東方待宵譚   作:這い寄る劣等感

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また作ってしまいましたよぉーもぉーん


出逢い

此処は吸血鬼が棲まうとされる紅魔館、その周辺にある鬱蒼とした森の中。

其処で一人の男が足元が覚束ない様子で彷徨っていた。

 

 

「此処は……何処……なんだ……?」

 

 

男の問い掛けに応える者はおらず、ただ静寂のみが広がるばかりである。

男はとうとう限界に達し、その場にドウッと倒れ込む。

閉じていき霞む視界に入るのは、依然変わらぬ森の木々だけであった。

 

 

「あら、こんなところに私と同じ人間……なのかしらね?見た目だけは人間にそっくりな妖怪もいるし、ちょっと判断がつかないわね……。

まあお嬢様に持って行って毒味……もとい、味見してもらえば自ずとわかるかしら」

 

 

そんな彼の元に、一人の少女が現れたことも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜、これは何だ?」

 

 

玉座に深く腰をかけている少女が、己の従者に問い質す。

訊いたのは従者の隣で気絶しているのか、倒れている男についてだ。

彼女は普通に訊いているだけなのだが、それだけでも思わず跪き、こうべを垂れてしまいそうになる威容が確かにあった。

だが咲夜と呼ばれたメイドはそうすることなく、ただ訊かれたことに対する答を言う。

 

 

「人間(?)ですわ、お嬢様」

 

「いま?を入れたわよね?

貴女、これを襲って此処まで連れてきたんじゃないわよね?」

 

「ご安心ください、お嬢様。

そこらの森で倒れているのを見つけたので此処まで連れてきただけです。

妖怪の賢者が動いていないのなら、特に問題はないのでしょう」

 

「幻想郷の生きた人間ではないのか、そもそも人間ではないのか……。

まあ、今は考えるだけ無駄ね。

で、貴女は私にこれをどうしてほしいのかしら」

 

 

少女が従者に問い直す。

従者はその問に対し、

 

 

「明日は計画を実行に移される日ですから、これの血でも飲んで、英気を養っていただこうかと思いまして」

 

「……ああ、そう言えば私、今日の分はまだ飲んでなかったわね。

なら咲夜。この男から血を少しだけ抜き取っておきなさい。どうせそこまで飲めないんだし」

 

「お召し物にこぼされますものね」

 

「それは言わない約束でしょう」

 

 

従者は注射器を懐から取り出し、首元に刺す。

そうしてから注射器のピストンを引き上げ、シリンダの中に血液を取り込んでいく。

ある程度採血したら、注射器を丁寧な動作で引き抜き、刺した部分に絆創膏チックな何かを貼る。

取り出した血は紅茶の中に少量入れて、ミルクティーならぬブラッドティーにしてから、従者は少女に差し出す。

 

 

「匂いは……人間のものと変わらないわね。さて、味の方はどうかしら……」

 

 

少女は恐る恐るといった感じでティーカップに口をつけて、ほんの少しばかり口に含み、ゴクリと嚥下する。

 

 

「…………」

 

「お嬢様、どうかなさいましたか?

お口に合わなかったのか、それとも人間のものではなかったのですか?」

 

 

ティーカップに口をつけたままピタリと静止してしまった少女を心配し、従者が声をかける。

すると、

 

 

「……トレッビァアアアン!」

 

 

少女はいきなり叫び出した。

従者がその様子に面食らっていると、

 

 

「なんだ、この味は! 舌の上で深く絡み合うハアアアアァーモニー!」

 

 

手を横に大きく広げながら叫ぶと同時に、今度は紅い十字架のようなものが少女から巻き起こる。

 

 

「お、お嬢様。紅符『不夜城レッド』は次々回の作品まで出さない方がよろしいかと……」

 

「でかしたわ咲夜!こんなに美味しい血を飲んだのは初めてよ!しかも、こう、力がフツフツと湧き上がってくるようなこの感覚。

こんなに美味しいのなら人間なのかそうじゃないのかは一切関係無いわね。

咲夜!そこに転がっているのをどんな手を使ってでも確保するわよ!この私、レミリア・スカーレットのものにするためにね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……うむ……」

 

 

男が目を覚ますと、そこは倒れた時まで目にしていた森ではなく、やたら紅い壁紙が張られた部屋であった。

男は不審に思い、起き上がろうとする。

その時、首筋に違和感を感じ、手を伸ばしてみれば、何かが貼られている。

はて、自分は怪我をしていただろうか?と男は訝しがったが、部屋の扉がガチャっと開かれたので、思考をそちらに向ける。

扉を開けて現れたのは、銀髪のメイドの姿をした少女であった。

メイドにしてはスカートが短いと思いつつ、その少女が穿いているスカートをジロジロと見る。

 

 

「女性のスカートをジロジロと見つめては変態と思われますわよ」

 

「む、そうなのか。それは失礼した」

 

「いえ、男性特有のいやらしい視線を感じませんでしたし、忠告させていただいただけですので。

私はこの紅魔館でメイドをさせていただいている十六夜咲夜と言います。以後お見知り置きを」

 

 

咲夜と名乗ったメイドはぺこりとお辞儀をする。

男は咲夜の発言から、此処は紅魔館と呼ばれる館であること、十六夜咲夜というメイドがいること、そして、そのメイドを従えている主人かがいることが判った。

男は自己紹介されたので、自らも自己紹介すべきと考え、行動に移そうとするが、言葉が出てこない。

 

 

「どうかなさいましたか?」

 

 

口を開いて急に怪訝な表情になった男に咲夜が訊く。

 

 

「む、いや、名乗られたからには名乗りを返さねばと思ったのだが、どうしても名前が出てこない。

もしやこの身は記憶喪失というものなのだろうか?」

 

「それを私に訊かれても困りますわ。

どうしても名前が出てこないと言うのであれば、もうこの際そのことは気にしないというのはどうでしょうか?」

 

 

男は咲夜の提案を聞いてそれもそうかと思い、頭をクリアーにした。

自分が失くしたと思われる記憶に興味がないわけではないが、どんなに頭を捻っても出てこないのであれはば、今考えてもしょうがないと思ったからだ。

 

 

「頭はまとまりましたか?

それなら、我が主、レミリア・スカーレット様が貴方と話をしたがっておりますので、付いて来てもらえないでしょうか」

 

「承知した」

 

 

男は短く返事をすると、部屋から出て行く咲夜の後に付いて行き、それなりに歩いていたら玉座が置かれてある広めの部屋に通された。

玉座にはドアノブカバーのような帽子をかぶった少女が頬杖をつき、足を組みながら此方を見ていた。

 

 

「その身がレミリア・スカーレットなのだろうか。

此度は、行き倒れていたこの身を助けてもらい、非常に感謝している。感謝はしているのだが、残念なことにこの身にはその恩を返す手段がいいとこ労働力の提供ぐらいしかない。

ついては、この身に何か出来ることはないだろうか?」

 

 

男はレミリア・スカーレットと思わしき少女に礼を言う。

あの森で倒れた時に命を失う危険もあったのだ。

記憶も失っているみたいなのに、命も失うとなると洒落にならない。

故に助けてくれたレミリア・スカーレットに礼を言わねばならないと同時に、恩を返す手段が限られていることを伝えるべきと考えたのだ。

そんなことをいきなり言われたレミリアはポカンとした表情になった。

こうして見ると、見た目相応の可愛らしさが感じられる。

 

 

「いいえ、直接助けたのは私ではなく、そこにいる咲夜よ。

礼なら彼女にするのが筋ではなくて?」

 

「む、そうであったのか。

ならば咲夜、その身にも感謝する。

しかし、レミリア・スカーレットよ。

この身はその身の慈悲に救われたと思うのだが、違うのか?」

 

 

レミリアはポカンとした顔を元に戻し、男の言葉を訂正する。

すると男は、咲夜にも感謝の意を述べ、その上でレミリアにも救われたと言ってきた。

 

 

「へえ、一体どうしてそう思うのかしら?」

 

「うむ。

この身がこの館で目覚めた時に、首元に違和感を感じたのだ。手を伸ばして触ってみれば、何かが貼られていた。

最初はこの身の知らぬうちに怪我でもしてたのかと思ったのだが、その身がさらけ出しているそのコウモリのような翼。それを見てこう思った次第だ。

その身は、血を糧とする悪鬼の類、ああいや、この身を救ってくれたから悪鬼ではないな。物の怪の類ではないかと思うのだがどうだ?」

 

 

男はレミリアの問に答える。

レミリアはその答を聞き、大きく声をあげて笑う。

 

 

「アッハハハハハハハハ!

貴方、つまり私が貴方の血を吸い尽くさなかったから、私が慈悲深い者とでも思ったの?

単なるワガママ、或いは何かの打算があってのこと、とは思わないのかしら?」

 

「寧ろ、何の理由も無しに人を助けるというのは、この身にとっては少しばかり不気味に思えるな。

誰かを助けるのに理由がいらないと申す者は、確かに素晴らしい者なのであろうが、助けられた側としては何を考えているのかわかったものではなく、結果として不気味に感じるであろうとこの身は考える。

その点、その身はそういうことを訊いてくることからして、やはり慈悲深い者だとこの身は考える」

 

「へえ、貴方、本当に面白いわね。

私としては、貴方の血が欲しかっただけだから、一日に少しの血を払うことを対価に、衣食住を提供しようと思ってたのだけど……。

貴方、名前は何て言うのかしら?」

 

 

レミリアがニィ、と口元が裂けそうなくらい深く微笑みながら、男に名を訊ねる。

 

 

「すまないが、この身はどうも記憶喪失というやつらしい。

此処は誰、私は何処?というやつだ」

 

「いやいや、逆、逆だから。

でも名前が無いのは不便よねぇ……。

……そうね、貴方、最初に言った言葉に、嘘偽りは無いと誓えるのよね?」

 

「無論だ。

その身が望まれるのであれば、御身の敵を斬り伏せる劔にでも、御身に降りかかる災いを身を呈してでも護る盾にでもなろう」

 

「グッド。

なら貴方には名前を授けるわ。

そうねー、今日は満月の前日だからー……決めたわ。

貴方の名前は待宵御言。

今日から貴方は私の部下で、この紅魔館の一員である待宵御言として生きていくのよ。いいかしら?」

 

「承知した。

待宵御言、良き名だ。

主レミリアより賜ったこの名に恥じぬ働きをしてみせることをここに誓おう」

 

 

男はレミリアより待宵御言という名前を授けられ、ここに新たな主従が誕生した。

彼が一体どのような物語を歩んでいくのか。

この時は誰にも、当の本人でさえわかっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様。当紅魔館で男性が働く場合は、その男性が女性を襲わないように上司が毎日の性処理を義務付けるとの規約が----」

 

「おう伊○ライフ的展開にもってこうとすんのやめーや」




はたして待宵御言の喪った記憶は一体どういうものなのか!
血が美味いのは童貞だからなのか!(どどど童貞ちゃうわ!)
次回を待たれよ!(わかるとは言っていない)
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