ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第1話

幼い頃、俺は一度だけルビス様に会ったことがある。

 

 

当時、アリアハンの周りのモンスターも然程凶暴ではなく、街から遠く離れなければ、それ程心配のない時代だった。

幼馴染みのシズクと、森で隠れん坊して遊んでた時だった、突然視界が暗くなり、気付いたら何時も遊んでいる森だと言うのに全く見た事のない広場に一人立っていたんだ。

太陽の光は、高くそびえ立つ木々の隙間からの木漏れ日程度。辺りには、人はおろか動物さえ見えない。

いくら叫んでも帰ってこない幼馴染みの返事。

次第に俺の心を不安が侵食していく。今にも泣き出しそうになったとき、ふと耳に水の打ち付ける音が聞こえてきた。流れると言うには激しい水飛沫の音、アリアハンの森には無いはずの滝の音がするのだ。

 

水の音を頼りに、森の奥深く歩いていくと、やがて視界が開けた場所に出た。

見た事も無いような巨大な滝が、凄まじい轟音と共に水を打ち付けている。

水飛沫に太陽の光がキラキラと反射し、壮大な虹の架け橋が鮮明に見える。そんな光映える辺りの木々や草花は、まるで幸せを謳歌するかの如く、生き生きと風に揺られている。

実際に見た事なんかないけど、教会で神父様に教えて貰った天国とは、きっとこの様な所だろうと思った。

暫くその天国を満喫していると、どこからとも無く声が聞こえてきた。それは、小鳥の囀りのような澄んだ美しい声は、耳からではなく、直接あたまの中に語りかけてくるような、何とも表現し辛いような不思議な声だった。

 

「私はルビス。世界を導きし女神。貴方の運命が周り出すことを告げにきました。先ずは貴方の名前を教えてください。」

「僕の名前はアリアハンのオルテガの息子、マコトです。」

「アリアハンのオルテガの息子、マコトくんですね?変わったお名前ですね〜。」

「なわけないだろ!!マコトだよマ・コ・ト!!」

「冗談ですよ〜嫌ですね〜」

 

カラカラと笑うルビス様は、本当に女神っすか?

思わず突っ込んじゃいましたよ俺。

その後も矢継ぎ早に繰り出される質問に全て答えた時、視界が真っ暗に反転いった。

意識が急速に引っ張られる感覚だ。

凄まじい速度で遠ざかっていく女神の気配が最後に残した言葉は

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

 

 

 

チュンチュン・・・

朝日がカーテン越しに射し込んでくる。

ジリリリリリ――――

 

「ん・・・もう朝か・・・」

俺は重い体を引き摺るように食卓につくと、母さんが朝ごはんを用意してくれた。

 

「ちょっと、マコト!あんた今日で16歳なんだから、シャキッとしなさいよ。今日は王様に会うんだから。」

「へいへい・・・」

 

 

俺の名前は"マコト"。城下町の片隅にある家に母さんと二人でくらしている、自分で言うのもなんだけど、一見何処にでもいるような男だ。

俺の親父はこの国で一番強い兵士だった。親父は数年前に突如現れた魔王を倒すために旅に出た。

 

あらゆる国を渡り、ついに魔王と対峙するが、戦闘の最中に崖から転落し、死んでしまった。

その最強の親父の血を引く俺は、いつしか次の勇者として国中の期待を集めていた。

 

全く迷惑なことだ。

 

「じゃあ母さん。行ってくるから。」

「マコト。あんた幼馴染みのシズクちゃんには、ちゃんと旅に出ること言ってあるの?」

「いやまだだ。でも、王様との謁見が終わって旅に出る直前に会いに行くよ。」

「そう?じゃあマコト・・・頑張ってね。」

「ああ、行ってきます。」

 

 

路地裏を抜け、街の人々が集まる市場を越えると丘が見える。丘の上には大きなお城がある。アリアハン城だ。

まだ幼かった頃、よくこの路地裏から見えるお城を、幼馴染みのシズクと眺めていたものだ。

 

「まさか、こんな形で夢が叶うなんてな・・・」

「本当よね。私もビックリよ。」

 

は?俺は突如声が聞こえてきた左側を見ると

 

サラサラと音がしそうな背まで伸びた輝くような黒髪。ほんのりピンク色に染めた頬が際立つような白い肌。何処かの貴族の娘と言っても信じそうな柔らかい物腰。そして何よりも、教会にある聖書に出てくる女神ルビス様と瓜二つな容姿をしている。強いて違うと言えば、ルビス様は金髪なのに対してシズクは黒髪だという事だろうか。

 

「って、シズク!!!何処から現れた!?」

「何処からって・・・お家からですよ?」

 

顔をちょこんと傾ける彼女。

か・可愛い・・・

 

「じゃなくて!なんでお前がここにいるんだって聞いてんのぉ!」

「そ、それは・・・だってぇ・・・」

 

よく見ればシズクは僧侶の衣に身を包んでいる。こいつついてくる気満々だな。

「なぁシズク・・・この旅は旅行じゃないんだぜ?魔王の討伐だ。戦いは男の役目なんだ。女の子がするものじゃない!!」

 

 

マコト Lv 1

シズク Lv15

 

 

「「・・・」」

 

「あの・・・マコトさん気を落とさないで?」

 

幼馴染みの優しい一言にダメージを喰らいました。

 

 

 

 

 

「もう・・・機嫌直してくださいよぉ。」

 

良いんです。どうせ俺は名ばかりの勇者ですから。そんなやり取りをしながら王室に通された俺達を王様とお姫様が迎えてくれる。

 

「おお!!そなたが勇者マコトかぁ!お父上に似て真の強そうな瞳じゃあ。」

王様は両手を握り、歓迎の意を表して抱き締めてくる。

 

「おい!ちょっと待て。どう見たって僧侶の衣着てるだろうが!」

シズクに抱き付く王様を引き剥がす。

 

「チッ」

この王様、舌打ちしやがったな。

俺が王様を白い目で見ていると

「勇者様。どうかお気をつけて下さいね?貴方に何かありましたらわたくし・・・」

お姫様が俺の両手を握りしめ、上目使いに労ってくれる。

そう!それだよ。勇者はこうやって敬われるように旅立たないとだよな?

 

 

 

ズガアアァァァァァン!!!

 

凄まじい衝撃が後頭部を襲った。しまった・・・シズクはそういう女だった。

薄れゆく意識の中で最後に見た光景は、幼馴染みが悪魔のような冷たい瞳で、俺を見下ろしている姿だった。

 

 

――――――――――――――――――――

――――――――――――――

――――――――

ハッ!ここは?

気が付くと白い天井が視界に入る。

 

「大丈夫ぅ?」

シズクが俺の顔を心配そうに覗き込んでくる。

彼女の髪が垂れ下がり、俺の頬に触れると、甘い香りが漂ってくる。

ここは天国なのか?

 

「ツッ!」

起き上がると鈍い痛みが頭の辺りに広がる。

「ここは?」

「教会だよ?あぁ、勇者マコトよ。死んでしまうとは何事です。って、なんか声が聞こえてきたよ?」

「え?俺死んだの?全然記憶にないけど・・・」

 

何故かシズクは目を反らし、ソワソワしながら

「ショックを受けると、前後の記憶が混濁するものねぇ~ハ、ハハハ」

乾いた笑いを見せる彼女だった。

 

まぁ気を取り直して先に進みましょう?彼女の言葉に釈然としないものを感じつつ、俺達は先を行く事にした。

 

 

「先ずは武器屋に行こうぜ!やっぱり武器が必要だろ。」

俺達は城下町の武器屋を目指し歩く。

 

「いらっしゃいませぇ。」

若い女の子の店員が一斉に声をあげる。長い旅を続けていけば、避けられないのは魔物との戦闘だ。人の生活圏を離れる程に、まだ見たこともない敵に遭遇することもあるはずだ。俺は親父のように強く、世界中の人類の希望にならなければならないんだ。やはり装備は必要だろう。

俺は店の中で一番強い武器、はがねの剣を取りレジへ向かう。

 

「ありがとうございます。2000Gです。」

店員の眩しい笑顔がたまらない。俺がポケットの中の財布からお金を・・・

「あれ?なんで40Gしかないんだ?」

「だって、さっきマコトさん死んだじゃないですか。だから死んだときに半分神様に取られて、さらに生き返らせるのに10Gで、残りがそれよ?」

隣で艶やかな皮のドレスを身に纏ったシズクが言った。

「おい雫・・・」

「な、何ですか?」

 

 

もう良いです・・・

結局俺はこん棒1本買いお金が尽きたところで店を出る。

それにしても王様・・・旅立つ勇者に100Gとかイケずにもほどがあるだろう・・・

 

 

次に俺達はルイーダの酒場を目指す事にした。

シズクは二人で良いじゃないってごねるが、勇者と僧侶だけではこの先必ず厳しくなる。やはり魔法使いと戦士が必要だ。

俺はシズクをなだめながら酒場へと辿り着く。

 

 

 

ルイーダの酒場

 

城下町の中では最も大きな酒場だった。

だだっ広い部屋の中には無数にテーブルが置かれ、そこには多くのパーティがお酒を酌み交わしながら情報を交換しあっている。

 

「マコトさんはどのような仲間を探しているのですか?」

「先ずは王道だが、前衛を任せられる戦士と、多くの魔物との戦闘を見越して魔法使いがいいな。」

あらゆる場面に対処しなければならない俺達の旅には、これが一番だと思う。

 

俺は先ずカウンターの女主人ルイーダに声をかける。

「魔王討伐に向かう勇者です。旅は長いものになりますが、それを希望する戦士と魔法使いはいますか?」

「あらあら。初めてのご登録ですか?それでしたら先ずは此方にご記入をお願いします。」

 

 

――出会い系酒場ルイーダ 貴方の素敵なパートナーが必ず見つかる――

 

「ここに名前と年令、職業と年収。あと好みのタイプを記入すればいいんですね?」

「はい。」

笑顔が素敵なルイーダさん。俺は筆を取り紙に記入を始めようとすると

 

ドン!!

紙にナイフが突き刺さり、隣に瞳の中の虹彩が消え失せた、表情は笑っているが、目が笑っていないシズクがいた。

「・・・二人で良いわよね?」

「はい・・・」

 

こうして俺達は二人キリで、魔王討伐への旅に向かうこととなった。

酒場を出る頃には既に日もかたむき、夜空の星が輝いていた。

 

「あら?マコトまだいたの?もう遅いから旅立ちは明日にして、今日は帰ってきなさい。シズクちゃんも一緒にね。」

「はい。おば様」

笑顔で母さんの腕に組み付き、共に家路に向かう母さんとシズク。

 

 

夜空の星になった親父に俺は決意する。

 

 

必ず魔王バラモスを倒す!!俺頑張るよ

 

明日から・・・

 

 

 

――つづく――

 

 

マコト Lv1 装備 布の服 こん棒

シズク Lv15 装備 皮のドレス 果物ナイフ

 

 

 

 

 

 

 

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