ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

19 / 31
ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険⑲





【ロレンスの借金の真相】

ロレンスとシズクは二人で買い出しに来ていた。ふと気付くとシズクは道具屋の前で立ち止まり、何かをじっと見つめている。
「姫?どうした?何か欲しいものでもあったか?」
「ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険の最新DVDがあるなと思って・・・」
わりとハッキリものを言う姫にしては珍しく言いよどんでいる。欲しいなら欲しいとねだれば良いのに。仕方ない。言いにくいなら俺の方から言ってやるか。

「もしお前が本気でそのDVDを欲すると言うのなら、俺は商人の誇りにかけて必ず手に入れてみせる!」
ロレンスはドヤ顔でシズクを見ると、彼女は意外にも驚きの顔をしていた。

「いやぁ~ちょっと高いから無理かと諦めていたのですが・・・私は嬉しい。」

そう言ってシズクは、ほのかに頬を染め俺の腕に自分の腕を絡め、寄り添ってきた。何やら腕のあたりに柔らかい感触が・・・DVDでこれなら安い・・・いや、ハッキリ言ってラッキーだ。

瞳を輝かせた姫は、腕を絡めたまま俺を引っ張るように道具屋の前に立つと、お目当ての商品の前に立つ。
ふとDVDの値段を見ると、ご・50万ゴールド!?
た、高い。高すぎる。しかし姫の瞳は既キラキラと輝かせていて、今更やっぱり無理とか言えそうにない。
ま、たまには良いか。それで姫の笑顔が見れるなら。そうロレンスは心の中で納得をすることにした。

「道具屋さん。ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険のDVDを下さい。1000枚。」
「お?女王様がロイヤルガードと二人でお買い物デートかい?羨ましいねぇ。」
「デートだなんてそんな・・・」

道具屋の店主との会話で照れている姫は、とても可愛い。可愛いんだが・・・いま、1000枚とか言わなかったか!?
店主は俺の方を向いて

「量が多くて持てないだろうから、荷馬車の袋に入れておいたよ。ではお会計をお願いします。DVD1000枚でしめて・・・5億ゴールドです。」
「ご、5億!?」
なん・・・だと・・・予想を遥かに越えた未知の金額。しかし今更ダメだと言ったらどうなるか分かったものではない。

「て、店主・・・リボ払いでお願いします。」



こうしてロレンスは財布の中身が空になり、借用書の山を手に入れた。
そしてその借金は後にツカサとサキの夫婦に引き継がれた。


第19話

.

 

 

 

 

 

 

私達はずっと三人だけ。孤独だった。

 

 

ある時私達神々は大地を創り、生命を育む水を満たす。強すぎる光を遮る雲が大地に恵の雨を降らすと、癒しを与えてくれる青々とした植物が産まれてきた。そして私達は、自分達に似せた生物を創った。

特に自覚はなかったけど、きっと私達は孤独に寂しさを感じていたのかもしれない。

 

初めて創造した生物は人。

初めてで不馴れと言うこともあってか、ステータスを全て出来うる限り最高にして創造した。

 

その子に私達は名前を付け、それはもう大切に大切に育てた。それぞれが得意とするものを惜しみ無くその子に与えると、その子は乾いた砂が水を吸うように吸収していった。

 

そうして一人めの人間は限りなく自分達に近いものとなった。

 

また数え切れない年月を経た頃、私達四人は再び新たな生物を誕生させた。

今度は一人ではなくて沢山の生命を創る。

 

今度はあえてステータスは低くして創ると、彼等には寿命と言うものが出来た。初めての死だった。死は悲しいものだったが代わりに生物は成長と出産の能力を持っていた。、その子達は成長という私達神々にはないスキルを持っていたのだ。

 

それに気を良くした私達は、動物・植物・人間・魔物など沢山の生物を創造していった。

そして其々の種族は生命を増やしていく。だいぶ色んな種族が増えた頃、私達神々は創造をやめた。

 

 

もう孤独ではない。心が満たされたから。

 

 

「なぁルビスよ。我々の神界レンダーシアもだいぶ手狭になる程に新たな生命が増えた。新たな大地を創り彼等をそこに住まわせてみないか?」

「新たな大地ですか?」

 

そんなある日、一柱の神が私に相談を持ち掛けてきた。

 

私は彼の意見に賛同し新たな大地を創り彼等をそこに住まわせた。

すると彼等はそれぞれの文明を築いていった。やがて文明も成熟した頃にそれは起きた。

 

ふと神界から大地を覗くと、人と人とが争っていたのだ。他者から財宝、幸せ、生命を奪う。

そんな世界が沢山の大地で起きていたのだ。

 

「こんな筈ではなかったのに・・・」

私の悲痛の思いに他の三人は答えなかった。

それも彼等、生きるもの達の物語だと。

 

しかし弱き者達が奪われるだけであってはならない。私達神々は全ての大地に特に力を持つ魔王を創った。それは人間であったり魔物であったり、魔王となる者は特に強い力を持たせた。

そして同時に弱き者達の中のある一族に力を与える。魔王が勝てばその大地は我々神が滅ぼし無へと還す。弱き者達の代表――一勇者が勝てば、その大地は我々神の庇護を離れ、人の世界となり独立して大地を護っていく。

いつしかそんな世界の理ができていった。

 

そうすることで、せめて同種による争いをなくすために。

 

それが世界を産み出した我々神々にできるせめてものことだった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

.

 

 

 

 

「こんなところにいたのか。ここじゃ寒いだろう?」

 

アレフガルドで一番高い塔の頂でボンヤリ考え事をしていると、掛け声とともに肩に上着を羽織らせてくる。

キリトさんだ 。

肩にかけられた上着を通して彼の温もりが私の冷えた身体を包み込む。

彼はそのまま無言で私の横に並び立つと、そのまま塔の頂からの景色をみている。

 

眼前に広がる分厚く黒い雲の海。髪を凪ぐ風は身をすくめる寒さ。きっとアレフガルドの大地は今日も雪景色だろう。

マコトさん達は大丈夫だろうか?風邪なんかひいていなければ良いけど。私はここにはいない勇者の安否が頭をよぎる。

 

「マコト達はロレンスを倒しルビスの塔へ踏み入ったようだ。」

「・・・はい。ロレンスさんは立派にその役割を果たしてくれました。」

 

私はロレンスさんとのお買い物をした日々を思い出すとクスリと笑ってしまう。ロレンスさんは商人。お金になるかならないかで判断することが多かった。この世界での出会いもお金柄み。しかしお金にセコイわりには意外と財布の紐はゆるく、とくにおねだりには弱かった。

目を閉じれば彼の声が今も耳元で聞こえてくるような気がする。

まぁ彼は死んでしまったわけではないのだから、彼の世界に渡ればいつでも会える。

私は気を取り直しキリトさんの方を向き、あえてハッキリした口調で話しかける。

 

「次はキョウイチさんですね?」

「あぁ、やつはもうマコト達のもとへ向かったよ。俺もドムドーラの遥か南、メルキドに集めた軍隊に進軍の指示をだした。・・・なぁシズク、本当にこれで良いんだな?」

「・・・はい。」

「ところでシズク。一つ聞いて欲しい話があるんだが。」

「なんですか?急に改まって。」

「あぁ別に大した話ではないのだが、シズク、俺と結婚してくれ。」

「・・・は?」

 

彼は突然脈絡の無い話をふってくる。さすがに私も頭の回転が追い付かない。この人は昔からこう言う人だ。しかも大した話ではないと来た。全くもってデリカシーがない。

 

「・・・キリトさん。貴方はムードと言うものを知っていますか?」

「ムドーなら知ってるぜ?ムドーはお前が昔苛めていたペットだよな?」

 

「ムドーじゃなくてムードです!!第一苛めてませんよ!可愛がっていたじゃないですか!!」

 

全く・・・このすっとぼけた婚約者はいつもこれだ。

 

 

「し、シズク?何で近付いてくるんだ?」

「それは貴方の温もりを感じるためですよ?」

「何で、腕を俺にむけているんだ?」

「それは貴方の腕の中に収まるためですよ?」

「じゃあ何故お前の瞳の虹彩が消えてるんだ?」

 

 

「それは貴方をぶち殺すためですよ!!」

 

 

 

 

悲鳴を上げながら逃げていくキリトさんのお尻を思い切り蹴りあげ、アレフガルドで一番高い塔の頂から突き落とした。

 

 

「な、なんでだぁぁぁぁぁ・・・」

 

もの凄い勢いで落ちていく彼に私はとどめの大樽爆弾をともに落とした。

 

 

 

 

ドオオォォォン!

 

 

凄まじい轟音は聞こえてくるが、分厚い雲の下で爆発したために彼の様子は見えない。

 

「何が大した話ではないよ。ばか・・・」

 

私は落ちていった彼に小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

. ◆

 

 

 

 

 

 

「今何か聞こえなかったか?」

 

私の少し前を歩く勇者がふと塔の外を眺めて言った。

 

「そう?特に私は聞こえなかったけど。そんなことよりマコちゃん、ツカサ君が一撃でトロールキングを倒したよ!凄いよねぇ。」

「本当だ。あいつ強くなったよな・・・って、何してんだあいつ。」

 

見ると彼とサキさんは倒したばかりのトロールキングの上によじ登り何やらゴソゴソやっている。

 

 

「あった!って、なんだたったの20Gかよ。しけてんなぁ。」

「本当だよね。トロールキングなんて名前のくせに貧乏だなんて。今日からこいつらの名前はトロールビンボーね。」

 

種族の名前にまでケチをつけるサキさん。

しかし、二人して倒した魔物からゴソゴソと漁っている姿が何だか笑ける。本来ならトロールキングを一撃で倒したことが凄いと言うのに、そんな凄さがまるで大したことないかのように、二人はお互い何の合図もなしに倒した魔物の懐を漁っているのだ。

夫婦と言われても今ひとつピンとこない二人だったけど、こうして協力しあって借金を返そうとする姿は夫婦そのものにみえる。

 

「困難は人と人をむすびつける。シズクちゃんの言ったとおりね。」

「シズクがそんなことを?」

「あれ?マコちゃん居なかったっけ?」

 

私のつい口に出してまった一人言に答えるマコちゃん。いつの話しだったかを思い出すと、今この場に彼女がいなかったことが幸運だったと思った。

 

 

「さ、早く行こうぜ?ルビス様はきっともうすぐだ!」

 

彼は意気揚々と前に向かって進む。が突然振り向くと

チュッ

何とマコちゃんは私にキスをしてきた。

 

「ごごごごめん!!」

あわてふためく彼は私にひたすら謝る。そんなに謝らなくても良いのになぁ。

私は彼の足下にある回転床のトラップを見て、成る程と理解と、なんだそう言うことかとガッカリする気持ちになった。

そうだよね。マコちゃんが私にキスをするなんてことは無いよね・・・今はまだ。

 

「あー!マコトがビアンカさんにキスしてる!!シズクちゃんに言ってやろうっと!」

サキさんがマコちゃんを囃し立て、マコちゃんはひたすら言い訳をしている。

そんなやり取りを全く見ていなかったのか、ツカサさんは回転床を踏み、横にあった落とし穴に落ちていった。

 

「何やってんだあいつは。」

さすがのマコちゃんも落ちていったツカサさんを心配するより先にため息を吐いていた。

「助けに行かないの?」

「大丈夫よビアンカさん。あいつは体が頑丈なのと逃げ足が早いのだけが取り柄だから。」

そう言ってサキさんは笑っている。

彼・・・信用されてるんだなぁ。こんな夫婦も羨ましい。

 

そうこうしていると凄い音をたててこちらに走ってくる足音が聞こえてきた。

「ほらな?俺の頼れる親友は大丈夫だ。」

マコちゃんは自慢気に私をみた。良いなぁ男の友情って。でもねマコちゃん・・・足音、変じゃない?

「ちょっとマコト?あの足音多くない?」

サキさんも気付いたらしい。

 

私達が息を飲んで足音がする方を見ていると

「助けてー!!」

数えきれない程のサタンパピーとラゴンヌと言った強敵を引き連れて走って逃げてきた。

 

「あのバカ!何やってんだよ!」

マコちゃんとサキさんは、走ってくるツカサ君に背を向けると、一目散に逃げ出した。

 

「マコトぉ親友だろ?助けてくれよー!」

「うるせー!こっちに来んな!」

涙目で逃げてくるツカサ君に、とても勇者とは思えない捨て台詞をはいて逃げ出すマコちゃん。

 

私達もつられるように走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァ・・・何とか逃げ切ったな。」

マコちゃんが肩で息をしながら言う。

私達パーティはずっと走り続け、広いホールのような場所に辿り着いた。

 

他の階と違いここは暗い。松明も点いていない。でも回りの壁が見えない所をみるとこの部屋が広い事だけは分かった。

他にも不自然な点はいくつもあるけれど、何よりも一番不自然なのは、この部屋が異常に熱いということ。足下に熱気を伴った風が吹いている。

 

「遅かったなマコト・・・」

 

暗闇の部屋の中から低く威圧的な声が聞こえると、部屋の壁に円筒状に掛けられた松明に青白い炎が灯っていく。

 

「キョウイチ・・・」

マコちゃんの指摘通り、部屋の中央にはロイヤルガードのキョウイチ君がいた。

バラモスブロスという魔物の本来の姿で。

元々大柄な男性ではあったが、正体を現した彼は更に大きかった。

右手には成人男性より更に大きな斧を携えている。普段の彼からは想像もつかない赤く燃え上がるような真っ赤な目が、キョウイチ君の本気度を伝える。

マコちゃんは一歩前に出ると、腰にある剣を抜いた。彼の剣はアレフガルドに来てからの連戦に次ぐ連戦により、きせきの剣は既に刃こぼれしてボロボロだ。剣については素人な私から見てもマコちゃんが不利なのは解る。でも、彼は私達の一歩前に出て剣を構える。

この背中・・・私達を守ろうとする背中が好き。

そう言えばアノヒトもこんな背中だったな。

 

「キョウイチ・・・退けないのか?」

「悪いなマコト。これも姫との約束でな。」

「シズクとの?なぁキョウイチ。シズクは・・・いや、ルビス様は何を考えているんだ?」

「・・・それは俺の口からは言えない。本人に聞け。ただ・・・できれば恨まないでやってほしい。」

 

ん?シズクちゃんがルビス様?どうやらマコちゃんは何か壮大な勘違いをしているようだ。

私はキョウイチ君の方を見ると、彼は誰にも見つからないように含みを持たせた笑いで方目を閉じてみせる。こんな命を懸けた時までイタズラ心か。本当に男子の友情って面白いな。

キョウイチ君は斧を振り上げる。

 

 

 

 

そして、お互いがお互いを友と呼び合うもの同士の悲しい戦いが始まった。

 

 

 

 

ウォォォーーー!!!

足がすくむような大きな魔物の雄叫びをバラモスブロスはあげた。

 

部屋の壁がビリビリといっている。凄まじい音の攻撃に私は戦闘中にも関わらず目を瞑ってしまった。―――――――が、次の攻撃が中々来ない。

私は恐る恐る目を開けてみると、キョウイチ君の頭に見たこともない大きさのタンコブがあり、口から泡を吹いて目を(@_@)のようになって崩れ落ちた。

 

 

 

 

「もぉ~なぁに?人の家の前で煩いわねぇ。二日酔いで頭がズキズキするんだから大声を出さないでよぉ〜。」

 

倒れたキョウイチ君の背後に現れた長い金色の髪が印象的な

 

「「「シズク!」ちゃん!」」

「ルビス様!!」

 

 

 

「ん~?」

 

ルビス様が100トンと書かれた大きなカナヅチを持って立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

「よく助けに来てくれたわねぇ~。おばさん嬉しいわぁ。」

「・・・本当に助けが必要だったんですか?」

「何言ってるの〜、私は魔王に囚われの美女じゃない~。」

「・・・でもマイラの温泉にいましたよね?さっきまで。」

「え~ルビス知らな~い。」

「あんたさっき俺にゲ○をぶっかけたでしょーが!!」

 

塔の中の一室とはとても思えない広い空間。辺りには生命溢れる新緑の木々、数多くの小鳥の囀ずりが心地好い。足下にはキラキラと輝くような水が小川となって流れ、小魚達が気持ち良さそうに泳いでいる。

部屋の中央は池州になっていて、そこには沢山の花が気持ち良さそうに風に揺れている。

 

そう、そこはまるで厳しい寒さのアレフガルドとは別世界、まさに神様がいるのに相応しい部屋だった。

 

 

私達は池州にある花畑の中心にある丸テーブルを囲むように座ると、ルビス様の御世話を担当する侍女達が温かい紅茶を振る舞ってくれた。

 

「あの・・・ところで本当にルビス様ですか?」

「そうよぉ~?数多の教会や文献の絵のモデルになったのに知らないなんて、おばさん悲しいわぁ~。」

「いえ違うんです。ルビス様が俺の幼馴染みにあまりにも似ていたもので。」

「あら?そんなにおばさんに似てるのぉ?」

 

ルビス様は女神の微笑みを絶えず浮かべている。相変わらず女神様の周りにいるだけで幸せな気持ちでいっぱいになるところ・・・やっぱり創世の女神様は違うなぁと私は思う。

しかし気になるのは先ほどからやたらとご自分の事をおばさんと連呼していること。

以前はこんな事なかったのに・・・

この面子を考えるとハッキリ言って嫌な予感しかしない。

 

「さっきからルビス様は自分の事をおばさんって言ってるけど、どう見ても20歳前後にしか見えないぜ?おばさブゲッ!!」

 

ルビス様の人の目には捉えきれない光速のパンチがツカサ君の顔面を捉え、彼は端にある壁の中にめり込んだ。

 

 

「ツカサ、あんたバカねぇ。自分の事をおばさんって言ってる女性の大半は自分をおばさんだと思ってないのに・・・女心の解らないヤツ。」

 

サキさんが壁のアートと化したツカサ君にため息交じりに呟く。

そんな最中、私の隣に座るマコちゃんはルビス様に怪しむような、疑いの眼差しをむけている。まぁ彼が何を考えているかだいたい予想はつくのだけど。

未だにルビス様がシズクちゃんだと怪しんでいるのだろう。確かに髪の色と若干歳上の風貌以外はそっくりだ。まぁ、似てて当然といえば当然なのだが。

ルビス様は、その後も続いたマコちゃんの失礼な質問に、女神の微笑みを浮かべたままのらりくらりと返答している。変わらないなぁ。

 

 

私がまだ幼ない少女だった頃一度だけルビス様に会ったことがある

 

 

 

――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――

 

 

 

 

「あら〜?お嬢ちゃんはもしかしてプサン君の娘さん?可愛いわねぇ~。」

「ほらビアンカ、ちゃんとご挨拶なさい?こちらは創造の女神ルビス様だよ。」

「はいお父さん。私はビアンカです。」

「あらお利口さんですね〜。ビアンカちゃん私の娘にならない~?」

「ちょっとルビス様。それはちょっと・・・」

「冗談よぉ~プサン君。そんなプリプリしないで~。ハゲになるわよ〜?」

 

 

私はお父さんに教えてもらった精一杯の礼儀で

挨拶をすると、ルビス様は優しく微笑んでくれ、私の頭をそっと撫でてくれた。

私が撫でられた頭から暖かみと幸せを感じていると、ふとルビス様の足下にしがみつき顔をちょこんと出してこちらを見ている少女に気が付いた。

背まで伸びた長い銀色の髪。透き通るような白い肌をもつ少女は、怯えるような瞳でルビス様に隠れるように立っていた。

 

 

 

 

 

数日もすると私と彼女は仲良くなった。

その頃になると、彼女から怯えた雰囲気は消える。彼女はよく微笑んでいた。もし私が男の子だったらきっと好きになっていたかもしれない。そんな女の子だった。

私達は毎日遊んだ。お城の庭園で花を摘んだり、広い城内でかくれんぼ。ルビス様が寝ているスキにセクシーな下着を盗んで二人して着けて大人ぶったりもした。

でも何よりも彼女が好んだのは人の紡ぐ恋愛物語だった。

 

 

「恋って素敵ですよねぇ。」

私達二人は食い入るように色んな恋愛物語を読み漁っていた。

天空人である私はまだしも、彼女が人に恋するって・・・全くイメージが湧かない。彼女には悪いけど。

 

 

私達は沢山の物語を読んで出した答え。

「「やっぱり幼馴染みよね!」」

だった。

幼馴染みは常に傍にいる。すぐ傍で好きな人を支え、時には間違った道を正す。一番の笑顔をいつも自分だけのものにできる。

 

 

 

 

だけどそれは間違いだと私は後に悟る事になる。

 

 

 

 

そして数日間滞在した彼女は、ルビス様の帰宅と共に帰っていった。

 

「これあげる。私の事忘れないでね?」

私がとくに彼女がお気に入りの物語の本をあげるとありがとうと満面の笑顔をみせ、代わりに彼女はキラキラと綺麗で、触ると少し温かい。そんなオーブをくれた。

「これは光の玉です。私が以前作った衣の能力を撃ち破る物なんですが、キラキラしてて綺麗でしょ?だから持っていたのですが・・・よく考えたら私が持っていても仕方ないものですからビアンカさんにあげます。私、絶対に忘れませんから、また会いましょうね。」

 

それからと言うもの、彼女から貰った光の玉は私の宝物になり、いつしか私の一族の宝物になった。

 

私はそんな少女時代を過ごした。

 

 

 

 

私が成人した頃、父がルビス様よりマスタードラゴンのお役目を賜った世界で一つの役割を与えられた。

一つの国の王子と子をなし、その子供を勇者とし魔王を討つと言ったないようだった。

私はチャンスだと思った。

人と恋をし、家族をなす事ができる。そう思ったから。

 

私は年齢を下げ、同世代の子供としてまだ見ぬ彼と出会うために地上に降り立った。予定通り孤児として宿屋の夫婦に拾われ、何一つ不自由なく育つ。

そしていよいよ運命の彼と出会った。

 

 

そして、より感動な演出するためにわざと一度離れ、そして大人になった二人は再会し、恋が燃え上がるハズだった。

 

しかし彼には何とお嫁さん候補が他に2人もいて、あろうことか彼はデボラさんを選んだ。

少年期に長い奴隷生活を送ってきた彼は、何とドMだったのだ。

 

 

このままでは世界は魔王に滅ぼされ、創造の神々によって無へと還されてしまう。私は時の砂で時間を結婚前夜に巻き戻し、寝ている彼の枕元に立ち、

『結婚相手はビアンカ。結婚相手はビアンカ。』

と、千回言い続けた結果、彼と無事結婚し勇者をもうけ、そして世界は救われた。

 

 

でも私が学んだこと・・・それは

 

 

幼馴染みはダメだと言うことだ。

 

 

そして、気が遠くなるような歳月を経て再会した彼女は、幼馴染みとして勇者の左に寄り添っていた。

 

 

『女王陛下こんにちは。私はビアンカと申します。』

『ええビアンカさん。覚えていますよ?』

 

 

彼女も私のことを覚えていてくれたのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

. ◆

 

 

 

 

 

 

丸テーブルの反対側に座るルビス様は美味しそうに侍女に出された紅茶を飲んでいる。

本当にこの人は大魔王ゾーマに囚われているのだろうか。

 

囚われているわりにはマイラの温泉に浸かっていたり、お酒に飲まれていたり・・・とにかくこの人は自由人だ。

でも何よりも一番気になるのは・・・本当にシズクじゃないのか?どこから見てもシズクにしか見えないルビス様。

髪の色と若干の年令以外は本当にそっくりだ。

そんな俺の考え事に気付いたのか、ルビス様はふと目が合うと、まさに女神の微笑みをくれる。

 

「勇者くん〜。そんな熱い視線を向けられるとおばさん照れちゃうわぁ~。でもダメよぉ?おばさん人妻だからねぇ~?」

「す、すみません。あまりにも幼馴染みに似ていたもので・・・。」

「そう言えばさっきもそんなこと言ってたわねぇ~。」

 

ルビス様はそう言うと少しだけ考え込むような顔をし、改めて俺達を見渡す。するとルビス様は何かに気が付いたような顔をした。

 

「あら?貴女ビアンカちゃん?プサン君の所のビアンカちゃんよねぇ~?懐かしいわぁ~こんなに大きくなってぇ~。」

ビアンカさんを見てルビス様が言った。俺はビアンカさんの方を見ると、彼女はイタズラがバレた子供のような可愛い顔を見せた。

「・・・お久しぶりですルビス様。」

「そっかぁ~そう言うことかぁ~。勇者くんが助けに来るの、私の予想より遥かに早いから驚いていたのだけど・・・そうね、マスタードラゴン族のビアンカちゃんがいたのなら納得ねぇ~。」

 

ルビス様の話しを聞いて皆がいっせいにビアンカさんを見る。ツカサはもちろんのこと、賢者のサキでさえもビアンカさんが実は人間でないことに驚いていたようで絶句している。

「隠していてごめんね?みんな・・・って、あれ?マコちゃんはあまり驚かないのね?」

「何となくそんな気がしてたからね。」

「いつから?」

「わりと最初からだよ?確信したのはアイツと初めて会ったときかな。アイツはあの時に"覚えている"と言ってたんだよな。アイツがビアンカさんの存在を認識してるのは前夜に知っていた。だからいつものアイツなら"存じ上げてます"とか答えそうなものを、アイツは覚えていると。アイツがルビス様だと思っていた俺はビアンカさんも・・・って考えていたんだ。」

「なっ!!マコトが頭を使う・・・だと?」

 

サキが隣で何やら失礼な事を言っている。そんな彼女達を少しだけ寂しそうな笑顔で見るビアンカさんは

「そっかぁ。もうずっと前からバレていたんだね。」

そう言った。

「改めて、私はビアンカです。マスタードラゴンの家系の生まれです。」

「マスタードラゴン?でもビアンカちゃんも落ちこぼれクラスにいたよなぁ?」

ツカサが言う。

「ふふふ。まだお父さんが現役だからね、継いでないから扱える魔力は少ないし、ある程度のセーブは可能なのよ。」

「そうなんだ?でもこれで大魔王ゾーマも余裕だな!何と言っても創世の神様のルビス様に加えてマスタードラゴンのビアンカちゃんもいるんだからな!」

「私はやらないわよぉ~?」

「は?何で?神様であるルビス様が戦えば大魔王ゾーマなんて軽く倒せるだろ?」

「私はダ〜メ。第一ゾーマも創世の神だし~それに痛いのは嫌だし、傷になったら大変じゃな~い。だから私は見てるだけよ~?それにビアンカちゃんもダメ。だってビアンカちゃん妊娠中だもの~。」

 

は?ビアンカさんが妊娠中?

周りを見るとルビス様を含めた皆が俺を見てる。え?なんで俺を見るの?しかもビアンカさんまで。

 

!!まさか疑われてるのか?おれ。

「え?ちょっ、ちょっと待て!お、俺じゃねーよ!?」

「うわっマコトサイテー。」

「マコト・・・お前そりゃねーよ。」

 

サキとツカサが白い目で俺を見ている。

 

 

「俺じゃねー!!」

俺は走ってその場を後にした。

 

「マコトのヤツ逃げやがった。」

「相変わらずのヘタレね。」

「あ!マコちゃん・・・」

「あらあら。勇者くんはダメな子だねぇ~。」

 

それぞれの勝手な言葉による痛恨の一撃を一身に受けながら俺はルビス様の部屋を出た。

これは逃げたわけじゃない。一時的な戦略的撤退ってヤツだからな。

俺は誰に聞かせるでもない捨て台詞を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ。勇者くんみーつけた~。」

 

ルビスの塔のバルコニーで一人不貞腐れていた俺を見つけたのはルビス様だった。

 

「勇者くんと二人で少しだけで少し真面目な話がしたくてあんな事言っちゃってごめんねぇ~。」

「え?どう言う事ですか?ビアンカさんが妊娠中ってのは嘘・・・だとか?」

「それは本当よぉ~?でもね、彼女はさっきも言ったけどマスタードラゴンの一族なの。ドラゴンの寿命は遥かに長いの。たぶん普通に生まれてくる生物としては最長ねぇ~。そんな寿命が長い種族は出生率も低いの。人間も動物や昆虫に比べたら出生率も一度に生まれる人数も少ないでしょう~?ドラゴンは最も希少種な生物。出産まで数百年を有するのよぉ~。」

「えっと・・・どういう事ですか?」

「フフフ。分からない?出会って間もない勇者くんが相手ではないと言う事よ~。相手はリュカ君って言って・・今は彼の世界でビアンカちゃんを探し回っているようよ〜?ケンカでもしたのかしらね〜。」

「ようするに、アンタはただ俺をからかっただけだと?」

「そうよ~。ごめんねぇ~?」

 

ルビス様は微笑みをたたえたまま。この人は絶対に悪いことしたと思ってない。鈍感と言われる俺にもそれだけはハッキリわかる。

 

「で?ルビス様、俺に話とは?」

「うん。とても言いづらいんだけどね~このままでは勇者くん、キミは死ぬわよ~?」

「俺ではゾーマには勝てないと?」

「今のままではねぇ~。だって貴方、まだギガデイン使えないでしょ~?」

「・・・」

 

さすがはルビス様。俺がまだライデインまでしか使えない事を見抜いていた。神様に隠しても仕方がないので正直に話すと、ルビス様はライデインを唱えるように促す。

 

凄まじい轟音と眩い光を放つ雷撃が辺り一面を包む程の攻撃だが、やはりルビス様の表情は変わらなかった。

「さっきも言ったけどね~、ゾーマもまた創世の神なのよ。この程度の攻撃では傷一つつけられないわねぇ~。」

「ゾーマも創世の神?いくら勇者と言ったって相手が神じゃ勝てる訳がないじゃないですか。第一、何で創世の神が直接世界に関わってるんですか?」

「世界に関わってる理由はヒミツ♪家庭の事情ってやつよ~。あと戦いに関しては大丈夫よ~。我々神々は人の世界では一億分の一も力を使えないから~。私が言っているのはねぇ~、ゾーマを倒した後の事よぉ?君は大魔王を倒した先を考えたことある~?」

 

 

それからルビス様が語った未来は、俺にとって残酷で絶望的なものだった。

あらゆる国の軍隊が総攻撃しても倒せない魔王を勇者とは言え一人で倒す。

最初こそ勇者を称えるが、いつしか何処かの国に属されたら他の国が恐れる。国に属さなくても新たな国を興されたら、結局は驚異になる勇者を放っておくわけがないと言う。

 

「君はゾーマから世界を解放したのちは何か予定はあるの~?」

「俺は・・・ただ愛する人と幸せに暮らしたい。」

「ビアンカちゃん?」

「いえ・・・」

「残念ね~。ビアンカちゃんだったら私たち神の世界、レンダーシアで暮らせたのにね~。」

 

 

ルビス様は言葉を詰まらせる俺を、少しだけ哀れみの瞳で見ている。

「結論から言うわね?勇者くんがゾーマを討つにはギガデインの更に上をいく"ギガスラッシュ"しかないわぁ~。」

「ギガスラッシュ?」

「そう。ギガデインを剣に乗せて攻撃する技ね簡単に言うと。勇者くんの全魔力と、全生命力を使う、生涯ただ一度限りしか使えない最強の技。これでゾーマの心臓を貫けば貴方達人間の勝ちよ?ただ・・・生命力を使い果たした君は死ぬわ。生命力を全て使うから残りがない。生命力の欠片に作用するザオリクも効かないと言うことね。」

 

思わず俺は息を飲む。情けないが魔王を倒した先のことなんか想像もしてなかった。が、死ぬとも思っていなかった。突然突き付けられた事実。俺は勝っても負けても皆との未来はないのだ。

ルビス様もきっと皆がいる前で言うのをはばかって二人きりにしてくれたのかもしれない。

「親父は・・・俺の前の勇者はそれを知っていたから俺達家族に黙って出ていったのか・・・」

「ん~?お父さん?」

「勇者オルテガです。父はバラモスとの戦闘中に死んだんです。」

「オルテガ~?ああ!彼、生きてるわよ?」

「は?親父は生きてるんですか?」

「えぇ~。今はリムルダールにいるはずよ~?」

 

さっきまでの絶望的なゾーマとの戦いに希望が見えてきた。俺と親父、二人の勇者が協力して戦えばゾーマを討てるかもしれない。

 

「親父もギガスラッシュを身に付けたんですか?」

「オルテガさんは使えないわよぉ?勇者の家系はお母様の方ですもの。」

「そうか・・・ざんね・・・へ?」

 

まさか母さんの方が勇者の家系だったとは。確かに夫婦喧嘩はいつも母さんが勝っていたけど・・・

俺が考え事にふけっていると、ルビス様は何かに気が付いたような顔をする。

 

「そう言えば勇者くんの懐にあるのって~、もしかしてオリハルコンじゃない?」

「あ、そう言えば。」

 

以前テドンのカジノでシズクが当てた景品だ。オーブを探しに行った先で俺達はシックスを始めとしたギャンブラー達との熱い戦いを思い出す。俺はルビス様に言われるがままに懐のオリハルコンを渡すと、ルビス様は石に光を放つ。

すると眩い光を伴いながら一振りの剣が現れた。

 

「勇者くんはついているわねぇ~、これは王者の剣よ~。この剣は勇者にしか使えないんだけど~、君の力を限界まで引き上げてくれるのよ~。今なら王者の剣の支援を借りればギガデインも使えるはずよぉ?後はそうねぇ~勇者くん可愛いからこれもプレゼントしちゃおうかしら~。」

 

そう言うとルビス様は怪しげな光を指先から放ち、その光は俺の鎧を包む。すると体の奥から熱を帯びた力を感じた。

 

「ル、ルビス様・・・」

「なぁに~?勇者くん。お礼なら良いのよぉ?ゾーマを倒して世界を解放してくれるだけで十分よ~?」

「いえ、サイズ間違えてます・・・」

 

 

胴回りが太ももの辺りまでくるサイズ・・・これ魔属用だろ絶対。

 

「そぉ~?まぁ、確かに少しカッコ悪いわねぇ~。」

 

少しじゃないし、見た目以前に戦えませんよ!!思わず心の中で神様に突っ込んでしまいましたよ俺。

ルビス様は何処から出したのか、針と糸と、そして巨大なハサミで、おもむろに俺の鎧をチョキチョキと軽快な音を立てて切り始めた。

 

そして数分後、ポン!と俺の胸を叩き、これでよし!と満面の笑顔を見せた。

 

「王者の剣と同じ神の世界の鉱物で出来た"光の鎧"と、その余りで創った"マコトくんの盾"よ~。」

「えーと・・・色々突っ込みたいところなんですが・・・ハサミでチョキンとか音がする鎧って大丈夫なんですか?」

「大丈夫よぉ~?ハサミも鎧と同じオリハルコン製だから~。」

「オリハルコンって結構あるんすね?」

「ええ。うちの裏庭に沢山おちてるわよ~。」

「はぁ・・・何か以前どっかで聞いた台詞っすね。じゃあ・・・盾のネーミングは?そんな適当で良いんすか?」

「"マコトくんの盾"?良い名前じゃない~。」

「よかないわー!!考えてくださいよ?もしゾーマを倒せたとして、100年後1000年後に王者の剣、光の鎧、マコトくんの盾って並んで飾られてるかも知れないんですよ?せれを見てる所を想像してください。」

「・・・ププッ。い、良いじゃな・・・プププ」

 

肩を震わせて笑いを堪えているルビス様。チクショーだから嫌なんだってば。

 

「じゃあどんな名前が良いのよぉ~?」

「そりゃあカッコ良くら雷神の盾だとか後は・・・」

「もう面倒臭いなぁ~。もう勇者の盾で決まり!」

 

面倒臭いと来ましたか。って言うかさっきから何だこの懐かしい感覚とやりとり・・・

「って言うか、いい加減正体をあらわせー!!」

 

俺はルビス様に飛びかかると、彼女はキャ〜勇者に襲われる~と悲鳴を上げる。どうせお前はシズクなんだろう??

いい加減にそろそろ正体を現せ。

ルビス様の悲鳴を聞き付けて侍女達や、ツカサ達が入り乱れてかけつけてくる

「勇者がご乱心!!」

「マコト!デンチューでござる!」

そこからは大騒ぎとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした。」

俺は再び池州にある丸テーブルの前にいる。しかし今度は椅子には座っていなく、正座をさせられている。

「マコちゃん・・・ルビス様を襲うなんてダメだよ?」

「はい。すみません。」

「マコト、お前女性を襲うなんて勇者以前に人としてまずいだろ?しかも相手は神様だぜ?」

「はい。全くもって申し訳けございません。」

「シズクちゃんに言い付けるわよ?」

「それだけは勘弁してください。殺されちゃいます。」

 

「え?シズク?もしかして私に似てるって言う子はシズクと言うの?」

今までニコニコと微笑みながら俺達を見ていたルビス様はシズクと言う名前に反応を示した。

俺達を見詰める瞳は、今までのような慈愛の込められた瞳と言うよりは、真剣に俺達から話を聞こうとする瞳に見えた。口調さえも今までのような間延びした話し方ではない。明らかに空気が変わった瞬間だった。

 

「はい、私達のパーティにはシズクと言う僧侶がいたんですよ。」

サキは得意気にはなす。確かにお前等妙に仲良かったけど、なんでサキが得意気なんだよ?

「僧侶はビアンカちゃんじゃないの?」

「はい。ビアンカさんが俺達のパーティに入ったのはラダトームからです。それまでは俺の幼馴染みのシズクが僧侶をしていました。」

「そうだぜ?シズクちゃんはすげーんだぜルビス様!!あのバラモスを一撃で倒すし、ギガデインまで使えるんだぜ。なぁマコト?」

「あぁ。」

 

「え?その子ギガデインを使ったの?」

シズクがギガデインを使った話をツカサがすると、ルビス様が聞き直し、そして突如としてルビス様の回りに控えている侍女達がざわめきだす。

 

 

 

一呼吸の間を置いて今度はルビス様の方から聞いてくる。

「その子って白銀の髪の色~?」

「いえ黒髪です。」

「その子は刀身が半透明な大きな剣を扱う~?」

「いえ。あいつは僧侶ですから、剣は扱いません。主に殺人的な蹴りやパンチです。」

「ん~?その子は本当にギガデインを使ったの~?」

「はい、間違いありません。ジパングを島ごと消し飛ばしましたから。」

「島ごと?」

 

「お、奥方さま・・・」

「ええ。どうやら間違いないようね。」

 

ルビス様の周りから冷ややかな冷気が立ち込め、とても小さな小さな声で

 

「ふざけてるわね。」

 

確かにそう言った。

 

その言葉を聞き逃さなかった俺の全身をさぶいぼが覆う。ルビス様は笑顔のままだけど、なんだろうこの恐怖。

ふと隣をみるとツカサも聞こえたのかサキにしがみついて震えていた。

 

「・・・で?その子は今何処にいるのぉ~?」

間を置いたルビス様は、直ぐに立て直したかのように女神の微笑みと口調を戻した。

「今は訳あって一緒にはいません。あいつには生きて幸せになってほしくて・・・」

「そう・・・ちっ!逃げたわね。全く・・・どこまでバカにしてるのかしら・・・どこまで。」

「え?」

「!! フフフ。何でもないわぁ~。」

 

ルビス様は聞き取れない程の小さな声で呟いた。俺が聞き直しても相変わらずの微笑みを浮かべるだけで答えてはくれない。

 

 

俺達がルビス様が何を考えているのか悩んでいると、急に室温が上がった。

熱い、熱すぎる。今にも花々が発火しそうだ。部屋に流れる小川の水も蒸発を始める。

先ほどまで俺達の心を癒してくれていた小鳥達もいつの間にか飛び去ってしまっていた。

 

さっきより怒りを宿した真っ赤な目をしたバラモスブロスのキョウイチが燃えたぎる炎を纏ってルビス様の部屋に入ってきたのだ。

 

「マコト、俺と戦え。さっきは汚い不意打ちを食らって遅れをとったが、このままでは先に戦ったロレンスと姫に会わせる顔がない!」

「熱くなってるところごめんねぇ~。今お取り込み中だから後にしてもらえる~?」

「邪魔をするなクソバ・・・ば、ばばばルビス様!!」

「あら!キョウイチくん?クソなんだってぇ?おばさん耳が遠くてよく聞こえなかったの~。もう一度言ってもらえるぅ?」

 

キョウイチの真っ赤な目はみるみるうちに涙目になっていき、ルビス様に向かって土下座して謝っている。ルビス様はそんなキョウイチの頭を踏みつけて、虹彩の消え失せた瞳で見下ろす。

 

「まぁ、今回はずっと探していたゾーマとの・・・尻尾を掴むことができたし、機嫌が良いから特別に許してあげるわぁ~。」

キョウイチはルビス様の足にすがり付き、何度も何度も頭を下げてお礼を言っている。

そんなキョウイチの頭を片手で掴みあげ、自分の目線の高さまで持ち上げると、目を合わせ

「なんて言うとでも思う~?」

 

天国から地獄までいっきに叩き落とされたような絶望の表情を浮かべるキョウイチの顔の前にルビス様はスッと人差し指を差し出すと、指の先に小さな炎の球体が現れる。

 

「メラ。」

 

小さくルビス様が唱えると指の先にあった小さな炎の球体は、凄まじい光を放ち輝きはじめる。辺りが光と言う名前の白い闇に包まれて何も見えなくなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタガタ・・・

車輪がレンガ造りの道を走る音が聞こえてくると、背中からゴツゴツとした振動が伝わってくる。

「あ!マコちゃん気が付いた?」

 

ビアンカさんが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

「ここは?」

「馬車の中だよ?大丈夫?ルビス様がメラでルビスの塔を、塔のある半島ごと吹き飛ばしちゃって・・・マコちゃんは光の鎧のおかげで何とか・・・」

「そうか・・・ビアンカさんは大丈夫なのか?」

「うん。私は・・・ルビス様の魔法とは言ってもメラぐらいなら何とか・・・。」

「そっか。じゃあツカサやサキ、そしてキョウイチは?」

「呼んだ?」

隣にいたサキは元気に返事をした。どうやら彼女はとっさにラダトームへルーラで避難したらしい。

ツカサはと言うと、今一生懸命サキがザオラルで生き返らそうとしているようだが、中々生き返らないそうだ。

アイツ・・・運が悪いからなぁ。

 

「あ!勇者くん目が覚めたようね~。」

 

前の座席で馬車の馬を操っていたルビス様が微笑みながら声をかけてきた。

笑顔にもホイミがあるのだろうか、少しだけ傷が癒えたような気がした。

 

「キョウイチくんならここよぉ?」

馬車を引いていたのは馬ではなくて、全身包帯だらけのバラモスブロスのキョウイチだった。ルビス様にムチを打たれ泣きながら馬車を引いている姿がみえる。

 

 

 

こうして俺達のパーティは、全滅寸前の満身創痍の中、次の地"リムルダール″を目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー続くー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

勇者 マコト 装備 王者の剣 光の鎧 マコトくんの盾(勇者の盾)を手に入れた。

 

賢者 サキ 武道家も真っ青な程の素早さと、危険回避能力が上がった。

 

武道家 ツカサ ザオラルの度重なる失敗により死体が灰になり、ルビス様のくしゃみでアレフガルドの大地に舞い散った。

 

僧侶 ビアンカ 妊娠中と言うこともあり、ルビス様にリムルダールに着いたら強制的に帰らされることが決まった。

 

女神 ルビス 遊び人の衣装を纏った彼女は、何事もなかったように上機嫌に口笛を吹いている。

 

バラモスブロス キョウイチ 船漕ぎの職業から馬車馬に転職した。

 

 

ラダトームの勇者 キリト 生死不明

 

僧侶 シズク あのあと更に大樽爆弾を10個程追加でキリトにとどめに投下し、勇者に1度も会えていないストレスを発散した。

 

 

 

 

 

 

次回、死への招待状

 

 




最終回まで残り3話くらいの予定です。
ここまで付き合ってくれた皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m

あと少し、あと少しだけお付き合い下さいね♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。