魔理沙が時々、体を乗っ取られてしまう物語 作:冷水
アリス・マーガトロイドは紅魔館の図書館に居た。
そこにはパチュリー・ノーレッジという魔法使いが居て、アリスは今日見た白黒魔法使いの様子をパチュリーに相談しに来ていた。
「魔理沙の様子がおかしいのよ……」
「へぇ……」
パチュリーは興味なさそうに本を読みながらアリスの話を聞き流している。
先日に、まだ読んでない本を盗まれ、一言で表すなら怒っていた。
大切な本を盗むことも、もちろん怒っているのだが、それ以上に自分すら読んでいない本を盗むなど言語道断だと考えていた。
「ちょっと、聞いているの?」
「聞いてなかったわ」
「……」
アリスはその反応にがっかりとしつつ、これが異変であるのだとパチュリーに報告するつもりであった。
しかし、今日のパチュリーは魔理沙のことになると、途端に不機嫌になったのが分かったので、相談するのを諦めていた。
「じゃあ、魔理沙をつれてくるから、その目で確かめてみなさいよ」
そういってアリスはパチュリーに背を向けながら、紅魔館の外へ飛び去っていく。
ため息をつきながら、パチュリーは相変わらず本を読んでおり、アリスが魔理沙を連れてきたら本が盗まれないように注意しなくてはとため息をつく。
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アリスは博麗神社の方向へ魔理沙が飛び去っていくのを目撃しており、もとより行く宛ての少ない少女は霊夢の元へ遊びに行ったのだろうと当たりをつけていた。
ちょうど縁側に魔理沙と霊夢が居るのをみつけると、躊躇いながらもその中へ入っていく。
「久しぶりね、霊夢」
「アリス、何か用かしら?」
博麗霊夢は脇の露出した赤と白の巫女服を着ており、凛とした表情でお茶を飲んでいた。
趣味は「縁側でお茶を飲むこと」であり、年頃の少女にしては枯れていると表現できる少女は、長い間会わないとアリスの存在を忘れていたりもする。
とにかく名前を覚えるのが苦手な少女で、興味が無いことにはとことん無頓着である。
視線を横に逸らせば、魔理沙も一緒にお茶を飲んでいた。
先ほどの事を思い出すと、少しだけ警戒しながらも、霊夢の隣に腰掛ける。
「……アリス。さっきはすまなかったな……」
少し落ち込み気味に、いつものように魔理沙は声をかけてきた。
何かの演技で先ほどのように油断させておいて、いきなり魔法攻撃でも仕掛けてくるのではと気を張っている。
魔理沙はその様子を見ると申し訳なさそうにしつつ、霊夢を挟んでアリスに事情を説明しようと考える。
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アリスは魔理沙の状況説明を聞き、最初は半信半疑だったものの、見たことの無い魔法を使ったことや、スペルカードを構えていたにも関わらず、無粋にも攻撃してきたことを思い出していた。
この世界におけるスペルカードルールとは、互いに決闘をする際の作法のようなものである。
両者の合意があれば実力勝負の「殺し合い」でも構わないのだが、巫女が提唱し、幻想郷では基本「スペルカードルール」により決着をつけるようにと定められていた。
人間と妖怪の関係や、互いの実力とは別の次元で、対等な決着手段の一つとして広く普及していた。
それに、単純に力の強い者同士が争えば辺り一帯が焦土と化してしまうので、代わりに美しさを競うことで周囲も本人達も楽しめるような決闘方法とした。
ゆえに、いきなり実力勝負を仕掛けてくるような存在は、幻想郷でも新参者やスペルカードに賛同しない者達だけであり、賛同者同士では基本「スペルカード」で物事が決められるようになっていた。
それが幻想郷の「ルール」であると、博麗の巫女が定めたことである。
強い者ほど制約が課されているように思えるが、強い者達が率先してルールを守っていることで成立しているルールである。
弱い者ほど恩恵が大きいかと言われれば必ずしもそうではなく、弾幕ごっこの適正により強さは一概には言えない程に変化する。
強い者の方がスペルカードを構成する要素が豊富であり、自らの力を組み込んだスペルカードを作ることもある。
相手を殺さない程度の威力に抑えてさえいれば「スペルカード」と呼べるので、相手によっても威力が変化することもある。
ただし、人間相手に弾幕を宛てれば運が悪ければ死んでしまうこともあるし、あくまでそのあたりも個人の采配に任せている。
この世界での「程度」と言えば、その辺を曖昧にしておき、偶発的な事故にまで「スペルカードルール」の範疇では責任は取らないようにもなっている。
もっとも、妖怪は瀕死からでも復活する者もいるし、弾幕が当たっても対人間と同じ威力では妖怪は毛ほど気にせずに居る者達もいる。
あくまで、相手を無力化するのに相応しい威力であり、逆に「即死」なんて技はスペルカードではナンセンスである。
妖怪が人間を襲っても、怪我で済む程度の威力で、後腐れの無いような決闘方法を。
妖怪が退治されたと諦められる程度の痛みを。
美しさを競い合い、魅せるような弾幕を。
これがスペルカードルールの「程度」である。
閑話休題。
話は反れてしまったが、魔理沙をどうにかして紅魔館へ連れて行こうと考える。
目的は変わるが、動かない図書館と呼ばれるパチュリーならば、魔理沙をすぐに直す方法を思いつくかもしれない。
とりあえず、まずは説得しようと思いながら、どんな風に言えば連れ出せるだろうと考えている。
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『……』
皆の会話を、ミナミは静かに聴いていた。
ここまでの流れを思いつつ、魔理沙は少し気味の悪い気分を味わっていた。
話の間に入ってきたり、体ごと入れ替わったりするのではと最初は警戒しつつも、ここまで殆ど何も口を挟んでこなかった。