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険しい森を今二人で走っている。
魔物が現れてからと言うもの、森の木々も嫌な気を放つように感じられるが、泉の傍にある木は今も爽やかな香りを届けてくれる。
こうやって二人でよく手を繋いで走り回ったよなぁ。どこまでも続くような大地、まだ幼かった二人に不安と木の優しい温もりを教えてくれた、深い森や野山。
全てが懐かしいぜ・・・
俺は長い髪を揺らし、隣を走る美少女を見る。
「ちょっとマコトさん!!何をたそがれているのか知りませんが、早く走ってもらえませんか?」
「あはは。シズク!お前が汗を額に浮かべ走るなんて久し振りなんじゃないか?手を貸そうか?」
そう言って彼女に手を差し出す。
「何を悠長なことを言ってるんですかー!!そんな暇があったら、この後ろから追いかけて来る沢山の一角ウサギをなんとかしてくださいよ!!」
そう言って彼女は、俺の襟首をつかんでウサギの団体の方へ投げた。
ハアハア・・・
漸くレーベの村に辿り着くと二人は肩で息をする。それにしても一角ウサギにかじられたお尻がヒリヒリする。
彼女は肩で息を切らせながら
「全く。調子に乗ってスライムをイジメ過ぎるから、仲間を呼ばれるんですよぉ。」
そう言って俺を睨む。
「仕方ねーだろ!!お前があの後も指輪やら、替えのドレスだのを欲しがるから、お金がねーんだよ!!」
魔物は意外とお金が好きみたいで結構貯め込んでいるものである。え?倒して奪ったら強盗だって?俺は勇者だ!!だから大丈夫だ。
たぶん・・・
先ずは村人に情報を聞こう。
俺達は二人でアリアハンを抜けて、ロマリアへ行く道を聞いてまわった。
色々聞いてまわると、何でも村を出てはるか東に洞窟があり、そこには旅の泉があるそうだ。
旅の泉は放れた所へ瞬時に移動できる魔力の泉だ。
しかし、近年の魔物の激しい進行から守るために、祠の入り口を大きな石で塞いでしまっているらしい。
「もし?お主等はあの壁を壊したいのかい?わしならアレを壊せる魔法の玉を持っているぞい?」
変なジジイが話しかけてきた。
見覚えのあるジジイは俺の親父であるオルテガの父つまり祖父であるのだが、俺のことにまるで気付いていないようなのでスルーすることにした。
「マコトさん。もう夕方ですし、宿屋にいきましょう?」
シズクはジジイなどまるで見えないかのように、宿屋へ向かって歩く。俺もシズクについて宿屋へ向かおうとすると、ジジイは俺のマントを掴み、ワシを無視しないでくれーと泣きついてきた。
「良いですかマコトさん?ここから此方に入ってきたら、防空識別圏の侵害とみなし・・・どうなるか分かっていますよねぇマコトさん・・・」
部屋の真ん中に白線をひき、どんな魔物よりも恐ろしい瞳で俺を見詰めるシズク。
甘いな。俺はお前のお馴染みだぜ?寝静まった頃に、同じベッドに――――
ドン!!
生暖かいものが頬を伝う。俺はそれを手で抑えると・・・って、
「血じゃねーか!!シズク、お前ナイフを投げつけやがったなぁ!!」
数ミリ単位の顔の横には雫の果物ナイフが突き刺さっている。そんな俺の突っ込みを華麗にスルーしてベッドに入る彼女。
俺は自分に許された陣地(なにもなし)で、毛布にくるまって眠りに就いた。
「・・・ですよ?マコトさん!」
次の日目を冷ますと、シズクが俺を揺さぶって起こしてくれた。目を開けると最初に入ってくるのがシズクの顔か――――何か良いなこれ。
「おはようシズク。朝からお前は綺麗だな」
そう言うと彼女は顔を真っ赤にしていた。
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「これがナジミの塔かぁ。あのじいさんの言ってた秘宝を取ってくれば魔法の玉をくれると言ってたなぁ。」
俺は眼前にそびえ立つ塔を見上げた。
塔の隙間から太陽の日射しを受けると、これから始まる戦闘にも身が入ると言うものだ。
俺は少しだけ武者震いをし、塔へと入っていった。
塔は薄暗かった。それを察したのかシズクは何処からともなく松明を持ってきた。
「お前よく松明をみつけたなぁ?」
「それ?マコトさんのこん棒を削って作った棒に、マコトさんの布の服の布を巻いて火をつけただけですよ?」
笑顔で言う彼女。
ん?ちょっと待て今何て言った?
そう言えばやけに腰の辺りが軽いような・・・
「って、俺の武器(棍棒)じゃねーか!」
彼女はそんな俺にテヘッと言って舌をみせた。
可愛いよ。お前は確かに可愛いですよ!
でも、どーすんのこの先。
俺の武器が松明を作った時のあまりでできた、ひのきの棒になりました。
苦労して登りつめた塔の頂上には宝箱が置いてあった。誰がこんな所にわざわざ宝箱に入れて仕舞うんだ?俺はふと頭を過る疑問を持ちながらも宝箱に近づくと
「ふむ。我が秘宝を盗みに来るとはねぇ。身の程知らずな男だこと。」
真っ黒な装束に身を包んだ、見た目百点満点の魔法使いの女の子と、やたらといかつい武道家がいた。相手もどうやら人間。
魔物から世界を取り戻したい気持ちは一緒なはずだ。
しかし、話しを聞いてもらえずに結局は人間同士の悲しい戦闘になってしまった。
「シズク!サポートを頼む!」
彼女は頷き、俺の後ろに下がる。必勝の陣形だ。
俺は腰のひのきの棒を構え、相手との間合いを計る。
「メラ!」
しまった!相手の魔法使いの女の子に先手を切られた。俺は襲い来る炎に目を瞑って耐える・・・が一向に炎はやって来なかった。
薄目を開けてみると
「あれ、MPが足りない!」
と言っている女の子。
「おい。メラもMPがたりないのか!!それじゃ魔法使えねーじゃねーか!!」
思わず相手の女の子に突っ込みを入れてしまうと
ふぇぇぇん
女の子が泣き出した。
「ツカサあいつ、私を苛めるぅ」
「サキ!大丈夫だ。俺が・・・伝説の武道家の俺がお前を泣かした男を倒す!」
と言って、俺の眼前に立った。
「最低・・・」
俺の後ろから声のトーンが3段階下がった声で呟くシズク。
「ん?どうしたしずブゴッ!!」
華麗なおみ足から繰り出されたハイキックが俺の顔面を捕らえ、キリキリと擬音をたてるかのように吹き飛ぶ俺。
「女の子を苛めるなんて最低です!!恥を知りなさい恥を!!」
シズクがひっくり返っている俺を指差し、叫んでいる。
俺かよって疑問はさておき、悪魔のように俺を見下すシズクをみて、自称伝説の武道家が震えているのが見えた。
「お爺ちゃん!」
レーベの村に帰ると魔法使いの女の子は、ジジイに抱き付いた。あんたの孫かよ!!ってか、俺の昔ジジイへの養子に出た妹か……。
確かにサキはジジイにとっては宝物だろうけどよ・・・
ジジイは感動の再会を邪魔するなとばかりに、魔法の玉をちら見で持っていけと合図する。本人は忘れているとはいえ、同じ孫なのにずいぶんと雑な扱いだった。
「なぁ。あんた俺を弟子にしてくれねぇか?あんたの蹴りに惚れ込んじゃってよ!」
先ほどのいかつい武道家のツカサがシズクにしがみついて頼み込んでいる。
何かニヤニヤしながらしがみついているのが、ムカつくなぁ。あいつまさかシズクに抱き付きたいだけじゃねーだろうなぁ。何て考えていると
「メラ!」
魔法使いの女の子サキがメラと叫び、近くにあったこん棒でツカサの脳天をぶっ叩いた。
それ・・・メラじゃなくて撲殺ですよね。
こうして俺達は気絶した武道家を無視し、世話になった?人達と別れ、レーベの村を後にした。
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村を出て暫く歩くとそれはあった。
村で聞いた情報の通り、祠の入り口には大きな壁があった。これを魔法の玉で・・・どうすんだ?
「なぁシズク。これの使い方をジジイに聞いたか?」
「え?私は聞いてないですよ?」
魔法の玉をよく見ると紐のようなものが付いている以外は、ただの重い玉にしか見えない。
俺は掲げてみたり、撫でてみたり、座ってみたり
色々試してみたが、どれも魔法の玉は起動しなかった。
カチッカチッ!!
後ろから乾いた音が聞こえ、音がする方を見るとシズクは見たこともない長方形の火を灯す箱(ライター)で、紐に火をつけた。
「なぁ、その火を起こすのなん・・・だ?」
振り向くとはるか遠くまで全速力で走っていく彼女の後ろ姿が見えた。
「え?」
俺がシズクに声をかけようとしたとき、昼間の太陽の日射しより更に明るい灯りが辺り一面を照らす。
俺が手に持っている魔法の玉が輝いていた。
ドガァァァァァァァァァン
こうして旅を初めて3日目にして、俺は早くも2回目の教会にお世話になる。
――つづく――
マコト Lv5 装備 ひのきの棒 一部切り取られた布の服
シズク Lv25 装備 皮のドレス(数着) 研ぎ澄まされた果物ナイフ らいたー 祈りの指輪
死亡回数 2回