ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第13話

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暗い闇の中で光と金属音が静寂を引き裂く。

 

 

「何故そなたがこの世界にいるのだ。そなたに与えた世界はこの世界ではないはずだが?」

「今の俺はもうお前の人形じゃない!!」

「笑わせる!!」

 

闇の奥深くにいる者の唱えたマヒャドがピサロと呼ばれる男に直撃し、爆風とともに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

 

ピサロは凍りかけた腕をベホマで回復しながら、仲間の女と二人、姿の未だ見えぬ者と距離を保つ。

「どお?ピサロ。」

「やっぱりダメだな、まるで刃が通らない。やはり俺ではヤツにダメージを与えることができないみたいだ。ロザリーの方はどうだ?」

「私の方もダメね。さっきから天空の剣が沈黙しちゃってるもの。」

「そうか・・・やはり天空の剣でもヤツには届かないのか。」

「前から思っていたけど、ピサロあんたアレを知っているの?」

 

ピサロは固唾を飲み、意を決したように話す。目線と折れてしまった剣を相手に向けたままに。

 

 

 

 

「ヤツの名前は大魔王ゾーマだ。」

 

 

 

 

ロザリーはその名前に覚えは無かったが、名前を聞いた瞬間に鳥肌が全身をおおった。彼女自身初めての経験だったけど、それがゾーマと呼ばれる者の凄まじさだと言うことは経験から理解した。

 

「ゾーマは大魔王とも言われる、言わば魔界の神だ。俺達魔王と呼ばれる者は、全てゾーマから借り受けた力を持つ者達なんだ。」

「ピサロ・・・かつてデスピサロと言われたあなたもそうなの?」

「そうだ。俺は進化の秘法で最強を求めていたときにヤツとは出会った。ヤツは俺に魔王のごとき力を与えてくれた。同時に破壊衝動も与えられて理性を失ったんだが・・・そんな時に出会ったエルフの少女が俺の正気を取り戻してくれたんだ。」

 

「ピサロ・・・」

ロザリーは自分とピサロとの出会いに胸が締め付けられた。

「ロザリー・・・俺はお前に会えて良かった。悔しいが俺ではやはり神であるゾーマには敵わない。少しでもマコト達の為にヤツに手傷を与えておきたかったんだが・・・。ロザリーお前はマコト達の処にむかい、ゾーマに関わるなと伝えてくれ。俺は何とかお前が逃げる時間を稼いでみる。」

「ピサロ・・・嫌よ!私は最後まであなたと戦うわ・・・」

「ロザリー・・・」

 

 

「別れの挨拶は済んだのか?祈る時間くらいならくれてやるぞ?」

「ふん!大魔王ゾーマ様ともあろうお方が、ずいぶんと優しいじゃねーか?」

「余にも死に逝く者への手向けを与えるくらいの気まぐれはある。死、それが汝の運命だ。デスピサロよ、せめて我が手で闇に帰るがいい!!」

 

それだけ言うと大魔王は手の前に見たこともないような、大きな光の球体を出現させる。

 

 

 

 

すまないマコト・・・

 

 

 

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「くっ!なかなか手強いな。」

俺達は今、確実に窮地へと追い詰められている。

柔らかそうでいて固い。あの不特定な形状のモンスターは、俺とシズクを取り囲む。

 

「シズク、俺の後ろに下がっていろ。」

言うが早いか、行動が早いか、彼女は俺の背後に身を隠す。

「それにしてもこの窮地・・・どうしたものか。」

「全く・・・マコトさんが油断するから追い詰められるんですよぉ。」

「だってよ、メタルスライムなんてどうせすぐ逃げちまうじゃねーか。」

「だからと言って剣も抜かないなんて、バラモスを倒したからって調子に乗りすぎなんじゃありませんか?」

「ムカッ!だいたいバラモスを倒したのはお前だろうが!俺は調子になんか乗ってませんー。」

「何かムカつきますね。」

 

彼女の瞳から虹彩が消え失せる。

これ以上は危険だ。このままではバラモスを倒したのに家に帰る前に死んでしまう。

俺が渾身の力をオルテガの剣にこめて、メタルスライムに斬りかかる。

ヒラリ

軽快なリズムで難なくかわすメタルスライムは、10匹纏めてメラを唱える。

 

「あちーっ!!」

メラにより引火したローブから、魔法のものとは違うダメージを与えられる。

「俺の一張羅が・・・」

「・・・フフフ・・・あはははは」

突如シズクが肩を震わせて笑いだした。

 

「何だかこういうケンカ久しぶりですね。」

目に涙をためるほど笑っているシズク。だが確かに久しぶりかもしれない。

アリアハンを出たばかりの頃はいつもこんなだったよな。

野宿の時に、寝ている俺の毛布を剥ぎ取られ風邪ひいたり、夜中に寒いからと言って焚き火を消さずに寝たら、森が焼けてしまったり。

 

宿屋でもそうだ。

シズクがベッドで俺は床。でも明け方になるといつの間にか俺もベッドで一緒に寝ていた。少し寒そうなシズクを後ろから抱き締めてやると、とんでもない威力の裏拳が飛んできたり・・・

 

夕食を買いに行く係りはシズクだったな。

お前は商人のおっさんに笑顔で語りかけては、店が潰れちゃうんじゃないの?って程の値切りをさせていたのを、俺は知っていた。

 

雨の日はお前は俺のローブの中に入り込んできたよな?

 

アリアハンの田舎町から旅してきた俺達は、いつも二人で支え合ってここまできたんだよな。

 

 

.

 

 

 

 

そして、旅が進むにつれて、いつの間にか仲間が増えたんだよな。ツカサやサキ、キョウイチなんて最初は敵だったしな。

俺達の魔王討伐の旅の中で、俺はかけがえのない大切なものを手に入れていったんだ。

 

最初は親父の敵討ちくらいの気持ちだったこの旅。シズク・・・お前のお陰で俺は本当の意味で勇者になれたのかも知れないな。

 

シズク・・・アリアハンに帰ったら俺はお前にプロポーズをしよう。最初は勇者として事後処理も色々あるだろうけど、これからは二人で幸せに暮らしていこう。

 

彼女の方を見ると、まるで俺の心の内の決心を聞いていたかのように

 

「さぁ!こんな敵は早く片付けてアリアハンに帰りましょう?」

そう言った彼女は、朝日のような輝く女神のごとき微笑みを見せてくれた。

 

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「剣・・・折れてしまいましたね。お父様の形見の品だったのに。」

「あぁ。でも仕方ないさ。お前を守って折れたのなら親父も満足だろうよ。」

「はい。」

彼女は俺の肩に自分の頭を持たれかけた。髪からは甘い香りがした。

 

 

「あの丘を越えればアリアハンだ。早く帰ろうぜ!」

彼女と二人、手を繋ぎ丘の向こうへ歩く。

 

 

 

ここで仲間に付いて語ろうと思う。俺にとっては何よりも大切な存在だ。

 

 

 

先ずはツカサとサキだ。

 

思えば彼等が一番付き合いが長い。まだアリアハンの大陸を出る前、隣の村からだったよな。

 

最初はやたらとイカツイその容姿に正直少しビビっていたんだよなぁ。

色々あって、実は武道家の格好をしているけど、ただの村人だったのには驚いた。

サキもそうだ。最初はよく泣く女の子だったが、今では努力?の甲斐あって、名実共に世界にただ一人の賢者だ。

 

しかしこの二人で驚かされたのは結婚についてだ。サキと仲良くなったシズクの情報では、ツカサが飴をあげるからここにハンコウを押してねぇと半ば詐欺のようなエピソードだったそうだ。

 

ただ、シズクによればサキも満更ではないらしく、今では子供の計画まであるとか無いとか。

 

彼等はレーベの村で幸せになることだろう。

 

 

 

 

 

次に仲間になったのは商人のロレンスだったな。

 

最初は俺達の旅の路銀を稼ぐ為の仕事をまわしてくれる、まさに雇い主と雇われみたいな関係だったな。

ロレンスはシズクに容赦なく何度もぶっ飛ばされたのに、次の瞬間にはケロッとしてたよな。

案外人間じゃなかったりしてな。

彼はロマリアからポルトガをメインに商館を渡り歩いていたが、今回の旅で全く何もない村に流通経路を創るのが気に入ったと言って、ロレンスはエイト村長とゼシカさんにポポタ君。そしてミーティアちゃんの村へ行った。

 

あの人ロリコンだから、また捕まらなければいいけど・・・

 

 

.

 

 

次に仲間になったのはピサロとロザリーさんだったな。彼等とはノアニールで出会った。全てが眠りについた村で出会った。

最初はお爺さんと孫のようにみせていたけど、色々あってロザリーさんの母親であるエルフの女王ヒメア様が認めてからは、二人は完全に自分達の世界を築いていたっけ?

 

そして何よりも驚いたのはピサロは別世界の魔王で、ロザリーさんに出会って魔王を辞めたってことだった。本来別々の種族同士の筈の二人が恋をする。

 

俺以外にも勇者はいるし、別世界なんてのも存在する。そして、別々の種族同士でもいつかはわかり会えるのかも知れないな。

 

あの二人・・・ジパング以来見てないが、きっと二人は今も変わらずにイチャついているのだろうなぁ。

 

 

 

次はキョウイチか・・・

ヤツの正体は魔物。魔王バラモスと双子の兄弟というからには、おちゃらけているが、実は凄い魔物なのかもしれない。

ヤツとはピラミッドで出会った。妙にロレンスと仲が良くて、いつの間にかちゃっかり仲間になっていた。キョウイチもよくシズクにぶっ飛ばされていた。

彼のお陰で俺は、シズクの行き過ぎた折檻をたいぶ免れた。

ある意味ではもっとも助けられた仲間だった。

魔族のキョウイチとここまで仲間になれるのだから、いつかは魔族と人間は理解し会える日がくるかもしれない。

シズクが、キョウイチはずっと未来にモンスターじいさんとなって、モンスターを仲間にする大切な役割があるとかフザケテ言っていたが、あながち間違いでもないのかも知れない。

 

 

 

他にも沢山の出会いと仲間がいた。テドンのシックスのお陰で、サキは最強の装備を手に入れたし、俺はオーブを手に入れた。オーブが足りないのに、無理矢理引っ張り出して空からの侵入を手伝ってくれたラーミアのアイラに、大事な一人娘を説得してくれたセブンにマリベル。

 

仲間ではないけど、ある意味貴重な体験をさせてくれたイシスの王。

 

だれが欠けていても俺達は魔王を倒せなかった。そう思うと視界が涙で歪む。

 

――さん!マコトさんってば!!

 

「あの煙りが出てるのってアリアハンじゃありませんか?」

シズクの言葉を聞き、改めてアリアハンの方を見ると、城を始め、町全体が炎に包まれ黒煙をあげていた。

 

 

 

 

町に入ると、至るところから悲鳴のこえが聞こえた。道端に倒れこんだ人もいる。倒れた親の傍で泣いている子供。

シズクはそっと子供を優しく抱き抱えると、子供は安心したかのように眠りにつく。

 

母さんは!?

俺は勇者としては最低だが、母親の安否が直ぐにでも知りたく家に向かって走った。

 

家は焼け落ちていた・・・

俺の部屋もない。母さんがよく作ってくれたカレーライス。親父と二人で火をふきそうになりながら食べた。母さん辛党だったからなぁ。

母さん・・・俺は膝から力が抜けたように崩れると、後ろからシズクがそれを抱き締めて支えてくれた。

「マコトさん!しっかりしてください!!まだ死んだと決まった訳ではないんですから。」

「・・・そうだよな。すまないシズク。こんなときこそ俺がしっかりしなきゃだよな?勇者だしな。」

シズクだって自分の養父が気になるだろうに、こんな時でも彼女は俺を支えてくれる。

 

 

アリアハンのお城も焼け崩れていた。

一番奥の玉座に力無く座っていた王様に俺は話しかけた。

「王様・・・いったい何が?魔王バラモスは倒した筈なのに!」

「おお勇者マコトよ、帰ったか。無事で何よりじゃ。わしの所にも魔王バラモスが破れたという吉報はきたのじゃ。じゃが――――」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「王様!今早馬より勇者マコトがみごと魔王バラモス討伐との吉報が!」

「なに?そうかやってくれたか!!」

 

わし等は勇者の帰還を盛大なパーティでもてなそうと準備しておった。

わしは一人娘の姫の婿を勇者マコトにしてもいいとさえ思っていたんじゃ。

 

しかし姫は

「勇者様にはきっと想い人がおられますわ?私の入るスキマ等ないくらいに。」

「おお何と心優しい姫よ!」

「ああお父様!?」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「・・・そこは良いから話を進めてもらえますか?」

隣で聞いていたシズクは身も凍るような笑顔で言う

「ここからが良いとこなのに・・・」

 

 

まぁ、ともかく勇者に想い人がいるのなら仕方がない。わし達は祝賀パーティとともに、二人の結婚式もアリアハンのお城で行おうと準備をしておった。

その時じゃった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

ーー人間達よ。余の名はゾーマ。

――汝人間達に絶望と恐怖を与える、偉大なる闇の神である。

 

「ゾーマじゃと!お前がどのような存在だとしても、わし等には勇者マコトがいる。お前の好きにはさせんぞ!!」

 

――フ、フハハハハ!!人間の勇者が余を?笑わせてくれるな人間の王よ。

――人はどこまでいっても人よ。汝等の希望である勇者の命を刈り取った時・・・貴様等はどのような絶望を余に捧げてくれるのだろうな。

 

「勇者マコトはあの魔王バラモスをも倒したのだぞ?闇の神だって必ず倒してみせる!」

 

――魔王バラモス?あぁ、ヤツは破れたか。まぁ所詮は新聞の折り込みチラシの求人で来たバイト君だ。そんなもんだろう。

 

「なんと!バラモスはバイト?し、しかしわし等は何としても勇者の幸せな結婚式を作ってやりたい。邪魔をさせるわけにはいかんのじゃ!!」

 

 

――・・・なんだと?それを余は聞いてはおらん・・・余を通さずに其のような暴虐、断じて許す訳にはいかん!!

とにかく人類は皆殺しだ。

余の名はゾーマ。人に苦しみと絶望、そして死を与える神―――

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「そうか、そのゾーマと名乗る闇の神が・・・」

「ゾ、ゾーマ・・・」

 

何故かいつも微笑みを絶やさないシズクは、真っ青な顔をしていた。

流石のシズクも女の子。闇の神と聞いて恐ろしくなったに違いない。

俺は大丈夫だとばかりに笑顔でシズクの肩を抱き寄せると、彼女もそっと微笑みを返してくれた。

 

「とにかくそのゾーマがアリアハンを火の海にしたんですね?」

「ん?違うぞ?これはゾーマの地底深くから聞こえてきた、世にも恐ろしい言葉に驚いたお城のシェフ達が、火を消さずに逃げ出したからじゃ。」

 

 

 

するとこれは

只の火事ですかー!!!

 

 

 

 

俺の叫びがアリアハンにコダマした。

 

「とにかく勇者よ。この城の宝物庫にわが城の宝剣キセキの剣があるから、それを以て大魔王ゾーマを倒すのじゃ!!」

 

「き、キセキの剣・・・王様・・・」

「なんじゃ?太っ腹すぎてワシに感動でもしておるのか?」

 

そんなものがあるなら最初からよこせーーー!!

 

 

 

 

 

.

 

 

「母さんじゃあ行ってくる。」

 

俺達はただの火事と知ると、町の人達は教会に避難していたことを聞いた。

 

そこで俺は母さんや、嘗ての友人達と感動の再会をはたす。シズクはと言うと、アリアハンのお城を出てからは見掛けていないので、きっと自分の養父にでも会いにいったのだろう。

 

 

「マコト・・・あんたは勇者オルテガの息子。きっと止めてもゾーマの所へ行くのでしょうね?でもね、必ず母さんの元へ帰ってくるのよ?」

「ああ!必ずシズクと共に俺は帰ってくるから。」

 

そう言って母さんを背にし、俺は振り向かずに教会の扉を開ける。

 

俺には確信がある。

きっと扉の外には旅支度を済ませた彼女が笑顔で待っていると。

 

 

俺の幼馴染みが俺の傍を離れるわけがない。

 

 

 

 

俺は新たなる世界への扉を開く

 

 

 

 

 

ーーアリアハン編オシマイ――

 

 

 

NEXT

 

「俺はラダトームの勇者だ。」

 

 

新しい世界で出会うもう一人の勇者。

彼の正体は!?

 

何故か新しい世界で笑顔が曇るシズク。

 

 

 

急展開のストーリーが待ち受ける

 

 

次回

聖地アレフガルド

 

この次もみないとギガデインですよ?

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