」

 

 

「え! 本当だ、どこに行ったんだろう?」

 

 

 

 那須与一がいなくなった。義経と葉桜は慌てて壇上から与一を探したが見つからない。どうやら与一は脱走したらしい。弁慶は1人慌てずに探すことをせず、与一にどのようなお仕置きを持参した飲み物を飲みながら考えていた。

 

 義経は探すことを諦め、慌てて与一のフォローをしている、そのフォローとは別に灯はあることに気づいた。

 

 

 

「あれ? 弁慶の顔赤くなってね?」

 

 

 

 そう、弁慶の顔が先ほど自己紹介した時に比べて赤くなっているのだ。弁慶の顔が赤くなっていることに気づいた義経は

 

 

 

「弁慶! この場じゃ川神水を飲んじゃダメだー!!」

 

 

 

 慌てて飲むことを止めようとするがもう遅い。弁慶は既に出来上がっている。

 

 その出来上がった弁慶から川神水の説明が入った。本人曰く、川神水飲まないと体が震える、簡単に言えばアルコール(川神水)依存症であるらしい。そのため川神水が手放せないのだと。そして川神水を飲むためには学年4位以内に入り続けなければならないらしい。それを聞いてS組は対抗意識を燃やし始めたが

 

 

 

「酒(川神水)飲んでる弁慶美人だな」

 

 

 

 そんなこと灯には関係がなかった。彼にとってようは美人か、可愛いか、そうでないか、それが重要であるのだ。

 

 

 

 次に武士道プラン関係者の紹介に入る。どちらとも1年生に入るらしい。

 

 学長から紹介にはいろうとした瞬間、大量の執事服を着た人物が現れた。そして学園の正門に車、リムジンが到着する。その大量の人間たちが車から壇上まで、2人で肩を組み人間の橋を作った。その人の橋をある人物が歩いてくる。その人物は女性であり、同学年の女子と比べたら随分小さい。手には扇子を持ち制服ではなく着物を着ている。そして何より目立つのは額に入っているバツマークだ。これは2年、いや全学年が見たことあるマーク。

 

 

 

「我、見参である!! 我の名は九鬼紋白!! 気軽に紋様と呼ぶがいい!!」

 

 

 

 そう、九鬼一族に見られるバツマーク。彼女は九鬼家の次女であり、英雄の妹である。

 

 

 

「大量の人間が現れた瞬間嫌な予感しかしなかったが……」

 

 

「九鬼くんの一族が編入してくるとはねー」

 

 

 

 灯は嫌な予感が当たりゲンナリとした顔をしている。ワン子は自分が苦手としている九鬼英雄の一族が入って来て怯えている。その他多くの生徒が呆れている。それほど派手な登場だった。いや、呆れている中に1人歓喜の声を上げている人物がいた。

 

 

 

「うおおおお!!!!!! 体に電流が走った!! 彼女いや紋様は俺の女神だ!! いや天使だ!! いや神様だ!!」

 

 

「あずみ、黙らせろ」

 

 

「キャルルーン!! 分かりました英雄様!!」

 

 

 

 その人物はあっという間に黙らされた。その騒いだ奴に薬を打ったような気もしたが誰もが見てみないふりをした。

 

 そして紋白のパフォーマンスとも言える自己紹介を終えたあと、もう1人の編入生の紹介に入った。しかしその人物が紹介された瞬間全生徒が呆気にとられた。なぜならば、その人物は生徒たちの年齢に+50歳ほどした年齢だったからだ。

 

 

 

「ヒューム・ヘルシングです。皆さんよろしく」

 

 

 

 挨拶されても納得出来ないものは出来ない。どのような反応をとっていいかわからないのだ。話しが合わないっというかどうコミュニケーションをとっていいかも分からない。

 

 

 

(…………)

 

 

 

 ただその中で灯はヒュームの姿をジッと、この川神市に来て1番真面目な顔をしているかもしれない、そのぐらい真剣にヒューム見ている。

 

 

 

(……ほぉ)

 

 

 

 ヒュームも灯の姿を見つけて思わずニヤけてしまう。面白い奴を見つけた、その感情が隠しきれない。

 

 

 

「あ、それともう1つ」

 

 

 

 自己紹介が一区切りついたところで学長がもう1つ、皆に知らせたいことがあると言い出した。

 

 それは川神学園に教師として全米チャンプのカラカル・ゲイルと、その弟でコンピュータ制作の天才カラカル・ゲイツが来たということ。

 

 その紹介が終わったところで全校集会が終わった。この川神学園で最も濃い学年集会であったことは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は放課後、英雄たちが編入して来た、と言っても普段通りの授業が行われた。

 

 灯は帰りのHRが終わったので、S組に向かおうと席を立ち教室を出、S組の前に到着すると

 

 

 

「通行止めだ、ここは通れないと知りなさい」

 

 

 

 マルギッテが扉の前に立ちふさがった。

 

 この扉を防いでいるのはマルギッテ・エーベルバッハ。クリスと同じドイツからの留学生でクリスの護衛兼お世話役だ。そして現役ドイツ軍、猟犬部隊のリーダーである。勿論戦闘力は高い、が

 

 

 

「んな固いこと言うなよマルギッテ」

 

 

「! 国吉灯!!」

 

 

 

 灯に敗北している。

 

 クリスが灯に負けた次の日、マルギッテが物凄い形相で灯に勝負を挑んできたのだ。流石の灯もこの時は美人とか思う前に驚いていた。その時の表情は殺人鬼のようだったとのこと。これは勝負を断れないと思ったのか、灯も戦闘での勝負を承諾。マルギッテは眼帯を取り、本気を出して挑んだものの、灯の拳の前に沈むことになった。最初はトンファーを用いて、嵐のような勢いで攻撃を仕掛けてきたものの、1発のカウンターを喰らったことで状況は逆転。そのまま拳を腹に3発打ち込まれ決着が付いた。

 

 戦闘後、クリスの詳しい説明が入り突然襲ってくることはなくなったのだが、負けたことが悔しかったのか百代と同じく何度か勝負を吹っかけてる。

 

 

 

「俺は義経ちゃんとか弁慶ちゃんとちょーっと話したいだけだって」

 

 

「その様な野次馬がたくさん来ている。平穏が乱される知りなさい」

 

 

 

 流行り一目近くで見ようと思う人は多い。何せ歴史的英雄のクローンだ。マルギッテも無意味な野次馬がたくさん来ることを嫌ったのだろう。

 

 

 

「どうしても通りたいというのなら……私と勝負しなさい」

 

 

「ほう、ではでは勝負しようか」

 

 

 

 その瞬間灯はマルギッテの背後へと回り込む。そして

 

 

 

「!! な! 何をしている!!」

 

 

 

 その大きな胸を揉みくだいていた。左手は服の上から、右手は服の中から直に触っている。とんでもない早業だ。

 

 

 

「おーやっぱりいいなぁ」

 

 

 

 灯は非常に満足そうに胸を触っている。

 

 

 

「くっ……ぁ」

 

 

 

 マルギッテは力を入れようにも力が入らない。今まで感じたことがない感覚に戸惑っているのだ。

 

 5秒ほど触ったあと、灯は胸から手を離した。今回の目的は義経と弁慶であり、マルギッテではない。

 

 

 

「じゃあな、マルギッテ。今度また遊んでやるよ」

 

 

 

 灯は悠々とS組入っていく。マルギッテはそれを見ることしか出来なかった。セクハラとして訴えればいいのに。

 

 入って義経と弁慶を探す、するとすぐ見つかった。彼女らはほかの人たちと比べてオーラが全然違う、見つけやすいのだ。

 

 

 

「おーい、義経ちゃん」

 

 

「あっ!」

 

 

 

 灯の呼ぶ声に義経が反応する。反応した義経の声はどことなく嬉しそうだ。

 

 

 

「昨日は誘ってくれたのに行けなくて申し訳ない」

 

 

「んなこといちいち気にすんなよ」

 

 

 

 義経は昨日行けなかったことが気にかかっていた、非常に真面目な彼女らしい。

 

 

 

「あ、弁慶と与一を紹介する! おーい、弁慶、与一、こっちに来てくれ」

 

 

 

 弁慶は気だるそうに机から立ち上がり、スーっと向かってきた……与一をアイアンクローで引っ張りながら。

 

 

 

「よろしくな、弁慶ちゃん。俺は国吉灯」

 

 

「ふーん、お前が国吉灯か」

 

 

 

 弁慶が何か見定めるような目で灯を見てきた。

 

 

 

「ん、俺こと知ってるのか?」

 

 

「交流戦が終わって帰ってきた義経から聞いたんだ」

 

 

 

 見定めることを辞めて、弁慶よりも若干身長が高い灯の目を見ながら言う。

 

 

 

「義経ったら国吉くんに打ち上げに誘われたけど行けなかったって、喜んでいながらも落ち込んでいたんだよ」

 

 

「弁慶! それは言わないで欲しかった」

 

 

「ふふ、そん時の義経が可愛くてねー」

 

 

 

 弁慶が義経の頭を幸せそうな顔して撫でる。彼女らがいつもしているコミュニケーションだ。

 

 

 

「これからも義経と仲良くしてやってね」

 

 

「勿論、んで弁慶ちゃん、君とも仲良くしていきたい」

 

 

「何か違和感、私のことは弁慶でいいよ」

 

 

「んじゃそう呼ばしてもらうよ。弁慶」

 

 

「ん、川神水、飲む?」

 

 

 

 スペアの盃に川神水を注ぎ灯に渡してくる。川神水(酒)が大好きな灯が断る理由はない。

 

 

 

「遠慮なく」

 

 

 

 受け取り一気に飲み干す灯。そして

 

 

 

「川神水・竹か、飲みやすいよな」

 

 

「おー川神水の銘柄を当てるとは」

 

 

 

 川神水の銘柄をピタリと当てたことに弁慶は感心した。

 川神水には様々な銘柄があって今日弁慶が持ってきた川神水は川神水・竹。最も川神水としてポピュラーなものであり、値段も手頃で売られている。

 

 

 

「ふふ、国吉とはこれから良い川神水が飲めそうだ」

 

 

「弁慶も義経ちゃんも、灯って呼んでくれ」

 

 

「これからよろしく、灯くん!」

 

 

 

 弁慶は同じ川神水仲間が出来たと思ったのか嬉しそうだ。義経は灯が到着してからずっと嬉しそうな表情をしている。

 

 

 

「貴様どこの機関のものだ」

 

 

 

 アイアンクローの痛みから復活したのか、与一が会話の中に混じってきた。

 

 

 

「機関?」

 

 

「あー与一は中二病なんだ」

 

 

「なるほどな」

 

 

 

 灯は弁慶の超簡潔な説明で充分与一のことが理解出来た。

 

 

 

「俺はどこの機関のものでもないぞ」

 

 

「嘘だな、俺には分かる。何が目的でここに来た」

 

 

「義経ちゃんと弁慶と仲良くなりに」

 

 

「ふ、なるほど。まずは俺に近づく前の身辺調査からか」

 

 

「お前人生楽しそうだな」

 

 

 

 与一が灯に対して無駄に警戒していると

 

 

 

「こーんにちわー」

 

 

 

 ワン子を先頭としての風間ファミリーがS組にやってきた。

 

 

 

「お、灯いたのか!」

 

 

「とするとあの扉の前で赤くなっていたマルギッテは」

 

 

「俺がやった」

 

 

「灯、お前マルさんに何をしたんだ」

 

 

「勝負して勝ったんだ」

 

 

「その勝負の内容を聞いてみたいよ」

 

 

 

 その後は風間ファミリーを合わせて、弁慶、義経たちとの会話が遅くまで続いた。途中で百代が乱入してきて義経に勝負吹っかけてきたり、弁慶と乳比べしたり(灯ご満悦)色々なアクシデントは合ったが。

 




 もっと書き溜めしてから投稿したかったのですが、我慢できずに投稿。作者としては、感想、評価、誤字脱字報告、もっとこのようにしたほうが良いなどの意見等をいただければ幸いです。

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