魔理沙が時々、体を乗っ取られてしまう物語 作:冷水
魔理沙はティーカップを捨て、代わりに銀色の剣を生成する。
しばし呆然としているパチュリーに向かって突撃するように飛びつくと、手に持った剣を振り下ろす。
「っ……」
パチュリーも無防備で居続けるほど弱くは無い。
咄嗟に物理障壁を展開し、振り下ろされる剣を受け止めていた。
「へえ、ちょっとはやるみたいね」
障壁に当たる瞬間、全ての衝撃を緩和し、音すらも立たない。
これにはミナミも関心を示し、それなりによくできた魔法だと考えていた。
一合、また一合と打ち合うパチュリーは、頬に汗が伝っていく。
咄嗟の事に自身の苦手な範囲に、魔理沙の接近を許してしまった。
パチュリーにとって、魔理沙がこれだけ戦えるというのは想定外だった。
いつの間に剣術まで達者になっていて、魔法使いとしては異質な接近戦にまで通じている。
もう不可視の魔法は切れていて、上空での剣戟がアリスや霊夢達からも見えている。
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「あの二人、なかなかやるわね」
『そうだなー……自分の体ながら、あそこまで戦えるのは普通にすごいぜ』
霊夢は二人の戦いの感想を口にし、続いて返ってきた相槌に驚いて隣を見る。
「あれ?魔理沙……ここにいたのね」
てっきり、ミナミが首にまとわりついていた様子から、本体から離れられないのではと思っていた霊夢は、意外な事実に驚いていた。
『まあ、私もこんなに離れていても大丈夫とは思ってなかったぜ』
魔理沙(霊体)の姿が見えず、声も聞こえないアリスには、霊夢が何もない場所に語りかけているように見えていた。
しかし、アリスの意識は戦闘に行っており、気にしている余裕はなかった。
魔理沙からは魔法を使用する気配が一切感じられず、逆にどうやって魔法を使っているのか、それが気になるところでもあった。
同じ魔法使いとしては、今のアリスには真似しようとしてもできない芸当だった。
思わず魔法ではないと疑いたくなってしまうような光景が広がっていた。
魔法使いには魔法使いの視界があり、発動する魔法からある程度の情報を読み取れることがある。
簡単な魔法や、得意分野の魔法ならば、見ただけで模倣できる程度には、アリスだって優秀な魔法使いである。
一方で魔理沙が使っている魔法は、そもそも気配がない。
最初にパチュリーの魔法を打ち消した魔法さえ、過程を無視して現象のみ起こしたような違和感があった。
アリスは今まで意識したことがなかったが、魔法使い同士で正面から打ち合う場合、相手が魔法を使うタイミングを知れるというのは重要に思えてくる。
実際に過去、相手が何をしてくるのかを無意識にでも読み取って、回避行動や対処行動をした経験がアリスにもある。
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パチュリーは打ち合う度に焦りが増してくる。
それは、物理的にはよほど強い衝撃を与えなければ破壊されないはずの障壁が、削れているような感覚があったから。
人間や、白玉楼にいる剣士にさえ、数合打ち合っただけで破られるなんて思えない。
「見切った」
魔理沙が不敵な笑顔を浮かべていた。
パチュリーは背筋に寒気がし、障壁を固定したまま後ろに跳び退る。
まるで、バターでも切るかのように、パチュリーの展開した障壁が切り崩される。
同時に跡形もなく魔法が消え去り、パチュリーを守っていた他の魔法も同様に消え去っていく。
(危なかったわ……あのままの体勢でいたら、私が切られていた)
不意に距離を取れた。
しかし、むしろ状況は悪くなった。
最悪、接近されても大丈夫なように、魔法による加護を体の周囲に展開していた。
魔理沙が障壁を斬り裂くと同時に、なぜかそれらすらも消されてしまった。
(魔理沙の姿をしているけれど、何か違う気がする)
ここに来て、ようやくパチュリーは魔理沙の異常性を認めた。
短期間でここまで戦い方が変わるというのはおかしい。
まるで、別人か魔理沙に乗り移ったかのような不気味さがあった。
「貴方は……魔理沙の姿をしているけれど、別人ね」
「そうよ、私はミナミというの。魔理沙の体をちょっとだけ借りているわ」
剣をもてあそびながら、言葉を掛ければ返事をする程度には余裕を見せているミナミ。
これでも魔法使いを名乗っているという。
パチュリーはこれ以上、戦いを続けることの無意味さを感じ始めていた。
悔しいかな、パチュリーにはミナミという魔法使いが使う魔法が分からない。
そして、パチュリーの最大の技をも破られた。
接近戦でも、勝てそうにない。
「負けを認めるわ」
「別にいいけれど、もう終わりなの?」
時間にすれば、それほど経過していない。
ミナミは物足りなさを感じつつも、戦意を失った相手を追撃し、追い詰める趣味は持ち合わせていない。
パチュリーは戦いの緊張が途切れたことで、持病の喘息の症状が出始めていた。
今日は調子がよかったはずなのに、一戦でも全力で戦ったことで、体調は限界に達していた。
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アリスと霊夢は、二人の戦闘が終わった事をなんとなく悟った。
そして上空から二人が下りてきて、ミナミは魔理沙に体を返した。
戦闘を見ながら、一時はどうなるかと肝を冷やした魔理沙(本体)であったが、傷一つなく帰ってきた己の体に安堵していた。
こうしてパチュリーとの戦いは、ミナミの勝利で幕を閉じた。
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その様子を笑顔で見ているのはフランドール・スカーレット。
無邪気な子供が、まるで新しいおもちゃを見つけたかのように、楽しそうに笑っていた。