ダンジョンに器用値極振りがいるのは間違っているだろうか   作:オリver

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色々とテンションおかしいかもです。……いや、今更か。


第十一話

「紅蓮おかえり。飯代はダメだったけど飲み放題無料になったからたくさん頼もうぜ」

 

「こっちまで聞こえてたよ、リベルタありがとう! すみませーん、一番高い酒を……じゃなくて火酒ください!」

 

 注文を取るエルフ―――リュー・リオンさんが死地に赴くような絶望に満ちた顔になったことに気づいて紅蓮が慌てて内容を変更する。

 

「あっ……い、いえ、私のことは気にせず、好きなお酒を頼んでください」

 

「「「リューさん可愛いから無理」」」

 

 極振り三人の気持ちは一つになった。金髪クール系美人エルフを悲しませてはいけない。よーし今日は安酒で盛り上がろうぜ!

 

 褒められ慣れていないのか、お礼を言いつつも耳まで真っ赤にして戻っていったリューさんを見送る。

 

「……あれ、僕たち煮魚なんて頼んでたっけ」

 

「ん、これ? ベルのだよ」

 

「お前当たり前のようにかっぱらってきて……」

 

可哀想にベルの奴。今頃無くなった料理を悲しんでいるに違いない、そう思ってあいつの方を見ると……明らかに容量以上の料理が並べられていた。あれ絶対に頼んでない品ドンドン追加されてるよね……後で俺もつまみ貰いに行こう。

 

 

 リューさんが持ってきた火酒を呷るように飲む紅蓮を見て、俺は一抹の不安を覚える。

 

 

「なあセシル。紅蓮って酔うとヤバい?」

 

「大丈夫。近づかなきゃ。酒乱じゃないけど、注意力と制御が散漫になる」

 

 あ、だから俺は向かいの席なのね。振り回した腕とか当たったらきっと危ないからなんだな。よく見たら速たんと魔女りん用の席もめっちゃこっち側に置いてあるし。

 

 

 やっぱ力極振りって大変だなー、なんて他人事のように思いつつ酒をチビチビ飲んでいると―――店の空気が急に変わった。みんなの視線を追い、俺は何事かと店の入り口を見やる。 

 

「邪魔するでーミア母ちゃん!」

 

 糸目の神の後ろに『道化師』のエンブレムを服につけた団員達が続き店へと入る。

 

 ロキファミリアの来店。有名どころの一級冒険者を中心とした団体は予約を入れていたのか、周囲のざわつきをよそに、主神ロキがテンション高めで店主に挨拶をしつつ大テーブルの一席にドカっと腰を下ろす。

 

 アイズ・ヴァレンシュタインも集団の中にいたが、話しかけられる雰囲気でもなかったのでスルーを決め込む。相手もこっちに気づいてないみたいだし。後で話せる機会があったら今朝のお礼すればいいさ。

 

 ちなみに紅蓮は特に気にすることも無く、近くを通りかかった褐色肌の活発そうな女の子の腕を掴み「大切断これでもくらえー!」と火酒を押しつけ始めた。「げっあの時の……!?」と目を見開いた女の子に対し俺が適当にコールを送ると、一瞬の躊躇も無く一息に飲み干してくれた。ノリがいいじゃねぇか。

 

「辛ぁ!! もう一杯!」

 

「そういう奴嫌いじゃないぜ……! こっちで一緒に飲も!」

 

「さあカンパーイ!」

 

「「いえー!! カンパーイ!」」

 

「ティオナさんどこで飲んでいるんですか!?」

 

 後ろで髪を束ねたエルフの女の子が驚愕しているが、知った凝っちゃ無い。ちなみにセシルはロキファミリアの団長―――確かフィン・ディムナって名前のパルゥムの元へジョッキ片手に「勇者さんちっすちっす」と挨拶に行っていた。どうでもいいけど極振りってみんな馴れ馴れしいね、俺も含めて。

 

「あたしの団長に近づかないでよ!」

 

「前も言ったけど僕男だってば」

 

「それでも万が一があるでしょ!」

 

「ティオネは一体何を危惧しているのかな……?」

 

 頬を軽く引きつらせたフィン・ディムナはセシルを雑に扱うこと無く話始める。あれ、やっぱりセシルに気があるんじゃねぇ? と考えていたらめっちゃ睨まれた。一級冒険者は勘もいいのかしら。

 

 目を付けられても困るので視線を戻すと、アイズ氏とちょうど目が合う。

 

「……あれ、君は」

 

「あ、どうも。今朝は助けて頂きありがとうございました」

 

「ううん。危険な目に遭わせちゃったから、むしろ謝らなきゃ……もう一人の子は?」

 

「ああ、ベルは―――」

 

「あってめぇ、あん時のトマト野郎じゃねぇか!」

 

 誰だてめぇ。

 アイズ氏がいるからベルを呼んでやろうと思ったが、なんか面倒くさい奴が来たせいで呼ぶに呼べない。そっとベルの様子を伺うと、チラチラこっちを見つつも入るタイミングを逃したようでおろおろしている。とりあえず来るな、と視線を送る。

 

「うん? トマト野郎って何のことやベート」

 

「俺達が逃がしたミノタウロスが嘘みてぇに上層へ登って行ってよ! 運悪く襲われてたこいつをアイズが助けたはいいがミノの返り血で真っ赤に染まってな、傑作だったぜ! なあアイズ、あれわざとやったんだよな? 頼むからそう言ってくれ……!」

 

「……わざとじゃない。ごめんね、嫌な思いさせちゃって……ベート、あっち行って」

 

 アイズさんがいる手前、俺もこいつに言い返しづらい。アイズさんに「気にしてない」と返事を返すが、狼人はさらに調子に乗って俺を罵倒してくる。やれ「駆けだしは身の程を―――」だの「雑魚はアイズに近づくな―――」だの。……そろそろ我慢の限界近いんだけど。感情を誤魔化すために、紅蓮の頼んでいた火酒をぐいっと一気飲みする。……あれ、この酒けっこう度が強いな。

 

「なあアイズ! こんな弱っちい奴と俺、(つがい)にすんならどっちを選ぶ? 当然俺だよな!」

 

 狼人の罵倒に青筋を立てつつ聞いていると、いつの間にか告白へと変わっていた。どういうことばってばよ。

 いや、たぶん本人はめっちゃ軽い気持ちで聞いてるけどね。「こいつよりは俺の方がいいよな?」くらいの。でも内容は結婚まで視野に入れちゃってる。チグハグだな。

 

 そもそもアイズさんは何回も話を止めようとしてたのに全然聞いて貰えなかったから今絶対不機嫌だよ? お前への心証最悪だよ? よくその流れに持っていくね。馬鹿なの? 死ぬよ?(確信)

 

「……私は、そんなこと言うベートさんとだけは、嫌です」

 

 ほおら言わんこっちゃねぇ! ドン引きされてんじゃねぇかざまああああ!!

 

 さあ反撃返しだ! いい加減我慢ならなかったところだしな!

 頭の中で勝利の旗を掲げつつ、呆然とするベートを尻目に俺は後ろを向き、紅蓮とセシルに目配せする。

 

「おい聞いたかよ! この狼野郎、告白紛いなことして玉砕した挙げ句嫌われてやがんぜ!」

 

「何だって!? それはめでたい!」

 

「これは飲まざるを得ない」

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

 俺はジョッキをとかざし、イエー! と小走りで周りの冒険者達のジョッキへ打ち付けていく。意外にもロキファミリアの、おそらく幹部クラスの奴らが思いっきりノってくれた。ティオナって呼ばれてたあのアマゾネスが特にめっちゃ楽しそう。

 

 ひとしきり駆け回ったところで、俺は狼人へと目を向ける。羞恥と怒りで顔が真っ赤だ。そろそろ煽り止めないと報復がヤバい気もするけど、もう一言だけ言いたいことできたので口を開く。

 

「そんな赤い顔してどうしたトマト野郎」

 

「ぶっ殺す」

 

 かくして、雑魚()負け犬(ベート)の醜い小競り合いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣いて謝るなら今のうちだぞてめぇ! 調子に乗りやがって!」

 

「お前こそフラれたんなら負け犬らしく尻尾垂れて店の角で三角座りしながらのの字でも書いてろバーカ!」

 

 なんだこの低レベルな争いは。

 ロキファミリア団長フィン・ディムナは、隣で頭痛を堪えるように額を押さえるハイエルフ、リヴェリア・リヨス・アールヴの言葉に苦笑いを浮かべる。

 

 喧嘩の原因を作ったのは、駆け出し冒険者を馬鹿にしたベートだ。元はと言えば自分たちの不手際で逃がしたミノタウロスに襲われた被害者を鼻で笑うなど、無礼極まりない行為。団長として代わりに謝ろうと席を立とうとしたフィンは、駆け出し冒険者の方が逆にベートに煽り返した様子を見て再び腰を下ろした。無論、おもしろそうな予感を感じ取ったからである。

 

「……と、止めなくてもいいんですか? へたしたら……」

 

「大丈夫だよレフィーヤ。いくらベートでも半殺し以上にはしないさ」

 

「大前提が間違ってますよ!?」

 

「本当にマズいと思ったら止めるさ。駆け出し君にも後で僕から謝る。そもそも今は対等な喧嘩をしているんだから、止めるのは無粋じゃないかな?」

 

 言っていることは正論っぽいのに、明らかに隠し切れていない口元の笑みがレフィーヤの不安を駆り立てる。ギャイギャイ言い争うベートと見知らぬ冒険者をハラハラと見つめる彼女に、ファミリアの古参であるガレス・ランドロックが声をかける。

 

「いいのぉ血気盛んで! あの新米も相手が一級冒険者(ベート)だと知ってあの啖呵か! こりゃあ将来が楽しみじゃわい!」

 

「その将来拝む前にここで潰されそうですけど!? しかもあれどう見ても酔った勢いですって!」

 

「私は止めるべきだと思うな」

 

「リヴェリア様……!」

 

「聞いてみろ口論の内容を。明らかに罵倒の質が駆け出しの方が高い。このままじゃベートは言い負けて必ず手を出すぞ」

 

 レフィーヤの中でベートの株が大暴落した。

 

 ブチ切れて殴りかかる様を容易に想像できてしまったレフィーヤは、ベートを止められそうな前衛職に助けを求めるように辺りを見回す。

 

「団長が大丈夫って言うなら大丈夫よ」

 

 ダメだ、ティオネさんは盲目だ。フィンさんが動かないなら絶対に動いてくれない。

「がんばれー駆け出し君!」

 

 ダメだ、ティオナさんは紅い髪の女の人と肩組んで一緒に面白がってる。なんでか途中からティオナさんが肩を押さえて蹲ったが、そんなこと気にしている場合じゃ無い。

 

「えっなんで自分を見るんすかレフィーヤ! 無理! あれを止めるのは無理っす!」

 

 ダメだ、ラウルはヘタレだ。

 

「男の娘キター!! おいでおいで、膝の上来ぃや! うん? 体に何巻いて……ダイナマイト!?」

 

 ダメだ、ロキは変態だ。大体あんな可愛い子が危険爆発物なんて持ってるわけないのに、うちの主神はもう酔っているのだろうか。というかそもそも戦闘能力無いから止めるのは無理だった。

 

 周りに碌な奴がいないことに悲観するレフィーヤは、最後の希望であるアイズに目を向ける。

 

「……ごめんね、あの時怖い思いさせちゃって」

 

「い、いえっ!? む、むしろお礼も言わないで逃げてしまってすみませんでしたっ! あの時は本当にありがとうございました!」

 

 ……誰ですかそのヒューマン!?

 

 レフィーヤの『アイズさんに寄ってくる悪い虫センサー』が危険度Sを示す。今すぐ駆け寄ってあのヒューマンを振り払いところだが喧嘩の行方も気になる。やきもきとしつつ迷って両方に視線を行き来させているうちに、ベートが駆け出し冒険者―――リベルタ・エーアストに掴み掛かった。

 

 

―――だが、リベルタは体を捻ってその腕を躱した。

 

「……あ?」

 

 何も掴んでいない手のヒラを開閉し、驚いたように見やるベート。周りの冒険者達がその間抜けな姿に笑いを堪える中―――レフィーヤを始め、実力のある上級冒険者達は驚愕していた。

 一級冒険者であるベートの動きは無駄が無く、速い。これだけ至近距離で、まぐれだとしても新米冒険者がそうそう躱せるものじゃない。

 

 我に返ったベートは、二度、三度と掴み掛かろうとするが、全て空を切る。

 

「……一体何が?」

 

「レフィーヤ、彼の動きをもう一度よく見てみろ」

 

 リヴェリアに指摘されて、気づく。ベートが動き出す寸前、リベルタは体を倒して重心の位置を変えている。だからあんなにも早い段階から回避行動に移ることができているのだ。だがそれはベートの動きを予測できている、ということ。

 

 何故、と疑問に思うレフィーヤに、フィンが答える。

 

「見ている位置はベートの視線、表情、体重移動ってとこかな。全てを加味して、行動を読んでいるんだろうね。……あの二人と一緒にいるからもしや、とは思ったけど、やっぱり普通じゃ無かったか」

 

 親指を押さえ、フィンは紅蓮とセシルに目を向けつつ、楽しげに呟く。

 

 つい先日行われたばかりのロキファミリアの遠征。幹部が先行し、深層へと向かう途中、彼らと出会った。

 

『階層ぶち抜いてここまで降りてきた』

 

 そんなことをのたまいつつ敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げる(比喩では無い)パーティリーダーの紅い髪の女性を始め、

 

 あらゆる攻撃を物ともせず、モンスターに飲み込まれて中で爆発する飯テロを披露したハーフパルゥム。

 

 目にも止まらぬ速さで疾走し、嘆きながら体に血肉(トラップアイテム)を巻き付け、モンスターを大量に引きつける囮兼回避盾の狼犬人。

 

 何やら頭のおかしい詠唱をしつつ結局全て暴発し周りのモンスターを巻き込む幼いエルフ。

 

 たった四人で下層まで降りてきていたことにも驚いたが、そんな些細なことに突っ込んでいられないくらい全員がぶっ飛んだ奴らだった。

 

「そして、駆け出しでベートの攻撃を避けられる人間……か」

 

 彼らは一体何者なんだろうか。興味は尽きないが、質問をしても前のようにはぐらかされるだけだろう。

 

 肩を竦めつつフィンは、とりあえずこの喧嘩の行方を見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この!」

 

「おうっ!?」

 

 業を煮やしたベートが殴りかかった瞬間、俺は真後ろへと体重を完全に預け倒れることで間一髪避ける。倒れる途中で体を半ば無理矢理捻り、近くのテーブルに置いてあった水を手に取り、当たらないとは思いつつベートに投擲。地面に勢いよく手を突き、斜め後ろに回転しつつ跳ね上がって起き上がり、体勢を整え、構えた。

 

「てめぇは一体……」

 

 今の一撃こそは当たると思っていたのか、それとも俺の動きに思うところがあったのか、ベートの顔つきが変わる。今までは俺が駆け出しなことを考慮してか力をセーブしていたのだろうが、そろそろ本気を出してくる可能性もある。当たったら即死攻撃はやめてくれマジで。

 何か打開策は無いものか。具体的には戦闘じゃ無くて、ゲームっぽいもので勝負できるといいんだが。

 

 キョロ、と見渡す。盛り上がる店内。席から離れ、楽しげに遠巻きに酒を飲む冒険者。「物は壊すなよ?」と言わんばかりにこちらを威圧する女店主。視界の先でこそこそ動く、銀髪の女店員……シル・フローヴァ。

 

 何事かと思って視線を向けると、何かを期待するような表情を見せてきた。少し考え、彼女の思惑を理解した俺はアイコンタクトを取り、台詞を紡ぐ。

 

「店員さん、あれをくれ!」

 

「はい、あれですね!」

 

 すぐさま駆け寄ってきたシルが手渡してきたもの。それは真っ赤でドロリとした液体―――

 

『と、トマトジュース!?』

 

 あれで一体何をするつもりだ、と驚愕する客どもをよそに、俺はシルに向けて口角を吊り上げる。

 

「おじちゃん今度お小遣いあげるわ」

 

「ふふっ期待してます」

 

 

 汚したら後で掃除するから、と一応言い残してから拳をコツンとぶつけ合い、俺は戦いへと向かう。

 

「おいベート! 先にトマトジュースぶっかけた方が勝ちな!」

 

「ッ上等だ受けて立ってやる! おい、俺にも寄越せ!」

 

「一万ヴァリスです」

 

「えっ……いや待て持って帰んじゃねぇ! それでいいから!」

 

 一瞬躊躇したベートは歯を食いしばり、シルからひったくるようにトマトジュースを受け取る。

 客の冒険者達は「いいぞやっちまえ!」と煽り立てるように激を飛ばしてくる。いいねぇ、盛り上がってきた……!

 面白そうに見ていた紅蓮、セシルが手を上げる。

 

「リベルタが勝つ方に一万ヴァリス!」

 

「僕は二万」

 

「なんやおもろいことになってんなぁ! ベートが勝つに二万五千ヴァリス!」

 

「何勝手に賭けてんだよロキ!」

 

「駆け出し君に三万!」

 

「馬鹿ゾネス、せめて俺に賭けろよ!?」

 

「……第三者がベートにぶちまける、に十万」

 

「アイズなんでお前もジュース持ってんだよ!? それをどうする気だ!」

 

 あちらさんが身内で盛り上がってる間に視線をベルへと飛ばす。ベルは俺を指さし、財布を取り出して、差し出す素振りを見せる。なるほど『リベルタが勝つ方に全財産』ね。分かっているじゃねぇか。

 

「余所見してんじゃねぇ!」

 

 声が聞こえた瞬間に、近くに置いて食べ終えの大皿を持ち盾にする。なんだよ全部ぶちまけて来いよ、そしたら有利になんのに。

 

少量の液体を全て受け止め、こちらも反撃に出る。

 

「うおお! これでも食らえーと見せかけてフェイントフェイントフェイントぉ!」

 

「うおっあぶ、うおっとと……うぜぇぇぇ!!」

 

 振りかぶっては手首をうまく使いジュースを零さないようにしつつ、ぶちまけるフリだけして煽る。器用値の無駄遣い、ここに極まれり。

 

 第一級冒険者だろうと、テーブルや椅子がひしめく店内では敏捷値も力値もそれほど発揮はできないだろう。器用値だけなら俺の方が有利なはず。この勝負、絶対勝ってやるぜ!

 

「―――この野郎っ!」

 

「ちょっ殴んのは卑怯だろ!」

 

「こんくらいならどうせ避けるだろ! これはただの牽制だ!」

 

「汚え! それが一級冒険者のやることかよ!」

 

「タバスコの栓緩めて投げつけてくるてめぇに言われたくねぇよ!」

 

 互いに罵倒し合いつつ、隙を伺う。すれ違った瞬間、ベートの死角になる位置で俺は上にトマトジュースのコップを投擲した。

 

 相手はその事実に気が付いていない。後は上手く誘導して、ベートがコップの真下に来るように位置を調節すればいい。

 

 そう思って振り向き、ベートの攻撃に備えようとして―――世界が回り、よろめく。

 ……あれ、俺もしかして酔ってる?

 

「ちょ、ま―――」

 

 ベートが俺の方をよく見ないまま振り向きざまに裏拳を繰り出してくるが、体勢が崩れて避けられない。これ当たったらヤバいって絶対……!

 

 ふと、視界にフィンさんが目に入った。フィンさんは立ち上がろうとして―――ふと、何かに気が付いた表情で結局座った。いやいや助けてよ!? と加速した思考の中で叫ぶ。無論届かない。

 

 

 どうか死にませんように……と祈りつつ、自分の現状に絶望する中。

 

「リベルタ、これ貸しね!」

 

 後方やや下辺りから声が聞こえてきてすぐに、滑り込んできた何かに思いっきり足を払われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、まずい。リベルタあれ絶対酔い始めてる。ほんのり赤ら顔だし、声も少しいつもより大きい。

 

 リベルタはそこまでお酒に強い方じゃ無い。動き回ってる間にさらに酔いが回ってベートさんの攻撃が当たったら、紙耐久のリベルタじゃ大怪我するかもしれない。

 

 周りの冒険者達が盛り上がる中、僕はそっと席を立つ。近くに居たヴァレンシュタインさんが首を傾げたので会釈をしつつ場所を移動し、クラウチングスタートポーズをとった。

 

「(―――今!)」

 

 リベルタの足がもつれた直後、低い体勢のまま疾駆。

 

「リベルタ、これ貸しね!」

 

 ヘッドスライディングでリベルタの足を掴み、前に押し出すように持ち上げる。

 

「うおおお!? ベルッ!?」

 

 リベルタの体が勢いよく後ろへと倒れる。ベートさんの拳がリベルタの目先を通過するのを下から見上げつつ確認し、ほっと安心していると―――パシャ、と水気を含んだ音がベートさんの方から聞こえてきた。

 

 見ると、リベルタがさっき上に投げたコップがベートさんの頭に命中していた。唐突な衝撃と冷たさに驚いたのかベートさんは手に持っていたコップを滑り落とし、僕と、上に折り重なっていたリベルタに中身が降り注いだ。

 

 

 

「「「あ」」」

 

 

 

 

 




結果:相打ち?


リベルタ君を誰で助けようか迷った。

①紅蓮がセシルをベートに投げつける。
②遅れて来店した速たんが救出。
③普通にフィンさん。

 でも、やっぱ一番付き合いの長いベル君が酔ってるのに気づくかなーと思ってこうした。
 ……あっ速たんと魔女りんまた出し損ねた。

 設定甘かったりちゃんと書いていないところが多いので、分からんことあったらなんでも聞いてください。

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