暗闇の底から見た世界はとても輝いて見えた。
かつては我も愛されていた。
何処へ行くにも必ず我を供にしてくれた姫君。まだ幼子であった我は、さながら姫君を守るナイトのような気分であった。
彼女はいつも我を膝の上に乗せ、優しい手で頭を撫でてくれた日々。とても暖かく幸せだった。しかし幸せと言うものは決して永遠ではない。
そんな姫君はある晩のこと、父上君と母上君から身を隠すようにコソコソと我を連れ出して異世界へと渡った。
途中彼女は自身の姿を幼子に変えると
「ん〜ちょっと貴方がいると計画に支障が出ますね…。後で迎えに行くから此処でジッとしててね?」
そう言ったかとおもうと、異世界を渡る船(天の箱舟)から我を蹴り落としたのだ。
突然の事で何が起きたのか理解できなかった。それでも我は迎えに行くの一言を信じてずっと待っていた。
最初の100年は、寂しさと孤独と不安に震えながら光を通さない穴倉の奥深くで過ごした。
次の100年は、姫君との安らぎに満ちた幸せな日々の夢を糧に光を通さない穴倉の奥深くで眠りに就いた。
次の100年は、神々に祈り続けた。
しかし祈りは届かない。
姫君はとうとう現れることは無かった。
我は棄てられたのだ。
400年の歳月を経て大人になりそう理解した時、絶望と共に我を支配したのは憎しみであった。
再びあの輝かしい世界に戻る為に数百年に渡ってこの闇の底で蠢いてきたのだ。
地の底を這いずり回り、身体を傷だらけにしながら。
あの滅茶苦茶な創造神達が世界を去り数百年。中には龍王を名乗る龍の小僧が魔王を語り世界を席捲しようとしたこともあった。しかしその目論見も勇者の子孫が撃退したらしい。
流石はあのトンデモない姫君が愛した勇者の子孫と言うわけか。しかし何十世代も経た今なら…
それにあのゾーマ様が去った事で、メラゾーマをはじめ多くの強力な魔法が消失し、上の世界は切り離された。現在、上の世界には龍皇の一族であるマスタードラゴンが新たに世界を管理しているらしいから無理として、あの最凶の女神ルビス様が去ったアレフガルドは、今や我が野望である世界の破壊を阻める者は居ないに等しい。
我を捨てた姫君が愛した世界を破壊する。それが我を捨てた者に対しての復讐である。
ふと世界に目をやると、野望の実行部隊を任せていた我が右腕であるハーゴンが敗れたようだ。我は重い腰を上げ光輝く世界に這いずり出していく。
「ワレハスベテヲハカイセシモノ…ン?」
眩い世界に出て我が野望の唯一障害となるであろう勇者の一族。
その容姿は遠い昔に聞いていたのとだいぶ違っていた。勇者と言うより……いかつい武道家?に、やたらと容姿だけにステータスを振り分けたような魔法使いのような女の子。いかにもチャラそうな若い男。3人供あからさまに戦闘向きには見えない。
しかし勇者は勇者だ。
我は魔界の業火を吐き彼等を見下ろしたその時だった。
「あ!いたいた。こんな所にいたのね?あれ程ジッと待てと言ってあったのに……ダメな子ですね。」
背後からとても懐かしい声が聞こえた。
声のした方を振り返るより早く我に首輪を掛けた声の主は、背まで伸びたキラキラと輝く長い髪を揺らしていた。
「あら?もしかして貴方達はツカサさんとサキさんの子孫?キャー可愛い。」
言葉の最後にハートマークでも付きそうな黄色い歓声を上げた彼女は、勇者一行に近ずくと、マジマジと顔を眺めて喜んでいる。
「ひ、姫!」
我が絞り出すように彼女を呼ぶと、彼女は昔と変わらない女神の如き微笑みを浮かべ
我を見る。
我を捨てた女神。我の憎しみの権化。
そんな我に彼女の言った一言。
「帰ろ?シドー。」
「うん。」
こうして我は呪われたアレフガルドを去り、光輝く神々の世界レンダーシアへと帰るのだった。
一方、残された勇者一向は
「なんだったのかしらアレ。」
「さ、さぁ……もしかしてアレがルビス様じゃない?」
「え?ルビス様って金髪っしょ?白銀の髪だったよ?」
首を捻る勇者一向。
「まぁ何にしても世界が救われたのなら良いんじゃん?さ、ウチ等も帰ろ?ムーンブルクで彼氏ゲットしなきゃだし。」
こうしてアレフガルドは平和になり、この先その平和は永遠に覆されることは無かった。
新しく書くネタがなくてオマケの小出し中です。
次は何を書こう……。
レンダーシアもいいし、今度はゼルダやファイナルファンタジーとかもありでしょうか。
悩み中〜