お嬢様の練習戦争《ぷらくてぃすうぉーず》   作:汐留 夏華

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1ターン目 崩壊する日常

それは、ごくごく普通で何でもないようなある日の事だった。

聞えてくるのは爆発音と発砲音。

その殺伐としたBGMの中、城の中を全力疾走している一人の少女がいた。

彼女の名は、レナ。レナ・グランド―。ここいら一帯を統治している王国の一人娘だ。

 

「....お父様ッ!」

 

レナが扉を勢いよく開けて入ってきたのはレナの父、ゴルドの部屋だった。

そこにいたゴルドは、既に息をしていなかった。

 

「う、嘘....!?」

 

レナは、父親の無残な姿を見て、膝から崩れ落ちた。

地についた手の甲には、ぽたぽたと涙があふれていた。

 

「...お嬢様!!」

 

声が聞こえる。この声は...

はっきりと覚えている。この声の主は、いつも私と一緒にいた。

 

「...ミリアス...!?」

 

「お嬢様!!」

 

彼だ。ミリアス。ミリアス・アーサーだ。

こんなときになっても、彼は私のそばにいてくれる。

とてつもなく優秀な私の執事。

 

ミリアスの声に一瞬気が緩み、レナは地面に倒れ伏せてしまった。

 

「お嬢様!?しっかりしてください!!」

 

ミリアスの声に、私は安堵感と同時に、意識が遠のいていくのを感じた。

 

私は、遠のく意識に安らかに目を閉じた。

 

「お嬢様!?お嬢様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

あぁ、彼の声が遠くに聞こえる。

でももう、私には...あらがうことは...できな...い...

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで思った時。

「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!!!」

安らかなムードは、目覚まし時計の音により掻き消され、私の意識は現世に呼びもどされた。

彼の声とともに。

 

「もう...これだけやっても起きないとか、果たして本当に人間なのでしょうか...?」

 

気がつけば私は、自室のベッドの上で、いつもの天井を見ていた。

 

「あれ?ミリアス?」

 

「私の名前までお忘れになりましたかそうですか、出て行かせていただきますね」

 

「ちょちょちょ、待て待て待って!」

 

そうか。簡単なこと。よくあることだ。夢オチだ。

 

「まぁとりあえず、早く起きてください?朝食の準備なら、とうの1時間前に済んでいるんですよ」

 

「それ確実に冷めてるよね!?」

 

「起きなかったのが悪いです。我々も食べられてないんだからこれでイーブンですよ」

 

「マジすか...起きますよ、はいはい、起きりゃいいんでしょ?」

 

「そうですね。では、我々は一足先にお待ちしておりますよ」

 

「はーい、わかりましたー」

 

「来なかったらそいつを処刑します」

 

そういってミリアスが指さしたのは、私の隣ですやすやしていたクマのぬいぐるみだった。ちなみに名前はベアさん。

 

「!?しょ、処刑!?」

 

「はい。さんざん拷問した後に十字架にはりつけて殺します。」

 

怖っ!!

 

「わ、わかりましたよ!ちゃんと行くから!ベアさんはなんにも悪くないからぁ!」

 

「はいはい、お待ちしておりますよ。」

 

そう言ってミリアスは私の部屋を出ていった。

出るときに一瞬、クスッと笑いが零れた気がしたが、そんなことは今どうでもいい。

早く行かねば私の唯一の親友のベアさんが処刑されてしまう...!!

しかし、ベッドも毛布も、私を離すまいと、暖かい魔法を放っている。

くっ...ここはベアさんの為にも、こいつらの魔法に屈服するわけには...!!

私は、最大限、持てる力のすべてを使って、毛布を私の周りから吹き飛ばした。

ものすごいやり遂げた感があった。ヤベェ。

 

「はぁ...はぁ...勝った...勝ったんだ...!!」

 

と、こうしてはいられない。

こうしている間にも、ベアさんの処刑までの時間は迫っている。

人生にリセットが効かないように、ポーズ画面やイベント画面で時間が止まる、なんてことはあり得ないのだ。

私は、斎堂までダッシュした。それは、今朝の夢を彷彿とさせる走りだったが、彼女の頭には、ベアさんのことしか浮かんでいなかった。

 

 

「ふぃー...っ...疲れた...」

 

「おや、お嬢様。おはようございます」

 

ミリアスは挨拶をすると、丁寧にお辞儀をした。おそらくベアさんは助かったであろう。

これで今日の食事も安心して食べられる...と思っていた私は、ある一つの事を思い出した。

昨日の夜かなんかにたしかミリアスが料理をしてみるとか何とか言ってたような気がする。まぁさすがにウチのシェフが許可しないだろうけど。

 

「お待たせいたしました。こちら、本日の朝食となります」

 

運ばれてきたのは、ごくごく普通の、いつも私が食べているものだった。

心の中の不安が一気になくなった感じがする。

 

 

そして。いつものように食事を終えると、ミリアスがなにかしている。なにやってんだろ?

私がそのことについて考えていると、もう一品運ばれてきた。

あれ?いつもならここで終わりなのに...デザートかな?

私は、自分で言うのもあれだが、かなりの甘党だ。

「スイーツは別バラ」という言葉を広めたのも私だ。(という脳内設定)

さて、この私を驚かす料理がシェフに作れるかな?w

 

運ばれてきたのは、形のとてもいい、モンブランだった。

 

「美味しそうね...じゃ、いただくわ!」

 

「お召し上がりくださいませ。」

 

まずは一口食べてみる。...美味しい。

いつもお忍びでケーキとかを買いに行くお店があるのだが、そこの店のモンブランにも負けず劣らずといった美味しさ。

シェフは確か、こういったものを作るのが苦手と言っていたはずけど...まさか...!?

 

「どうでございましょう?私が作った、モンブランは。」

 

その一言を聞いた瞬間、私の脳内に稲妻が走った。

ミリアスが作った!?こんなにおいしいモンブランを!?あのゲロマズ料理を作る、ミリアスが!?

 

「喜んでいただけて、わたくし大変光栄にございます」

 

「..........!?」

 

私はミリアスの変化ぶりに、言葉を出すことができなかった。

 

「それではお嬢様。今日は戦略勉強の日でございます。先に会議室でお待ちしておりますね」

 

「.........うん....」

 

よく聞かずに、返事をしてしまった。これが、これこそが、私の人生において、最大級の汚点だった。

この返事一つで、私の、いや。全世界の練習戦争が始まってしまうなど。

この時の幼い私は。全く理解していなかった。

 

 

 

 

続く。




こんにちわ、こんばんわ、おはようございます。
汐留夏華です。
今回は、有村渚じゃないシリーズを投稿してみました。
これからも頑張っていくので、よろしくおねがいします!
それでは次回をお楽しみに!
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