ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第10話

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「霧が出てきたな・・・」

誰に言うでもなく呟く。

俺達が名も無き村を出てから三日たっていた。村を出て直ぐの頃には、クラーケンの襲撃などにあいもしたが、エイトとゼシカに預けてあった親父の剣の凄まじい切れ味等もあり、さほど苦労もなく船を進めていた。

 

改めてアリアハンを出たばかりのあの頃を考えると、一応は俺も勇者として成長したものだ。

 

「マコトさん。甲板に出てどうしたのですか?海の夜風にあたっていると、体にさわりますよ?さぁ中に入りましょう?」

声をきき振り返ると、静かな微笑みをたたえたシズクがいた。

俺は彼女の元に近寄り、彼女の肩に手をかける。

シズクは肩にかけられた俺の手を見つめると、俺の顔を見上げ、まるでルビス様のような天使の笑顔を見せてくれる。

 

 

俺は彼女の体を引き、抱き寄せる。

彼女の瞳が潤みをおびている。波の音が、海の夜風が、月のあかりが俺達二人を祝福してくれている。

俺は彼女に唇を重ねる。

名残惜しむように唇を離すと

彼女はホンノリ頬を染め、上目使いに俺を見ながら、モジモジとしている。

この永遠のような一秒が俺はずっと続けば良い。

彼女の幸せの為に俺はバラモスを倒す!

改めて決意が心を満たしていく。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・きろ!いい加減におきろってばマコト!!」

俺は引っ張りあげられるような感覚に、薄く目を開けた。

朝日の眩しい光が俺の目を刺激する。

眩しさに目を細め、目の前の人物に目をやると、唇を袖で拭っているツカサがいた。

・・・どうしてお前は頬を染めてるんだ?

 

「あ!マコトさんやっと起きましたか?朝日を浴びて浸っているようですが、あれは西陽ですよ?もう夕方ですから。」

「え?夕方?俺はそんなに寝てたのか・・・」

 

俺の頭が漸く回転し始めた頃、キョウイチがドタドタと足音をたてて甲板に駆け上がってきた。

 

「姫!マコト!東をみろ!海賊船だ!いつの間にか近くまで寄せられているぞ!」

キョウイチが言うと、マストの上で双眼鏡を覗くロレンスが海賊船を見ている。

彼は暫く双眼鏡で海賊船を探ると、おもむろに不機嫌な顔になり、双眼鏡を投げ捨てマストを降り、そのままため息を吐いたキョウイチと共に船底へと消えた。

 

俺は甲板に投げ捨てられた双眼鏡を拾い上げ、海賊船を見ると、海賊船の甲板中央に一人の女船長が立っていた。

健康的な日焼けが眩しい。肩口まで伸びた髪はシズクのようにキラキラはしていなかったけど、海風になびく様はとても女性らしさを出していた。

海賊の船長は、とても健康的な・・・シズクとはまた違った美しさを持っていた。

 

「ふっ。なるほど彼女はどう見ても20代後半。ロレンスやキョウイチには興味なしか。」

どんな美女も、幼女でなければ興味なしってとこか。緊急事態ではあったが、二人の行動につい笑ってしまう。

しかし、あの海賊の女船長・・・なかなかに美しい女性だ。

だがそれ以上に彼女の不運を嘆く。

まさか海賊達も勇者一行の船だとは思ってもいないのだろう。

軽くあしらって、適当な所で改心させ逃がしてやるか。

俺はオルテガの剣の柄を握り締めた。

 

 

 

ドガァァァァァァン!!

 

次の瞬間、凄まじい轟音を轟かせ、炎に包まれた海賊船は海の藻屑となった。

おそるおそる後ろを振り返ると、賢者の杖をかざしメラゾーマを放ったサキと、その何十倍もの威力をもつメラを放ったシズクの姿があった。

 

「だって海賊と言えば悪じゃん?ねぇシズクちゃん?」

「はい!悪は可及的速やかに処分しなきゃですからね」

女の子二人は、たいして悪びれる様子もなく談笑していた。

 

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俺とツカサは目を点にしながら女の子二人を見ていると、海から俺達の船に這い上がってくる女がいた。女海賊だ。

 

「まだ私達は何もしていないと言うのに酷いじゃないか・・・」

「あんた海賊だろう?俺達が勇者一行と分かっていて襲いに来たのか?」

「襲いに来たわけじゃないよ?ふふ。このレッドオーブを勇者様に献上する代わりに、君にお近づきになりたくてね。」

大人な女性の雰囲気を存分に発揮した彼女は手のひらの上に乗せたレッドオーブを見せる。

 

彼女の手からレッドオーブを受けとると、彼女は男勝りな笑顔を見せてくれた。

シズクのような一見清楚な女の子も良いけど、男勝りな強気な彼女もまた別な魅力を感じる。

 

「あたしの名前は・・・」

 

 

 

 

ドボォォォォォン

 

 

 

 

次の瞬間、彼女は海に落ちていた。

彼女のいた場所にはハイキックを繰出した後の体制になっているシズクがいた。

 

「もう女の子の知り合いはいりませんよね?」

瞳の虹彩が消え失せた彼女が言う。ハッキリ言ってめちゃくちゃ怖い。しかし今回ばかりはやりすぎだ。せっかくオーブを届けてくれたのに、名前さえ名乗らせないとは。

 

「シズク・・・お前には良心ってものがないのか!?」

「え?両親ならちゃんといますよ?」

「・・・」

ダメだこりゃ。まるでわかっていない。

俺がため息を吐き、溺れはしないだろうが助けない訳にはいかない女海賊をみると・・・

 

「溺れてるな・・・」

「はい。溺れていますね・・・ドラゴンが。」

 

海には、先ほどまで女海賊がかぶっていた帽子を頭に乗せたドラゴンが溺れていた。

俺とツカサは無言でお互いを見て頷く。

 

「よし!見なかった事にしよう。」

ツカサの意見に賛同した俺達は船を進めた。

 

 

そう言えばシズクの両親って・・・頭の中に霧のようなモヤがかかる。

 

 

 

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暫く船を進めると陸地が見えた。

川の深さは十分にあるようで、そのまま川を上っていくと、再びマストの上で監視をしていたロレンスが村を見付けた。

 

「あれは地図通りならテドンの村だ!」

旅の行商人ロレンスが、即座に現在の俺達の居場所を的確に教えてくれる。

 

「流石ロレンスさん。旅なれていて頼もしいですねぇ。」

シズクが笑顔でロレンスを褒め称えている。

珍しいなと、少し放れた場所で見ていると

 

「要するに、ロレンスさんにキョウイチさん、そしてツカサさんは・・・またもやレイアムランドへの道を間違えたと言うわけですね?」

三人はシズクのゴゴゴゴ・・・と擬音でも聞こえてきそうな笑顔に震えている。

 

「待ってシズクちゃん。」

そんなシズクを止めたのは賢者の少女サキだった。どうして結婚したのか分からないけど、一応はツカサはサキの旦那だ。ミスミス傷付くところを見たくないのかも知れないな。

 

「私ね?イオナズンを覚えたの!シズクちゃん私にやらせて。」

シズクが頷くと、サキは嬉しそうな笑顔で賢者の杖を天空にかざした。

 

イオナズン!!

 

サキが魔法を唱えると、三人の目の前に光の粒子が収束していく。空気を圧縮するように光の粒子を中心に集めると、弾けたように周囲のあらゆる原子を巻き込み大爆発を起こした。

 

 

キョウイチにはきかなかった。

ロレンスにはきかなかった。

ツカサは死んだ。

 

憐れ、まさかの旦那のみにイオナズンは炸裂し、ツカサは口から煙を出し、真っ黒になって倒れた。

サキは跳び跳ね魔法の成功を喜び、シズクもサキの両手を握り供に喜んだ。

良いのか?それで・・・

 

 

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テドンの村は沢山の人で賑わっていた。

俺達が旅の途中に寄った町や村は、ある程度の違いはあれど、多少は魔物の影響なのか、暗い顔をしていた。

しかしテドンの村は、バラモスがいるとされるネクロゴンドの最も近くだと言うのに、どこよりも活気に溢れていた。

 

「勇者様一行ですか?え?アリアハンから?また随分と遠くから来たものだね。」

村の青年が気さくに話しかけてきた。

「この村はバラモスの影響はないのか?」

俺が不思議に思い彼に聞くと

「バラモス?さすがの魔王も、こんな小さな村までは襲わないよ。」

と言って笑った。

 

 

「なぁ何かこの村おかしくないか?」

「ツカサ・・・お前もやっぱそう思うか?俺も何かおかしいと思うんだ。特にあのシックスて名乗った青年。どこか人の生気を感じない。まるで人形のようだ。」

「あぁ、同感だな。こんな時正体は魔物のキョウイチがいれば、何か分かったかも知れないのにな。」

しかし彼は今は幼女もいないからと、船の見張り番をしている。

 

ツカサと同意見ってのが今一納得いかないが、とにかく俺の中の何かが危険信号を出している。

「シズク!気を付けろよ・・・って、あれ?あいつどこに行ったんだ?」

 

 

ふと周囲に、いつもいるはずのシズクがいないことに気が付いた。

 

俺とツカサはあまり気にしないで、シックスに言われるままに村の中心まで足を運ぶ。

そこには・・・今まで見たことも聞いた事もないような、不思議な空間だった。

先ほどまでは、こう言っては何だが只の寂れた村だったのに・・・

住居の中には、下のフロアーが全く見えない程深く真っ暗な闇の底へと続くような階段だけがあった。

 

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「ようこそいらっしゃいましたぁ」

沢山のバニーガール達が、俺達を迎えてくれた。

 

少し前を歩いていたシックスは俺達の方へ振り向き、ニヤリと笑う。

「ここは世界最大の賭博場、通称“マボロシノダイチ”だ。二人とも、世界の事は一旦忘れて、日頃の疲れを癒してくれ!」

シックスは両手を拡げ、さぁ見ろとばかりに賭博場の入り口を開けた。

 

 

「すげーなぁ。お!見ろよマコト。最新のスゴロクまであるぜ?」

ツカサは大喜びで、スゴロク場へと駆けていく。

「なぁツカサ。本当に大丈夫か?俺達はこんな事をしてる場合じゃねーんだぜ?」

「少しくらい大丈夫だって。ほらオヤジ。スゴロク1回150Gだ。」

そう言ってツカサはお金を払い、スタートにつく。

係りの者に大きなサイコロを渡されると、ツカサはそれを天井に届きそうな勢いで投げた。

 

6

 

「お!いきなり6とは幸先が良いぜ」

ツカサは胸を張って歩く。

ツカサが6歩目のマスに止まった時だった。突如ツカサは俺の眼前から消えた。

「ツ、ツカサぁぁ!!」

 

「あ!残念でしたね。彼はいきなり落とし穴に落ちて、失格になったみたいです。」

シックスが笑いながら言う。

ツカサ・・・お前はどこまで残念なんだよ。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※…

 

 

何だ?どうなってるんだ?

俺もツカサも、さっきら少し進んでは落とし穴に落ちて先に進めない。このままでは路銀も尽きてしまうのは明白だ。

「イカサマじゃないのか?」

「全く・・・勇者様ともあろうお方が何て事を言うのですか。ほら、あのスロットマシンを見てください。可愛いらしい女の子が大当たりを出しているじゃありませんか。」

 

言われるままにスロットマシンの方をみると、大当たりを出してキャーキャー騒いでいる女の子が二人。

 

「サキさんとシズクちゃんじゃねーか。あの二人・・・半端無い数のメダルをもっているぞ?」

ツカサが言う通り、彼女等は持ちきれなくなったメダルを大樽に入れて、キョウイチとロレンスに持たせている。

 

「あいつ等すげーなぁ。」

ツカサの言うことも分かる。だけど俺はどうして俺達より先にカジノを見つけていたのかが気になる。

 

大当たり~♪

 

ファンファーレがカジノに鳴り響く。

どうやらまたサキが何か当てたらしい。見ればシズクと手を取り合って喜んでいる。

 

なんと1等賞でサキが光のドレスを当てたらしい。

 

その直ぐ直後にはシズクも大当たりの特賞をひく。

「お?シズクも何か当てたみたいだな。何だ?その光る石は。」

シズクは手にした石をじーっと見ている。

 

「凄いじゃないですか!それは一番高価なオリハルコンの原石ですよ。」

シックスが笑顔で駆け寄ってくる。

「おいシズク!やったな!オリハルコンだってよ。」

俺がシズクの大当たりを一緒に喜ぼうとすると、彼女はオリハルコンを俺の顔面に投げつけた。

 

「痛てー!!何をするんだ!オリハルコンは貴重な石じゃねぇか。」

「何でただの石が一番の宝物なんですかぁ!!こんなの私の家の庭にたくさん落ちてますよ!」

「落ちてるかー!!オリハルコンは神の石と言われててなぁ。とても貴重な金属なんだぞ?第一お前は俺と同じアリアハン出身だろうが!アリアハンにオリハルコンなんか落ちてねー!」

「・・・」

 

急に黙り込む彼女。

いったいどうしたと言うんだ?

 

「勇者様。僕とポーカーで勝負しませんか?僕はこれを掛けます。」

と言って、シックスはグリーンオーブを出した。

「ぐ、グリーンオーブか。じゃあ俺は・・・」

「勇者様は、彼女をかけて下さい。」

そう言って、先程から急に静かになったシズクを指差した。

 

「ば、バカな!そんなの無理に決まってるじゃねぇか。」

「でもグリーンオーブ必要でしょ?良いんですか?あのツカサって人、さっきからずっと落とし穴に落ちてますよ?お金・・・もう無いんじゃないですか?」

 

俺はスゴロクの方を振り向くと、バカの一つ覚えの如く、まさに落とし穴に落ちる瞬間のツカサの姿が目に入った。

 

結局俺はシズクの了承を得て、シックスとの差しでの勝負を受ける事になった。

 

 

 

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ザワザワザワ・・・

 

ザワザワザワ・・・

 

回りの観客が色めきあっている。

俺は手元のカードをみると、エースのワンペア

しか揃っていない。

シックスを見ると、ヤツと目が合う。

ヤツはニヤリと笑うと、手持ちのコインを台座に追加する。

 

俺は勝負に出なければならない。あの様子ではヤツには勝てそうにない。

しかし、負けるわけには行かないんだ。

カードを持つ手に汗が浮かび上がる。

俺はコインを追加し、エース以外の3枚のカードを交換した。

 

くっ・・・結局俺はエースのワンペアだった。

 

「コール!!」

 

勝利を確信したかのような顔のシックスが勝負をかけてくる。

すまないシズク・・・俺はお前を守れなかった。

走馬灯のように彼女との思い出が頭をよぎる。

 

マコト 1.1.6.2.12

シックス 1.3.4.6.7

 

「え?ブタ?」

「ワハハハハ!!合計が21だ!俺の勝ちだな!ワハハハハ・・・」

椅子の上に立ち上がり、勝ち誇るシックス。

 

 

「それはブラックジャックだぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「え?何で?合計が21が強いんじゃないの?」

狼狽え始めるシックス。

すると彼に呼応したかのように、カジノ全体が揺らいでいる。

いや、これはカジノじゃない。空間全体が揺れているんだ。文字通り幻の大地のごとく。

 

俺達は急いで入ってきた階段をかけ上がる。

後ろからは、沢山の悲鳴が頭の中で響き渡る。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

階段を登りきりテドンの村に戻ると、スッカリ朝になっていた。

しかし、そこには昨夜見たような賑やかな村ではなく、建物は全壊し、荒れ地には毒を放つ沼地。草はぼうぼうで、辺りには人であったのだろう骸骨が散乱していた。

 

俺は来た道を振り向くと、見覚えのある布切れを纏った骸骨が倒れていた。

ま、まさか・・・

 

「なぁシズク・・・まさかあいつ等全員?」

 

もしかしたら、彼等は生き返りたくて、シズクのザオリクを期待して彼女をかけたのかもしれないな。

 

しかし、そのシズクはいくら待ってみても彼女からの返事が来なかった。

 

「あ!シズクちゃん。立ったまま気絶してるぅ!」

 

 

サキの可愛らしい声が、廃墟になったテドンの村に木霊した。

 

 

 

ーー続くーー

 

 

マコト Lv42 装備オルテガの剣

シズク Lv?????? 気絶中

ツカサ Lv7 武道家見習い。スキル:落とし穴に落ちる。

サキ Lv28 賢者 スキル:ラッキーガール

 

その他2名 職業船漕ぎ スキル:荷物持ち




あまりズルズル書いていても、原作を知らない私だと限界がありますので、あえてオリジナル展開です。原作ファンの皆様、申し訳ありませんが、クスッと笑っていただければ幸せです。

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