ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第16話

 

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夕日が辺り一面を赤く染めている。

そこには無機質な固い素材のようなもので出来たお城を越える高さの四角い建物。

俺は見たことがある。確かジパングにあったビルとかいう建物だ。ただ、ジパングとは明らかに違う点がいくつかある。

窓はガラスが割れてなくなっている。建物の頂上付近が壊れて、中の柱がむき出しになっていて、ほとんど倒壊している。

そしてそれは見渡す限り全ての建物がだ。

辺りには人どころか生物がいない。

 

 

 

まるで世界そのものが死に絶えたようだった。

 

 

 

ふと甘い香りを乗せた風が鼻に届く。

風上の方を見ると、一際高いビルの屋上に女の人が佇んでいた。先ほどは誰もいなかったはずなのだが、まるで不可視なものが目に見えるように現れたようにみえた。

俺は彼女に声をかけようとするが、どんなに叫ぼうとも声が出ない。

 

 

それにしても彼女は美しかった。

夕日が彼女の白銀の長い髪に反射し、キラキラと輝いている。

綺麗な白いドレスを纏った彼女は、刀身が半透明な剣を持っていて、その姿はまるで教会に飾られた女神ルビス様のようだった。

 

表情は・・・え?シズク?

いやそんなはずはない。彼女は黒髪だし、よく見ればシズクよりもう少し歳上にみえる。

そのシズクによく似た彼女は涙を流してはいないけど、悲痛な面持ちで終わってしまった世界を、まるで忘れないように心に焼き付けているかのように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・こと!おいマコト!呼ばれてるぞ?」

 

呼ばれる声に意識がハッキリしてくる。どうやら夢を見ていたようだ。俺は重い瞼をうっすらと開けると、視界に入ってきたのは白い物体だった。

 

 

痛っ!!

 

それは俺の額に命中し、綺麗な放物線を描いて床に転がった。

 

 

「ほう・・・俺の講義は眠くなるほどつまらないのか?勇者様よ。」

黒板を背にした講師が鬼の形相で睨んでいる。

まさか今時チョークを投げる講師がいるとは思わなかった。

 

 

 

 

「大丈夫?額にアザができてるよ?」

俺の顔を見上げるように上目使いで見詰める彼女の名はビアンカさん。

 

俺とツカサが配属されたクラスの同級生の女の子だ。席が隣ということもあり俺達は仲良くなった。

 

ビアンカさんは大人しい感じの少女だ。サラサラとした金色の髪はとても良い香りがする。

シズクのように見た目だけの美少女と違って正真正銘の優しく可愛らしい女の子だ。

 

 

彼女の笑顔はどことなく懐かしい気持ちにさせてくれ心を暖かくする。

 

 

 

「まったく授業中に寝るとは・・・集中力が足りん証拠じゃ。」

後ろの席にノートいっぱいに"マーサlove"と書いているパパス王がいる。

 

「・・・何で王様がここにいるんだよ?」

「ワシは王位は棄て・・・譲ったから、ワシも生徒じゃ。」

 

あんた今、棄てたって言おうとしましたよねぇ?

マーサ以外のことにまったく興味ないパパス王は、せめて大魔王を倒すのに協力したいと生徒になったそうだ。

 

「・・・じゃあ何でこのクラスなんだよ。」

言っては悪いが、このクラスは魔力低い補習クラス。言ってみればオチコボレだ。

そんなクラスに1国を治めてる王様がいる・・・どう考えても有り得ないだろう。

 

「だってワシの魔力数値は3だもん。」

「さ、3!?」

 

数値を聞いたツカサがパパス王とガッチリ握手をしている。

ダメだこりゃ。

 

 

「まぁ、なにはともあれクラスメートじゃ。仲良くしてくれ。改めてワシの名はパパスじゃ。気軽にパパスと呼んでくれ。」

 

 

 

 

 

・・・無理だろそれ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!遠くに何やら人だかりがあるぜ?」

 

俺達はパパス王の友達?になったらしく、今は王様とラダトームの勇者キリトさん。あとは数人の学者をしている先生だけが入れる、作戦司令塔とやらに向かっている。

 

大魔王ゾーマを始め、女神ルビス様やアレフガルドの創世記の情報や歴史などが集められており、それらを基に大魔王討伐に日々研究が進められているそうだ。

 

少し仲良くなっただけで入れてもらえるのならきっと大した事はないのだろう。

 

司令塔に行くには城の中庭を通る必要があり、パパス王をはじめ、俺とツカサ、そしてビアンカさんとで歩いていると、だいたい距離にして100メートルだろうか、前方に人だかりが見えてきた。

 

 

前方の人々は老若男女関係なく右腕を斜め前方に揚げて、何やら声をあげている。

 

「どうやら女王陛下がいるようじゃな。みなジークシズク!と敬礼しておるのじゃ。」

 

パパス王に言われよくみると、距離が離れているが、長い黒髪とあの佇まいはまずシズクで間違いないだろう。

その彼女はロイヤルガードと名前を変えた生徒会役員に囲まれ、そのうちの一人と何か言い争っているようにみえる。

 

相手は黒服なのでキリトさんであろう。

何やら真剣にシズクに向かって話しているようにみえる。

きっと中々女王になると言わないシズクを一生懸命説得でもしているのかもしれない。

やはりキリトさんは勇者なだけに熱い人だからな。

 

暫く離れた場所から四人でその様子を見ていると、シズクの足元から白い冷気の様なものがみえ、次の瞬間キリトさんは氷付けにされた。

 

 

「わははは。いくら大勇者キリトでもシズクちゃんには敵わないみたいだな。」

「そうじゃな。しかもヒャド系の魔法が得意だなんて、まるでゾーマのようじゃ。」

 

大きな体を揺らして笑うパパス王とツカサ。

でも俺が気になったのは、最近キリトさんとシズクはわりと一緒にいることが多い。

まぁ、シズクは女王陛下でキリトさんにキョウイチ、ロレンスはロイヤルガードなのだから、女王の予定のシズクの警護にあたるのは当たり前なのかもしれないが・・・

 

「心配?」

そんな俺の様子に声をかけたのは、上目使いで俺の顔を覗き込むビアンカさんだった。

 

「ねぇマコトくん。二人は付き合ってたり・・・するの?」

いつまでも笑い転げている二人の横で、小さな声で彼女は尋ねる。

俺とシズクの関係?

確かに俺がヘタレ過ぎてシズクに気持ちを伝えてないってのもあるけど、今はゾーマを倒す使命がある。きっと彼女も俺の使命を理解してくれているはずだ。

言葉にはしないけど二人の気持ちはお互い伝わっているはず。

 

「いや、付き合ってないよ?」

 

「本当!?良かった」

 

最後の方がよく聞こえなかったが、腕を組んでくる彼女はいい香りがした。

 

 

 

ゾクリ

背筋を寒いものが走った。

シズクの方を見ると、彼女はまだ相変わらず遠くにいる。聞こえるわけがない。

 

それにしても直ぐ隣で笑い続ける二人の大男が煩い。その時俺は一瞬だけシズクの方から目をそらしてしまったんだ。

 

「実はシズクちゃんがゾーマだったりしてなぁわはは・・・は!?」

 

「へぇツカサさん、なかなか面白い事を言いますねぇ・・・」

 

突然シズクの声が俺の直ぐ背後からした。瞬間移動!?俺は驚き背後を振り返ると、瞳の虹彩が消え失せた、目の笑っていない笑顔のシズクがいた。

 

い、いつのまに!?

 

ツカサとパパス王はシズクの一睨みで魂がぬけ、そのまま保険委員の人達のタンカにのり、蘇生の手伝いのためのビアンカさんと共に、教会へ運ばれて行った。

 

 

「先程から随分楽しそうに腕を組んでいましたねぇ・・・鼻の下を伸ばして。」

 

 

全身を自身の青白く光る冷気で包まれたシズクが近付いてくる―――――――

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

「ここが司令塔か。」

 

司令塔に入れると、そこには見たこともないような四角い板のようなのが無数にあった。

長方形なもの、正方形なもの。小さいものに大きいもの。

それらの四角い板は、其々色々なものを映していた。

 

「お?マコトくんも来たのか。」

顔面が傷だらけのキリトさんがいた。まぁ、傷だらけなのはお互い様のようだけど。

 

 

「ここはラダトームの司令塔だ。ここには大魔王ゾーマとルビス様の関係だとか、色んなものを調べた資料がある。」

 

「関係?」

 

「そうだよ。世界を創造した神、破壊の神。そして最近の研究でもう一柱の神の存在が判った。」

 

 

「もう一柱の神・・・」

 

「そう。その神が何をもたらすのかまでは判らない。だが俺はこの創造と破壊こそがゾーマとルビス様ではないかと考えている。」

 

「キリトさん・・・あんた色々考えてたんだな。」

 

相手を知らないと勝てないからなと、幼い頃に見せてくれたあの笑顔は今も変わらない。

婚約者を探し、遥か遠くのアリアハンまで・・・

 

そうだ!!

 

「キリトさん。婚約者は見付かったんですか?」

 

俺は大切なことを忘れていた。久しぶりに逢えた事で一杯になり、キリトさんの事を聞き忘れていた。

自分のことばかり、本当に俺は勇者失格だ。

 

彼は・・・何故か意味深な、そして若干自虐的な笑顔を見せるだけだった。

 

「少し夜風にでもあたりに行かないか?」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

俺達二人は城の掘りを歩いている。

アレフガルドに昼間はないのだから、日中の日の温かみがない。

雪がちらつくような寒い夜だ。

 

しかしキリトさんは大して気にするわけでもなく俺の前を歩く。

やがて立ち止まり振り向く。

 

「婚約者は見付かったよ・・・」

「見付かったんだ!良かったですね。」

 

彼は

やはり少しだけ寂しそうに笑う。

太陽のように明るく、熱い心を持つ勇者の彼にそんな笑顔は似合わない。

俺はどうしたら良いか悩んでいると彼はポツリと呟いた。

 

「マコトくん。やはり君は勇者になったんだね。」

「はい。あの日ヒロシゲさんに出会って勇者に憧れたんです。」

「いや俺は・・・真の勇者はマコトくん君だよ。君はデイン系の魔法を使えるだろう?」

「はい。まだライデインまでですが。」

「俺には使えない。この意味がわかるか?俺は勇者にはなれなかったんだ。」

 

 

 

一呼吸をおき、彼は決意したかのように話す。

 

 

「マコトくん。デイン系はね、ルビス様が定めた運命の勇者にしか使えない魔法なんだ。ラダトームの司令塔の文献にもある。」

「そんなまさか?でもデイン系をあいつも・・・」

 

俺が言おうとした話を彼は俺の顔の前に手のひらをみせることで遮る。

 

「デイン系はね使えないんだよ。ルビス様が定めた勇者しか。もし他に使える者がいるとすればルビス様本人・・・・・・ん?」

 

 

ガチャリ!

 

突如重苦しい鎖の音をさせた手枷をキリトさんは後ろ手に嵌められた。

 

「んな!て、手錠だとぉ!!」

驚きの声をあげるキリトさんは、次の瞬間大きな水しぶきをあげて掘りの中に飛び込んだ。

いや、正確にはシズクに蹴り落とされた。

 

「マコトさん、今日は素敵な月夜ですね。少し二人キリで歩きませんか?」

 

シズクは、キリトさんなんて最初から居なかったかのように、ルビス様の肖像画のような女神のごとき微笑みを浮かべていた。

 

相変わらず可愛いなお前は・・・だけどな、手枷をしたまま掘りに落とすのはどうかと思うぞ?

 

「こら!女王陛下!!俺でなければ手錠して水の中に蹴り落としたら死ぬぞ!」

「煩いだまれ!勇者に魂を引かれた俗物が!」

「シズク!何故勇者が人類を導く光となることの素晴らしさが解らんのだ!!」

 

 

手枷をしたまま器用に泳ぐキリトさんを、空気中に発生させた無数の氷の刃が襲う。

 

トドメはヒャダインですか・・・

 

 

 

 

 

 

その翌日、氷付けになったキリトさんが教会に運ばれ、ツカサにパパス王。それとキリトさんの蘇生の為の寄付金で潤い、ラダトームの城より高い教会が建ったのは、もつまとずっと後のお話だ 。

 

 

 

 

 

続く

――――――――――――――――――――――

 

 

勇者 マコト 実はライデインが使えた。

 

武道家 ツカサ 教会へ連れていかれるも、生き返るのに800Gもかかり、放置される。

 

賢者 サキ 行方不明中

 

エルフの少女 ロザリー リムルダールにいるらしい

異世界の魔王 ピサロ 同じくリムルダールでイチャイチャ中

 

魔物 キョウイチ ロイヤルガードに昇進するも出番なし

商人 ロレンス キョウイチに同じくロイヤルガードに昇進。現在行方不明

 

ラダトームの勇者 キリト 死亡初体験

 

王様?パパス 未だ結婚できないでいるマーサに気に入られる努力し続けるが、未だ振り向いてもらえずへこむ。

 




今回は、分からないので勇者と戦士の違いについてのお話(捏造)です。
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