ダンジョンに器用値極振りがいるのは間違っているだろうか   作:オリver

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 リベルタ君の事例から何となく察していたけど力子の名前が感想欄で全く浸透してねぇ! 名前に悩んだ時間返せい!

 なんてことは置いておいて。【無限収納】に関してですが液体NGな説明なのにポーションいいの? とのご指摘を頂きました、ありがとうございます。入れ物入ってるから固体だと勘違いしてた……中身もろ液体やん。
 
 【無限収納】(アイテムボックス)
・三秒以上触れた物質を、念じることで収納空間に送ることができる。
・同じく念じることでいつでも取り出すことが可能。
・触れる箇所が固体である必要がある。また、生命体は収納できない。

 固体のみに適応される→触れる箇所が固体である必要がある


 に変更しました。



第九話

ベル・クラネル

Lv.1 

 

力:I=82→H=160

耐久:I=13→I=35

器用:H=103→F=337

敏捷:H=172→G=215

魔力:I=0

 

スキル

 

 

 

 

 

 

 

「じ、上昇トータル370オーバー!? な、ななな、なんでこんなに伸びて……どうしたんですか神様?」

 

「知るもんかっ!」

 

 ぷいっと顔を背け、不貞腐れたように頬を膨らませるヘスティアに、ベルは首をかしげる。

 憧憬一途はアイズへの尊敬、ないしは恋慕の表れでもある。これだけアビリティが伸びるということはその想いが強いというわけで、ベルのことが大好きなヘスティアからしてみれば面白くないだろう。

 

 ベルは再び羊皮紙に目線を落として、次いで俺を見る。

 

「もの凄くリベってるんだけど、何でか知らない?」

 

「人の名前で造語作るんじゃねぇ」

 

 ベルの中では『器用値が伸びる=リベルタ』の方程式が完成しているらしい。

 

 スキルのことは言えないから「成長期じゃね?」と物凄く適当な理由を述べたのにベルは納得していた。感づくことはなさそうだなこりゃ。

 

 にしても……俺の成長に引っ張られてるなぁ。器用値の伸びがすごい。他のアビリティも物凄く伸びているから俺とは根本的に違うが。

 

 少しして拗ねたヘスティアが涙目でホームを出て行こうとしたので、「ちと待ってて」とベルに言い残して後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅーベル君の浮気者ー……そんなにヴァレン某がいいのかい!」

 

「ヘスティア、ベルってああ見えて結構モテるから急いだ方がいいぜ。この前も―――あ、こんな話してないでスキルの考察しなきゃな」

 

「待ってリベルタ君!? ボクはそっちの話の方がすごく気になるんだけど!?」

 

 必死な表情で俺の胸ぐらを掴んで揺するヘスティア。ちょ、やめて酔っちゃうでしょ。ちょっとからかっただけだって。天然ジゴロなのは事実だけど。

 

「全体的な異常成長は【憧憬一途】の効果だろうけど、器用値と……たぶん力値も【共闘希求】に影響されているな」

 

「? 確かに力値はよく伸びているけど……誰か他の人とパーティを組んだのかい?」

 

「おお、力極振りと一緒にな」

 

「極振りは他にもいたのかい!?」

 

 あれ、存在についてヘスティアに話してなかったっけか。俺を含めると基本アビリティ全員いるんだぜ、と伝えると何故か頭痛を堪えるような顔になった。

 

「ベル君もリベルタ君もその周りも……普通がいなさすぎる」

 

「何言ってんだ、俺とか超常識人だろ」

 

「その自信はどこから来るんだい」

 

「え?」

 

「え?」

 

 マジかよ、俺くらい普通な一般人とかいなくね? まあちょっとだけ考え方とかズレてるかもだけど。うんうん、ちょっとだけ。

 

「で、俺としては【共闘希求】でベルも極振りの仲間入りかなーなんて期待しちゃってたんだけどさ、実際はそうでも無かったな。プラスの面にだけ効果がかかるんかね」

 

「他者の成長に影響されるってそもそも説明があやふやだからねぇ。そのままのステイタスじゃなくて、ベル君がどこに着目するか、でも変わってくるんじゃ無いかな」

 

 なるほど。例えばベルが「器用値極振りとかありえないんだけどwww ステイタスほとんどゴミだし全然戦えないよねプゲラ」とか思っていたら成長率が悪くなり、逆に器用値の良さに重きが置かれているのなら器用値の伸びが良くなる。こんなところか。

 

 器用値に比べて力値の伸びが下回っているのは、ベルが紅蓮に対して『共に戦いたい』と思う感情が低かったからだろうか。いやむしろドン引きしてたしビビってたのによく一緒に戦いたい気持ちが少しでも湧くな。あれか、力子美人だからか。節操ねぇなベル。

 

 さて、なんとなくスキルについて分かってすっきりしたし、そろそろ行くか。

 

「じゃあなヘスティア。ベルと美味いもん食ってくる」

 

「……えっちょっと待って。ここはボクを追いかけてきてくれた流れで一緒にご飯に行くんじゃないのかい!? やだよー1人寂しいよー!」

 

「啖呵切って出ていったのお前だろうに。ベルと気まずくないなら着いてきてもいいけど」

 

「リベルタ君の意地悪!」

 

「お土産包んで貰うから」

 

「ごめんどうかしてた」

 

 手のひら返しの速さに定評があるヘスティアの機嫌も取れたところで、さて豊穣の女主人に向かいますかね。あいつらと飲むの楽しみだなーと思いつつ、ベルを呼びに教会へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店に入ると盛況なようで、多くの席が埋まっていた。店内の雰囲気は悪くない。テーブル上に置かれた料理はどれも美味しそうで、見ているだけで空きっ腹に響く。

 

「リベルタ、紅蓮さんはどこ?」

 

「確か奥の方にいるって言ってたな。それにしても、お前は同席しなくてもいいの? あいつ残念がってたけど」

 

「うん。折角極振りだけで集まるんだから楽しんで来なよ」

 

 どうやら気を遣わせてしまったらしい。ベルも他の極振りがどんな奴なのか気になるようでキョロキョロを店内を見回すが、今朝の強かな店員―――シル・フローヴァに声をかけられ、カウンター席へと移動していった。……まあ、多少ぼったくられるくらいならベルの勉強にもなるだろう。美少女が声かけてきたら詐欺を疑うようになって欲しい。

 

「技之助―こっちこっち!」

 

 心の中でベルをドナドナされる子牛と重ね合わせていると、ひらひらと冒険者達の隙間から手を振る紅蓮を発見。その隣には幼い見た目のジト目な女の子が座ってエールを飲んでいた。酒飲んでいるからパルゥムか? 女の子ってことは魔女りんか。

 

「よう力子。ファミリアの仕事は終わったのか?」

 

「ロキファミリアが武器の製造、修理を一気に依頼してきたらしいからね。もちろん終わってないよ!」

 

 堂々とサボり宣言すんじゃねぇ。

 紅蓮とのダンジョントライ後。所属するファミリアの方で依頼が急に立て込んだらしく、慌ただしく帰っていった。飲み会にもファミリアメンバーの反対を押しきりかなり強行突破してきたらしい。

 

 出会った記念として今夜極振り全員で集まって飲み会をすることになったが、忙しい中悪いな。主に力子のファミリアの人達。

 あと備品何回も壊したここでもう一回飲む辺り、紅蓮は度胸が据わっているのか馬鹿なのか。ほら、女主人がこっち睨み付けてるけどいいの?

 

 座って座って、と促されるままに腰をかける勧められた席は何故か隣では無く向かい側だ。

 

「じゃあ、自己紹介にしよっか。残り二人はちょっと遅れてくるから先に始めちゃおう」

 

 パン、と紅蓮が柏手を打つ。軽く咳払いをし、はきはきと話し始める。

 

「一応改めて。私は力子こと紅蓮・アルバ。所属はゴブニュファミリアで、インゴット作るお手伝いをしながら冒険者やってるんだ。これからよろしくね!」

 

「守備男ことセシル・ウィルシュバリエ。ハーフパルゥム。ミアハファミリアで偶に店番しつつ冒険者やってる」

 

「えっ待ってお前守備男? マジで?」

 

 目の前に座っている可愛らしい可憐な女の子が? 守備男とか「我こそは騎士である。ムキッ」みたいな奴かと思っていたのに。いやいや、この子が男なはずが無い。中性的とか通り越して女顔じゃねぇか。

 

「信じられるか! 証拠見せろ証拠!」

 

「いいゲス顔。紅蓮の時と並ぶ」

 

「なんでそんな変態臭い反応したんだよ力子」

 

「いやぁ使命感に駆られて。ていうかそれ自分へのブーメランだからね」

 

 どうやら証拠云々のくだりは極振り全員がやっているらしい。そして実際に脱ごうとすると慌てて止めようとするところまでが一つの流れなんだとか。俺も全力で止めた。だって夢が崩れるじゃん。

 

「俺は技之助ことリベルタ・エーアスト。ヘスティアファミリアで副業特になし」

 

「へぇ、ヘスティア……唯一のお得意様のファミリアとか胸熱」

 

 神ミアハとヘスティアはずっと前から親交があるようで、俺とベルもいつもミアハファミリアからポーションの類いを買っている。お得意様、と言ってもポーションなんて二週間に一回くらいしか買わないから、偶々タイミングが悪く守備男と会えなかったみたいだ。

 

「二人ともいい? 乾杯の音頭だけ執っときたいんだけど」

 

「ああ、悪い紅蓮。かまわ―――」

 

「今日出会えたことに乾杯!」

 

「許可求めたんなら最後まで聞けよ」

 

 景気良く振り上げられた紅蓮のジョッキに、俺とセシルは自分達のをぶつける。彼女からぶつけてこないのは力が加減できないことを考慮しているからだろう。

 

 ぐいっと豪快に飲む紅蓮を余所に、セシルは彼女のジョッキが元々置いてあった場所に手をそっと伏せる。

 

「ぷはー、やっぱ疲れた後のエールは最高!」

 

 なんとも親父臭い言葉と共に―――ジョッキがとんでもない威力を纏ってセシルの手の位置に振り下ろされた。

 

 ドグゥッ!! と決して人体から鳴ってはいけないような鈍い音。だがセシルは眉一つ動かさない。流石守備男。俺だったらひしゃげてるわ。

 

「あっごめんセシル」

 

「何を今更」

 

「お前らそれ日常茶飯事なの?」

 

 そしてセシルの手を一切心配しない辺りすげぇ。実際赤くなってすらいないけど、あれそのまんま振り下ろされたらジョッキかテーブルどっちかは破損するレベルだぞ。壊れるのを防ぐ目的でセシルもクッションとして自分の手を使ったのだろうし。

 

 改めて極振りたちの異常さを目の当たりにして、どこか心が弾む。やべぇ早く残り二人にも会いてえ。

 

「速たんと魔女りんは用事?」

 

「魔女りんは放浪癖がある。だから連絡が届いてない」

 

「どっかでまた食べ歩いてるのかもねー。速たんが今探してくれてるよ」

 

 セシルに付け加える形で紅蓮が補足する。速たん苦労人の予感。

 

「いっつも四人全員でダンジョン行ってんの?」

 

「ファミリアが違うし都合が合わないこともあるから、基本潜れるメンバーで適当に集まってるよ。技之助も行こ!」

 

「今ベルと組んでるから、たまにならお邪魔させてもらうわ。できりゃ守備男がいるときがいいな。安心できる」

 

「護りは任せて」

 

ぐっと親指を立ててエールを飲むセシルはなんというか、小さな女の子が背伸びをしているようにしか見えない。つまり可愛い。俺性別って些細な問題だと思うんだよね!

 

「セシルいると心強いよ! 思いっきり戦えるし」

 

「思いっきり投げ飛ばすの間違いじゃない? 武器壊れたときとか」

 

「力子てめぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「なんだろう、怒られる理由はあるのになんでか理不尽に感じる……?」

 

 首を傾げた力子はどこか釈然としない顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅蓮が席を立ち、ベルの方へ絡みに行った。ベルは紅蓮に対して若干苦手意識があるようだが、見ている限り楽しそうに話している。

 

 俺はというと、まだ残り二人が来てないのでセシルとさし飲みだ。

 

「へぇ、生産系のスキル出てないんだ。極振りは経験が反映されやすい。だから今度うちのファミリアに手伝いに来なよ」

 

「お前ちゃっかりしてるな」

 

 一見俺のために言っているように見えて、実はほとんど打算だ。雑用押し付けるつもりに違いない。だって口をつり上げた悪い笑み浮かべてるもの。

 

「しかし耐久か。絶対死ななそうだよなー、羨ましい」

 

「それ隣の芝生。僕は器用の方が欲しい。便利そう」

 

「そういうもんか。ちなみに今、レベル換算でどれくらい?」

 

 そう言って俺は右手をパーにし、左手の人差し指を一本添える。信じるやつなんていないとは思うが、周りに人が多いし念のため口に出さない。

 

 セシルは両手を開き、一回右手を閉じて指を二本示す。12相当か。出遅れてるなぁ俺。

 

「耐久ってことは、あんまり自分から攻撃はしないのか?」

 

「いや、そうでもない」

 

「どうやって戦うの?」

 

「まず、モンスターの群れの真ん中に突進する」

 

「字面だけ見るとやべぇな。それで?」

 

「体に巻き付けたダイナマイトを着火する」

 

「お前頭おかしいんじゃねぇの」

 

 紅蓮にも言えるけど、やっぱ極振りって異常なんじゃないかと思う。普通自分へのダメージゼロだとしても自爆攻撃は思いつかないと思うんだ。

 

「あと、でかい敵には腹パンとか」

 

「……殴るって事か?」

 

「わざと食べられて中で爆発する」

 

 それ腹パァン。いやいや意味合い違いすぎるから。

 

 神経麻痺してんじゃないか守備男。試しに目の前で猫騙しをするが、目を瞑らない。指二本で目つぶしを寸止めするが、やっぱり瞬き一つしない。攻撃を食らっても大丈夫だという絶対的な自信の表れなのか、不動のまま。むぅ、なんだか負けた気分だ。

 

 癪だったので、拳の寸止めをやろうと思いっきり振りかぶったところで……ふと、手首に違和感を感じた。具体的には細い指先が肉に食い込むような。

 

「不届き者が」

 

「へべしぶっ!?」

 

 金髪でややつり目の美しいエルフさんを視界に捉えた瞬間、頬をぶん殴られて錐揉みしながらぶっ飛んだ。……レベル4相当……だと? なんでこんな奴が店員やってんだよぅ……

 

 そしてエルフさんの方もなんでか目を見開いていた。あれか、思ったより俺が脆かったからか。耐久値は駆けだし以下だしね。

 

「技之助、ポーションいる?」

 

「腫れてきた。くれくれ」

 

「一万ヴァリスね」

 

「お前鬼かよ」

 

 足下見て来やがった。

 

「……え?」

 

 暴力を振るおうとした糞野郎からいたいけな少女を守ったつもりだったエルフさんは、全然険悪では無い俺達の会話を聞いて困惑し、次いで顔色を悪くする。勘違いだって気づいたか。全く非道い話だ。これは一言言わせて貰わないと。

 

「飲み代タダにして」

 

「技之助グッジョブ」

 

 最高にいい笑顔で親指を立てるセシルと、女店主に怒鳴られるエルフさんの悲壮感に満ちた顔がすごく対照的だった。

 

 




原作ベル君のこの時期の成長

ベル・クラネル
Lv.1 
 
力:I=82→H=120
耐久:I=13→I=42
器用:I=96→H=139
敏捷:H=172→G=225
魔力:I=0

「上昇トータル160オーバー!?」



この作品のベル君

ベル・クラネル
Lv.1 
 
力:I=82→H=160
耐久:I=13→I=35
器用:H=103→F=337
敏捷:H=172→G=215
魔力:I=0

「上昇トータル370オーバー!?」

 主に器用値のせい。

 耐久と敏捷の伸びやや減少させて、力と器用を伸ばしました。最初っから器用が少し高いのは技之助の影響。


 

 守備男出せましたが、やっぱ一緒にダンジョン行った力子よりインパクト少なかったなーと見直して思う。実際にでかいモンスターの体パァンさせたらまたベル君ドン引きでしょうが。

 そしてまだ出せなかった速たんと魔女りん。次回……も出せたとしても少しだけかなぁ。

 次話ですが、明日から教育実習が始まるので(今日は文化祭の代休)またしばらく更新できません。パソコンに向き合ってても授業の指導案書いていると思う。


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