魔理沙が時々、体を乗っ取られてしまう物語   作:冷水

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※修正:一部、下書きのテキストからコピー忘れがありました。


第三話

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「用意はいいかしら?」

 

 箒で空に浮きながら、魔理沙(ミナミ)は余裕の表情でパチュリーに挑発を繰り返す。

パチュリーは箒を用いずに空に浮きながら、しげしげと魔理沙の様子を観察する。

魔理沙の様子は普段と違い、余剰魔力を体の外に放出せずに、一切魔法の気配が感じられない。

 

 しかし、空を飛んでいることを考えれば、何かしら魔法を使っているはずである。

箒に腰掛けるように座る魔理沙は、余裕の笑みでパチュリーの姿を眺めている。

 

「ええ、始めましょうか」

 

 ここに、魔法使い同士の戦端が開かれた。

両者共に本気であり、周囲で見ているアリスや霊夢は固唾を飲んでその様子を見ている。

 

 

----

 

 パチュリーは考えていた。

魔理沙の心境にどんな変化があったのか知らないが、無謀にも挑みにきているのは異変の時から変わっていない。

人間、本質の部分は変わらないというが、魔理沙も所詮は人間なのだから仕方ないのかと考えてもいる。

 

 鋭い目つきで睨むが、魔理沙にひるんだ様子はない。

座ったままの状態から、動く気配がない。

もし「ただの強がりだった」と謝るのなら許してやると考えながらも、そんな気配は微塵もない。

 

(先手で決めるか)

 

「ロイヤルフレア!」

 

 詠唱を省略し、技の名前で魔法を起動する。

これはスペルカードの要領を使った魔法。

体の周りを魔法陣が出現し、大きな火炎の球体を作り出す。

 

(これで消し炭になるのなら、そこまでのこと)

 

 

 

 

 

 パチンと、ミナミは指を一つ鳴らす。

 

 

 

 ミナミは動く。

 

「マジックブレイク」

 

 それだけの動作で、パチュリーの攻撃魔法が全て打ち消される。

 

「無知は罪と言うけれど、この世界の魔法は全然だめね」

 

 静かに囁くのは魔理沙の姿をした異世界の魔法使い。

 

「この程度で魔法使いを名乗れるのなら、さぞこの世界は生きにくいのでしょうね」

 

 

 

 ミナミの世界では、魔法は世界規模で研究されている。

それは地球では廃れてしまった魔法が、科学と同列のまま研究された未来を考えてもらえばいい。

魔力の効率的な運用、相手の魔法に対するカウンター攻撃。

相手の魔法を打ち消す技術。

 

 突き詰めていけば、相手に攻撃をさせないまま、こちらから一方的に攻撃するのが魔法使い同士の戦い方。

魔法使いの優劣とは相手の攻撃手段の読み合い、相手に自らの手の内をさらさずに、魔法を無効化されずに届ける技術によって決まる。

 

「……」

 

 見たことがない魔法に、パチュリーは一瞬だけ驚きを示すも、こちらだって歴戦の魔法使いである。

 

「私の魔法ひとつ防いだ程度で、いい気にならないで貰いたいわね」

 

「確かにその通り、まだ勝負は決まってないものね」

 

 パチュリーは次の魔法の詠唱に入る。

一回目のような奢りもない、本気モードの状態になる。

 

「剣よ」

 

 ミナミは魔力で生成した剣を取り出す。

レイピアのように細長い刀身を持った、銀色の剣である。

 

 片手に魔力の塊をまといながら、箒の細い木の上を二本の足で立っている。

そしてパチュリーめがけて箒から降りると、その身一つで飛び出した。

 

「サイレントセレナ」

 

 パチュリーは膨大な数の青い矢を魔法で作りだすと、魔理沙めがけて打ち出す。

それは弾幕勝負のように避ける余地などありはしない、数に頼った戦術である。

 

 いくら魔理沙が魔法を打ち消す術を得ようとも、数で攻めればそんな小細工など通用しない。

パチュリーの身に宿る膨大な魔力は、たかが人間相手にはオーバーキルに思えるような、大規模な魔法の使用を肯定する。

 

「甘い」

 

 右手の魔力の塊を盾のように使いながら、剣と併用してそれらを防いでいく。

 

「スペルアナライズ、スタート」

 

 それと共に、ミナミは一つの魔法を発動させる。

それは相手の手の内を探り、自らが防いだ魔法や視認した魔法を解析する為の魔法。

 

 弾幕と化した矢の群れの中から、ミナミは抜け出した。

 

 すると、パチュリーの姿がなかった。

 

 

 

----

 

「人間よ、その奢りに満ちた己の思考を、あの世で後悔しなさい」

 

 パチュリーはサイレントセレナを発動させた時点で、己の姿を幻影としてその場に残し、既に空高く飛び上がっていた。

姿を透明にする魔法を使い、移動の際は気付かれないように細心の注意を払った。

 

 紫の髪をなびかせながら、圧倒的な魔力の量を持って魔理沙とその周辺の空間ごと押しつぶそうとする。

 

 パチュリーは魔法使いが使う杖の代わりに、普段は自らが書いた魔導書を用いている。

しかし、現在持っているのは「賢者の石」と呼ばれる錬金術の粋を尽くして作られた魔法の発動媒体である。

本気のパチュリーが見せるのは、地球で古今東西のありとあらゆる魔術に連なる、秘術の中の秘術。

 

「せめて冥土の土産に見せてあげるわ」

 

 魔理沙には聞こえていないであろう、独り言をつぶやく。

 

「これで終わりよ、魔理沙」

 

 パチュリーは魔法が完成するのを見届けて、魔理沙に向かって魔法を放つ。

眼下には後姿で表情こそ分からないが、パチュリーの姿か無いことに驚き、空中で止まっている魔理沙がいる。

人間にしてはそこそこの魔法を使えるようだが、まだ甘い。

パンケーキに塗られた蜂蜜のごとく甘すぎる。

 

 全てを消し去る、叡智を極めた先にある魔法が魔理沙に降りかかる。

それらはパチュリー以外には見えず、人間には不可視の魔法がかけられている。

 

 

 

 

 

 

 

---

 

 ニヤリと、ミナミは口元だけで笑いを作っている。

魔力を外部へ放出するような魔法など、気づかない訳がない。

そして、魔法に飲まれる刹那の内に、魔理沙の体は霞のように溶けていく。

 

 奢り高ぶった相手を、奥の手を出させた上で、それすら無効化して倒すというのは、とても気分がよいものだと考えている。

アリスという少女の時は小手調べすらできずに終わってしまったが、相手を制圧することの心地よさをミナミは感覚で知っている。

 

 

 

 

 

 

「こんな程度で終わりなの?」

 

 パチュリーの背後、そこにミナミの姿が現れる。

 

「え?」

 

 振り返るとティーカップとソーサを持ち、椅子でもあるかのように空中に腰かけている魔理沙がいた。

眼下では、魔法は確かに魔理沙に当たった感覚があった。

塵も残さずに消えたかに思えた。

 

 魔理沙は右手に銀色の剣を顕現させる。

 そしてそれを―――

 

 

 




==作者のつぶやき==

戦闘描写、苦手です。

また、前のページの紫の中での常識人設定が、跡形もなく崩れているパチュリーです。

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