初回からシリアス要素有。
「―――――――……XXXXXX、XX?」
そう……、そっと呟いた
いつもの私が知っている貴方は、
太陽みたいな笑顔で、皆を守って引っ張っていってくれる貴方は其処に居なかった。
いつも意地悪だけど、優しい貴方は消えてしまった。
どうしてこうなってしまったんだろう……っ。
ねぇ、なんでなの。
ずっと傍にいるって約束するよ、ってそう言ったじゃない。
……なんで、彼だったの。
ねぇ、神様――。教えてよ…。なんでなのよ。
まさか姿も見えない、信じてすらいなかった筈の神様をこの私が恨むことになるなんて思わなかった。
「……大丈夫、大丈夫だから。私は、西木野真姫。貴方の、…幼馴染みよ。」
私は、ちゃんと笑えただろうか―――。
泣かずにいられただろうか―――。
でも、決めたの。
貴方が私を守ってくれたように、私も貴方を守りたいから。
貴方が私を暗闇から導いてくれたように、私も貴方を導いてあげたいから。
貴方が私に笑顔を見せて安心させてくれたように、私も貴方に笑顔で安心させてあげたいから。
貴方が私に手を伸ばしてくれたように、今度は私が手を伸ばすから。これからは引っ張っていくから。
貴方が私を好きにさせてくれたように、今度は私が貴方を好きにさせてみせるから。
だから……。
だからね……。
また二人で何処かに行こう……?
また一緒に花火見よ……?
もう一度また二人で、恋をしよう―――。
―――――『ねぇ真姫。……好きだよ。』
―――――『……こーいうのって、照れるな。』
―――――『キス、していい?』
―――――『真姫、顔真っ赤。……って、俺もか。すっげえドキドキしてんだ。』
―――――『……ばーか。そういう顔すんなよ、我慢できなくなるだろ。』
脳内に響く貴方の声がただ、愛しくて……。
私は、願い続けるの。
今度はもう絶対に間違えないから。
「奏多が好き、なのっ…。ずっと。ずっと……。」
私もずっと、貴方の傍にいたいの―――。
***
「ねぇねぇ、西木野真姫さんってね、あの【
「え、そうなの!!? 苗字が一緒だったからもしかしたらとは思ってたけど……。やっぱりそうだったんだ。……え、ってことはちょーがつくほどのお金持ちってこと!?」
「そうそう! んでね、家もめちゃくちゃ大きいし執事とかメイドとか家にいるらしいよ!!」
「執事にメイド!?」
「うんうん。凄いよねぇ。おかえりなさいませ、ご主人様とか言うのかな!」
「それを言うならお嬢様でしょ。」
「でもさー、それ聞いちゃうとなんか関わりづらいよねー。それにほら、あの性格だし。声かけるなオーラ丸出しだし。」
「確かに。もう少し、雰囲気柔らかくしてくれればね。」
「わかるー。」
「……ねぇ、聞こえちゃうよ?」
「あ、……そろそろ、部活いこっかー。」
「そうだね。何部にする〜~?」
「えー。どうする? あっそうだ! 私、陸上部みたい。」
放課後の教室。
既に、クラスメイトの半数が教室を後にしていた。そんな中、偶にチラチラとこちらを見ながらコソコソと話している五人のクラスメイト。ある程度会話すると満足したのか、そそくさと教室を出て行った。彼女たちは、このクラスの中心にいる
そして私は、彼女たちの一人として名前を知らないのだけど。
(馬鹿じゃないの。聞こえちゃうじゃなくて、もう既に全部聞こえてるのよ。)
ていうか、元々私に関わる気なんてない癖に。
ただ良い話のネタなんでしょ。知ってるわよ。もっと自分たちの身になるような話をすればいいのに、可哀想な人たち。
そして、私の話題を初めに出したあの娘は確か……一緒の中学に居た気がする。というより、入学した当初彼女に真っ先に声を掛けられた。何度かそれが続いた。ただ、合わなそうだったからバッサリと切り捨てたら、それからというものの向こうから声を掛けられる事はなくなった。
せいせいした。というのは最初だけでちょっとだけ申し訳なくなって、謝ろうかと思って彼女を探した。
そこで私は、彼女の裏の顔を知ってしまった。
「家と顔がいいから隣に居させれば、私もいい思いが出来ると思ったのに……何なのよ、あの態度。」
そう、彼女が欲したのは私と友達になることじゃなくて、お金持ちである私の隣にいるというブランドとお金だった。
それを聞いてしまった瞬間、一気に気持ちが冷え切っていくのが分かった。
嗚呼――、"またか"と思った。
寂しい……だなんて、思わなかった。
昔からそんなことばっかしだったから。一々気にしていたら、そんなものはキリがないと割り切った。割り切るしかなかった。
小学校の時だった。
入学した当初より仲良くしてくれていた一人の女の子がいた。だけど、高学年に上がる前にその娘は私の元を離れていった。
ある日、その子は別の娘と一緒にいた。
初めはなんの疑問も抱かなかったけど、あからさまに避けられる様になり段々とおかしい思い始めた。だから、悲しくなって尋ねてみた。
そしたら、彼女は酷く辛そうな表情でこう言った。
「真姫ちゃ……いや西木野さんといるとね、優劣をどうしても感じちゃって……なんか、その、虚しくなるの。ごめんなさい。もうあなたとは居たくない。」
あぁ、そうか。
彼女はずっと、無理をしていたんだ。
「親に仲良くしておけば、いいことがあるって言われて友達になったけど。」
文字通り、ずっと私と仲良く"してくれていた"のだ。
私と仲良くなったのは、西木野だから。
私を嫌いになったのも、西木野だから。
単純過ぎて、笑えてくるわよね。
「っ、自分が惨めになるのよ!!」
そう言って、私を突き飛ばしたあの娘は泣いていた。
泣きたいのは私の方。
突き飛ばされた痛みよりも、どうしようもなく心が痛かった。
逃げるように、音楽に浸る日々だった。
幼稚園の後半から習い事としてピアノを始めたけれど、音楽があってよかった。
ピアノが私のたった一つの居場所であり、私の友達だった。
だけど、それが変わったのは意外と直ぐだった。
ある日、優しい人と出会えた。それが私の幼馴染になる人なのだけど…。
その人と出会えてからは、其処が私のもう一つの居場所になった。でも、その人は同じ学校ではなかったので結局学校では私の居場所はなかった。
そして、中学生の時だった。
二つ歳上の男の子に放課後呼び出された。顔はそれなりで性格も優しくて誠実そうな、そんな人だった。
「西木野さん、良かったら俺と付き合ってくれないかな。」
初めての告白、だった。
ようやく私だけを見てくれて愛してくれる人が現れた、そう思って嬉しかった。嬉しい筈なのに、何処かで違和感を感じた。
なんだろう……何かがおかしい気がする。
注意して彼を見てみてはっきりした。
彼が見ていたのは"私"ではない。彼が見ていたのは"私の身体"だった。第二次性徴が始まり、徐々に膨らみ出した胸元。それと、母親と似てよく綺麗だ、長いと言われる足と
そこを時折チラチラと見つめる彼。
怖くなった。だから、返事はごめんなさいと伝えた。
そしたら、彼も同じだった。
休日、ショッピングをした帰りだった。コンビニ前に男子の集団がいた。その中にはあの男の子もいて、思わず隠れてしまった。
「なぁ、あの西木野に告ってフラれたんだろ?」
まさか、いきなり自分の名前が出るとは思わなくて吃驚した。
「……うっさいな。」
「んはっ、まさか恋愛百戦錬磨のお前がフラれる事になるなんてな。いやー、流石はお嬢様だこと。だけど、これでようやく俺達はジュースを奢って貰えるわけだ。」
「……ちっ。あの女、家と顔がちょっといいからって調子乗りやがって。ありえねぇわ、あの反応。……あーあ、好きでもない女にフラレるなんて思わなかった。最悪。」
「俺ならイケっかな。」
「はっ、お前とかぜってー無理じゃん。まだ俺のが可能性あるだろ。」
「わかんねぇだろ。案外、俺みたいのがタイプだったりするかもしれねーじゃん。あの西木野の彼氏とか、相当いい思いできるんだろうな〜~。色んな意味で。」
そんな会話に思わず、吐きそうになった。
後から知った事だが、あの男は仲間内でターゲットを決めては誰かれ構わず告白し付き合うと、そういう行為に及んで、飽きたら捨てるという最低な人だった。
それを囲んでいる男たちも、同様に最低な人たちだった。毎回オッケーされるかフラレるか…賭けをし、オッケーなら今度はどれぐらい続くのかを賭ける。
類は友を呼ぶ。同じ穴の
逃げるように立ち去った私に、まるで追い打ちをかけるかのように変なオジサンに絡まれた。
あの時の出来事は思い出したくもないぐらい。
助けてくれたのは、幼馴染だった。あの時程、彼の存在を有難いと思った事はない。
そんなことがあったからか、私は輪をかけてこんな捻くれた性格になってしまったのだと思う。
私は、西木野という家のせいで嫌われもするし、逆に西木野という家のせいで好かれもする。
私を、私として見てくれる人なんて……。
結局……傍に居ないんだ。
パパだって…ママだって…、どーせ私を総合病院の跡取り娘としか思ってないのよ。
ほんとは、女の子じゃなくて男の子が欲しかったのだって知っている。
いや、愛してくれているのだって知っている。ちゃんと分かってるわ。誕生日だって、記念日だって、ちゃんと毎年祝ってくれるし。仕事で忙しい時だって、その日は無理でも別の日に祝ってくれる。
分かってるのよ。充分に愛されてるって。
だけど、結局なのよね……。
期待されるのは当たり前のことだし、期待してくれるのは嬉しいと思うわ……。だけどね、……どうしようもなく時々それが嫌になるの。
結局、私は西木野なんだって。
西木野家の真姫だからこそ、こんな大事に育てられたんだって。
ネガティブな方向にいってしまう。
何よりも、そんなことを考えている自分自身が嫌いだった。
帰り道。
いつもより、足取りは重かった。正直、家に帰りたくないとさえ思った。その思いが強過ぎて、足は中々前には出なかった。
進んでは立ち止まり、進んでは立ち止まり。
(はぁ…………。もう、嫌。………パパにも、ママにも、会いたくない。)
しかし、帰りたくないと言っても泊めてくれる友達もいない。そんな中で家を出たところで直ぐに家の誰かしらに捕まるのが予想出来る。野宿なんて、私には出来ないし。
角を曲がろうとした時だった。
「―――――まーき、よっ!!」
「ゔええ!!?」
曲がろうとした角から出てきた顔にぎょっとして斜め後ろに無意識に下がれば、足を
「〜~っ」
見事に尻餅をついた私。
「………ぶっ!! あっはははは、はっ、〜~っ。あー、腹いてえ。だっせ、真姫ちゃんびびりすぎでしょ。」
腹を抱えながら、その姿を見せた。
(あー、どうしよう。ムカツク。)
「もー、何なのよ〜~!!」
苛々の数値が一気に上昇していくのが分かる。上限が百だとするならば、既に五十ぐらいにはなっている。
「よっ、久しぶり。」
「久しぶりじゃないわよ! この馬鹿なた!!」
「えー、久しぶりじゃん。何ヶ月ぶりだっけ? いやー、それにしても面白い反応感謝感謝。飽きさせてくれませんね、流石お嬢様。……なんつって。なぁなぁ、どう? お前んとこの執事の真似なんだけど。似てね?」
笑いながら、態とらしく私の家に仕えている執事の真似をして会釈をする目の前の男。むかつくんだけど、ほんとに画になるの。今日の格好がスーツだから余計になんだと思う。
私の幼馴染み、と言いたくはないけど他に表す言葉もないので不本意だけど、幼馴染の
見えないし不本意だけど、二つ歳上。
私達が出逢ったのは、小学生の時だった。
向こうはもっと前から知っていたらしいけど、それがいつだったのかは教えてくれない。
パパが主催した医学関係のパーティーで、向こうから話し掛けられたのが始まりだった。
初めは邪険にしてたのに、いつの間にか仲良くなってた。
私と同じで、こんなんでも一応はいいところのお坊ちゃん。家には同じくメイドがいる。
そんな彼は葉山コーポレーションの一人息子。医学関係の会社ではないけれど、パパ同士が仲良いからパーティーではよく一緒にいる。
まあ、彼も私と同じで色んな悩みがあるみたいで。だからこそ、仲良くなれたのかもしれない。
昔は毎日のように会っていた筈なのに、歳を重ねる毎にその回数は少なくなっていって今はもう……。それに彼自身忙しくなったのか、会いに来てくれなくなったし家にも偶にしか来なくなった。
「……ったくもう、一体何しに来たのよ!」
ただ、こうして数ヵ月に一度。ふらっと現れたと思ったら、少しだけ話してふらっと帰っていく。
ほんとに唐突で困る。
電話番号だって、アドレスだって知っているのだから一言でも連絡をくれればいいのに。
「……いや、真姫ちゃんに会いに来たんだけど。なんかさ、ふと会いたくなった。……つーか、理由がなきゃ俺は来ちゃダメなのかよ?」
「っ」
この人は平然とこういうことを言ってのけるから、嫌になってしまう。
たった、二つだけ歳が上なだけなのに。あの男と同い年なのに。あの男と同じなのに。
……いや、違う。
あんな男共と同じなんてそんな筈がない。
あんなのとは比べ物にならない程、いい人なんだから。
「んええええ、なにその反応。無言になられると困る〜〜。……ってあれ、こんなんじゃなかったけ? なんか違うな。ん"ええ、でもねーし……。むっずかしいな。お前、何処から声出してんの?」
……前言撤回しようかしら。
人がちょっと褒めてあげればこうやって調子に乗るんだから。って声には出してないから、本人は知らないのだけど……。嫌になるわよね。
なんて言うか、ほんと残念。
だから、絶対に口に出して言ってあげないんだから。
「バカにしてんじゃないわよ…貴方と話してると日が暮れそうね…はぁ。」
「んわ、ため息つくと幸せ逃げるぞ?」
「誰のせいよ!!」
「あはは。誰だろーな? ……てか、いつまでそんな格好でいんの? ほら、いこーぜ。」
踵を返し、歩き出した奏多。付いて行こうと思って、立ち上がろうと足に力を入れたのだけど……。
「あ、れ……?」
何故だろう、足に力が入らない。
まるで、腰を抜かしたみたいな……いや、みたいなじゃなくて腰を抜かしたんだ。
どんどん離れてく背中に焦るけど、焦れば焦るほどに訳が分からなくなってきて力が入らない。
(―――追いてかないでよ、気付きなさいよ…。)
ほんとは今すぐにでも声を出して呼び止めればいい。名前を呼べばいい。それだけで奏多は助けてくれるはずなのに、変なプライドが邪魔して声を出せない。
(……奏多。)
「……真姫、ちゃん?」
ようやく彼が振り返ったのは数メートル先のことだった。
こちらを見て心底驚いた表情をした彼は走ってきたのだが、近付くにつれ状況が分かったのか……途中からは殆ど笑っていた。
「ぶっ……え、どった? え、腰ぬかしちゃったとか? まさか嘘だよね?」
(〜~っ、だから知られたくなかったのよこの馬鹿。)
クククと耐えるように笑いながら、近付いてくる足元を狙って蹴りを入れようとしたのだが、軽々とジャンプしてかわしてしまった。
「あぶねっ……あー。もう流石だわ真姫ちゃん。」
「………うるさい。」
「ほら、手貸そうか? それとも、おんぶする?」
「いらない。別に、一人で立てるわよ。」
「そう、カリカリすんなって。男にモテナイぞー?」
「うっさいわよ!!」
何だか余りに苛々してきて、再び蹴りを入れてみれば今度はしっかりと彼の左脛に当たった。
弁慶の泣き所と呼ばれる其処は人間の急所の一つで、彼はぐふぅ……と何とも情けない声を出すと脛を抱えて目の前でしゃがみ込んだ。
そんな彼に満足してこれでもかと笑ってあげた。
「こんにゃろー、おま……っ」
何かし返そうと思ってこちらを向いた彼だった。がしかし、その顔は一気に真っ赤になった。かと思えば、視線を逸して何故か私の下半身を指差した。
(なによ、その表情……。)
どうしようもなく嫌な予感しかしなかった。
恐る恐る、視線を落とせば……、
「っ、きゃあぁあっ!!!」
制服のスカートが太腿の上まで捲れており、見事にその中の下着が丸見えだった。
そこからは最早反射だった。立ち上がり、スカートを抑える。
「ばかなた!!」
恥ずかしくて、どうしようもなくて……。だから衝動のままに、未だに顔を真っ赤にしている奏多に再び蹴りを入れてしまった。
「っ、………な、なんでだよ!! ……………ってあれ、立ち上がれんじゃん。」
床へと平伏したものの、直ぐに立ち上がった彼は突っかかってきた。だけど、私が立てたことに気が付くと一変して、良かったなと笑顔を見せた。
「あ、……ほんとだ。」
「俺のおかげ?」
「調子づくな、ばか!!」
「ぐはっっ!」
肘で思い切り鳩尾を突いた、痛がる奏多を尻目に鞄を持ち直して歩き出した。
(………最悪。よりにもよって、奏多に見られるなんて。……もう、嫌。ありえない。)
時間差で赤くなった頬を髪で隠し、これでもかと早歩きをした。早く家につきたい、その一心だった。
早く部屋に篭りたい。最早、ベッドの中で蹲りたい。防音室で叫びたい。
「ちょ、ちょっと待って!、」
珍しく慌てた様子で走ってきた奏多。彼の息が乱れていたことに気付いて、ようやく私自身も思った以上に疲れていたことに気が付いた。
「なぁ、怒った?」
「……別に。」
「そっか、ならよかった。…あのさ、真姫ちゃん。今日俺が来たのは……あ、そうだ。真姫ちゃん友達は?」
きた。また、この質問。
会う度、会う度、毎回のように思い出すと奏多はこの質問をしてくる。
だから、私は毎回同じ言葉を返す。今回だってそれは変わらない、同じ言葉。
「いるわけないでしょ。」
「……だよなぁ。まあほら、真姫ちゃん見てれば何となく分かるんだけどな。」
「なら聞かないでよ。」
「いや、お兄さんは真姫ちゃんの口から聞きたいの。お友達出来たよってさ。」
「なにそれ、いみわかんない。」
「お前は分かんなくても大丈夫。
……あーっと、そろそろ行かなくちゃだな。ごめん、また送ってやれなかった。
あ、真姫ちゃん。お兄さんからひとつだけアドバイスな。一人か、二人かそんぐらいは居るはずだよ。なんの意味もなく、見返りを求めず真姫ちゃんと純粋に友達になりたいんだっていう子。ほんの少しだけでも、周りに目を向けてみたらいいんじゃないかな。案外、今まで見えなかったものつーか人が見えるかも。
まあ、居なかったとしてもこれから現れるだろーよ。」
今までおちゃらけていた癖に急に歳上を発揮する、こういう所も嫌。
それなのに、なんでだろう……。
「真姫ちゃんなら、きっと大丈夫だから。」
笑顔で言う彼の“大丈夫”は信用出来る気がして、くすんでいた心が彼の言葉で、その笑顔で洗い流されていくが分かる。
「……じゃ、またな!」
勝手に一人で話すだけ話すと、走って行ってしまった。
「………あ、」
私がバイバイを言う前に少し先の角を曲がり、その背中は見えなくなってしまった。
「…ていうか、もう家の近くじゃない。」
よくよく周りを確認してみれば、もう近所だった。
目の前の角を曲がって少し先まで歩けば、そこはもう我が家。彼はごめんな、送れないと言っておきながらも、毎回しっかりと家の近くまでは送り届けてくれるのだ。
「そう言えば、……嫌な、気持ち……なくなったのね。」
あれ程、脳内を占めていた筈の帰りたくない、会いたくないという二つの感情はいつの間にか消え去ってた。
彼と話してる途中、早く帰りたいとさえ変換されるようになったのも吃驚だった。
そういえば、奏多が来るのはいつも決まって気が滅入りそうになったときだった。彼の測ったかのようなタイミングの良さに毎回、後になってから驚くのだ。
「………ありがとう、ってまた言えなかったわね。」
そう呟いて、私は大嫌いで、でもとても大好きな家の中へと足を踏み入れた。
不思議ね……。
彼のお陰で、私はまた数ヵ月頑張れるような、そんな気がした。
――――この時の私は、まだ知らなかった。
いや、私は知ろうともしなかった。
葉山奏多にどれ程、ずっと愛されていたのかを……。
了
プロローグ兼第一話。
瀬戸です。からーずにて、言っていた真姫ちゃんメインの小説をはじめました。
当小説はシリアス有りの恋愛小説ですので、好き嫌いが分かれると思います。が、色んな人に読んで頂けたら嬉しいです。
実は、とある二つの曲をイメージにしております。わかる方には、わかる筈。わかっても、取り敢えずは言っちゃダメですよ(笑)
おおもとのテーマとしては、切甘。
切ないながらも甘ったるく、笑いもあって的な。
先に真姫ちゃん視点ではじまります。
原作設定改変もしてますので、原作を知らない人でも楽しめるかなと思いますし、勿論知ってる人も楽しめるように出来たらいいなと頑張っていきます。
次回は、とある二人に頑張っていただきます。
素直になれない真姫ちゃんに友達は出来るのか……!