ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第12話

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まだ幼い子供の頃。

俺は親父の後ろ姿が好きだった。

 

 

城の兵士長だった親父は、アリアハンでは右に出る者無しと言われた勇者だった。

魔王軍による世界の蹂躙される以前は、アリアハンを中心とした世界だったと言うが、俺の物心が

ついた頃には世界中の国同士が小競り合いを繰り返す世の中になっていた。

 

親父は戦争の度にお酒を飲みながら、声を殺して泣いていたのを覚えている。

 

俺が14才の頃、突如魔物は凶暴化した。

 

軍事国家のネクロゴンドが僅か3日で陥落し、魔王を名乗るバラモスは、その力と恐怖心を人の心に植え付けた。

 

親父もアリアハンの守りの為に戦っていた。

しかし、いくら親父が強くても多勢に無勢。仲間の兵士達は次々とその命を散らしていった。

 

このままでは消耗戦。いずれは魔王軍に負けると判断したアリアハンの国王は、親父にある密命を出した。

 

"魔王バラモスの討伐"

 

親父は愛剣だけを携え旅に出る。

 

 

『マコト・・・父さんは魔王バラモスを倒しに旅に出る。お前は父さんの息子。母さんを守れるのはお前しかいない。母さんを頼んだぞ?』

 

そう言った親父は、まだ小さかった俺の頭に大きな手を乗せ、そして笑った。

厳格な親父の最初で最後の笑顔・・・

きっと親父は嬉しかったのだろう。国の為に人と戦うのではなく、全ての人の為に魔王バラモスと戦えることに。

 

 

 

俺は今でもその笑顔を忘れてはいない。

 

 

 

 

そして2年後。

 

俺の16の誕生日も間近というころ。俺達母子に届いた訃報。

親父は魔王との戦闘中に、足を踏み外しギアガの大穴と言われる底無しの大穴に落ちて死んだのだ。

 

魔王バラモスは人類に恐怖と絶望を与えた敵。だけど、俺にとっては親父の仇でもある。勇者としては問題ある発言かもしれないが、俺にとっては絶対に倒さなきゃならない敵・・・

 

それがバラモスだった。

 

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俺達は今、バラモスがいるであろう扉の前にいる。かつて王座の間に続く煌びやかな装飾された扉の隙間からは、物凄い熱気と覇気が溢れている。今までのヤツ等とは桁違いだ。

魔王はすぐそこにいる。

俺が扉の取っ手に手を触れたその時・・・

 

「マコトさん・・・」

 

それまで静かだったシズクが心配そうな顔で俺の腕に手を乗せた。

「この扉の向こうには魔王バラモスがいる。最悪の場合もあり得る。」

彼女はフルフルと顔を振る。

「もし・・・もし俺が倒れる事があったら、お前はサキさんを連れて逃げてくれ。だけどもし・・・もし生きて帰れたその時は・・・」

「その時は?」

 

彼女の瞳が潤みを帯びている。

キラキラと輝くその瞳は、より一層に美しさを引き立たせる。

俺は決意をもって彼女に、自分の気持ちを伝えよう・・・

これが最後になるかも知れないから・・・

 

「シズク・・・俺は・・・」

「は、はい!!」

 

 

 

「さっさと入ってこんかー!!何時まで待たせるのだ!!」

 

 

 

バーンと勢いよく魔王の部屋の重圧な扉が、まさかの内側から開いた。

 

「貴様等が近くまで来ているのを部下からの報告で聞いていたから、せっかくワシ自らマグマを敷き詰めて待っていたと言うのに、火事になったらどうするんだ!!来たならさっさと入らんか!」

 

 

意外とマメな魔王バラモスが現れた。

 

 

「・・・で・・・んですか!」

「なんだ?小娘!ハッキリ言わんか!あまりの恐怖に声も出ぬか?ガハハハ」

 

バラモスは、俺達を見下し笑っている。

「あ・・・魔王に死亡フラグたった」

ボソッと呟く賢者のサキ。

 

「ええい!煩いわ人間共め!くらえ、イオナズン(Lv99)!!」

 

無意味に自分の呪文が強力な事をアピールするバラモスの腕から、光の粒子が俺達の目の前で凝縮されていく。

狭い空間に集まった粒子は一気に弾け、回りのあらゆる原子を巻き込んで大爆発を起こした。

 

自慢はどうかと思うが、流石は魔王バラモスのイオナズン。今までのイオナズンよりは遥かに凄まじい威力だった。

 

さらにバラモスは大きく息を吸い込むと、灼熱の炎(Lv99)を重ねてくる。

 

 

 

俺は盾を前に爆風と熱から身を守るが、みるみる盾が熱で融解していく。

バラモス更にイオナズンを重ねようと、魔力を凝縮させている。

 

このままではヤバい。

せめて後ろの二人だけでも守らなければ・・・

俺が死を覚悟したその時だった。

 

盾の前に両手を広げ立つ姿が見えた。

 

 

長い髪が爆風に揺られている。イオナズンのはっする光の逆光で表情はよく見えなかったけど、いつも見ていた唇は、優しい彼女の微笑んでいるときの形をしていた。

 

『マコトさん、貴方は勇者なんだからこんな所で倒れちゃダメです・・・魔王を倒して、そして必ず幸せになって下さいね・・・』

 

聞こえる筈のない彼女の声が頭の中に流れてきた。

 

 

ドガァァァァァァン!!

 

止まっていたような時を経て、バラモスの放ったイオナズンは轟音と共に爆発した。

 

 

 

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―――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――

 

「シズク・・・しっかりしろ!早くベホマを!」

俺が爆発で壁まで吹き飛んだ彼女を抱き抱え、彼女に話しかける。

「マ、マコトさん。良かった・・・無事ですね?」

「バカ!何で俺何かの為に・・・」

 

俺の頬を一筋の暖かいものが伝う。

その涙を彼女は薄目を開け、震える手を俺の頬に添えて涙を拭う。

 

「マコトさん。まだ終わってないよ?まだ泣いちゃダメ。マコトさんにはまだ世界中の人の希望を背負っているのだから・・・」

「世界なんかどうでも良いんだよ!俺はお前がいなきゃダメなんだよ。」

「マコトさん・・・また泣いた。案外マコトさんって泣き虫ですよね・・・」

「シズク・・・」

「私・・・最後にさっき言おうとしてた言葉が聞きたいな・・・」

 

彼女は既に瞳を閉じたままに話す。彼女の元々白かった肌が、生気の色を失っていく。

嘘だと思いたかった。

いつも隣で微笑んでいた。

たまに怖いが、優しかった。

あぁ・・・俺はこんなにも彼女のことを・・・

 

 

「シズク・・・俺はお前を・・・」

彼女の力の抜けた腕をとり、彼女の胸に顔を埋めて泣いた。

シズク・・・

 

 

「ガハハハ!僧侶が死んだか?ワシのLv99のイオナズンで・・・」

「うるさい!!」

俺は今、初めて魔物に本気の怒りを感じた。

 

見ていろシズク、俺は必ずお前の仇を取るからな!そして・・・

 

 

 

 

 

 

――続く――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――次回予告―――

 

 

彼女は光となって消えて逝いった。

最後まで微笑みを浮かべたままに・・・

マコトの慟哭が鳴り響く。

勇者マコトの怒りと悲しみが天を貫く時、一柱の光が彼をうつ。

光に包まれた勇者マコトは、光の大勇者となり彼の力が覚醒する。

 

光の勇者の一閃は魔王バラモスを撃破する。

 

 

「シズク・・・二人で光となって共に暮らそう。俺達はいつも一緒だよ。結婚しよう・・・」

そうしてマコトはシズクの唇に、そっと唇を添えた・・・

 

 

次回、天空の結婚式

 

この次も見なきゃお仕置きよ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おいシズク。お前よく喋るな・・・」

「え?・・・あ!バラモスにやられてお腹が痛い。」

「嘘吐けー!!第一爆発は背後だっただろ?なんでお腹なんだよ!だいたいなんだよ次回予告って・・・」

 

彼女は慌てて背中を擦り出す。

 

「「・・・」」

 

 

「ちょっと見せてみろ!」

「な!ちょ、ちょっとそこは!!お、女の子の服を捲ろうとするなんて・・・」

「うるさい!良いから見せてみろ!」

「あん・・・え、エッチ!痴漢!通報しますよ!!」

 

ジタバタと暴れるシズク。

 

「「・・・」」

 

 

「綺麗だな。」

「え?マコトさん・・・本当?」

 

照れる彼女の頬がホンノリ赤く染まる。

本当に彼女の背中は綺麗だった。真っ白で滑らかなきめ細かい肌。

そして、あれだけの爆発を直撃したのにも関わらず、傷一つない・・・とても綺麗な背中だった。

 

 

「バカな!!Lv99のバラモスであるワシの攻撃を直撃して無傷だと?」

俺達の会話を聞いていた魔王の顔から笑みは消え、ピンピンしているシズクを見て狼狽えている。

 

「Lv99?ゴミですね。」

 

死んだフリを諦めたシズクは、今まで見てきたどんな瞳より冷たい瞳をしていた。

こ、怖っ

 

「参考までに教えますが、私のLvは53万です。」

 

い、今なんていった?

流石の魔王も絶句している。

 

 

 

「「ご、53万!?」」

 

 

 

 

綺麗にかつ、華麗にバラモスと俺の突っ込みがハモる。

 

 

あまりにも規格外の回答が辺りを凍らす。

一歩、また一歩と後ずさる魔王バラモス

 

「ルーラ!!」

魔王が呪文を唱え全身が光につつまれると、次の瞬間遥か上空に飛び上がる。

そして魔王は東の空へ凄まじいスピードで飛び去った――――――筈だった。

 

ガンッ!!

上空で物凄い勢いで見えない壁にぶち当たったバラモスは、そのまま真っ逆さまに墜ちてきた。

 

「知らなかったんですか?僧侶(ワタシ)からは逃げられませんよ?」

そんなの聞いたことも無いよ。

シズクは、墜ちてきたバラモスの頭をグリグリと踏みつけている。

 

心なしか魔王が興奮しているように見えるのは気のせいだろうか・・・

 

 

「バラモス、今こそ親父の仇を討たせてもらうぜ・・・」

「ちょっと待て!!聞き捨てならねーな!」

 

いつの間にか背後に来ていたキョウイチが振り上げた俺の剣を止めた。

 

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「お前等いつの間に?」

「今来たとこだよ。それよりも・・・あれはどんな状況なんだい?マコト」

俺の質問に共に合流したロレンスがこたえる。

 

そんな俺達の会話をよそに、珍しく真面目な表情のキョウイチは

「諦めろバラモス。」

バラモスに言う。するとバラモスはウットリとした表情を一変させ

「あ、アニキ!!お前どこに行ってたんだよ!いくら双子だからって、俺に全部押し付けやがって。このロリコンが!」

「う、うるせー!お前が魔王をやりたがったんだろうが!!この中二野郎が!」

 

なんと・・・キョウイチはバラモスと双子の兄弟だった。

どおりで・・・

ロリコンに中二病・・・

魔物って種族はマトモなヤツはいないのだろうか。

 

 

 

ギャーギャーと口喧嘩を始めだした変態兄弟。

とても低レベルだ。

 

「だいたい相手をよく見ろ!お前が姫に勝てるわけがないだろうが!!」

「あ?姫だ?何を言って・・・・・・!?お、お前はまさか!!」

 

 

ズガァァァァァァァァン!!

 

 

 

魔王バラモスは、何かを言おうとした瞬間シズクの痛恨の一撃クラスのハイキックを顔面に喰らい、キリキリと擬音をたて、回転しながら吹き飛んだ。

 

「マ、マコトさん!今です。今こそ勇者の力で、この変態バラモスを・・・いえ、魔王を倒すんです!!」

ご丁寧に言い直すシズク。

でも、その肝心な魔王バラモスは・・・

 

「それ、もう倒してますよね?」

俺が言うと

「死んでるな。」

「あぁ、駄目だなこりゃ。」

「バラモス・・・安らかに眠れ・・・」

「だから死亡フラグって言ったのに。賢者は何でも知ってるんだから。」

 

 

ツカサにヒデアキ。

キョウイチにサキが思い思いに呟く。

 

 

「ちょ、ちょっと何勝手に死んでるんですか!魔王は勇者が倒して平和にする。そして重圧から解放された勇者は私にプロポーズってシナリオがハッピーエンドに決まってるでしょ!!やり直しです。やり直しを要求します!!」

 

シズクは恐らく最初から計画していたであろう企みを漏らしながら

無茶苦茶な事を言って、完全に白眼をむいているバラモスの襟首を掴み、ぐわんぐわんと揺さぶる。

 

 

 

まぁ・・・色々あったけど、とにかく俺達はついに魔王バラモスを倒したんだ。

世界中を恐怖のどん底に落としたバラモスはもういない。

 

 

「さ、帰ろうぜ?」

俺はシズクの肩を抱き寄せると、彼女ははいと微笑んでくれた。

 

 

俺の幼馴染みがこんなに可愛いわけがない。

 

 

ふと浮かんだ言葉を胸に、俺達はそれぞれの遥かなる故郷を目指すのだった。

 

 

 

 

――続く――

 

 

 

魔王バラモスを倒した。

 

 

 

マコトは経験値1を手に入れた。

シズクは婚期のタイミングを失った。

ツカサはお笑い担当のスキルを手に入れた。

サキは呟きスキルが上がった。

キョウイチは船漕ぎの職を失った。

ロレンスは・・・全財産をシズクに奪われた。

ラーミアのアイラは焼き鳥にされずにすんだ。

シックスはちゃっかりテドン以降憑いてきたが、あっさりシズクにニフラムで強制的に成仏させられた。

 




長々とありがとうございました。次回はアリアハン編のエンディングです。皆様暖かいコメントありがとうございました。とても励みになります。
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