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ラダトームの夜は寒い。
昼間も太陽が上がらないせいか気温が上がらない。
太陽の恵みがなければ農作物も育たないのだから、聖地アレフガルドの食料事情は乏しい。
そんな心まで凍てつくような世界だから、人々の表情もどこか暗い。
アレフガルドは大魔王ゾーマが直接現れた世界。魔王バラモスが攻めてきたアリアハンとは比べ物にならないほどの絶望感が溢れた世界だった。
「見ろよマコト。また雪がちらついているぜ?」
隣に座っているツカサが窓の外を顎でさすように顔を向ける。
俺もツカサに言われるままに窓の外を見ると、白い雪が降り始めていた。
シンシンと降る雪を見るとシズクやキリトさんとの出会いを思い出す。
「ほら二人とも。間も無く始まるわよ。」
サキが外を眺めている俺とツカサに小声で教えてくれる。
『・・・王様ありがとうございました。続きまして我がラダトームが誇る勇者キリトさまによる祝辞をお願いします。』
女兵士に呼ばれて壇上に上がったのは、幼い頃に憧れた勇者。俺に剣の扱いや戦闘のノウハウを教えてくれた勇者キリトさんだ。
俺達はラダトームの国民とともに壇上で誇らしげに輝く勇者の一言一句を胸に刻み込む為に話しに集中するのだった。
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話は少しだけ遡る。
『ここはラダトーム。ここにはただ絶望があるだけですわ。』
町の入り口にいた女性はうつ向きながらそう答えた。
辺りを見ると、人はいるものの人の声が聞こえない。まるで人形のように下をうつ向き歩いている。
陰気な町だなと言ったツカサの言葉にも頷ける。
俺達が聖地アレフガルドに入り数分がたった頃、頭のなかで何処からともなく不思議な声が聞こえてきた。
ツカサ達を見ても特に気にしている様子がないところを見ると、声の主は俺だけに直接話しかけているようだった。
―――マコトよ。勇者マコトよ、聞こえていますか〜?
―――私の名はルビス。
頭の中に直接話しかけてきた相手はルビスを名乗った。
ルビスと言えば子供でも知っている創造の女神だ。あらゆる教会にその姿絵を飾られていて、誰もが感謝を捧げる美の女神だ。
―――とうとう貴方はアレフガルドまで来てしまったのですね?私はアリアハンの世界だけでもと思い、生まれてくる貴方に勇者という運命を与えてしまいました。
俺は別に勇者という運命を呪ってなんかいない。俺達が旅に出たからこそツカサやサキ、果ては異世界のもの達と分かり合い仲間になれた。
―――ありがとうございます。その言葉はとても嬉しいです。ですがマコトよ、ここで引き返しなさい。大魔王ゾーマは私をも幽閉する力を持っています。
貴方のお仲間であるロザリーと異世界の魔王ピサロもゾーマの前にあえなく倒れました。
ロザリーさんとピサロが?なんでこんなところに彼らが?彼らはジパング以来見ていないから、てっきりケンカと称してイチャイチャ暮らしているものだと思っていた。
彼等は無事なんですか?
―――はい。何とか命はとりとめましたが、ロザリーを庇ってゾーマの攻撃を受けたピサロは特に重症で、今はリムルダールと言う町の教会で治療をうけています。あの二人の力は今のマコト、貴方を遥かに超えた力を有していますが、それでもゾーマには傷を与えることさえ出来ませんでした。
勇者マコトよ、もう十分です。引き返しなさい。
ルビス様。俺は確かにまだ弱いですが、ここで退いたりはしませんよ?俺が・・・俺達が諦めたら誰がこのアレフガルドを救うのですか?俺達は前に進みます。例え相手が強大であっても。
―――・・・貴方の決意はよく分かりました。私も貴方にかけてみましょう。ゾーマを倒すなら私の所へ来てください。貴方にゾーマと闘う力を与えましょう。ですがその道は険しく・・・ザー・・・なるザー
ん?ルビス様聞き取りにくいですよ?
―――コホン!すみません。では勇者マコトよ引き返して僧侶の女の子と仲良く暮らすのですよ?くれぐれも大魔王ゾーマに挑むことのないようにね?
あれ?ルビス様?
声は同じで頭に直接話しかけてはきているのに、話の前後がおかしい。
俺は後ろを振り向くと、シズクが紙を丸めて俺の耳元に話しかけていた。
「おい・・・何してんだシズク。」
「え?あの・・・は、ははは」
彼女はまさにルビス様のごとく可愛らしい笑顔で誤魔化していた。
その後頭の中でいくら呼んでもルビス様が話しかけてくることは無かった。
それにしてもシズクはいったいどうしたんだ?アリアハンでゾーマの声を聞いて以来というもの、やたらとおとなしい。
明らかに大魔王ゾーマとの戦いを嫌がっているようにみえる。お前がその気になればゾーマだって倒せるんじゃねーのか?
あのバラモスを一撃で倒すお前が、どうしたってんだよ。
だけどシズクは、俺の疑問に答える気はないとばかりに口を閉ざした。
「ねぇマコト。これからどうすんの?」
シズクが静かなせいかサキまでが今日は静かだ。
「先ずはラダトームの王様に会いに行こう。何をするにしてもアレフガルド唯一の王様だ。協力が必要だろう。」
「ん。あんたにしてはマトモじゃん。」
・・・なんか一言多いが、仲間にはまだロザリーさんとピサロのことは言わないでおこう。今は士気が下がるようなことは言いたくない。
俺達一同はラダトーム城をめざすのだった。
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どのお城もそうだが、ラダトームの城門にもイカツイ兵士が立っていた。
「アリアハンから来ました、勇者マコトです。王様にお目通りをお願いしたいたのですが。」
兵士達は俺達四人を品定めするかのように見ると、胸元から四角い板のようなものを取り出し、顔にあててブツブツと言っている。
暫くすると兵士は俺にその四角い板を渡し、耳にあてるように指示してきた。
「もしもし?聞こえておるか?ラダトームの国王のパパスじゃ。」
!!
誰もいないはずなのに、四角い板から声が聞こえてきた。俺はおそるおそる板に向かって話しかけてみる。
「あの・・・私はアリアハンから来た勇者マコトです。」
「勇者?」
「はい。」
「間に合ってます」
ガチャ! プープープー
・・・
えええぇぇぇ――――!!!
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会話を一方的に切られた俺は、再び四角い板のボタンらしきものを押す。
ピポパ・・・プルルルル
ガチャ。
「なんじゃまたお主か。しつこい奴じゃのう。勇者なら間に合っとると言ったであろう?ワシはマーサを愛でるのに忙しいんじゃ。」
また一方的にきる王様。
だいたいなんだよマーサって。
だけど俺も引き下がるわけには行かない。ルビス様にも宣言した通り、俺達の旅の終わりは、即、人類の滅亡に繋がってしまう。諦めるわけには行かないんだ。
ピポパ・・・プルルルル
ガチャ!
「お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません・・・」
「・・・ムキィィィィィ!!!」
思わず四角い板状の通話手段をなげつけ、踏みつける俺と
「マコトさんが壊れた。」
容赦のないシズクの一言が耳についた。
ガラガラガラガラ・・・ガシャン!!
「・・・よし!計画通りラダトーム城に潜入したな。」
「「「・・・」」」
一同の冷たい視線が突き刺さる。ヤメテ!そんな目で俺を見ないで。俺のHPはもうオレンジ色ですよ。
「・・・で?このあとどうする予定なんですか?」
虹彩の消え去った冷たい瞳のシズクが、声のトーンを下げて話しかけてくる。
怖っ!!久しぶりに怖いよお前。
「どうやって牢屋から出るかきいてるんですよ。マコトさん!!」
「俺が悪かったよぉ。だって王様がマーサマーサってよぉ。」
完全に白い目で俺を見詰めるシズク。
まぁともかくここから出なければ何も進まない。
俺は先ずは鉄格子を調べるが、まぁ壊せるような素材ではない。
牢屋自体が城の地下にあるのか、窓ひとつないから出るは・・・無理だ。
ズガアアアアァァァァン!!!
牢屋内を煙が立ち込める。見るとサキが鉄格子に向かってイオナズンを放っていた。
しかし、魔法処理もされているらしく、傷一つついてなかった。
完全に八方塞がりだ。
「はぁ。仕方ありませんね。」
そう言ったシズクは、珍しく永柄のついた杖を取り出した。
普段武器や、魔法の補助になる杖など使った所を見たことがないというのに。
杖の先端には丸い金色の飾り付けがしてある。
シズクは杖を静かにふる。
杖の先端が空を過ぎると、僅かに青い光が杖の先端を追うように流れる。
まるで天使が舞っているかのような、そんな幻想的な姿だった。
「出でよ召喚獣!」
はい?召喚獣?
シズクが杖を上空に掲げると、俺達の頭上に真っ黒な分厚い煙りが立ち込める。
稲光に似たような細い光が無数に煙りに吸い込まれると、次第に煙りが大きな輪を造り出した。
ズズズズ・・・
重苦しい音とともに何かが煙りの輪から、こちらに現れようとしている。
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煙りの輪の中から現れた異形の魔物は・・・
テーブルに座ってナイフとフォークを持ち、口によく入ったなと言うほど肉を頬張った
キ、キョウイチ!?
突然の事に喉を詰まらせてむせ込んでいるキョウイチと、その奥から現れたのは、どうした?等とさして心配しているようすの無い軽い口調の商人ロレンスが現れた。
「ちぇ、チェンジです!!」
「え~姫!!そりゃないだろう!」
チッ。
舌打ちするシズクと、口に肉を頬張ったままロレンスと共にもう抗議をするキョウイチ。
しかし、あまりしつこく言うと・・・
ズガアアアアァァァァン!!
予想通りシズクの痛恨の一撃の餌食になって牢屋の壁にめり込んでいた。
「何だ?やけに地下牢が騒がしいな。」
「ハッ!キリト様!それがアリアハンの勇者を名乗る者達が牢内で暴れていまして・・・」
「アリアハンから?前月も一人来たばかりじゃないか。」
「ハッ!しかし・・・」
そんなジメっとした地下牢だったんだ。
俺が幼い頃に憧れた勇者。
キリトさんとの再会は――――――
両肩に剣を携え、黒づくめの服を着ている。
黒の剣士、ラダトームの勇者キリトさんだ。
見間違える訳かない。
俺はあの日から、朝から晩まで・・・雨の日も風の日も剣を振り続けてきたんだ。
あの日出会った勇者に近付くために。
「ん?君は・・・マコトくんか?マコトくんだよな?大きくなったなぁ。」
「はい。キリトさんもお変わりなく。」
ってか本当に変わらない。あの時18位に見えた年齢。何で今も同じくらいなんだよ。
色々つっこみたかったが、今はおいておこう。
俺達は牢屋越しに手を固く握りあう。
「で、何でマコトくんが檻のなかに?」
そう言って檻の中を見渡す彼は、ある一点で顔の向きを動かすのをやめる。
その目にはだんだんと溜まっていく涙と、震える口から言葉も出ない様子だった。
「ゲッ」
その目線の先にいたシズクは、今まで彼女の口から聞いたことの無い小さな悲鳴と、何だか悪さが見つかった子供のような――――そんなばつの悪そうな顔をしていた。
「あ・・・」
「「「あ?」」」
キリトさんの一言に俺とツカサ、サキが口を揃えて反復する。
「アスナ!!」
「誰がアスナですかぁ!!」
「ブゴッ!!」
魔法も効かない強硬固な檻を両手でグニャリと広げたシズクは、牢屋から出るなり問答無用にヒロシゲさんの顔面にハイキックを見舞う。
彼はキリキリと回転しながらぶっ飛んでいった。
「ちょっとな、何で」
「煩い変態!!」
蹴られた頬を擦りながらシズクに抗議をするように見るキリトさんと、まったく話を取り合う様子の無いシズクは、そのあともずっとキリトさんの顔面を踏み続けていた。
「なるほど。ではマコトは大魔王ゾーマを倒すためにラダトームへ?」
「はい。アリアハンだけではなく、人類を救うためには悪の元を叩かねばなりませんから。」
満足そうに頷くキリトさん。
俺達はキリトさんの計らいで牢屋から出され、広いホールへと案内された。
何でもラダトームは大魔王ゾーマを倒すための魔法研究から、その姿を学校形式になっているのだそうだ。
「では皆、この魔力を測定する機械、パンチングマシーンに魔力を込めてパンチをしてくれ。これによりクラスが決まるんだ。一般生徒の平均値は300だ。」
「パンチングマシーンなら先ずは俺だな。武道家の俺にやらせてくれ。」
肩を揉みながら、首をコキコキならすツカサがパンチングマシーンの前に出た。
ツカサはセイケンヅキのポーズをとり腰を落として、右手に力を込める。
「はああああああ――」
ズバアアアアァン!!!
「測定値でました。数値たったの5です!」
「フハハハハ!どうだマコト!たまには俺も本気を出すと凄いんだぜ?聞いたか数値を?たったの5だぞ?驚いたかぁ・・・・・・って、5!?」
「だから魔力を測定するって言っただろう?ただ闇雲にパンチしても駄目なんだ。」
キリトさんは溜め息混じりに言うと、手本とばかりに、手に魔力をためて機械を軽く叩く。
測定結果 180000
さすがにキリトさんは凄かった。
マコト 18000
サキ 52000
キョウイチ 150000
やはり勇者とは言え魔力を使わせれば、正体が魔物であるキョウイチや、賢者のサキには敵わない。
しかし、一番驚いたのはロレンスだった。
彼は一介の商人であるはず。本人も魔法は使えないと言っていたのだが、結果は
100000
そんな数値を叩き出したのだ。
次はシズクの番だ。
俺は部屋の端まで下がると盾を出し、盾に身を隠す。後ろを見ると、キョウイチとロレンス、そしてキリトさんまでもが俺の盾と、俺自信を盾にして身を隠していた。
サキはマホカンタを唱え、ツカサもその後ろに非難している。
「何ですか・・・その失礼な態度は。」
不満を顕にするシズク。
「私は僧侶ですよ?魔力なんてあるわけないじゃないですかぁ!」
「嘘吐けー!!あれだけ魔法使っておいて僧侶なわけあるかー!」
「は?僧侶?彼女が?だって彼女は・・・」
俺とシズクが言い争いを始めたとき、俺の後ろに非難していたキリトさんが何かを言いかける。
次の瞬間だった。ホールの中央にいたはずのシズクが突然消えたかと思ったら、直ぐ背後から甘い香りがした。振り向くのより早く彼女の拳がキリトさんの顔面を捉え、俺の横を飛んでいきパンチングマシーンに彼はつっこんだ。
10万100万1000万1億・・・
ドガァァァァァン!!
何とパンチングマシーンは壊れてしまった。
「私、1億って数値までは見たよ?」
サキが呟いた。
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壇上に上がった勇者キリトさんは。息を飲む。
その雰囲気、表情が大切なことを発言しようとしている。
俺達はラダトームに入学(国)した。
ラダトームのパパス王の長い長~いマーサへの想いを語った最後にあった入学(国)おめでとうの一言。
そのあとということもあり、大勇者のキリトさん。
その口から発せられる言葉を、ラダトーム中の国民が期待を込めて待っている。
「ラダトームの国民よ!!我々はこれまで大魔王ゾーマの支配に苦汁を飲まされてきた。時にはラダトームが生んだ天才魔法使いでも歯が立たなかった。
最近ではパパス王が雇った異世界のエルフと魔王のコンビ。彼等の魔力は勇者である俺をも上回る力をもっていた。
だが!その彼等でさえもゾーマの前に敢えなく倒れた。
俺も今までのようにソロ攻略は諦め、改めて仲間を作ろうと思っている。
だが国民よ。我々は敗北したわけではない。我々は精霊ルビス様の恵みの光の庇護を受けているのだ。」
壇上のキリトさんは片手の拳を握りしめ、演説を聞いている国民に力一杯語りかけている。
やはりキリトさんは少し違う。
相変わらず熱い人だ。
彼の話を聞いていると力が湧いてくる。
勇者の資質というやつかもしれない。
「精霊ルビス様は我々に女神のごとき最強の魔法使いを遣わせてくれた。彼女の力は俺を含めた、アレフガルド全員の魔力を足しても尚、それを上回る力を有している。
我々のダメ王・・・いや、賢王パパス王は、彼女に王位を譲る判断を下された!!
我々全員で新たな女王陛下を支え、アレフガルドに平和をもたらそうではないか!
さぁシズク女王陛下の治世の始まりだ。
国民よ彼女とその国を称えよ!!平和を我らがものに。」
ジークシズク!!
キリトさんが大声で拳を振り上げ叫ぶと、ラダトームの国民全員が続く。
ジークシズク!
ジークシズク!
やれやれだ。結局シズクは何処に行っても色んな意味で目立つ。
だけど幼馴染みの俺にはあいつの答えは分かっている。
シズクは拍手喝采の中壇上に上がると、目を閉じて国民達の喝采を一身に浴びている。
ラダトームの国民達がシズクの言葉を聞くために静まり返る。
何の音も聞こえない静かな空間で彼女は一言。
「私、やりませんよ?」
ええええぇぇぇ!!!
その夜、ラダトーム全国民の絶叫は遠く離れたメルキドにまで聞こえたそうだ。
続く
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勇者 マコト 際下級クラス (ツカサの巻き沿い)
武道家 ツカサ 際下級クラス(補習)
賢者 サキ 特Aクラス 生徒会書記
僧侶? シズク 特Sクラス 生徒会役員
キョウイチ Sクラス
商人 ロレンス Sクラス
大勇者 キリト 特Sクラス 生徒会長
ハリポタかイメージです。断じて某高校の劣等生がネタでは……