須賀京太郎の悲劇   作:泡泡

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 次が最終話となります。タイトルで察知してください


二度あることは・・・

 「・・・・・・」

 

 俺は焦っていた。それもそのはず・・・。竜華が電話の内容を知ってしまったからだ。怜でなくて良かったと正直思っていたが、それでも竜華も俺に少しばかり依存していた事を知って内心冷静ではいられなかった。そのある意味修羅場を軽減してくれたのは麻雀部の顧問だった。

 

 「竜華?動揺するのはわかるけれど彼もあなたたち二人のことを思ってのことだったのよ。それはわかってあげなさい?」

 

 「グスッ・・・。分かってる、けど分かったのと受け止めるまでは時間が必要や」

 

 「ええ、勿論よ。彼と電話で初めて会話した私がこんなにも動揺しているんですから、あなたの動揺はこれ以上と思うのが普通よ。・・・それにしてもこの場にいたのが、怜でないのが今の状況で救いだったかもしれないわ」

 

 「えっ?そ、それはどういう?」

 

 顧問は電話を切らないで竜華にそっと呟く。その言葉は京太郎にも聞こえていたが、この場では会話に加わろうとしなかった。この二人の間で気持ちの区切りがつくのを待つためだ。

 

 「今この状況を怜が知ったらどうなる?ただでさえ、気持ちが不安定なのにこの電話を聞いてしまったら・・・?答えは火を見るより明らかだと思わない?」

 

 「あっ・・・」

 

 顧問の一言で竜華も気づいたのだろう。面会謝絶で会えなかった須賀京太郎の病状が、命に関わるものでもう会えないかもしれないと知ったらどうなるかはそれこそ一大事に至るかもしれない。

 

 「それで、君はどうする気?黙って私たちの話を聞いてくれたのは、私たち、特に竜華の気持ちが落ち着くのを待つためね・・・。あなた本当に高校生なのかしら?」

 

 微笑を含めながら電話の相手・・・つまり(京太郎)に話を振った。

 

 『高校生ですよ。少しばかり生死を彷徨ったせいで人の感情に触れることが出来て、達観したつもりになっているただの高校生ですわ』

 

 京太郎も少し笑いながらそう答える。それでも問題は山積みだった。

 

 「須賀君・・・。(ほんまに強い男やなぁ・・・。そんなんだからいっつも気になってん)」

 

 『竜華に話がいってしまったことから二人に内緒・・・という案は無くなりました。怜にだけ話をしないというもの多分、無理でしょうね。怜はホアホアしているように見えて、結構勘が鋭いですから・・・・・・』

 

 「そうねー・・・。いっそのこと全てをさらけ出すというのはどうかしら・・・?」

 

 顧問がとんでもないことを告げる。

 

 『ちょ、ちょっと待って下さい!!それはいくらなんでも乱暴すぎやしませんか?』

 

 慌てたのは京太郎だけじゃなかった。横で聞いている竜華も慌てていた。それは怜の事を思ってのこと。これからの生活に支障をきたすと思っていた。

 

 「そ、そうよ。いくらなんでも・・・」

 

 『一つ言い忘れたことがあります。それは手術の成功した場合と失敗した場合の事後の事です。死ぬということも有り得ますがそれ以上に、俺に関わった怜と竜華に不幸な事が襲いかかります』

 

 それまで少しだけ、笑いが入っていたその場の雰囲気が暗転するかのように暗くなった。

 

 「きょうたろー・・・?」

 

 『それは、記憶喪失・・・。怜や竜華と過ごしてきた日々が全部抜け落ちてしまうことなんだ。主治医から教えられた確率はこうだ』

 

 どちらか一方か、それとも竜華と顧問の両方かは分からないがツバを飲み込む音だけが聞こえてきた。京太郎の声を聞き漏らさないようにと思っているのかもしれない。

 

 『一番高い確率で手術成功が2%、その場合記憶喪失70%、成功してもそのまま植物状態28%。手術失敗80%、その場合記憶喪失20%や。だからどっちに転んでも記憶喪失になる確率の方が高いっちゅー訳なんだ』

 

 「「っ・・・・・・」」

 

 二人は呆然自失した。成功確率の低さと、どちらに転んでも記憶喪失になることが現実味を帯びてきたからだった。

 

 『まぁ、言い方悪かったかもしれないな。死ぬことよりもあんたらと過ごした幸せな日々を失いたくなかった。こんな思いをするのは俺ひとりで良かった。事実を知って愕然とするよりはどこか遠くの病院に転院した・・・とかそう言う誤魔化しでいけば良かった』

 

 「馬鹿言わないで!!」

 

 『えっ・・・?』

 

 静寂を打ち破るようにして竜華の声が職員室に響き渡った。上の階にも聞こえたかもしれないがそんなこと竜華が気にするような子ではなくなっていた。いつもは天然さんで優しい性格なのにこの時ばかりは京太郎に喰ってかかった。

 

 「うちや、怜はあんたと過ごせて良かったって思ってる。それをなかったことにしていなくなるのは嫌や。どうにかしてうちやきょうたろーが幸せになる道探さへん?」

 

 『竜華?・・・・・・そんなにおっきな声出したら怜に聞こえたと違う?』

 

 

 

 「うん、聞こえた。竜華のおっきな声・・・・・・」

 

 その場にいないはずの第三者の声が廊下から聞こえてきた。京太郎は少しばかりの勘があったのかもしれない。だいぶ時間が経っていることと、もし竜華を心配して怜が降りてきてその大声を聴いたりしてはいないだろうか・・・と。その勘は当たったようだ。

 

 「と、怜・・・・・・?」

 

 「うん・・・、竜華のおっきな声廊下の曲がり角ぐらいから聞こえてたでー・・・?」

 

 竜華はやってしまったと言わんばかりに顔面蒼白になっているが、怜の様子はちょっと違うようだった。

 

 「きょうたろー、そこにおる?」

 

 『あぁ、聞こえてる。怜の可愛らしい声。ちゃんと聞こえているから・・・。何か言いたいことがあるんだろ?』

 

 「可愛らしい声?そんな言ってもしゃあないやろ」

 

 『・・・そうかもな。一つ聞きたいけど、どこから聞いてた?』

 

 可愛らしい声と言われて、まんざらでもないように両手で頬を挟んで嬉しそうに柔らかい表情を浮かべた。

 

 「そやね、竜華の声が『それをなかったことにしていなくなるのは嫌や。どうにかしてうちやきょうたろーが幸せになる道探さへん?』って言っていたあたりからかな。だから大体のことは判断したつもりや」

 

 『そっか、酷な話かも分からないが怜の結論言ってみて』

 

 「うん・・・・・・」

 

 いつの間にか今まで話に加わっていた顧問が退席して、京太郎とつながっている電話を怜と竜華が囲んで話をしていた。

 

 「記憶喪失・・・やね?」

 

 『ああ、こればっかりはどうにもならないみたいだ。成功しても失敗しても、死ぬより先に記憶喪失になって須賀京太郎って言う個体がなくなるみたいだわ』

 

 「そっか・・・・・・」

 

 オロオロする竜華に比べて、京太郎の言ったことをすぐに受け止めている怜だった。

 

 『ハハ、怜は竜華と違ってどうしてそんなに落ち着いていられるんだ?俺でさえ、電話越しとは言え少々震えているってもんだ。武者震いではなく、単純に二人の事を忘れてしまうことに対する不安からだがな・・・』

 

 「うん、うちが落ち着いていられるのは多分・・・どうすればこれから三人にとって最善か分かったからかな」

 

 『「えっ?」』

 

 京太郎と竜華の声が電話と怜の横から同時に聞こえてくる。そしてこれから話されるであろう怜の言葉に耳を傾け用とする二人だった。

 

 

 

 「あんなー・・・」




 ビターエンドってベストではないけどそこそこ良い終わりかたのエンディングってYahoo!の知恵袋に載ってたからこれにしようと思ってた内容で終わります。
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