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ワー!!キャー!!
こっち向いて―!! 素敵ー!!
耳をつんざくような大歓声の中、ドーム全体が寒いアレフガルドだと言うのに熱気で溢れている。
絶望にひしがれていたラダトームとはまるで違い、ここにはアリアハンの世界をも上回るような熱気と歓喜に溢れている。
そしてその熱気はステージの上にいるグループに全て注がれているのだ。
ガライー!!私と結婚してー!
ガライー
そう、ガライと呼ばれるグループに・・・
隣の声さえ聞こえないような大歓声は、彼等のマイクを持つ姿を見るなり嘘のように静まり、その口から発せられる言葉を待つ。
テメー等!!準備は良いかぁ!?
オー!!
今夜は朝までモリアガローゼ!!
ワー!!
彼等の叫び声に観客が大歓声という形で応える。
俺達ガライの魂の叫びをきけ!!
大歓声の中で音楽が流れ始めた。
周りの観客は既に最高潮。魔物との戦いに明け暮れている俺も、今日は体の奥が熱くなるのを感じる。
俺も興奮しているのがわかる。
そして彼等は大歓声さえも音楽にして歌い出す。
貴方~変わりはないですかぁ~?日ごと寒さがつのりますぅ。着てはもらえぬセーターを寒さ堪えて編んでますぅ・・・
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「ガライのライヴ素敵でしたね。」
ライヴハウス"ガライの祠"からの帰り道。隣を歩くシズクは、機嫌良さげに楽器をベンベン鳴らしながら笑顔で言った。
そ、そうか?
シズクと付き合いはながいが、こいつの好みは今一つよく分からない。
「ところで何それ。」
「これですか?ガライの竪琴だそうです。お近づきにって戴きました。こんな時は女王陛下になるのも悪くないですね。」ベベベン
知らなかったよ。吟遊詩人って三味線持って演歌を歌うんだな。
しかし・・・何だか二人で出掛けるのも随分と久しぶりな気がする。
平和な世界だったら、この左側を歩くシズクとの時間だけを幸せと思い生きていたかもしれない。
興奮覚めやまぬ彼女は、鼻歌混じりに腕を組んでくる。
髪から甘い香りがする。
いつまでもこんな幸せな一時が続けばいい。勇者としては持ってはいけない夢なのかも知れない。でもせめて今だけは・・・
ふと隣のシズクを見ると、彼女はまるで俺の心の覗いているかのように見つめていた。
そして彼女は頬を染め潤んだ瞳で、注意して聞いていないと聞き逃してしまうほど、小さな小さな声で言った。
「今夜、私のお部屋にいらしてください・・・」
と。
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何だここは・・・
軽く俺の部屋の5倍はあろうかと言う広さ。
部屋の壁には沢山のきらびやかな装飾の数々。
部屋の中央にはキングサイズのふかふかそうなベッドがあり、これまた見たことの無いほどの装飾が施されている。
部屋の中はそこはかとなくシズクの甘い香りが立ち込めている。
俺やツカサの部屋とは大違いだ。
今夜はここでシズクと・・・
確かに俺もそんな事を考えちゃいましたよ。そりゃ男ですから。
それが・・・
「なんだこりゃー!!」
「え?それは手錠と言うものですよ?」
重苦しい鎖の付いた手枷をはめられている。
「お前が、女神のようなあま~い声で"今夜は二人で朝まで一緒にいましょう"何て言うもんだから期待しちまったじゃねーか!!俺の男心を返せチクショー!!」
「なな、わ、私がいつそんな事をいったんですか!!この変態!」
「ぶごっ!」
照れた顔をしながらも俺の顔面を踏みつけるあたりは、実にこいつらしい。
でも、勇者とはいえ男なんだから少しは仕方ないだろーが!
「・・・何ですか?その反抗的な目は。って言うか誰が私のマコトさんにエッチなことを吹き込んだんですか?あの勇者バカのキリトさんですか?それとも、TPOをわきまえないでイチャつく、何処かの魔王ピサロさんですか?」
こ、怖い怖いよおまえ。
普段人前ではキラキラ輝くその瞳。今はそれに虹彩が消え失せている。
ヤバイ。このままではツカサやパパス王のように俺まで何度もお世話になった教会行きだ。ここは話題を変えなければ。
「そう言えばさ、お前キリトさんと知り合いなのか?」
「ふぇ?何ですか?急に。」
どうやら俺の質問は彼女の意表を突くものだったらしく、少しだけ慌てるシズク。
「キリトさん?ラダトームの勇者で生徒会長・・・あ!今はロイヤルガードの親衛隊長でしたね。」
「今のことなんか聞いてねー!!」
思わず突っ込んじまったが
これは別に今思い付きで言った訳でも何でもない。二人一が緒にいる姿があまりにも馴染んで見えたんだ。
それに俺がキリトさんと知り合ったあの大雪の日にシズクとも初めて出逢った。これは本当にただの偶然なのだろうか?
キリトさんは婚約者を探してアリアハンにやって来た。その婚約者ってシズクのことだったり・・・
いやまさかな。
10年前に16歳くらいに見えたヒロシゲさん。何故か今も見た目は変わらないが、シズクは確かに6歳くらいだった。
いくらなんでも気のせいか・・・
「そうですよ。気のせいです。」
!?
「だから何でお前は俺の心の中での会話に返事ができるんだ!エスパーかお前は!!」
「だってぇ・・・さっきから一人でブツブツ言ってるんだもん。」
頬を膨らませ拗ねるシズク。か、可愛い・・・だが、彼女はそれ以上話すことはない。ハッキリとは言わないが、雰囲気でそう語る。
まぁ、そのうちに話してくれるだろう。
やれやれ仕方ない。今は話題を変えてやるか。
「ところでお前は何でこんな夜中に俺を部屋に呼んだんだよ?」
「そうでした。・・・マコトさんのクラスのビアンカさんって女の子と最近随分と仲が良いそうですねぇ。どう言ったことか説明していただけますかぁ?」
声のトーンを下げ器用にも自分の声にエコーをかけている。そして瞳の虹彩が消え失せたシズクがユラユラと近付いてくる。
結局これかー!チクショー!!
.
「どうしたの?全身ケガだらけじゃない。」
次の日、教室で俺の顔を見上げるビアンカさんは、心配そうに声をかけてくれる。
何でもないよと答えるしかない俺を彼女は気遣ってくれ、少しだけ暖かい手のひらをそっと俺の顔に添える。
彼女の触れている箇所がポオっと微かな暖かみを含んだ光を放つと、スーッと痛みが引いていく。
ベホイミだ。
「ビアンカさんありがとう。」
「ちょっとマコちゃん。何も泣かなくても・・・」
え?俺泣いてますか?
シズクの言うベホマも良いけど、やっぱり僧侶はビアンカさんのような癒し系であってほしい。
思わず感動して涙がでちゃったよ。
「本当に大丈夫?模擬戦が近いんだよ?」
「模擬戦?」
「あー!やっぱりサンチョ先生の話し聞いてなかったんだぁ!しっかりしてよね?うちのクラスはマコちゃん次第なんだから。」
あの先生の話しは眠くなるんだよなぁ。ラリホーでも唱えているんじゃないかと本当に疑いたくなる。
隣でプリプリしているビアンカさんがなんか可愛い。
まぁ端的に言うと、クラスの代表がパーティを組んで模擬戦を行うらしい。
下位クラスが上位クラスに勝った場合はクラスが入れ替わるのだとか。
まぁ、最初から落ちこぼれクラスの俺達はこれ以上・・・
「ちなみに、落ちこぼれクラスが1回戦で負けると退学だからね?」
「は?退学?」
「うん。ラダトームの町の入り口とかに俯いた人達がいたでしょう?絶望だけが支配する世界みたいなこと言ってた人。あの人達も昔は大魔王討伐に頑張っていたのに能力がたりなくて退学になってしまった人達なの。」
いた!確かにいた。
何ですか。あれって大魔王ゾーマに与えられた恐怖に絶望した人達ではなくて、退学になってしまって絶望していたんだ・・・
「ねぇマコちゃん。私もパーティに入れてくれない?」
「お!マコト。ベホイミか?羨ましいな。姫俺にもベホマをグボッ!!」
恐ろしくタイミングよく大勇者キリトさんにキョウイチ、ロレンスの、通称ロイヤルガードを連れシズクが俺達の教室に入ってきた。
彼女はひきつった微笑みを称えながら、ベホマを要求してきたキョウイチの口の中に、入りきらない程の薬草を、パンチと共に押し込んでいた。
明らかに不機嫌なシズクの顔を見る限り、絶対に模擬戦の事やビアンカさんのパーティへの参加の話をきいていたのにちがいないだろう。
ビアンカさんの方も突然のシズクの来訪に萎縮しちまっている。
仕方ない。俺が助け船を
「女王陛下こんにちは。私はビアンカと申します。」
「ええビアンカさん。覚えていますよ?」
ん?
「今回の模擬戦はクラス対抗ですから、マコちゃ・・・勇者マコトの回復係りは私があたらせて頂きますね?」
「は?クラス対抗?」
意外にも臆することもなくシズクに話しかけるビアンカさん。シズクの方はというと、模擬戦がクラス対抗とは知らなかったようで、睨み付けるようにキリトさんをみる。
キリトさんは両手を肩の高さに上げ、俺には無理!!を態度で示している。
「どうやら恒例行事みたいだな。なになに?優勝者には・・・マイラの温泉旅行?俺、温泉嫌いなんだよな。」
構内行事の案内を読み上げるロレンス。
「・・・では私がマコトさんのクラスに」
「シズク、お前は今やこのラダトームの女王だ。お前を落ちこぼれクラスに入れられる訳がないだろう?今まで退学になった者達に申し訳がたたなブゴッ!!」
最もな説明でシズクの説得を試みたキリトさんは、最後まで聞かせることが出来ずに、彼女のハイキックの餌食となり、キリキリと音をたて回転しながら吹き飛んでいった。
「お?続きがあるぞ?なになに、尚、特Sランクのクラスは参加出来ない?姫!俺達は模擬戦に参加もできないみた・・・ちょっと待って!!俺は悪くな・・・ギャー!!」
ロレンスは全身紫色になって倒れた。いつだかの毒バリをもったシズクは・・・
おぼえてなさいよぉ!!
と、おおよそ女王らしからぬ捨て台詞を残して走り去って行った。
シズク・・・
どうするんだよ。この気絶した特Sクラスのロイヤルガードの面々は。
「相変わらず女王陛下は凄い娘だね。」
ビアンカさんが目を点にしてボソリと呟いた。
.
あれから数日。
シズクはただの一度も俺の前に姿を見せなかった。ほんの少しだけ罪悪感を覚えるが、ルールなら仕方ない。
「あ!また勝ちましたよ?ツカサさん。」
「まぁ、当然だし?」
俺達落ちこぼれクラスは怒涛の快進撃で勝ち上がっていた。
サキのザオリクによって、800Gを払わなくても甦れたツカサは、相変わらず魔法学園だと言うのに、魔法をいっさい使わずに勝ち上がる。
ツカサが疲れるとビアンカさんのホイミで回復し、その回復の間に俺が勝ち上がる。
その作戦が項をそうし、何と初の落ちこぼれクラスが決勝戦まで進んだのだ。
「俺達四人なら優勝できるぜ!!」
ツカサは意気揚々と、始まるまえから勝利宣言だ。
だが、俺達が勝てたのは当然だった。
何故ならば夫婦特権とやらで、本来なら特Aクラスのサキがいるし、俺だって本当は・・・
まぁ、あと残すとこは1勝だ。
「さぁ決勝戦です!ここまで来たら、何としても落ちこぼれクラスに優勝してもらいたいものです。」
進行役員うるさいよ。
今や俺達は落ちこぼれではない。次の決勝戦の相手も中々出てきやしない。きっと俺達にびびっているのだろう。
「決勝戦!落ちこぼれvs謎の美少女戦士しずりん!!」
っておい!!
対戦相手が闘技場に姿を見せると、何と・・・スライムのお面を被った4人が現れた。
「おいシズク・・・何やってんだお前。」
「え?なぜ・・・じゃなかった。私は謎の美少女戦士しずりんですわ。」
アホかー!!
「わ、私がシズクだと言う証拠でもあるのですか?」
「俺がお前を見間違える訳がないだろう?」
「マコトさん・・・」
しずりんと名乗る少女はお面越しにも照れてもじもじしている。
丸分かりだ。
そして俺は後ろにいる包帯ぐるぐる巻きのミイラ3人を指差し、こう告げるのだ。
「一番右はキリトさんだ!そんな全身黒づくめな装備を使うような人は他にいないし、何よりも勇者の印がある!!」
指差された包帯はビクッとする。
「次に真ん中はロレンスだ!普通に商人の装備だ。」
指差された真ん中の包帯は怖れおののいた。
「そして何よりも決定的なのが、一番左のキョウイチ!!服にキョウイチって名前が書いてある!」
「こ、この俗物どもがぁ・・・」
ゴゴゴと、凄まじいまでの冷気を放つ自称美少女戦士しずりんは、足下の地面の土さえも凍らし始める。
「ま、待てマコト!お前に剣を教えたのは俺だ。あれから10年。どれ程俺に近付けたのか試してみたくはないか?」
キリトさんは、大魔法を発動させる寸前のシズクを羽交い締めにして抑えながら、俺に語りかけてきた。
確かにそれは知ってみたい。
今の俺は師匠だと思っているこの人にどこまで通じるのだろうか?
結局俺は、自身の今の力を試すべく剣と盾を構えると、試合の判定をする教官達は回りの仲間達を離れさせて、試合の合図をするのだった。
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距離にして10メートル。
全身黒つくめの彼は、右手に大きな大剣を斜めにかまえ、もう片方の何も持っていない方の手を牽制するかのように俺の方にむけ、腰を落として構える。
見れば見る程その構えに隙はなく、子供の頃には全く分からなかったが今の俺になら分かる。
この人は本当に強い。
ビシビシと感じるプレッシャーに剣を握る手に汗が溜まる。
額の汗が顔をつたり顎からポタリと滴った瞬間、キリトさんは目にも止まらぬ速度で一瞬にして間合いを詰めてくる。
ガキーン!!
剣と剣がぶつかり火花を散らす。
「よく防いだなマコト。」
嬉しそうに笑いながら剣を振る大勇者の剣はとても重かった。
目の前に迫る剣先を辛うじて防いでる俺は、だんだんと速度を上げていくキリトさんに着いていくのがやっとだった。
次第に捌ききれなくなるにつれて、闘技場の隅に追い込まれていく。
本当に咄嗟の判断だった。
俺は左手に持つ盾を捨て剣を両手で振ると、驚く程に早く剣を降り下ろせた。
俺の剣先を、刃の光の方が追いかけるかのようになると、次第にキリトさんの方が若干後退し始める。
退路に俺はベギラマを放つが、キリトさんはその魔法を放った直後の、一瞬の隙を見逃さなかった。
キリトさんは何も持っていない左手に魔力をためると、光輝く剣が現れた。
マズイ!!
この今まで以上のプレッシャーは、間違いなく必殺技がくる。
俺は両手で剣を構え、迫り来るキリトさんに応対すべく腰をおとす。
両手に剣を持つキリトさんの攻撃はまるで生きているかのように、左右、上下とあらゆる角度から次々と繰り出され、そしてそれはどんどん早くなっていく。
スターバースト・ストリーム!!
次々と繰り出される剣は名前の通り嵐の如く繰り出され、その剣の刃に反射する月明かりが、まるで夜空に散りばめられた星のように輝く。
マズイ、これはキリトさん本気だ。
俺は闘技場の隅まで後退し
「教官、この人達は特Sクラスです。」
「え?」
「試合終了!大勇者キリト並びにしずりんチーム、反則負け!」
「え?」
「は?」
ふっ、危なかったぜ。
こうして俺達は、初の落ちこぼれクラスに優勝をもたらした。
「ま、マコちゃん・・・」
「おいおいマコト、さすがにそれは・・・」
「書記として後世に残さなきゃ。勇者マコト、安定のヘタレ」
後ろの方でチームメートが優勝のお祝いの言葉をかけてくれている。
何となく悪口に聞こえるのはきっと気のせいだ。
闘技場には呆然と立ち尽くすキリトさん。
後方の仲間、前方の敵もあまりの俺の作戦に声が出ないようだった。
続く
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勇者 マコト ヘタレ 装備 刃こぼれした奇跡の剣
武道家 ツカサ ちょっと強くなった。
賢者 サキ 然り気無く優勝チームに参加のため、温泉旅行ゲット。
僧侶 ビアンカ 点になった目が治るまで3日を要した。
美少女戦士しずりん ?? 優勝を逃した腹いせに、チームの仲間を折檻。
大勇者キリトらしきもの。 教会へ
商人 ロレンスらしきもの。 教会へ
魔物 キョウイチらしきもの。 教会へ
王様パパス。 生き返らすお金を誰も出さず、前回からずっと死んでいて、死体から腐った死体へ進化。
〜オマケ〜
シャッ!シャッ!
夜な夜な男子寮に響く不振な音。音の出所はなんと勇者マコトの部屋だった。
眠い目をこじ開け、音のする方をみると、シズクがエヘヘと笑いながら剣を研いでいた。
怖い!!しかし恐怖で声が出ない。
朝、勇者が見たものは剣先に自分の顔が映る程に輝いた、切れ味の増した奇跡の剣だったもの。
勇者は叫ぶ。研ぎすぎだ!!刃渡りが30センチしかねーじゃねぇか!
これでは奇跡のナイフだ!!
ナイフ携えた勇者マコトの運命は?
ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険
待望の最新刊発売!(ウソ)