ヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険   作:シズりん

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第27話

 

 

 

 

 

 

 

「お二人揃ってお出掛けですか?」

「えぇ〜、お城までちょっとね〜。」

「お二人が再び神々を導いて頂けるのですか?」

「いやいや。今はもうセレシアに任せているからな。」

「そうですか。それは残念です。」

 

 

旅の道すがら、すれ違う度に神々がゾーマとルビス様に話しかけてくる。その全ての神々が笑顔で語りかけ、それに応える2人もまた笑顔で相対する。

こんな姿を見ていると2人が神界レンダーシアにおいて人気が高いことを知らされる。

 

俺たちは今、神界の女神セレシアに会うべく城へと向かっている。

奇跡の泉で神龍に会うための証の一つ、ルビスの証は女神セレシアに預けてあると言うので、それを貰い受けに行ってるわけだ。

ゾーマの話しでは、ルビスの証は城に、エスタークの証はキリトさんの家に。そして神龍の証は恐らく人間界にあるのではと言う。

三つの証が集まった時にゾーマの証が現れて、神龍へと至る道が開けるのだとか。

 

以前は証を探す為のド◯ゴンレーダーなる物があったらしいのだが、昔寝ボケたシズクが目覚まし時計と間違えて叩き壊してしまったらしい。

さらに最近では、神龍のあまりの強さに挑戦する者も久しくいない事もあって、特に直さなかったそうだ。

 

そうこうしている内に俺たち3人は大きな建物の前に着いた。

 

「あれ?城下町に行くんじゃないんですか?」

「そうよ〜?でも城下町まで歩くと距離があるから天の箱舟に乗っていきましょ〜?ほらちょうど来たみたいよ〜。」

 

そう言ってルビス様が指差した方角の上空から、ポーッと凄まじ汽笛を鳴らして大きな箱が入ってきた。

そして無駄に無から創る創造神の力を使って出したであろう、黒いコートと帽子を被ったルビス様は、俺に手を差し伸べる。

 

「行くわよ〜鉄郎。」

「だから誰が鉄郎だよ!!」

 

思わず突っ込んじゃったじゃないか。

 

そんなやり取りをしていると、ゾーマはやたらと大きな服を纏い、深く帽子を被った状態で現れた。

絶対に突っ込まない。

俺が特に取り合わずに箱の中に入っていく。ふと後ろを振り返ると、ゾーマが鼻を鳴らしてイジケテいた。

泣かないでくださいよ。全く…

 

 

 

 

 

箱の中は沢山の座席が其々向かい合うように配置されており、俺たち3人が徐に席に着くと車両内アナウンスが、汽車の行き先を告げる。

いろんなプラットホームと言う所を経由しつつ、城下町へと向かうらしい。

 

 

「本日は天の箱舟をご利用ありがとうござい……あれ?ルビス様とゾーマ様ですよね?ヤバい、ちょー感激なんですケド。」

 

座席に着くと、羽が生えた妖精のような真っ黒な女の子の車両スタッフが冷たいおしぼりを手にやってきて挨拶をすると、ルビス様やゾーマの存在に気付いたようで駆け寄って来た。

 

「あら〜?サンディちゃん?久しぶりね〜。アレフガルドいらい?」

「はい、ご無沙汰しています。そこのショボいのも久しぶりだね。」

「ショボいのとか言うな!!」

 

相変わらず俺に言葉の痛恨の一撃をくらわす

黒い妖精のような女の子の名はサンディ。アレフガルドで出会った独特な……いや、俺の妹と良く似た話し方をする女の子だ。

ルビス様の話によればサンディは、グランゼニスと言う人型の神の始祖の娘らしい。

 

「サンディちゃんはアルバイトかね?グランゼニスは元気しているかい?」

「はいゾーマ様。私は夢のネイルアーティストになる為にアルバイトしてんだよー。お父さんはたぶん元気じゃないかなぁ?仕事ほっぽりだして遊びに行っちゃったみたいだし?セレシアお姉ちゃんが代わりに神様の仕事をしてるんだけどー、ガン黒の女神とかちょーウケるんですケドー。しかも忙しすぎて日サロに中々行けないみたいでぇー最近ではお姉ちゃん、だいぶ白くなっちゃったんだよ?ね?ウケるっしょ?だからお姉ちゃんの代わりに私が日サロ行き始めたんだぁ……。」

 

アレフガルドでは真っ白だったのに、だから黒くなっていたのか。

まくし立てるように話し続けるサンディと微笑んでいるけどたぶん話しを聞いてないルビス様と、彼女の話す言葉についていけずに頭から煙りを出しているゾーマ。全くやれやれだ。

 

延々と続くサンディの話しはいつまで続くかと思ったその時、再び艦内放送が鳴り響く。

 

「業務連絡です。サンディ!!どこで油売ってやがる!!さっさと帰ってこい!!」

 

艦内放送の男性の怒声を聞いたサンディは飛び上がる

「ヤバ。またテンチョーがちょー怒ってる。私戻らないと。ルビス様、ゾーマ様あとそこのショボいのまたね〜。」

 

去り際にしっかりとダメージを与えてサンディは走り去って行った。

そうしている内に機関車は終点である城下町に辿り着いた。

 

 

 

 

空を走る機関車が地上へ向かって降下している時に、逆に空へと向かって走る機関車がすれ違う。

プラットホームと言う所を基点に機関車はたくさんあるようだった。

その時、バンって音と共に少しだけ振動が伝わる。

 

 

「あら〜?」

 

ルビス様はすれ違って走り去って行った機関車を暫く見ていると、ま、いっか!とばかりに再び向きを戻す。

ゾーマはと言うと……なんか顔が青い。まさかとは思いますが、乗り物酔いだなんて事はないですよね?

 

 

 

 

 

 

プラットホームを出て城下町に降り立つと周りの景色に圧倒された。

 

でかい。

 

とにかく何もかもが大きい。

その中でも群を抜いて目立つのは城下町を囲うようにある壁だった。町の中心部に城があるのだから城壁も兼ねているのだろう。

しかしここは神界。

何から町を守る為の壁なのだろうか。

そんな俺の疑問に答えたのは、エチケット袋を手にしたゾーマだった。

 

「神界には魔王軍からの攻撃に備える為の防壁が至る所にあるのだよマコト君。」

「魔王軍って……シズクの?」

「あの子自体そんな気は無いのだろうが、周りには魔族や神族の若者があの子の強さに心酔して担ぎ上げているからなぁ。シズクはその若者が暴走しないように魔王として君臨しているのだよ。たぶん……」

 

ため息混じりにゾーマが話しているとき、はるか上空から俺たちの前に巨大なドラゴンが降り立った。

 

 

黄金色に輝く鱗、巨大な躰を支える強靭な脚。口から溢れる炎より更に赤い瞳。

アレフガルドで見てきたどの魔物よりも遥かに強いであろう事は直ぐに見てとれた。

俺は2人の前に立ち、この巨大なドラゴンに立ち塞がる。後ろの2人は創造神。俺なんかより遥かに強いが、勇者たるもの常に一番前で敵に相対するものだ。

 

俺は腰の剣に手を……あれ?

 

 

「あーーっ!!アレフガルドに装備一式置いてきたんだったぁ!!!」

 

 

 

俺は慌ててゾーマの後ろに身を移すと

 

「ヘタレだなぁ。」

「ヘタレね〜。」

 

まさかの痛恨の一撃2連発がきました。

俺のHPは既にオレンジ色ですよ。

 

 

ゾーマがドラゴンの方に右手を上げると、ドラゴンはゴロゴロと喉を鳴らして、ゾーマの手に鼻をなすりつけている。ルビス様もそんなドラゴンの頭を愛おしそうに撫でている。

 

「勇者くん〜?この子はおとなしい子だから大丈夫よ〜。ほら勇者くんも撫でてあげて?」

 

大人しい?これが?

先程までゴロゴロ言っていたドラゴンは、今はグルルル…とか言って明らかに威嚇しているように見えるんですけど。

俺はそーっと手を出すと

 

ゴォーー!!

 

っとドラゴンは炎を吐いた。

やっぱり…嫌な予感してたんすよ。

ギリギリでかわした俺

 

「あら?避けたわ〜。」

「おお!やるなマコト君。」

 

などと言っている創造神の2人。要するに最初からこうなると分かっていたようだが、フッ俺の唯一の誇りをきけ!

 

「俺は確かに何度も死にまくった。だけどなぁ…よく聞けよ!俺はなぁ、俺は、自慢じゃねーがシズク以外に殺された事はねーんだよ!!」

 

 

創造神2人に指差して言い放ってやった。

俺の魂の叫びを聞いた創造神2人は目を点にして驚いていた。

 

「……本当に自慢にならないわね〜。寧ろ情けない。」

ルビス様は憐れみの目を向け、

「マコト君…シズクの親としては、その…なんかゴメンねとしか言えん。」

ゾーマは俺の肩をポンポンと叩く。

 

「何だよその俺が可哀想な子扱いは!!ちくしょー!!」

 

 

「あははは……。君、面白い子だね。」

俺が創造神2人と話していると、創造神の背後のドラゴンは急に笑い出した。

 

するとドラゴンは眩い光に包まれてやがて小さなヒトの形になっていく。一際強い光を放つと、そこにはドラゴンではなく、14、5歳ぐらいの白いドレスを纏った女の子が現れた。

 

「お久ぶりです。ゾーマ様にルビス様。」

「セレシアちゃんも元気そうで何よりだわ〜。」

「セレシア、元気にしていたかい?」

 

2人に頭を撫でられて嬉しそうにしている少女はセレシアと言うらしい。

あれ?セレシアって……

 

 

「えーーー!!この小さな女の子が神々の女王なのぉ!?」

 

俺の驚く姿を3人は笑って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……まぁだいたい状況は把握しました。つまりこの人間は、シズクお嬢様に会いに神界レンダーシアまで来たと。で、来てみたは良いが肝心のシズクお嬢様の居所が分からない。そこで奇跡の泉に行き、神龍に挑み願い事を以って再会を果たしたい…と?そういう事ですね?」

「さすがセレシアちゃん〜。理解が早くて楽だわ〜。」

 

ニコニコと微笑むルビス様と、その横で何やら諦めたような顔をしたゾーマを、セレシアはジトっとした目で見ている。

 

 

俺たちは現在、城の上階に位置する謁見の間にいる。

その道すがら、セレシアにこれまでの経緯を教えたのだ。

 

 

 

「おっしゃる通りルビス様の証はこの城にございます。お二人の部屋はそのままですから、そちらにあると思いますよ?」

「あら?あの部屋はセレシアちゃん達が使ってるんじゃないの〜?」

「そんな恐れ多いこと私にはできません。そんな訳ですからお二人の部屋にまだあると思いますのでどうぞお持ちください。ですが……お嬢様は先程まで城で妹とお茶していましたよ?城下町での買い物ついでに寄られたようです。」

「え?あの子が来てたの〜?私なんて300年近く会ってないわよぉ?」

「そうなんですか?私は割とよく会ってますよ?私とだったり妹のサンディとだったりしますがーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

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ーーーーーー

 

 

 

 

 

〜数時間前〜

 

 

 

「ねぇちょっとアレ…英雄キリト様じゃない?キャー」

 

城下町を歩けば道ゆく者 誰もが色めき立つ。全身黒を基調とした装備と、肩に背負う二振りの神剣。闘いを志す者達全てが崇め、英雄に憧れる者達全てが熱い視線を送る。そんなキリトは、神界レンダーシアを始めとしたあらゆる世界と、多種に渡る現在の生物達の始祖の誕生に関わった創世の神として知られている。

 

「……そんな俺が何で荷物持ちなんか…ん?この刀はなかなか業物だな。」

 

露店に飾られた刀を持つと、軽く一振りしてみせた。

武器は只の道具ではない。それがキリトの持論である。達人が持てば竹槍も伝説の武器に匹敵するし、逆にどのような伝説級の武器も、レベルが低い者が持てば鈍らとなる。しかし往々にして達人ほど武具に目利きが効くので、結果的に経験値豊かな戦士が強い武具を持っているのだと。

実際キリトが軽く振った剣の軌道が未だにキラキラと輝きを放っている。

 

「もぉ…ブツブツ言ってないで荷物ぐらい黙って持ってくださいよ。」

 

キリトと同じく適当に手にした刀を眺めながら少女が言う。顔を隠すようにフードを深く被った少女は魔王シズクその人である。バレたら騒ぎになる為、配慮した結果の姿だ。

 

「買い物ならミレーユと行けば良いじゃないか。」

「ミレーユさんは食事の支度ですし、それにミレーユさんとだとセンスは良いのですが、すぐ節約節約いうんだもん。それとやっぱりキリトさんとじゃないと……。」

「俺じゃないと?」

 

彼女は身体をすぼめてモジモジしている。まぁこうしている分には可愛いのだが

 

「荷物を持つ人がいないじゃないですか。」

 

わざわざ声のトーンを下げてエコーまでかける辺りは実にシズクらしい。

 

「なんだよ。せっかくお前が甘い声で、濡れた瞳で一緒にお出かけしたいんですって言うもんだから期待しちまったじゃねーか。」

「ふ、普通に言っただけじゃないですか!気持ち悪い。」

「嘘だねー!お前は確かに甘えるように言いましたー。詐欺だ詐欺!!」

「さ、詐欺?……言いたい事はそれだけですか?」

「ゲッ!ちょちょっと待てシズク……」

 

 

 

キリトはそこまで言って自分の失敗に気が付いた。シズクはまだ刀を持ったままなのだ。身の危険を感じたその時、なんと彼女は刀を鞘に収めた。

そして女神のような微笑みをみせると

 

 

「天翔龍閃(天翔る龍のひら○き)!!」

「ぐはぁ!」

 

シズクの文字通り魔王の如き抜刀術がキリトに決まる。

 

「最近、手加減ないっすね……」

 

薄れ行く意識の中耳に入って来たのは、シズクが暴れた事で魔王だとバレて大騒ぎになった城下町の阿鼻叫喚の悲鳴だった。

 

 

 

 

 

どれだけ気を失っていたのかは分からないが、意識を取り戻した俺の耳に2人の談笑が届く。

身体を起こして周囲の様子を見ると、ここが城内だと気付いた。嘗てゾーマ様やルビス様。そしてシズクと暮らしたこの城を。

 

「気付いたみたいですね。」

「大丈夫ですか?キリト様。」

 

部屋の中央でテーブルを囲んでお茶を楽しんでいるシズクとサンディが続けて聞いてくる。

俺は右手を上げることで無事を伝え、俺も席に着いた。

 

「でさぁシズクちゃん。もう一度聞くけど、何で直ぐにショボいのに会いに行かないの?ショボいのが神界に来たこと気付いてないわけじゃないっしょ?」

「……それは、彼は勇者で私が魔王だからです。」

 

やっぱりシズクは自分の存在が疎ましいようだ。

 

「じゃあ、他の人に取られても良いの?例えば私とか。」

「ダメです。」

 

即答ですか。シズクの数少ない友人のサンディも苦笑いしてるよ。会いたいのに、自分を気にして会えない。答えなんかいつまで経っても出ない思考の袋小路だ。

可哀想だが、現状ではどうにもなりそうにない。

 

「あ!そうだシズクちゃん。この後ゾーマ様とルビス様が城に来るみたいだよ?私、2人を天の箱舟で迎えに行く約束になってんもん。なんでもルビス様の証を取りにくるんだとか。」

「え?ここにババア(お母さん)達が来るんですか?ちょっとヤバいじゃないですか。キリトさん帰りますよ?」

 

慌てて席を立つと、サンディにまたねと簡単な挨拶だけ交わし俺の手を引くシズク。

あの一件以来、ルビス様が一瞬目を離した隙に逃げ出したシズクは今もなお絶賛家出中だ。ルビス様のお仕置きを恐れての事なのだろうが。

 

ニコニコと笑顔で手を振るサンディを背にシズクは俺を引っ張るように天の箱舟のプラットホームへと走るのだった。

 

 

急ぐ割には買い物とか言う寄り道をしながら……

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

シズクがさっきまでここに?

 

 

「あったわよ〜。」

 

部屋にルビスの証を探しに行っていたルビス様は笑顔で戻って来た。

手には何の物質で出来ているのかは分からないけど、黄金に輝く三角形のプレートがある。どうやらアレがルビスの証なようだ。

 

「はい勇者くん。さぁ、それを両手で頭上に掲げて?」

 

俺は言われるままにルビスの証を頭上に掲げると、ルビス様は満足そうに微笑んだ。

 

 

しかし暫く経っても特に何も起きる様子がない。

 

「あの…ルビス様?このポーズに何か意味はあるんすか?」

「ないわよ?」

「は?はぁぁぁぁあ!??い、意味ないんですか?このポーズ」

「うん。だって重要アイテムを手に入れたら、これ見よがしに頭上に掲げて私たち(神様)にアピールするじゃな〜い人間って。だから、知恵のトライフォー◯(ルビスの証)ゲットよ〜」

 

なんてアッサリとポーズが無関係な事を認める女神なんだろう。もしかして俺は遊ばれているのではないだろうか。

 

「ちなみにキリちゃんのは〜勇気のトライフ◯ースで〜、神龍のは力のトラ◯フォースってとこかしら〜。」

「そうだ。そして3つが重なり合って発現する私のゾーマの証こそ……。」

「ただの鍵よ〜。」

「ちょっとルビス?流石にそれはあんまりじゃ……」

「ただの鍵よね〜?」

「はい……。」

 

ルビス様に言い負かされているゾーマは何だか他人事に見えないのは何故だろう。

 

 

こうして一つ目のルビスの証を手に入れた俺は次の証を探しに行くのだった。

 

 

 

 

ーー続くーー

 

 

 

【キリトの災難】

 

 

 

「なぁシズク、サンディの話を聞いたか?」

「なんですか急に。」

 

買い物帰りの天の箱舟のなか、席に着いて一息吐くとおもむろにキリトは話しかけた。

 

「さっきサンディは、ルビス様達は城まで証を取りにくると言ってたが…アレってもしかして。」

「……!!まさか、あのババア(お母さん)達はマコトさんを神龍に挑ませるつもりじゃ…。」

 

 

流石のシズクもあまりの事に絶句する。

 

 

「それしか考えられないだろう。神龍の強制力の力なら、例えゾーマ様と言えど抗えない。もし万が一マコトが神龍に勇気を示したなら…シズク、お前はマコトの前に立たなければならなくなる。」

「……キリトさんは意地悪ですね。神龍の戦歴を貴方が知らない何て事はないでしょう?」

「……悠久の時の中で俺の一度だけだ。神龍が願いを叶えたのは。そして俺は神龍の言われる通り、マルディアスでお前と出逢った。」

「まぁそれはどうでも良いのですが、問題はそこなんです。いくら神の力を得たマコトさんと言えど、所詮は神なんです。創造神である神龍には到底及びません。それが解らないババア(お母さん)ではありません。それを踏まえた上で考えられるのは……。」

 

どうでも良いって……

流石にキリトも苦笑いを浮かべる。

 

 

「あぁ……これは遠回しの人質だろうな。マコトを生きて返してほしくば家に戻れと言うところか。」

 

 

2人はそこまで言って、高笑いするルビスを思い浮かべて身震いする。

 

 

「まぁ何にしても、俺のキリトの証をマコトが手にしない限り神龍には辿り着けない。だから大丈夫だ。」

「……その証は今どこに?」

「俺の家だ。」

「……鍵は?」

「もちろんかけてない。」

「「……」」

 

「さっさと取りに行けーーーー!!!」

 

魔王の怒りの鉄拳がキリトの顔面にめり込むと、ガシャーン!!と、乾いた音を立てて、遥か上空を走る天の箱舟の窓ガラスを割って叩き堕とされた。

 

そして更に運の悪い彼は、ちょうど向かい車線を走ってきた城下町行きの天の箱舟に跳ねられた。

 

その列車にマコトの一行が乗っていた事を魔王はまだ知らない。

 

 

 

 

 

そのころ魔王城では、台所で阿修羅の如き動きで次々と料理を作るミレーユがいた。

長い金髪を後ろで束ね、誰もが息を呑む手際の良さである。

 

「だいたいこんな所かしら。」

 

ミレーユはそう独りごちて、鍋のスープを小皿に入れて味見する。

 

改心の出来だ。きっとこれなら魔王様も感激するに違いない。ミレーユは魔王からの褒美の言葉を想像し、独りほくそ笑む。

 

時計を見れば2人が帰ると言った時間はとうに過ぎている。しかしミレーユも、2人が遅れるなど毎度のことなので大して気にはならない。

 

しかし美味しい内に食べてもらいたいミレーユは、窓の外を見て独り呟く

 

 

 

「魔王様……おそいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

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